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リメイク第一章 異世界の勇者 その2

 「答え合わせですか・・・何のです?」


 まだしらばっくれる気か。まぁいいか、これ以上回りくどくするのは時間の無駄、準備は整ったんだ。


 「あなたが僕とこの子を、超下らない理由で殺そうとしている。これ、間違ってます?」


 「っ・・・ふ、いつから疑っていた・・・」


 やっと認めたか・・・


 「うーん、何処からかな?最初は確かに僕は右も左もわからないただの避難民だった。けど、この子と出会ってからちょっと変わらざるを得なくなったって感じだね。今度は僕から質問、僕まで殺す理由、本当はなんですか?」


 「・・・」


 だんまりか、いや・・・後ろ!!


 僕は振り向きざまに炎の魔法を背後から襲ってきた男にぶちかました。


 「な、なにっ!?」


 「成る程プラン変更で暗殺って訳ですか。昔、散々嫌われ者の目線を受けてきた僕だよ?こんなわかりやすい気配、すぐに分かる」


 「く、この我に気がつくとは・・・んがっ!!」


 僕を襲った男は追い討ちをかけようと構えたが、丁度直線上に彼女がいて彼女は飛び上がりの頭突きを放った。


 「あが・・・」


 あー・・・これは痛い、そして見事に男の最大の急所にクリーンヒットした。さて、ここに留まるのは懸命じゃなくなったな。


 「さ、逃げますよビーンさん!!」


 僕はさっき入ってきたドアへ再び入った。


 「戦わないのー!?」


 「うん!」


 僕、あくまで一般市民よ?戦うなんて選択肢ははなから無いの。スマホがあって良かった、とりあえずさっきの区長さんの一連の言葉は全部入れておいたからね。それを街中で暴露すれば良いだけだ。


 「くっ!周り込め!!何としても逃すな!!ワンコ何してる!早く立たないか!!それでも暗殺者か貴様!!」


 あの人ワンコって言うのか、犬かなんかか?にしても、暗殺者?あれが?お粗末過ぎるでしょ。殺気はガバガバで急所をやられる始末、暗殺者にしては酷すぎる。


 「いえ・・・申し訳ない、しかし奴は何なんです?何故我らヒィ族の魔法を」


 あ・・・魔法使っちゃってた、しまった。僕の正体バレるかも。


 それより、あの人以外は割と有能かも。数は区長とさっきの人プラス2人の合計4人いたみたいだ。そしてその2人は既に家の反対側に回り込まれた。


 「く、やっぱ戦うしか・・・」

 「2階に行きましょう」


 僕は階段を駆け上った。全くビーンさんは戦うことしか頭にないの?


 (って・・・これ詰んでんだろ、あいつら上がって来たじゃん。こっからどー逃げんのさ?)


 ビーンさんは僕の肩を小突いて来る。鎧だから地味に痛い。


 「いやー、ここまで作戦通りに動いてくれると楽で良いです。あのビーンさん、実は区長さんって結構馬鹿なんですかね?」


 「あ?いやあいつは中央の大学出てた筈だけど?」


 「へぇ、そんな人でもこんな作戦にまんまとかかるんですね」


 「おいミカミ、お前俺もついでに馬鹿にしてんだろ・・・」


 「・・・あ、ごめんなさい」


 ビーンさんもこの作戦に気がついてないんだよね。


 『ガチャ!ガチャ!』


 「ここだな!お前たちはもう袋の鼠だ・・・一つ提案だ、大人しくすれば命までは奪わないでおこう」


 「へぇ!それは誰の命を保障してくれるのかな?」


 今度は交渉か、良いよ少し付き合ってあげる。


 「無論両方だ」


 「ねぇ区長さん、そもそも僕は何で命を狙われなきゃいけないんです?この子はまだ辛うじて分かりますよ?それでも殺人はやり過ぎですけど、でも僕は何で殺したいんです?」


 「それはお前がよく分かっているだろ?」


 いや全くなんだけど?例の予言も、僕はこの世界でビーンさん以外に礼って名乗った覚えはないだよね。そもそも、予言なら僕は勇者なんじゃないの?


 「いや全然分かんないです」


 「ならば我から質問だ、さっきの魔法は何だ?魔法を扱う者たちは七つの苗字を持つ。貴様の名前はミカミと言ったなミカミ 何だ?我はヒィ族のワンコ、ワンコ・ヒィだ。ミカミ、我らの一族に貴様のような顔はいない。そして、この世界で一族以外が魔法を使った例が一つある。二大国統合調印式に現れた侵略者は、魔法を幾つも扱ったと聞く。ミカミ、貴様こそいい加減しらばっくれるのはよせ。分かっているんだ、例えお前が何者だろうとこの世界に災いをもたらす存在であるとな!」


 おー、ワンコさんありがとう。やっと目的が見えた、最初から疑っていたんだね。予言云々より、かつてこの国を襲った奴と同じである、それが理由か。でも僕、この国でビーンさん以外に礼って名乗ってないよ?


