リメイク第一章 異世界の帰還
「ん・・・」
目が覚めた。僕は今どこを走ってるんだろ・・・
「おう、目が覚めたか。今超最短の壁沿いルートで走ってるがボーダーまでは後もうちょいかかるぜ」
またこの人、僕が何か言う前に回答が来た。
「そう言えばスチュワートさん、一つ分からない事があるんです。僕の耳ならこのセイアン村ルートでゼロの元に行けたと思うんです。確かにあそこは良い思い出の場所では無いですけど、頑なにあそこを毛嫌いする理由が分からないんです」
目が冴えてきた、そしてずっと疑問に思ってた事を質問した。
「アレックスのヘタレのせい。と言えばそれなんだが、俺にもよく分からなくてな、確かにこのルートはバケモノの目撃が多くて一番危険なルートと言うのもあるが、なんつーのかな、俺たちみんなの選択肢にここを行くと言うのが思いつかなかったんだよ。
こう言うのが一番癪だが、ゼロがここに行くまで俺たちはこのセイアン村そのものを忘れていた・・・どうしてだろうな、忘れていない場所の筈なのに。あの事件以来誰もがここを忘れてる気がしてよ」
スチュワートさんにも分からない事があるんだ。そして、今の僕にもこの理由が分からない。今の話を聞くと、この世界のみんなが一斉に記憶喪失したって聞こえる。そんな事、あり得るのか?
「この世界、まだまだ不思議な事が多いですね」
「だな、この世界は訳わからん事で構成されてる部分が多いんだ。それよかレイ。不思議なのはあんさんもだぜ?ま、ゼロも同じだけどよ、この世界にあんさんが来た時と比べてすんげぇ若くなってねぇか?寝顔なんて特に小学生が寝てるように見えたぜ?」
「それですよね、僕たち異世界の人はみんな若返るんでしょうか。ゼロもそうだったしフォックスに至っては500年近く生きてるって言ってました」
「成る程な・・・アダムスの純粋な血統ってのは異常に寿命が長ぇ、初代国王があんさんと同じだってのなら、原因はそれか」
「僕はそんなに長生きしたくないんですけどね、80歳くらいでぽっくりが一番ですよ」
「あんさん、じじくせぇな・・・」
よく言われる、見た目に反して趣味が渋いってね。
そんなこんな話をしていたらボーダーの門へ近づいてきた。
「あのスチュワートさん、何で西ボーダーじゃないんです?壁沿い走ったのならセイアン村から西ボーダーへ行った方が早かったんじゃ・・・」
「あそこにゃ多分アレックスの馬鹿が盛大に迎える準備してる、あんさんはそう言うの嫌いだろ?俺もそう」
あー・・・わざと遠回りしてるんだ。
「それによ、急に俺たちがボーダー側から帰ってきたって知ったらあの派手好き若年寄り、漫画みてぇにすっ飛んで来るだろうぜ。あー面白そ」
スチュワートさん、むしろ慌てふためくアレックスさんが見たいだけじゃ・・・
「スチュワートさん、到着しましたよ」
運転手が到着を告げた。
「おっし、おいごらー!スチュワートさんのお帰りだー!」
スチュワートさんが窓を開けて外へ声を張り上げた。
「ふ、ふぁっ!?す、スチュワート隊長!?西ボーダーから帰還の筈では!?」
「俺が素直に行くと思うか?いいからさっさと開けろや!後、隊長言った奴!!後で腕立て二百な?」
「ひ、ひぃー!!!早く開けろー!!」
隊長呼ぶなって言っておきながら、さながら教官みたいな事言うなこの人・・・
何だろ、この門最初僕が来た時より早く開いてる気がする。必死なんだろうな・・・
僕たちはアダムスへ帰った。街に入るとみんな目を覚ましてフォックスは尻尾を振りながら外を眺めてる。
「おー!!なんか懐かしー!あの自動車とかも!!おいらがこの世界に来る前に見た奴だぁ!!しばらく見ないうちにこの国立派になったなぁ〜・・・」
フォックスもジジくさい事言うね・・・
「あ、ちょいとそこ止めてくれ」
スチュワートさんが車を止めさせた。そして近くにあった公衆電話に向かう。
「おー、俺だ。今帰ったぜ?え?今どこ?ボーダー」
『・・・・・・・・・ッッ!!・・・・・ッ!!』
「キシシシ!」
何となく会話の内容はスチュワートさんの表情で分かった、そして戻ってきた。
「おう、アレックスの奴は血相変えて今向かってるってよ、んじゃ俺はこれでさいならだ。あんさんらはアレックスが来るまで遊んでな。ほれ」
え、ちょっと?スチュワートさんは僕たちに財布を丸ごと投げてどっか行っちゃった・・・
「あの、僕どうすれば・・・」
一応運転手に聞いてみる。
「うーん・・・オレにも、どうしたらいいか。そうだ、近くに町の定食屋がある、お腹空いたんじゃないか?そこに行くと良い」
「て、定食屋!?おいらそこ行きたい!!焼肉定食!!」
フォックスが暴れ出しちゃった。
