3.カイといばら姫
6つのコロニーに囲まれたコントロールセンターには、
コロニーの環境を管理する、大切なコンピューターが集まっている。
ここには、地球との通信や、月の住人の管理などを行っている【ガーバメント】がある。
今はほとんど機能していないが、
ガーバメントの上層階には、今も地球からの応答を待つ科学者の数人が、交替で勤務しているらしい。
会ったことはないけど、カイはその人達と仲が良い。
ガーバメントは地上10階、地下は11階まであって、地球から運んできた非常用の食料や資材がぎっしりあったらしいのだけど、今は空っぽ。
配布出来るものはし尽くしたらしい。
なので、無駄な電力を抑えるために、今は真っ暗だ。
その地下11階に、
鍵穴のない、
何をしても開かない、空かずの扉がある。
その扉の前に、
毎日花を届け、
扉の前で、
昨日1日の話をする。
それが、カイの日課。
空かずの扉の向こうには、カイを作った天才科学者が眠っているらしい。
【コールドスリープ】
自ら、実験段階だった冷凍睡眠装置に入り、
彼を作った科学者は
長い眠りについてしまったと、カイは言っていた。
私たちは、ガーバメントの真っ暗な階段を、
持ってきたハンディライトの明かりを頼りに、ひたすら降りる。
カイと一緒に何度も降りているから、慣れてる。
ちょっとひんやりしてきたら、もうすぐだ。
空かずの扉から僅かに滲み出る冷気で、地下11階はひどく冷える。
「カイ!」
地下11階だ。
ちょっとした体育館くらいの広さはある真っ暗な空間を、駆け足で駆け抜ける。
「うん?」
ガシャン。
カイが振り替える音がする。
カイが話す前に、私は大好きなカイに抱きついた。
「カイ、おはよう」
「輝、おはよう。大和も一緒だね。」
カイは、そう言いながら私の頭を撫でてくれる。
「ああ。おはよう、カイ。いばら姫は変わりない?」
兄ちゃんも、送れて扉の前にやって来た。
「今日も、返事はないなあ。」
「そっか。」
50年近く眠り続けている天才科学者はとても美しい女性だったらしく、童話の眠り続けるお姫様から名前を頂戴して、私達は「いばら姫」と呼んでいる。
カイは、いばら姫のお世話係として作られたアンドロイドで、食事を作ったり掃除したり、時には話し相手をしたり。とにかく、いばら姫が一番大切とインプットされているのだそうだ。
いつ起きるのかもわからないご主人様の目覚めを、
ひたすらに待ち焦がれている。
っていうか、
もしかして、二度と起きないかもしれないご主人を
カイは、ただ、待ち続けている。
「じゃあ、また夕方にね。」
「OK。」
私たちは、カイと別れ
第2コロニーに向かうことにする。
第2コロニーにまでは、コントロールセンターからの連絡通路を使って20分だ。 かなりの距離があるけど、高速オートウォークがあるので20分歩けば到着する。
連絡通路を移動中、第2コロニー側から知った顔が歩いてきた。
「よお!」
兄ちゃんは、
左手をあげて、オートウォークを降りる。
私も続いてピョンと飛び降りると、
あちらも降りて近づいてきた。
「グッモーニン!何、買い物?」
いかにもチャラそうな雰囲気のこの男は、
兄ちゃんの友達。
まあ、ズバリ盗みの仲間だ。
肩まで届く髪は、栗色でサラサラ。
いつも眉を綺麗に整えてる。
近づいてくるなり、私の頭をくしゃくしゃになでてくる。
「てる~!!」
「…おはよ、たま。」
いつものことだから、もう逆らわない。
「ちょっとスーパーまで行くとこ。お前、こんな時間にここにいるってことは…酒か?」
兄ちゃんがそう聞くと、
たまはチラッと私を見てから
一呼吸置いて
「まあ、そんなとこ!」
って笑った。
ケイとはそこで別れ、
いざスーパーマーケットへ。
入り口が近くなると、
あっという間に、第2コロニーに到着だ。