 『バキッ!!』


 ドアが壊された、そして全員部屋の中に入ってくる。入口は完全に塞がれたか。


 「さて、鬼ごっこはおしまいですよ。で、これからはかくれんぼのつもりですか?私から逃げられると思ったら大間違いだ」


 区長さん、真っ直ぐこっちに向かって来たな。この人もなんだかんだ裏社会に精通はしてたのかもね。流石に見破られたか。


 「はーい、僕はここでーす」


 僕は大人しく立ち上がった。


 「にぎゃ!」

 「ば、おまっ!!」


 ビーンさんが僕を思いっきり引っ張った。


 「痛いじゃ無いですかぁ!!」

 

 「アホかぁっ!!隠れてるのに敵の前に堂々と出る奴があるかぁ!?」


 「だって埒が開かないじゃないですか!!ここはとりあえずこうするのがベストだって思ったんですぅっ!!」


 「だからってよー、おま、ほんとわっけわかんねーんだから全くー」


 ビーンさんは頭を抱えて項垂れた、なんか呆れられた?


 「何を茶番をやっているんです。さぁ、選びなさい、ここで死ぬか?大人しくするか?」


 「うーん、だったらこうしよ」


 「あ?」


 僕はキッチンから持って来ておいた包丁をビーンさんに突きつけた。


 「なんの真似です?」


 「人質的な?流石の区長さんもこの優秀な兵隊さんを安易と殺す訳にはいかないでしょ?」


 「あー、そう言う事ですか。ビーン隊長すみませんね、こんな事に巻き込んでしまったばかりに、殺してしまう事になって申し訳ない」


 「アンドリューさん・・・普通に言わんといて下さいよ、どんだけこいつ殺したいんです?」


 ビーンさんも失っても良いと言う覚悟はあるのか。僕が例の人と同じって理由だけでここまでする?まだ何か引っかかる・・・


 「どうしてもだ」


 「・・・人質作戦失敗だな、流石にもう戦うしか選択肢はねーだろ?」


 「え?何言ってるんですビーンさん、戦う必要なんて無いですって。これをご覧なさいよ、僕の勝ちじゃないですか」


 僕はありのままの景色を見せている。入口付近に4人で固まって。その正面に僕とビーンさん、そして僕の足元には彼女がいる。


 「負け犬の遠吠えですか?見苦しい、それより答えはいいえで良いって事ですね?」


 「そうだね、僕はあなたに屈しない・・・」


 「ならば、死ぬが良い!!」


 僕は区長さんが動こうとしたタイミングで包丁を投げつけた。


 「くっ!こんなもので!!」


 「さよならー」


 あくまでこの人はここの区長さんだ。この暗殺者さんたちの最優先任務はこの人の護衛。隙を作るには十分な時間だ。僕は窓を開けて外に飛び出した。


 「な、なにっ!!ここは!!」


 「2階だよ? たったの2階だ、その程度で僕が死ぬかな?」


 僕は彼女を抱えて難なく着地した。ビミョーに痺れたかな?けどそれくらいだ。あれ?普通2階から落ちたら骨折くらいするくない?あれ?  まいっか。


 「ひぃー!無茶すんなおい!!よっとぉ!!」


 ビーンさんは槍を壁に刺して、それを足場にして降りて来た。


 「さて、こっからは競争だ。どっちが先にあの避難所の広間にたどり着くか、勝負しようか。まぁ、ハンデ背負ってもらってるけどね!よーいドーン!!」


 僕は全力で走り出した。


 「くっ!!」


 え、あの区長さんも飛び降りた?あの身のこなし・・・到底素人じゃないよ!?


 区長さんは鉄パイプを拾い僕に向かって投げつけた。そのコントロールのすごい事、真っ直ぐ僕に向かって飛んできた。


 「ちっ!!」


 『パチイイィィィィィンッ!!!』


 僕は手から小さな電撃を放ち鉄パイプの軌道をずらした。そしてこの激しい炸裂音は広場の住人たちの目線を一気に引き寄せた。


 後はどちらが先に叫ぶか、答えは僕だ!!お前の負けだアンドリュー!!


