長靴を履くまでもなかった猫
タイトル通り、長靴を履いた猫のパロディです。
大好きな童話のパロで何か書こうと思ったらなんかよくわからんことになってしまいました。それだけのお話です。
むかしむかし、ある所に年老いた農夫と三人の息子がいました。
農夫は寿命で亡くなる間際に、三人の息子に自分のわずかな資産を分け与えました。
長男には仕事場でもあり住処でもある水車小屋を。
次男には飼っているロバを。
そして三男には、いつの間にか小屋に住み着いた猫を。
「水車小屋があれば、粉ひき屋としてやっていけるだろう」
長男は父と同じく、粉ひきで生計を立てていくことにしました。
「ロバは荷運びに役立つし、そんなに悪くはないな」
次男はしばらく考えた後、ロバを売って金に換えることにしました。
「カワイイネッ……カワイイネッネコチャン……これからも一緒にいられるなんて俺は幸せ者だよ……はーネコチャン」
三男は日頃から世話をしていた猫を貰えることになって、大喜びしていました。
それから、次男と三男は家を出て働き口を探すことにしました。
ロバを売ってまとまった金を手にした次男は、馬車に乗って街へ仕事を探しに行きました。
一方そんな金もない三男は、とりあえず近くの村で農夫の手伝いを始めました。
「ネコチャンのために働くぞ」
三男は真面目に働き、やがて少しばかり金が貯まると、その金で斧を買って木こりへと転向しました。
「ネコチャンのためならこのくらい屁でもねえや」
毎日毎日身を粉にして一生懸命働く三男に、ある日猫は言いました。
「ご主人さま、そんなに必死に働かなくてもわたしがなんとかしていい暮らしをさせてあげますよ」
「いやいや、いいんだ。俺にはこのくらいの暮らしが身の丈に合ってるからな。それにネコチャンさえいればどんな仕事だって頑張れるさ」
その言葉を聞いて、猫は己の主人はなんと堅実で無欲な人なのだろうと胸を打たれました。
「わかりました。では今のご主人さまの身の丈に合った素敵な贈り物を探してきます。少し待っていてくださいね」
「ネコチャンさえいれば俺は何もいらないよ」
「まあまあ、そう言わずに」
それから猫はしばらく家を空け、帰ってきた時にはひとりの女性を連れていました。
「私、猫が大好きなの。こんなに賢くてかわいくて最高のネコチャンと一緒に暮らせるならあなたのお嫁さんになるわ」
「君も猫好きなのか?」
「そうよ。猫を一匹飼ってるの。連れてきているのだけど、一緒に飼ってもいいかしら?」
「もちろんだとも。そちらのネコチャンも吸わせてください」
こうして三男は妻を迎え、ついでに猫も女性の連れてきた猫と良い仲になりました。
やがて三男は子宝に恵まれ、かわいい子供と子猫に囲まれて末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。