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Heart of The Sunrise

作者: 漆原恭太郎

 これから家に帰り、たまった洗濯物や家事のことをぼんやり考えていた。なんとなく周りを眺める。楽しそうな男女、座席で眠りかけている疲れたサラリーマン、音楽を聴きながら窓の外をぼうっと眺めている若い男。


 ただ何となく過ぎていく毎日。こんな毎日を抜け出すには自分自身が変わらなければいけないと考えていた。一体どうすれば自分自身が変われるのかは分からなかった。昔何かの本に「人が変わる時は勇気を持つ時だ」と書いてあった。しかし何に対して勇気を持てばいいのか分からない。

 なんとなく過ぎていかない毎日というのはどんな生活なのか? 夢、希望、趣味、やりがいのある仕事そういったものを見つければ充実するのだろうか。夢や希望に向かって努力するという人は本当に好きで続けているのだろうか?ときどき疑問に思う。夢や希望にすがってないと生きるのは辛いから辻褄あわせのように見える。頑張っているふりをしているように見える。それでもこんな風にただなんとなく毎日を生きているよりはマシか……


 電車が駅に到着し、たくさんの人が改札に向かって歩き出していく。改札を抜けて駅前のスーパーに入る。

 野菜炒めでも作ろうと思い、玉葱、人参、キャベツを籠の中に入れた。肉類のコーナーへ向かう。一番安い豚肉のこま切れを籠に入れる。他に必要な物がないか考える。インスタントコーヒーはこないだ買った、醤油がなくなりそうだったはずだがまだ大丈夫だろう、後は……特にないなと思い、レジに向かう。

 レジには三十代前半くらいの、長めの黒髪で少しぽっちゃりした色白の女性店員がいた。

 「四百八十五円になります」

 財布から五百円玉を取り出し手渡そうとした、しかし女性店員は受取ろうとしない。蚊の鳴くような声で、下に置いて下さいと言っている。たしかにレジ台に小銭置き、小銭置きという名称なのか分からないが、レジ台の上に置いてあるちっちゃなゴム製のぶつぶつがいっぱい付いている物が置いてあったが、何の気なしに手渡ししようと思っただけだ。受取ろうとしないので仕方なく小銭置きに五百円玉を置く

 「十五円のお返しになります」

 お釣りを受取ろうと手を出したが、十センチくらい上からこちらの掌の上に小銭を落とした。そんなに汚らしい格好はしていないつもりだ、むしろ身なりには気を使っている。彼女は潔癖症なのかもしれない。しかし……スーパーのレジ打ちという職業柄今回のようなケースは少なくないはずだ。個人的に触れられたくないという理由だったとしても仕事を変えるべきだ。彼女は毎日が充実しているだろうか? 夢や、希望はあるのだろうか?


 帰り道、お気に入りの歌を口ずさみながら野菜炒めはラー油を入れて、仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつけて少し中華風にしようと思った。

 

タイトルは特に意味ありません・・・

まったく思い浮かばなかったので好きな曲のタイトルをつけました。


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― 新着の感想 ―
[一言] この掌編のように、主語のない、つまり「私」「ぼく」がしゃしゃり出ない、淡々とした心境小説っぽい作品が好きです。 拙作「トホホ日記哲学風味」でも、極力、「私」を出さないようにしています。苦し…
2010/04/12 16:37 退会済み
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