タイムリミットと不退転の心
中学2年生の14歳が書いています。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
「チッ……ちょこまかと…すばしっこい、やっちゃなぁ!」
空中を素早く移動し闇の雨を降らせる瑠依ーーの姿の邪神をにら見据え、湊は素早く薄く水の膜のドームを作り三人を闇雨から防ぐ。
「当たったらどうなんねん、あれ。よぉわかってないうちは避けるに越したことはないやんな〜」
「湊兄!早くしないと渚兄がっ……!」
「分かっとる!けどなぁ
あいつマジで面倒臭い系統のやっちゃねん!」
桜も扇を二、三度と振り桜のドームを展開、同時に無数のその花びらの一部が鋭く光る短剣へと姿を変え瑠依へと迫る。
「そんなものか」
パリン、と鮮やかなガラスが割れるような音を立て、短剣が粉々に砕かれ地面へと落下、邪神は短く軽蔑を吐き捨てる。
お返しとばかりに、邪神は着物の袖から鋭い短剣を取り出し桜へと投げつける。
「うぁっ!」
その短剣のあまりの速さに桜は避けきれず、咄嗟にバリアを張る。
しかし、短剣はバリアに砕かれたものの、爆風を生み出す。爆風に煽られ、桜は地面へと叩きつけられた。
「桜ぁ!大丈夫か!?」
「へ、へーき……だいじょーぶ、少しころんだだけだから……」
その言葉に僅かに湊は安堵するが、どうしようもない自己嫌悪が湧き上がってくるのを感じた。
「そ、そうか、守れんくてごめんな……
…………やっぱ、俺じゃ渚兄みたいにできへん……」
湊は歯を食いしばり扇を勢いよく振った。
涙を堪え、わざと明るめの声を出す。
「ホントはあいつのこと、祓わなきゃいけないんやけどなぁ」
攻撃を続けながら静かに漏らした言葉を、桜は聞き逃さない。
「でも、渚兄がここにいないから祓えないよっ!このままやるしかっ!」
「それやったら葵の姉ちゃんごと犠牲になるねんなぁ」
聞き捨てならない言葉を聞きつけ葵は、
「っ、やめて!お、お姉ちゃんは何も悪くない!お姉ちゃんのことを殺さないで!お願い!」
「…………、しょうがないねんなぁ」
溜息とともに湊の攻撃の手が緩む。扇を持つ手の反対の手に、小さな水の塊が渦巻く。そしてそれは瞬き一瞬の間に一枚の紙切れへと変わる。
「俺たちにはあの邪心を姉ちゃんから引きずり出す能力がないんや。だから、この場しのぎで悪いんやけどーー」
葵に、紙切れを手渡す。
「“これ”、姉ちゃんの心臓あたりに貼ってきてくれん?」
「…………これ、」
紙切れには“封”の字が赤で書かれていて紙質も葵が普段触れている紙とは違う、特殊な触り心地だった。
「見たらわかると思うねんけど、一応言うとそれは封印の札や。それ貼れれば、とりあえず姉ちゃんの中にいる邪神は大人しくなる。せやから、平穏に済むんや。」
湊を見る。攻撃を続ける桜を見る。漆黒に染まっていく周りの景色を見る。空にいる、瑠依ーー邪神を見る。
ーーーー倒れ込むようにしてうずくまっていた、渚冬の姿を思い出す。
「……分かり、ました。」
湊はその返答に良かった、と笑う。
「よっし、そしたらそれ、貼ってきいなぁ!!」
「いやお姉ちゃん今空にいるんですけど?!私空飛べないんですけど?!」
固く固めた決意が一瞬で崩壊する音を聞きながら葵は思わず札を湊の手のひらに押し返そうとする。
空を飛んでいた彼のほうが、札を貼る役には抜擢に思えた。
「いや、俺は無理や。あんましあいつに近づきすぎたら、俺の“神代”まで壊される可能性がある。」
一瞬、悲しそうに目を閉じる。
「俺の“神代”は渚兄よりはるかに脆いものやからな。」
葵が何かいう前に、湊が再び声を上げる。
「俺達がちゃんと援護するで。もちろん。ちょっとばかし平衡感覚があれば余裕や。」
平衡感覚が必要なものでろくな目にあったことがない葵にとってそれは死刑宣告に等しかったが、あれこれ言っている時間はない。
「桜ぁ!葵の援護と防御頼むで!
俺は軽い援護、主に攻撃に専念するから任せたで!」
「おっけー!!」
桜の元気な応答が返ってきたその瞬間、葵の身体が宙に浮く。
「うおぉぁぁぁぁぁ!」
無数の桜の花びらが混じった風が、瑠依の元へと葵を乗せ運んでいく。そのうえで立ったまま、必死にバランスを取ろうと両腕をのばしフラフラする。
「ちょっ、す、ストップっ!ギブ、ギブ、ギブっ!」
色々なものがかかっているのは百も承知の上で葵は悲鳴を上げる。その滑稽な姿の葵に向かって、闇が放たれた、と思いきやそれらが黒雪を伴い一瞬で鋭い、黒い氷柱となって葵を貫こうと襲う。
「いやぁぁぁぁぁ!」
再度悲鳴を上げながら手の中のお札を思わず固く握りしめる。足元の風が僅かに勢いが弱まり葵の真下ーー湊から水の盾の援護が入る。
刹那、バキッ、という鈍い音が鳴り響く。
「っ!マズイ、時間ないで!
桜、俺も手伝うから加速しぃや!」
「いやちょっと待って、いや、だ……っ、!!」
抗議の声を上げるまもなく文字通り身が吹き飛ばされるのを覚悟する勢いで加速、葵は思わず目をつぶりかけるーーが、…………
急速に加速が終わり身が落ち着く。葵は瑠依の目の前に、桜の花びらを伴う風で浮いていた。
その手に持つ燐光の光は弱々しく、ヒビは最初に見たときより酷くなっていて。
「しつこい奴らだな。
特にお前なんて、人間のくせにこの場所に来やがって。」
「……………!」
あまりのいいように思わず絶句する。そして、その絶句はすぐに怒りへと変わった。
「人間の分際で………」
「うるさい!お姉ちゃんから出ていけ!渚冬さんの“神代”から手を離せ!」
冷徹な視線と見下すような口調に葵の何かがブチッと切れた。




