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4つの月光  作者: 白湯
1/1

プロローグ1:千早鈴音 2589年6/15

ここは天妖島。

貴方方読者の生きる現代日本のような高層ビルから歴史ある神社がある、海に囲まれた島国。

しかし我々の日本と決定的に違うのは人間以外の種族もいること。

古今東西あらゆる妖怪や獣のような特徴を持つ人々がいる島。

これはそんな島の裏側で行われるある狩りについての物語だ。

ザン!!………………ボト。






2589年7/15 1:43 天妖島 本宮地区 雅町 サンラインレッド教会にて…………

ザン!!………………ボト。

サンラインレッド教会。

豪華な装飾が施された新興宗教組織の運営する教会。

床には真っ赤なカーペットが敷かれている。

両脇には木製の長椅子ベンチ。

そして壇上の奥には神々しいガラスのステンレスが飾られている。

しかし床には教会には似つかない………………どころか本来はそこら辺にあっても誰もが悲鳴を上げる物が落ちていた。

それは………………首だ。

その数は8個。

そしてそのどれもが絶叫しているかのような顔である。

そしてもう一つ共通点がある。

それは全ての首の口に鋭い牙があることだ。

この天妖島には古今東西あらゆる妖怪や野生と言われる存在がいる。

奴らはその中でも特に忌み嫌われる存在である「吸血鬼」だ。

吸血鬼………………この島には年間15000人もの行方不明者が出ている…………そのうちの3割が吸血鬼による被害だ。

吸血鬼は並の人間の身体能力を遥かに凌駕している存在であり、その身体能力を用いて人間を攫う。

吸血鬼が生きるためには人の血が定期的に必要である。

故に彼らは人を攫う、そして捕まえた人間の血液を致命的なほどに吸い上げる。

そしてその死んでしまった人の遺体の内臓を売り飛ばして金を得るものもいる。

この残虐性から吸血鬼は忌み嫌われているのだ。

しかしこの夜。

この教会では違った。

そう彼らの首が何者かに落とされているのだ。

そしてそれを行なっているのは貴族の着るような青色のドレスを着た小柄なお嬢であった。

おそらく身長は150cmもいっていないだろう。

しかし彼女は吸血鬼…………おそらく優に30を超えるであろう数を捌き切っていた。

ザン!!………………ボト。

また吸血鬼の首が落ちる。

その光景は異様である……しかしそれ以上に異様なのは彼女の使う武器であった。

それは斧である。

しかしその斧の真ん中にはルビーよりも紅い宝石が付いていた。

その宝石は奴らの首を切り飛ばすたびに、より紅くなる。

そして女がまた斧を構えるのを見て吸血鬼の一匹が叫ぶ。

「なんなんだお前!?なんでそんな小柄で俺たちの首を落とせやがる!?もしかしてお前あれか?人間のフリした妖k…ザン!!

男は叫んでいる最中に首がトんだ。

…………ボト。

そして首が床に落ちる。

女は笑顔である。

ニコニコである。

しかしその目は絶対零度のように冷たかった。

そして女は違和感のある笑顔のまま口を開く。

「これで10匹…………貴方方って本当に群れるのがお好きですわよね?どうせ集団で居たところで一度に狩られるだけですのに………」

女の喋り方は貴族味に溢れており正に上品そのものだ………しかしその目には確実に対象を殺そうとする気を纏っている。

そしてその目を受けて吸血鬼の一匹がまた叫ぶ。

「なんなんだよ……!!お前……!!何者なんだよ!!!」その絶叫を受け、女もまた口を開く。

「私が何者なのか?………普段は答えないのですのよ?でも………今夜は満月が綺麗で素敵な夜ですから…特別に答えて差し上げますわ。総東高校 2-3 千早鈴音(ちはやすずね)。以後お見知りお………って貴方方に『以後』なんてことはありませんでしたわね。失敬、うっかりですわ。」

そして千早は体をグッと伸ばして斧を構える。

「さて……あまり時間をかけますと朱月リーダーが怒りますので………皆様方、覚悟してくださいまし………!!」

        〜20分後〜

教会の床には無数の首無し死体が転がっていた。

そしてあれだけの数の吸血鬼も残り一匹になった。

千早は残念そうに口を開く。

「吸血鬼はあいも変わらずその身体能力に頼ってばかりで本当に骨が無いですわね………皆様どうやら『六根』も使えなさそうですし………残り一匹の貴方……おそらくここの宗教組織の頭でございますわね?」