 「みんな聞いて!!この火事の真犯人はこの区長さんです!!僕を殺そうとしたんですーー!助けて下さーい!!」


 「な、何だなんだ!?」

 「ど、どうしたんだ!?区長さんが?え?」


 住人は一斉に僕の声に耳を傾けた。


 「ちがーう!!そいつはスパイだ!!敵国の送りつけて来たこの国を滅ぼすためのスパイだ!!そいつの言葉に騙されるな!!」


 「て、敵!?」

 「こんな子が!?」


 くそ、流石に有名人と一般市民じゃ言葉の重さが違う。一斉に敵意が僕に向いた。


 「誰がスパイだ!!僕は必死にここまで逃げて来た避難民です!!なのに何なんですかこの仕打ちは!!それに!!こっちには証拠があるんですよ!!あなたの卑劣な犯行の証拠が!!」


 僕はスマートフォンを前に突き出した。


 「???何だそれは?」


 「聞けば分かりますよ!ぽちっとな!!」


 そして再生ボタンを押した。




 『さて、ようやくこの時が来たな。ん?ダスト』


 スマホのスピーカーからさっき録音してたやり取りが流れてきた。


 『なんだその顔は?私はこの街のゴミを片付けようとしているだけだ・・・』


 「これ、区長さんの声よね・・・」

 「あれから声が出てるのか?ラジオ?いやなんだあれ?」


 よし、区長さんの声だと分かってみんな疑いだした。でも賛否両論って感じか・・・この人、こんな事する癖に大分街の信頼度は高いみたいだね腹立つ。


 「こ、これこそ罠だ!!このような機械!我が国にこんなものは無い!!やはり奴が寄越したスパイに違いない!!一ヶ月前の中央のあいつも!!お前の仕業なんだろ!!」


 ここに来てなんか新しい事言って来たな、一ヶ月前?


 「あれがこいつの仕業だとしたら・・・この男!!」


 目つきが極端に変わった。


 (ビーンさん、一ヶ月前何があったんです?)


 「・・・っ、あいつは、俺が倒した。そぅ、一ヶ月前だな、中央にバケモノが出たんだよ。にしてもアンドリューの奴、嘘ばっかり言いやがって・・・こいつはあいつとは全然関係ねーのによ」


 「?」


 ビーンさんもなんか怒ったような顔になってる、相当きつい奴がいたのか?

 

 「そもそも区長さんが嘘を言う訳ないじゃない!」

 「そうだ!そうだ!そもそもお前のその足元のそいつ!そいつはダストじゃないか!?やっぱりこいつもあいつの手先だったのか!!区長!今すぐ始末してください!!」


 ビキッ・・・この人間共、どいつもこいつと簡単に流されやがって。そんなに権力者の言葉の方が大事だって言うのか?


 「無論だ!その為にこいつらを用意したのだ!君たちは下がっていなさい!!」


 あの暗殺者三人衆か。


 「はぁ・・・本気なんですか?仮に僕が例のその人のスパイだとして、本当にここで殺すんですか?」


 「当たり前だ!!あの男にこの国はどれだけ蹂躙されたか!どれだけ犠牲が出たのか!お前にこの苦しみは分かるまい!さぁ死ぬ覚悟をしろ避難民!!」


 「うん困ったね・・・仕方ない、今度こそ戦いましょうビーンさん!」


 こうなったら実力行使しかない。


 「おうよ!!俺はあんまり頭は良くねーからさ、実力行使なんぼだ!!」


 「くれぐれも殺さないでよ?こんなとこで殺人なんかしたら死刑待った無しだ」


 「やれぇ!!」


 3人同時に来たな・・・1人が上空、2人は左右から来る。


 タムッ!


 「んげー・・・」

 「ぐっ!この魔法は!」


 僕は一歩強く足を踏み込んだ。すると地面から岩が突き出し左右から走って来た2人の溝落ちに入った。


 「ニャンタ!ポンサン!!」


 あの2人そんな名前なの?


 「くっ!!魔法を二種以上・・・お前は何者だ!!」


 ヒュッ・・・


 「な、え、  はぁっ!?」


 僕はさっき区長さんが投げつけて来た鉄パイプを手に持った。このワンコって人の後ろにあったんだけど、僕が前に手をかざすと風が僕の手元に運ぶように鉄パイプが飛んできた。


 「これで君に見せるのは4種類目だね」


 『バチチチチチチチチッッ!!』


 僕は電気バトンのように鉄パイプに電気を流しワンコさんの首元に当てた。ワンコさんはこの魔法の組み合わせに対応出来ずに思いっきり僕の攻撃をくらって気絶した。


 「そんな馬鹿な、あの三人がこうもあっさりやられるなど・・・貴様、本当に何者なんだ!!」


 区長さんはまたその質問をした、ほんとそれはこっちが聞きたいんだよなぁ。


 「うーん、あなたは気づいてて、僕を殺そうとしたんですよね?僕は一言もあなたに話してないし見せてない筈なんだけど。可能性はこれだ、突然現れたあらゆる魔法を扱う存在、そして僕の出身はこの世界じゃない。日本なんだ」


 「お、おい!良いのかよ!」


 ビーンさんは僕が全てを話そうとするのを止めようとしたが、もういいや。これ以上面倒な事になるのなら今を耐える。


 「時の人になる程度なら、僕が少し我慢すれば良いだけです。殺されそうになるより全然マシですよ」


 「貴様まさか・・・言え!お前は誰だ!名は何だ!!」


 「三上は苗字、名は・・・()三上 礼。これが僕の名前です」


 

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