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第42話 久々の通学

「説明は聞いたけど……本当に大丈夫なの?戸籍とか全然大丈夫じゃないと思うんだけど……」


「それはまあ、昨日の時点でなんとかしておきましたよ」


 翌日。学校へ行く前、兄妹もとい姉妹はいつもの調子で会話していた。


 この世界には法を敷く神がいない。

 いても自然神程度の存在で、それも地球にはいないか封印されている。

 だから、ノエルはこの地球一帯の地域を己の法で包みこんだ。

 やっていることは神の劣化。

 一つの宇宙全てを包み込む神に対して、惑星一帯を包み込むだけという超規模縮小。

 敷いている法も単純かつ効果も弱い。


 しかし、間違いなく神の御業だった。


 ノエルがこの星に敷いた法は、『全存在』が己のことをかつての自分、『近衛このえゆう』であると認識するというものだ。

 それは生命にとどまらない。機械の類や空気に至るまでの話だった。


 既に認識しており、なおかつノエル自身が許している家族四人以外は誰も逃れることはできない。


 ……別にここまで大掛かりなことをする必要はないのだ。

 己の容姿を『近衛憂』の姿に誤認させるだけで済むのだから。

 権能を使わずとも魔法でもそれくらいはできる。

 それなり以上の実力の持ち主には簡単に見破られてしまうから、この世界の実力者がどんなものかいまいちわかっていない今だとやや心許ないが、まず大丈夫だろう。

 

 だが、それではつまらない。

 己を誇りたいからそんなつまらないことはするつもりはない。


 近衛憂自体、とびっきりの美形ではあるがそんな程度では面白くないから。

 『今の己』の容姿や存在を、かつて憎んだこの世界で誇りたいのだ。


「そう。まあ、兄貴ならなんとかできるわよね」


 風花は思考停止で「兄貴がやることだから」と納得していた。

 これは異能云々は一切関係ない。今まで築いてきた信頼というか信奉によるものだ。


「しかし、よくその学生服着れたわね。サイズ合わなかったんじゃない?男子用だしブカブカになるものかと……。それに、おっぱいに関しては高校生サイズじゃん」


「そこは魔法でちょちょちょいっと……ですね」


「しかし……うわぁ。これはこれで似合うのが腹立つわね。兄貴と並びたくないんだけど。比べられちゃうじゃん」


「お前だって見た目だけはとびっきり可愛いじゃないですか。別にそう悲観することもないのでは?」


「……っ。口説き文句なんて言わないでよ」


 ノエルからするとちょっとした褒め言葉のつもりだったのだが、思いっきり重く受け止められてしまっていた。


「(兄貴からとびっきり可愛いって言われちゃった!はぁ〜最高!もう死んでも悔いはないわ!……いや、駄目ね。まだ死ぬわけには行かないわ。せめて一度くらいは心と体を好きにしてからね。せめて体だけ……睡眠薬とか手に入らないかしら。あーでも、身体能力とかイカれてるんだっけ。しかも魔法も使えるし……でも薬なら、薬ならなんとかしてくれる……!!いやでも、兄貴なら前の体の時点て睡眠薬なんてモノ軽く無効化しそうじゃない?……やっぱ兄貴って凄い!心底ムカついちゃうわ。大好きっ!)」


 その超絶怒涛のブラコンぶりに引きながらも、準備を整えて登校することにした。



「いつもより見られているわね。写真も撮られているわ。……気に入らない」


 二人は学年は一つ違えど同じ中学のため、一緒に登校していた。

 普段は違った。だけど、認識阻害のほうがどうなっているのかが気になったから、風花がついてきていた。


 中学は家から近い場所にあった。だけど、その間すれ違う街の住人にスマホカメラで写真を撮られていた。

 普段からこういう事はあった。もともと、ふたりとも飛び抜けた美形だから。

 だけど、今のノエルは飛び抜けた美形なんていう言葉では言い表せない、『呪いのような美貌』を持っている。

 そんな子が男子学生服を着ていたら……気になるだろう。

 ご近所の、『近衛憂』を知っている人々も例外ではない。

 だから、撮影会のようになりかけていた。


 それも乗り越え、学校へと歩いていく。


「(知り合いにこういう風に見られるのも、悪くはないですね)」


 生徒たちは思い描いていた『近衛憂』と今近くにいる『近衛憂』に言葉にできないギャップを感じながら、その美貌に見惚れていた。


 ……が、どちらも共にありえないほどに超越していたので、ギャップはごく小さなものになっていた。

 違和感は薄紙一枚程度だろう。

 小動物から見た湖と大海は区別がつかない。どちらも彼らにとっては巨大すぎる存在だ。そういうことなのだろう。


「その権能……?っての、とんでもないわね。誰も違和感なんて抱いてないように見えるわ。あんまり悪用しないようにね?たとえば、女の子を洗脳して……ゴニョゴニョとか」


「しませんよ、そんなこと。俺をなんだと思ってるんですか?」


「まあ、冗談よ。兄貴に限ってそんなことはしないのはわかっているわ。無駄に純情だもんね」


「最近はそうでもないんですけどね」


「……?なんか凄い嫌な予感がするんだけど」


 そんな会話を交わしてそれぞれ分かれていく。


 クラスに入り、かつて座っていた席にさっさと座る。


「(あの女の子……なんか、俺のことを睨んでいませんか?)」


 一人だけ妙な目で見てくる女子がいた。

 気の強そうな金髪の少女だった。

 しかし、何かを仕掛けてくる気配もない。そもそも、地球に存在する攻撃手段ではノエルを傷つけることなどまず不可能だろうから取るに足らない存在だった。


 しかし、記憶に引っかかりがあった。


「(……あれは、なるほど)」


 よく思い出してみると、このハイレベルな中学において学年二位が定位置の天才少女だった。

 あの少女にいつか負ける。頂点の座を追い落とされる、そう思って、怖くて怖くて狂いかけた日々が想起される。


「(いや、しかし……なにかが違いますね。ライバル視する目ではない。まるで怨敵を目の前にしたような……ああ、なるほど。たしかに周囲の方々とはいろいろな意味で質が違う。そういうからくりでしたか)」


 一人納得し、学校生活を久しぶりに送ることになった。

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