第3話 突撃! 六花高校文化祭③ ソフィーのお使い
「おや? そんな驚いた顔をしてどうしたんだい? 僕の有能さに驚いて声も出ないんだね! できる男はやっぱり違うねー」
「何が『できる男』ですか! なんでいつも重要なことを勝手に決めているんですか?」
学園長の言葉を聞いて真っ先に我に返ったリーゼが怒鳴り声をあげながら詰め寄っていく。
「リーゼちゃん、顔を真っ赤にしてどうしたのかな? せっかく交流ができる機会を設けたんだからもっと喜んでくれてもいいんだよ?」
「ありがとうございます。その前にいつも相談してくださいって言っていますよね?」
「これから相談しようとしたんじゃないか、日程とか相手の都合とかあるからさ」
「そうじゃない! だいたい学園長はいつも……ん?」
さらに学園長に詰め寄ろうとした時、リーゼは右手を引っ張られる感覚を覚える。
「リーゼさん、落ち着きませんか? まずは学園長のお話を聞いてみましょう」
「ソフィーちゃんが言うなら仕方ないわね」
リーゼの右手を握りながら真っすぐ見つめるソフィー。真剣な眼差しに心を打ち抜かれ、笑顔で頭を撫でる。
「うふふ、リーゼさんが笑顔になってよかった!」
嬉しそうな笑顔を見せるソフィー。リーゼの顔がだらしなく歪み始めようとした時、背後から氷の様に凍てつく小声が聞こえた。
「……リーゼ、今後の予定を確認したいから大人しくしていてね」
「わかって……大人しくしています」
音もなく背後に現れた言乃花。有無を言わさぬ無言の圧力にソフィーの頭に手を置いたまま凍りつくリーゼ。
「リーゼさん、どうかしましたか?」
「な、何でもないのよ。一緒に学園長のお話を聞きましょうね」
「はい!」
笑顔で返事をするソフィーとは対照的に引きつった笑顔のリーゼ。その様子に言乃花は小さく息を吐き、学園長へ向き直ると話しかける。
「学園長、確認したいことがあります。順番に聞いていってもよろしいでしょうか?」
「かまわないよ。立ち話もなんだからソファーに座ってゆっくり話そうか。来客の後だから片付けが終わっていないけどね」
「かまいません。それではみんな中に入ってゆっくり話しましょう」
学園長に促され、全員が室内へ入っていく。そのとき、何かを感じ取ったレイスが素早く室内を見渡す。
(ふむ……魔力ではない不思議な力の残滓を感じる……学園長の言っていたことは間違いないっすね)
部屋の中央に設置されたソファーに全員が座る。
「テーブルの上に置いてあるカップは気にしないでくれたまえ。では何から話そうか?」
学園長が全員を見渡すと笑顔で問いかける。
「六花高校さんの文化祭にお邪魔する日程を教えて頂けますか?」
「そうだね、訪問日は明後日の金曜日。時間は午前九時に学園長室へ来てもらいたい」
学園長の指示に無言で七人が頷くと言乃花が質問を続ける。
「わかりました。それでは今回の交流会に至った経緯を教えて頂けないでしょうか?」
「面白い試みが行われるという噂を小耳に挟んでね、一人でランチはさみしいなと思っていたら、午前中のお手伝いを終えたソフィーくんとバッタリ会ってね、一緒にランチを食べに行ったんだよ。そしたら六花高校の皆さんが展示会の設営をされていて、話を聞いているうちに面白そうだから交流会をしようという話になったんだ」
(((そんな都合のいい話があるか!)))
目を輝かせて話に聞き入っているメイとソフィー。対照的に疑いの眼差しを向ける四人。
「そうそう、ソフィーくんがすごく仲良くなったことも大きいね」
「はい! すごく優しいお姉さんたちでたくさんお話しました!」
太陽のように輝く笑顔で話すソフィー。
「はあ、わかりました。にわかには信じがたい部分も多々ありますが……」
「細かいことを気にしてはダメだよ!」
「「「アンタが言うな!」」」
リーゼ、言乃花、冬夜の叫び声が学園長室に響き渡る。
「さすがは学園長! 異文化交流とはとても興味深い」
「うんうん、学園ではお目にかかれない機械もあるかもしれないからね。楽しんできたまえ」
「もちろんだ! プロフェッサー冥利に尽きる!」
「はいはい、そのくらいにしておきましょうね。学園長、手土産とかはどうしますか?」
芹澤と学園長の話に割って入ったリーゼが問いかける。
「当日までに何か考えておくよ。それでは明後日は時間に遅れないように頼むよ」
「「「はい!」」」
全員が声を揃えて返事をすると話し合いはお開きとなった。冬夜たちが退出しようとした時、学園長がソフィーに声をかける。
「そうだ、ソフィーくんに頼みたいことがあるから残ってもらってもいいかな?」
「わかりました。メイ、先に戻っていてね」
「うん、ソフィーも頑張ってね」
笑顔で手を振りながらメイたちを見送る。そして扉が閉まる音がすると学園長が話しかける。
「さて、これから話すことはソフィーくんにしか頼めないことなんだ」
片膝をついてソフィーと目線を合わせる学園長。左手を上着のポケットに入れると薄いピンク色をしたカードを取り出し、ソフィーに手渡す。
「学園長? これは何でしょうか?」
「ソフィーくん専用の次元回廊カードだよ。一度行ったことのある世界を自由に行き来できるようになるんだ」
「ほんとですか?」
「ただし、一日一往復だけだからね。失くさないように気を付けてね」
「ありがとうございます!」
カードを頭の上に掲げると嬉しそうに飛び跳ねるソフィー。
「喜んでくれて何よりだよ。さっそくそのカードを使ってお願いしたいことがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「この間一緒に行った『呉café』さんでみんなにおやつを買ってきてほしいんだ。とっても美味しいお菓子があると聞いてね。頼めるかな?」
「はい! 行ってきます! でもどうやって使えばよいのか……」
目を輝かせて返事をしたソフィーだったが、少し悩んだ表情になる。
「簡単だよ。カードを掲げて『次元回廊開け』と言えばいいんだ。さっそくやってみよう」
「次元回廊開け!」
ソフィーがカードを掲げて声をあげると大きな鏡が出現した。
「うまくいったようだね。おつかいよろしく! 楽しんでおいでよ」
「はい! 行ってきます!」
笑顔で回廊へ歩き出すソフィー。しばらくすると霧散するように消える回廊の鏡。
「無事に到着できたみたいだね。さて、ソフィーくんがどんな交流を広げていくのか楽しみだな」
誰もいなくなった室内で呟く学園長。
この後、六花高校だけでなくある三姉妹も登場し、一大騒動に発展するとは誰も予想していなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
箱庭初のスピンオフ作品でまだまだ読みづらい部分もあるかと思いますが、見守っていただければと思います。
現在、『呉cafe』さんで開催中のイラスト展『六花高校文化祭』さんとのコラボとなります。
箱庭メンバーも一緒にイラスト展を盛り上げていけたらと思います!
是非X(旧Twitter)で「#六花高校文化祭」と検索してみてください!
呉cafeさんのご紹介はこちらになります!
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安八郡神戸町にある元呉服屋さんを改装したとっても素敵な古民家カフェです!
最後に――【神崎からのお願い】
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