話し合いは“時雨夜”にて
中学2年生の14歳が書いています。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
「えっ!渚兄、私ぬいぐるみになるの?!」
「あぁ、うまく変身して人間の世界に慣れてほしい。」
「ふぇ〜〜ちゃんとうまくできるかな……?」
これはほんの数刻前、“時雨夜”で交わされた、渚冬とその妹である桜との会話だ。
不安そうな妹の姿に渚冬は薄っすらと微笑む。
妹の成長を間近で見ることは、時に不安になることもあるが、喜ばしさのほうが勝つ。
妹には、いつか立派な神になってもらわねばならない。
「大丈夫だ。私も、ーーお兄ちゃんも、初めは怖かったけど全部うまく行ったからね。」
「ほんとに……?」
涙目で疑う妹の頭をそっと撫で、本当だよ、と優しく笑いかける。
「わ、私も、人間の世界にちゃんと、うまく慣れれたら、渚兄みたいに、耳、おっきくなる?」
「勿論だよ。それだけじゃないよ。その尻尾ももっと大きく、フワフワになって……」
「ホント?!私、ぜーったい頑張る!!」
自分のまだ小さな狐の耳と、渚冬の大きな狐の耳を交互に指差し聞く桜に少しおどけた口調で返すと桜はピョンピョンとその場で飛び跳ねた。
「おー、せやな。桜なら絶対大丈夫やんな?
何せ、俺の自慢の妹やもんな?」
「………湊、いつの間に……」
いつの間にか渚冬の横に腕を組んで立っていた渚冬3つ下の弟、湊を見るなり、桜は元気に頷く。
「うんっ!湊兄と渚兄が応援してくれてるから、私すーーっごい頑張る!」
「おーおー、やる気満々やなぁ!ええ事やんな〜」
うんうんと頷く湊に渚冬は先程の質問を繰り返す。
「いつからそこにいたんだい?」
「たった今来たばっかやで。
……俺も気配消すんうまくなってきたんちゃう?」
自信ありげに片目を瞑って見せるその姿に渚冬は微笑して、
「……いや、まだまだだな。」
「ええ?!辛辣やんな?!もうちょっと褒めてくれてもええんちゃう?!」
微笑する渚冬のその表情と文字通り辛口な言葉に湊は落胆を隠せない。
が、湊はめげなかった。
「いや、でもな?俺な、ちゃんとうまぁく人間の姿になれるようになったんやで?」
証明とばかりに、目の前で人間の姿に一瞬で変身して見せる湊に渚冬は微かに目を見開く。
そして、今度こそお褒めの言葉をかけるかと思いきや、
「よし。なら明日から桐ヶ谷神社でお兄ちゃんと一緒に神主として“表”に出て務めるぞ。」
「いや褒めてくれないんかーい!!」
勢い良く突っ込みが入るが、渚冬は平然と小首をかしげる。
「いやいや、ほんまかいな?!
渚兄なんかもう知らへんで?!
……俺も頑張ったんやけどなぁ……」
拗ねる弟を見て渚冬はニヤッと笑う。
少し意地悪をしてしまった。
腕組みをしてそっぽを向いた弟の頭に手を置く。
「ふふっ、良く頑張ったな。
偉いぞ。毎日努力してたのも、お兄ちゃんは見てたよ。」
「な、渚兄……!!」
目をうるうるさせる湊に渚冬だけでなく桜も笑う。
「ふふ、おにーちゃん達なかよしー!!
でもでも、湊兄が変身できたなら桜もできるもん!」
「え、何か俺舐められてる気ぃするんやけど気のせいなんかな?」
「えー?
だって湊兄に出来て桜に出来ないのおかしーじゃーん」
「やっぱ舐められてるやんな?!」
何でやねん、と鼻息を荒くし憤慨する湊と笑う桜に平和を実感する。