千早の問いに対して男は焦りの表情一つ見せずに答えと質問を返す。

「あぁ。俺がこいつらのリーダーだ。んでお前…………千早だっけか?お前はなんでうちの組織を潰そうとしてやがる?」

その問いに対して千早は男の目を見て答えた。

「なぜって…………それは貴方方が新興宗教組織を語り信者を洗脳し、その者の子供を売るように仕向け、その子供の血を啜り上げた挙句他所様へそのご遺体をお売りになったでしょう?私はそのご遺族の方から依頼を受けておりますのよ『奴ら吸血鬼を皆殺しにしてほしい』っと。だから今日でこの組織は破壊させていただきますわ。」

それを聞き男は納得のいかない顔で怒鳴る。「ふざけんなよ!!!俺らはただ何の存在価値もねぇ人間のガキ共をこの手で最高のビジネスにしてやったんだろうが!!!ガキの血も!!!その死体で得る金も!!!死ぬほどウメェんだよ!!!それをわざわざ棒に振ってたまるかってんだ!!!」

それを聞き千早は斧を握る手にさらに力を込める。

「………………宗教は人を幸せに導くものではなくって?人の信心に漬け込み金のみならず体まで貪る貴方は最早豚以下の醜い外道ですわ。絶対に今ここで首を落としますからね。」

それを聞いた男はヘラヘラとした顔で返す。

「ハハ……!!んだぁ、お前?もしかして本気で俺に勝とうとしてんのか?そりゃあ……無謀ってやつだぜ?」

そう言った次の瞬間男が突っ込んで来た。

流石は吸血鬼………その踏み込み一つで教会全体が大きく揺れる。

しかし千早はそれに対して焦り一つ見せずに迎撃する。

「その突進は少し直線的ではなくって?」

そう言って斧を凄まじいスピードで振り下ろす。

(チッ!んだこりゃクソ速ぇ!!避けるしかねぇ!!)

男は内心焦りつつも自分にとってのベストを判断する。

そして千早の斧が振り下ろされた直後だった…………ダン!!!っと教会中に凄まじい音が聞こえる。

その斧は教会の床にめり込む程の火力を出している。

しかし男は何とか直前で身を翻し、無事であった。

それでもかなり心臓をバクバクと言わせている。

(なんっつぅ馬鹿力だよ……!!ありゃ、純粋な力だけじゃねぇ。怪力で腕力を強化してやがるな。)

怪力とはなんなのか?

怪力はこの島の住人が潜在的に持つ怪しの力である。

その効力は主に力を込めた身体の強化である。

これは鍛錬さえ積めば誰にでも扱える基礎の基礎である。

事実千早の腕からは怪力特有の紫色のオーラが溢れ出ている。

(怪力での身体強化は確かに基礎中の基礎だ。それ自体に間違いはねぇ………だがこの女はそれが仕上がりきってやがる………………正直下手な『六根』持ちなんかよりもずっと厄介だな。ならこっちも……)

男はいきなり指を銃のような形にして構える。

千早はそれを見てフッと笑う。

「撃ってみれば良いですわ。でも当たりませんわよ?」

男は気にすることも無く指先に力を溜める。

そしてその指先には白色のオーラが纏われた。

そしてダン!!っと銃声のような音がなる。

それに連動するように白色のエネルギー弾が放たれる。

そのエネルギー弾は千早の眉間に向かう。

しかし千早は首をクイッとかしげてそれを回避した。

「霊力の発射……まぁ…一組織の長ならそれぐらいはしますわよね。」

霊力……それはこの島の住人が持つもう一つのエネルギー。

怪力が身体に纏うものなのだとするなら。

霊力は放射するのが主な使い道である。

その威力は使用者や種族によって異なる。

(相手は「妖怪種」……ここはやはりセオリー通りですわね。)

