見送り失敗?!
中学2年生の14才が書いています。
何かと至らない点があると思いますが、読んでもらえると嬉しいです。
「ーー、ー兄、渚兄!」
ふっと意識が現在に戻る。
「ーー湊?」
過去の記憶を遡っていた渚冬の目の前に立っていたのは、桜が見分けられるか不安そうにしていて、肝心なときに何処かへ行っていて、ここにいなくて桜を見送れなかった渚冬の弟、湊である。
「こら。何処に行っていたんだい?」
渚冬の額を軽く指で弾く。
「いやぁ、ほんまにごめんな!!
知人から火事があったから何とかしてくれって急に呼び出されて……」
「ーー火事、か」
手を合わせて頭を下げる湊に、渚冬は目を細める。
湊に対して、ではない。火事、という単語に対してだ。
「俺、ここにいなアカンって言うたんやけど、聞いてくれへんかったねん……」
今度は膝を付き土下座をしだす湊に渚冬は思わずパニックになる。
「う、え、い、いや、別にそこまでしなくても……」
「渚兄にあんなに自信満々で任せときやって言い張っといて、渚兄の簡単な任務すらこなせへんくて……」
「そ、そんなに謝ることではないよ。
それに、湊は火事を何とかすることを優先してくれた。湊のおかげで助かった命があるはずだ。」
「っ……な、渚兄っ……!」
面手を上げ、渚冬の方を涙目で見つめる湊の目の前にしゃがみこんで頭を撫でる。
「やっぱり湊はお兄ちゃんの弟だ。誇りに思うよ。」
「っ、渚兄ーーーーっ!」
「うぉ、っとっと、」
すごい勢いで抱きつかれて思わず後ろによろけかける。
「俺っ、渚兄に誇りに思ってもらって、渚兄が俺の事を担ぎながら自慢しても恥ずかしくないぐらいすごい人になるで!
それまで待っててな?!」
「えーっと、それは違う意味で恥ずかしいような…?」
抱きついてきた湊の背中を撫でながら半分困惑しながら苦笑する。
しかしその声は湊には届かず、
「毎日神主としての役割、絶対に果たして、渚兄と同じくらい凄くなるんや!!
桜も、俺がそんなふうになれると思わへん?!」
パッと稲荷ぐるみが並べてある方に振り向く湊に渚冬は罪悪感を感じる。
「……桜なら、さっき買われていったよ……」
「は?!嘘やん?!」
愕然と目を見開き稲荷ぐるみが売られている台へと駆け寄る。
「1、2、3,4………ほんまや!
1つ足りへん!この足りない1つが桜やったんか!?」
そのままその場で膝をついてしまう。
「え、俺10分くらいしかここ開けてへんで……?
しかも最初に桜売れるもんなん…?」
「えーっと、運が悪かった、としか言いようが………」
再び膝をつき絶望している湊の背中をさする。
「で、でも大丈夫だ。
良い人に貰われていったのを見ていたからね。」
「………ほんまか?」
「ああ、お兄ちゃんが保証する。」
その様子に少し安堵したのか、
「そうだったんやな…
なら、少し安心やな………」
と嘆息し、何とかといった様子で立ち上がる。
どうやら心の傷はかなり深いらしい。
「せやったんか……桜も…ついに、“表”の世界デビュー……、俺は…」
一度言葉を切り、目をつむる。
「やっぱし見送りしたかったで……」
遠くを見つめて心ここにあらずといった様子になる湊の背中をひたすら撫でていた。