守護者への決断と帰路
中学2年生の14歳が書いています。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
その様子を微笑ましげに見守っていた渚冬は笑いながら口を開く。
「混乱するよね。
いきなり二人にこんなこと頼んで悪いんだけど……」
苦笑しながら渚冬は続ける。
「僕達三兄弟は、“時雨夜”っていう神が暮らす世界と、この街、両方の“守護者”なんだ。」
「………守護者……」
圧倒的神々しさを放つネーミングに葵は思わず復唱する。
「そう。僕は、冬の守護者。」
桜を、指差す。
「桜は、春の守護者。」
桜が抱きついたまま片手だけ離して敬礼を決める。
湊を、指差す。
「湊は、夏の守護者。」
湊も敬礼を決めてみせる。
何ともノリの良い兄弟だ。
「……とまぁ、こんな感じで、春夏秋冬ごとに僕ら三兄弟で守っているわけなんだけど……」
「……私の好きな“秋”がないわ……」
瑠依がポツリと呟く。
その一言に渚冬、湊、桜が各々に頷く。
「そう。“秋の守護者”の座が空席なんだ。だから、」
渚冬は真剣な眼差しで葵と瑠依をまっすぐ見つめる。
「二人に、その座についてほしい。二人に秋を守って欲しいんだ。」
「まぁ!守護者なんて素敵じゃな………」
「うぇぇぇぇ?!
そんなこと言われましても……
引き受けたいのは山々ですが渚冬さんたちみたいに特殊な能力も持っていませんし……」
どこまでも能天気な姉とは対象的に、葵は完全にテンパっていた。
そんな葵に、渚冬は柔和な微笑みを浮かべる。
「“特殊な能力”ならここにあるよ」
渚冬の左手、そこに淡いオレンジ色の燐光が浮かぶ。
「ふ、ふわぁ……」
「綺麗……」
神秘的な光景に葵瑠依が圧倒される。
「この燐光を君たちの体内に宿せば、二人はいわゆる“特殊な能力”が使えるようになるよ。」
「せや!俺たちみたいになれるで!」
「ブワーッってやってドドドドー!ってできるよー!」
渚冬の説明に便乗する湊と桜。
その二人はまるで人間の兄弟を見ているようだった。
“神様”という存在は遠いようで、案外近くにいたのだと強く実感する。そして、その神様がもつ特殊な能力も、案外近くにどころか、今、目の前に。
しかし、今だに自分に“守護者”なんて大役が務まるのかは分からない。
姉は天然過ぎてよくわかっていないので乗り気だが、葵は色々なリスクやその他諸々のことを考えていた。
姉よりもしっかりした妹の図である。
考えあぐねている葵の様子を見て渚冬は、
「ふふっ、決めるのは今じゃなくても全然大丈夫だよ。」
「えっ…?」
思わぬ言葉に葵は思わず素っ頓狂な声を上げる。
「秋の守護者の役割は、空席といえども、今は僕が担ってるんだ。一人二役、ということでね。」
「一人二役なんてすごいわぁ……
私なんて一人一役ですらまともにできないもの……」
「渚冬さん、私が言うことじゃないかもしれないですけど、こんなこと言ってる人に守護者任せちゃって大丈夫なんですか?」
「いや、俺もちょぉっとそれは気になったで?
でも、一人じゃできへんことも二人なら出来ること、あるやろ?」
「たしかにー!桜も、一人じゃ使えない技、いーっぱいある!」
二人の言葉に葵は目を見開いた。
一人が完璧である必要はない。
二人で完璧を作っていけばいいのだ。
……つまり、これで姉の天然すぎ問題は、葵がしっかりしておけば問題ないということで解決するだろうか。
思わず葵はそんなことを思ってしまう。
しかしそうだとしても依然として姉は天然だその天然さは誰かに移せないし、前述のとおり、葵がしっかりしていても瑠依の天然が治るわけでもない。
よりによって今回体を乗っ取られたのは他の誰でもない、瑠依なのだから。
葵は思わず頭を抱えた。
「あー、頭抱えてもうた。
まぁ、こんな感じの姉ちゃんいたら大変なんやろなぁ」
「どしたのー?頭痛いの?」
二人の言葉に何を見出したのか、葵は決心する。
「……少し、考えてもいいですか?」
「………もちろんだよ。」
「引き受けないの、あおちゃん?」
「お姉ちゃんはもう少ししっかり考えて。」
「えぇ……?そんなぁ……」
考えが浅すぎる姉にため息と苦笑混じりにそう告げる。
「ふふっ、そうしたら、
ーーーー桜を、よろしくね。」
その言葉に反応し、桜が稲荷ぐるみの姿になり葵の腕に飛び込みピタリと静止する。
「「はいっ!」」
桜ーー稲荷ぐるみをしっかりと抱きしめた葵とその稲荷ぐるみを優しく撫でる瑠依が息を揃えて返答する。
「それじゃあ、また来てね。」
「いつでも来てな!待ってるで!あ、桜のこと頼んだで!!ほんまに頼んだで!!ほんまにーー」
「分かってますって」
何度も釘を刺す湊に呆れたように葵が頬を緩めて嘆息する。
そうして神の兄弟に手を振り、後ろ歩きで鳥居へと向かう。
「それではまた!たぶんまたすぐお邪魔すると思いますが……」
「また会いましょうね!!」
その後ろ歩きを少しハラハラして見守る渚冬と湊が、瑠依がバランスを崩しかけたのを見てしまいさらに心臓に圧がかかるのを感じたのは別の話。
「ま、前向いて歩きや!!あ、危ないで!!」
「「はーい!」」
くるりと前を向き、二人はーー否、二人と神様一人(ぬいぐるみの姿)は、無事鳥居をくぐり抜け、帰路へと進んでいく。
その様子を、渚冬も湊も姿が見えなくなるまで見送っていた。
桐ヶ谷神社の上には、澄み切った空が広がり、うららかな日差しがそれぞれを優しく照らしていた。
完結ということになっていますが、「稲荷ぐるみは仮の姿です2」として、続きを書きました!
そちらもまた連載していっているので、読んでもらえると嬉しいです!




