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第19話 アーリデの決意・上の巻

ヒロインたちのお話を書いていきます。

それぞれ二話ずつ、バアルだけ一話となります。

バアル、魔王、メタトロン、アーリデに加えて原作主人公(♀)を含めたあと二人がヒロインになる予定です。

今後増える可能性はありますが、この六人は確定です。

あんまり増やしすぎてもアレですのでできるだけ増やさないように考えています。

まあ六人の時点で多いのですが。


「この方こそが我が師範となる方だ。あまり無礼は言うなよ。聞いているとは思うが、今日より魔軍五芒星の一人として働いてもらうことになっている」


 陛下がそう言って紹介した少女がいた。

 あまりにも眩しいほどに輝く美貌を持っている少女だった。

 最初は陛下がこの少女に誑かされ、狂してしまったのかと思った。


 だって、あまりにも美しすぎたから。

 嫉妬すら覚えないほどのありえない美しさを持つメタトロン殿でも譲らざるを得ないかもしれないほどの美姫。これほどの美しさを持つならば、同じ女である陛下でも堕ちてしまうかもしれない。そう思った。

 陛下は浮世離れした雰囲気を持つお方だったから、異性だろうが同性だろうが、愛欲に溺れるようなことはないと思っていたが……これほどの高待遇を、古の覇王を自称する詐欺師に与えるとなれば正気とは思えなかった。


 しかし同時に思う。この少女はどこか陛下に似ている、と。

 強いて言うなら雰囲気だろうか。この世すべてを俯瞰しているかのような眼と、圧倒的な存在感。

 美貌による印象だけではないというのは、すぐに気づいた。


 となれば、誑かされただけではないとも思えてくる。


 それとは別に、良くわからない存在が私と同じ立場に割り込んでくるのは気に入らなかった。

 だから、陛下の前で不満を漏らした。誰かが言わねばならないことだから、我らの中では直情傾向にある私はぴったりだと思ったのもある。

 

 しかし、どうしてもあの少女のことは気になってしまった。唐突に立場を与えられては困ることもあるだろう。

 だから、陛下が紡いだ言葉に不承不承にでも納得することで、最高幹部である私が一応は納得したという体を取ることで守ることにした。

 

 どちらにせよ、一度不満を漏らしてしまったならば、納めどころは必要だ。いつまでも文句を言っていれば、不興を買って粛正されるかもしれない。

 彼女を守るという意図はその時点では強いものではなかった。……そう、思っていたはずなんだがな。


 それからすぐに、彼女に用意された邸宅へと訪問した。


 なぜか、彼女自身が応対してくれたな。

 取次もしていないのにいきなり訪問した者に対してそんな不用心でやっていけるのか?そう不安に思った。

 それと同時に、実は隠しているだけで尋常でない力を持っているからここまで余裕なのではないか?出世争いする相手を消すためにこのような出迎えをしたのではないか?そう思って緊張してしまった。普段の私ならもっと豪胆にいけたはずだが、彼女の持つ雰囲気に呑まれてしまっていたようだ。


 それを自覚し、相手の目を見ることにした。目は口ほどに物言う……誰が言った言葉だったかな。

 だが、広まるだけあって、的を射た言葉だとも思っていた。相手の目を見ればどんな人かを知れることもある。私は特段察しが良い方ではないが、目の濁っていると感じたものは、あとから何かをやらかすことも多かったと思う。

 だから、見つめた。


 ――瞬間、高揚と寒気が全身を支配した。

 高揚は……アレだ。あまりにも整った顔の造形に思わず見とれてしまったのと、澄んだ蒼の瞳が美しすぎたからだ。

 そして同時に、心臓が凍ったような錯覚に陥った。

 ……私のすべてを見通しているように見えたから。自分でも知り得ない、知りたくないことまで知られたように思ったから。怖かったのだ。理外の怪物なのだとその時は理解した気になっていた。


 その後、客間に招かれて歓談をした。

 紅茶を飲む様は、まさに容姿の通り深窓の令嬢と言った風貌でとても似合っていた。

 ……私ではこうは行かないな。そう思いつつも、問われたので本題を切り出した。


 内容は、今すぐ職を辞したほうが良いという話だった。

 たしかにこの少女は怪物なのだろうが、感じる力は大したものではなかった。

 そこらの兵士よりは流石にずっと強いが、四天王……もとい五芒星に加えられるほどの力とは思えない。いや、明らかに五段階は格落ちに思えた。


 権力欲に取り憑かれているのかもしれないが、それは身のためではない。そう思って忠告したのだが……彼女はそう遠くないうちに力を取り戻せると言った。

 そして、それまでの間は身を隠すなんて言っていた。

 唖然とした。

 そんな事をしたらただでは済まないだろう。兵士も誰も従わなくなる。


 だけど、彼女は凄まじいほどの自信を胸に秘めていた。

 順番が前後しただけ。この問題によって巻き起こされるかもしれない騒動を、大した問題だとは思っていなかった。

 今思えば魔界の統一のために働くことしか目になかった私とは、見ている場所が違ったんだろう。


 ……そして、なぜか私の容姿を褒められた。

 可愛らしい、と。


 そんな事を言われたのは初めてだった。

 たしかに、己の容姿が優れていることはなんとなくわかっていたが、誰も実際に褒めてくれる人はいなかった。

 自意識過剰なのではないかと自己嫌悪したし、武人としての不純物だと思ってそう思う心を嘆いたりもした。


 誰かに褒めてもらいたかったのは事実だ。褒めて貰える機会があれば、とても嬉しかっただろう。

 だが、ここまで心を揺さぶられることはなかっただろうから。

 すべてを見通すかのようなその瞳から見て、美しいと、そう言われたことが嬉しかった。

 本心から出た言葉だともわかった。嘘くさいところはなかったから。……もっとも、私程度の眼では彼女の演技は見抜けないのだろうがな。


 そして動揺し……彼女に強い興味を持った。

 その直後、ノエルが愛らしく笑ったところを見て心を揺さぶられたりもしたが、その時点ではまだ単なる『強い興味』と『それなりの好感』に過ぎなかったはずだ。

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