千早の言うセオリーとは

妖怪種は大概霊力の方が多い

野生種は大概怪力の方が多い

人間種は大概その両方のバランスが良い。

故に大抵の妖怪種は霊力を基盤にして戦闘するというものだ。

「さて……引き出しがそれだけなのだと言うのであれば…………もうすぐで終ってしまいますよ?」

それを踏まえても千早は負ける気なんてサラサラなかった。

「………正直驚いちまったよ…まさかここまで強いとはなぁ。しょうがねぇや………テメェは特別だ。見せてやるよ俺の………」男はそう言って構えを取る。

【六根】

次の瞬間男の目が怪しく光る。

【千里眼】

千早はそれを見て一瞬驚いた顔をする。

しかし次の瞬間にはその顔には笑みが浮かんでいた…………しかしこれまでの冷徹な目とは訳が違った。

その目に浮かんでいたのは好奇心と子供のワクワク感を秘めた………………そんな狂気的な目だった。

「六根……!!使えたんですのね……!?……………最近どうも弱い吸血鬼にしか会わなかったもので……嬉しいですわ………!!」

「へっ。そのニヤけ顔もいつまで続くかねぇ………………さて……もう一回だ!!!」

男はそう言ってまた突っ込んだ。

「あら?また同じ動きですか?それは少し稚拙ではなくて?」

しかし千早は言葉とは裏腹にあることを考えていた。

(このレベルの戦闘者が意味もなく全く同じ動きをするとは思えませんわ。)

そして今度は振り下ろしではなく横薙ぎを一閃させる。

その狙いは奴の首。

しかし次の瞬間……!!

男の急激なスライディングによってそれは外されることになる!!

「えっ?」

千早は素っ頓狂な声を上げる。

斧を振り抜いてしまったその顔には先ほどまでの余裕はない。

「へっ、ようやく隙を見せたな?」

そう言った次の瞬間。

男の鋭い爪による横薙ぎが一閃。

その狙いは千早の両足だ。

しかし千早はジャンプ一番それを外した。

だがしかし………それはまずい。

「おいおい。空中に逃げちゃあ……その後がヤベェだろうよ!?」

そう言って男の手が指鉄砲の形になる。

そこに溜まるエネルギーは先ほどよりも大きい。

(まずいですわね………あまり手の内を晒したくはないのですが………致し方ありませんわ。)

そう言って千早はスカートの内側に仕込ませておいた投げナイフを一瞬で構え、投げる。

シュッ!!!

千早の手から放たれたものから空気を切り裂く音がする。

しかし男は首を少し傾げて避ける。

そしてそのまま男が霊力を放つ。

しかしそれは投げナイフによってズレる。

「残念。それは外せますわ。」

そして空中で身を翻し、千早は斧を最上段の構えにする。

そしてそのまま空中からの勢いのまま振り下ろす。

それは本来は意表を突く一撃なはずだった。

しかし男は振り下ろされる直前でバックステップで外す。

(これも外しますか……………しかし今の動き………まるで私が斧を振り下ろすのを知っているかのようでしたわね………………………奴の怪力が溜まっている場所は………目!!ということは………奴の六根はまさか……)

千早はニヤリと笑う。

「………………フェイントの横薙ぎ、見せたことのない投げナイフ、さらには不意打ちの空中からの振り下ろしをも避ける。まるで私がそうするのを知っていたかのような動きで………………貴方…………未来が視えるんでしょう?」それを聞いた男は大きく目を見開き千早を見つめる。

そして語り始めた。

「お前………すげぇな。俺の六根を初見で見抜いたのはテメェが初めてだよ。あぁ……そうだよ。俺の六根【千里眼】は俺の目視する対象の1秒先の未来が視えるって能力だ。」

それを聞いた千早はフッと笑って言う。

「まさか…………1秒先が視える程度で私のことを殺せるとお思いで?私も随分舐められたもので?」

しかしそれを聞いても男の顔から余裕は消えない。

「あぁ。舐めてるよ?」

それを聞いた千早の目に凍る様な殺気が宿る。

「殺す。」

そう言った次の瞬間には…………千早は真正面から斬り合いを始めた。

斧対爪………リーチの長さや、そこから来るスピードの差……本来は勝負にもならないはず……であった。

しかし男は千早の斧相手に拮抗し……いや、むしろ押し始めていた。

その原因はやはり…………千早の未来が見られていることにあった。

(チッ。こうも外されるものなんですのね。未来が視えている相手への攻撃は……!!)

