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桐ヶ谷神社への御参りと出会い

中学2年生、14歳が書いています。

何かと至らない点があると思いますが、読んでもらえると嬉しいです。

お賽銭箱の前で手を合わせる。


去年の平和に、感謝を伝える。 


今年の平和を祈る。


閉じた目をそっと開け、一ノ瀬 葵は“新年のお参り”を完了した。


1月1日。


謹賀新年。


明けましておめでとうございますの日だ。


そしてこの日は、一ノ瀬家は、一人一人別々に、神社へ御参りに行くという謎のルールがある。


というわけで、毎年恒例、例に漏れず今年も葵は、家の近くにある神社、桐ヶ谷神社に御参りに来ていた。


ちなみに一ノ瀬家は葵とお母さん、お父さん、お姉ちゃんといった家族構成だが、お父さんだけもう御参りを終えたらしい。毎年早い。


そんな家族構成はさておき、無事に御参りを終え、賽銭箱の前から去り、鳥居を潜ろうとした私の目に魅力的なものが映り込んだ。


「へぇ〜、稲荷ぐるみ………」


鳥居の手前の位置に、おみくじなどと一緒に、“稲荷ぐるみ”と書かれた看板が掲げられていて、可愛い狐のぬいぐるみが売られていた。


「え、欲しい」


ぬいぐるみには目がない葵は思わずそちらに近づいた。


稲荷ぐるみは、10体ほど、きれいに台の上に並べられていた。見れば見るほどに可愛い。


「えっ、これどうやって買うんだろう」


持っていた鞄からスムーズにお財布を取り出す。


優柔不断ではあるがこのぬいぐるみの可愛さの前では迷うことはなかった。葵の特徴である。


それはともかく、その屋台には人が立っていなかった。

まさかの無人販売か。


お財布を持ったまましばらくその屋台の前をうろうろしていると、神社の中からこの桐ヶ谷神社の若い男性神主である、天沢 渚冬さんが出てきた。


「あ、葵ちゃんだ。

今年も御参りに来たんだね。」


「あ、こんにちは!

あ、あの、この稲荷ぐるみってどうやって買うんですか?」 


「ん、あぁ……!」


渚冬さんは、袴のそでで口元を抑えて笑った。


「ふふ、本当は僕の弟がそこにいるはずだったんだけど……、おかしいな〜」


「ひぁ……」 


渚冬さんの笑顔が笑ってるのに怖い。


弟さんどんまい、と心の中でそっと呟く。


「迷惑をかけてすまないね。

僕の弟は後でしっかり説教しておくからね。」


弟さん、どんまい。私はまた心の中で呟いた。


「この稲荷ぐるみを、買いたいなら、代金は僕が、受け取るよ。」


「あ、はいっ!分かりました!」

お財布から看板に書いていた金額、970円をぴったり見つけ出して渚冬さんに渡す。


「お願いします!」

「970円ぴったりあるなんてすごいね?

大体皆1000円札で払うのに……」


「何か丁度入ってました!」


「ふふっ、何か良いことがありそうだね。」


渚冬さんは笑って屋台を指差す。


「さあ、この10体の中から葵ちゃんが運命、縁を感じるものを選んでごらん。」


「ふぇ〜、何か緊張するなぁ……」


葵はしばらく10体の稲荷ぐるみの前で手を彷徨わせていたが、やっとのことでその優柔不断と決着をつけた。


渚冬さんが言うような運命や縁が分からず、勘で選んだ稲荷ぐるみを一体、台の上から持ち上げて、胸に抱える。


「ふふっ、見つけられたみたいだね。」


「まぁ、勘ではありますが……」


思わず笑ってしまう。


「きっとその稲荷ぐるみは葵ちゃんを、守ってくれるよ。」


「えへへっ、そうだといいな〜!」


満面の笑顔で稲荷ぐるみを見つめる。

やっぱり可愛い。


しっかりと稲荷ぐるみを抱えて、鳥居の方へと後ろ歩きで進む。


「今日はありがとうございました!

遅くなりましたが明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!」


「ふふっ、明けましておめでとう。今年もよろしくね、葵ちゃん。

前を向いて歩かないと転んでしまうよ?」


「はーーい!」

威勢のいい返事をして、葵ははくるりと向きを変えて言われた通りしっかり前を見て、桐ヶ谷神社の鳥居をくぐり抜けた。


その手に、稲荷ぐるみを抱えて。


意気揚々と出ていった葵の姿を後ろから見送り、渚冬は呟いた。


「うまく、いったな……」


そして、思わず安堵の溜息を漏らす。


渚冬の頭に、ほんの小一時間前の出来事が頭に蘇った。



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