そう先程から千早は見たこともないスピードで斧を振っていた。

しかしその全てのラインは男には視えているのだ。

それは当然のように外される。

どころか隙を見てその暇に鋭い爪を入れてくる。

そして千早の身体が徐々に削られる。

それと同じく爪に血が付着し始める。

そうこれまで無傷だった千早の身体が徐々に削られ始めているのだ。

(このままでは死にますわね。)

千早はそう判断し凄まじい速さのバックステップを見せる。

しかし男には当然その動きは視られている。

千早が引くと同時に男はさらに奥へと詰める。

それにより千早との距離はゼロになった。

そして男の爪が千早の腹へと伸びる。

そして血しぶきが舞う………………しかしそれは千早の物ではなく……………………男の物だった。

そう千早はこの状況になることを想定し、もう先に斧を男に振るっていた。

そのため男の指が3本ほど飛ぶ。

「マジかよ……ここまで強いんだな吸血鬼狩りってのは……」

男の顔には最早余裕なんて物は一切なかった。 

「私共は常に吸血鬼(貴方方)を狩るために日々弛まぬ鍛錬を積んでおりますから。」

しかし男は真っ直ぐな目で千早を見つめ、話し始めた。

「………………本当は【これ】を見せるつもりなんてなかったんだがよ……お前は【これ】を使わなきゃ確実に勝てねぇ……どころか俺が狩られちまう。」

そう言って男は千早の身体から滴り床に付着した血液へと指を伸ばし、指先に付けた。

そしてその血を舐め取る。

「…………何をしていらっしゃるので?そういうご趣味でもお有りで?」

千早の顔に明らかな嫌悪が浮かぶ。

「……俺の【千里眼】はよ。強えのは強えが…………秒数がたった1秒ってのがネックなんだよ…………だがな、俺は対象の血を舐め取ればその血液の量に合わせて秒数が伸びるんだよ。」

それを聞いた千早の顔は絶望……………………………ではなかった。

その顔にはこれから何かめんどくさいことが起こることに対しての反応にしか見えなかった。

「………はぁ。貴方本当に面倒のくさいお人ですわね?………今日は使う予定はなかったんですのよ?疲れますし………でも貴方には特別ですわ。」

それを聞いて男はわけがわからないという顔をする。

「あぁ……?テメェさっきから何i……」

男が喋り終わる前には千早はもう構えを取っていた。

【六根 俊足(スピードスター)

次の瞬間、千早の両足に黄色のオーラが纏われる。

(なんだ?ただの怪力じゃねぇな………黄色……………電撃系統の能力か?………だとしても足?)

男の頭には色々な可能性が絶えず湧き続ける。

しかし男もやはり戦闘者、その次にはもう迷いを消していた。

「へッ。テメェが何をしようと無駄だ!!!俺の千里眼はもう5秒先の未来が視えてる!!!ここからは何をしても避けられる一方的な殺戮ショーなんだよ!!!」

しかしそれを聞いても千早は顔色一つ変えずに斧を居合のように構え、足にグッと力を込める。

コーナーで差をつけろ(スニーカー)

「あぁ……?だから何をしてもm……ザン!!!………ボト。

男が喋り終える前にはもう首が飛んでいた。

なんと千早は一瞬で男との距離を詰め、男の首へと斧を振り抜いていた。

千早は首無しとなった男の遺体に対して喋りかける。

「貴方が5秒先を視るのであれば私は6秒、7秒先を行けば良いだけですわ。」

そして千早がドッと疲れた顔をする。

「さて………思ったよりも時間がかかってしまいましたわね。明日は久々のお休みですし………そうですわ……!明日は紅月リーダーと黎君と通勝先生とでお茶会でもしましょう。クッキーとお紅茶をご用意しておくとしましょう。フフ。明日が楽しみですわね。」

そう言いながら千早は年頃の女の子の顔をして教会を去った。

そして夜明けに教会に残ったのは30以上の首無し遺体のみであった。

どうも白湯です。

いかがでしたか?

こういうのは普通何回か分けて投稿するものなんでしょうが………プロローグ回は分けずに、一度の投稿で全て書くことにしました。

正直こういう作品は好きですけど書くサイドに回るのは初めてなもので………少し稚拙だったりおかしい描写もあるかもですが………気に入っていただけたならこれからどうぞよろしくお願いします。

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