「こらこら。なら、そうしましょうか。僕もお腹空いちゃった。運転手さんありがとうございます」
「いや、こちらこそ。世界を救ってくれてありがとう・・・異世界の勇者さん」
「その言い方やめて下さいよ、何か恥ずかしいです」
「ははっ、それもそうですね。でも、本当に感謝しますよミカミさん・・・ではオレはこれで失礼します。食事楽しんで下さい。食べ終わる頃には陛下も到着するでしょう」
「そうですね、ありがとうございました。あ、名前は・・・」
「名乗る程ではありませんよ、では」
運転手は去って行ったけど、僕は名前を見ていた。胸のバッチに小さく書かれていた、『アンダーソン』これが彼の名前だ、名前にしては苗字っぽいけど・・・
あ、苗字と言えば・・・この世界の人、魔法族以外は苗字が無くて2歳の誕生日に国から与えられるんだったっけ。やっぱなんかそれはなぁ・・・
そんな事を考えながら運転手の言っていた定食屋に着いた。
「はいらっしゃい!!って、何だ?ダストじゃねぇか。中央行ったんじゃなかったのか?」
あれ、ここの人たちは僕たちが中央へ行ったところで話がストップしてるみたい。
「ちょっとあって かえって きた」
「へー・・・へ?ダスト?今、なんて?」
「ダスト ちがう グレイシア だから グレイシア・ダスト よんで」
定食屋がシーンとなった。その直後だ
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!!」
店主は奇声を上げた。
「店主さん、失礼ですよ?グレイシア頑張ったんですから。あ、焼き鮭定食頼んで良いですか?」
僕はお腹空いたから先に注文した。
「お、おぅ?あれ、あんたも確か・・・あれそんな顔だっけ。と、とりあえず鮭一丁」
「グレイシアはどれが良い?」
「・・・か、 から?」
あ、あんまり文字は読めないんだ。
「これはから揚げだね。これで良いの?」
こく
「あとから揚げ定食お願いします」
「あい、から揚げ一丁・・・全く、一週間かそこらで何があった?あんたら」
一週間前の僕たちのギャップにやられて相当参ってるな。それくらい変わったのかな僕たち。
「なぁあんちゃん!!おいら焼肉定食が良いんだけど大盛り出来るぅ?」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!?キツネェェッ!?」
「なんだよぉあんちゃん、狐が喋っちゃだめかよぅ!」
「あのさフォックス、最初はみんな驚くって」
「そう?」
「そう、あのすいません。焼肉定食大盛りお願いしても良いですか?」
「や、焼肉大盛り・・・」
大丈夫かな店主さん・・・
程なくして料理が出された、普通の食事ってのがなんだか久しぶりに感じる。あー美味しい・・・
「ふぅご馳走様でした」
僕たちが丁度食べ終わった時だった。
『バタン!!』
「ゼロを倒した話しは本当かい!?ミカミ君!!」
丁度アレックスさんが走って乱入して来た。
「ギャァァァァァァッ!!ヘイカァァァァァァッッ!?」
店主は遂に倒れちゃった。あーあ・・・厨房にいた人が介抱してる。
「って、ミカミ君?で、良いよね?スチュワートから話は聞いてたけど・・・」
「僕ですよ」
「そうか・・・で、全部終わったんだね?」
「ゼロは倒しました、親の残り二体もね。でも、子はあまりに数が多いですから。完全に終わったとは言えません」
「そうか、でも・・・ゼロは死んだ。この二十年の戦争が遂に終わった事には変わりは無いよ・・・ハハハ、実感がないな、けど、予言は本当に叶ったんだよね・・・凄いなぁ」
アレックスさんは少し涙目になってる、どんな感情を出すべきか迷ってる感じだ。
「代わりに、ビーンさんを亡くしてしまいました」
「それは君が悔やむ事は無いよ、彼は生涯その生涯を彼を倒す事に懸けてたからね。それを成し遂げた彼を悲しむのはかえってビーン君は嫌がる」
アレックスさん、結構ビーンさんの事分かってるな・・・取り戻したのか、自分の心を。
「そうですね」
「本当君たちには感謝の言葉が尽きないよ、ミカミ君、ダストちゃん」
「グレイシアですよ」
「へ?」
僕はアレックスさんに訂正を入れた。
「この子の名前、ダストは本名じゃないでしょ?それで僕は彼女に名前をつけて上げたんです。グレイシア・ダスト、これが彼女の名前です。
あの、アレックスさん。こう言う国のルールに僕が何か言うのは変なんですけど、この国の名前の制度、どうにも納得出来ないんです。国が名前を与えるのはどうにも自由を縛られる気がして・・・だから命名権を親に、そしてそれぞれの家族が苗字を名乗ってはどうかな?と思ったんです」
僕は意を決してアレックスさんに提案してみた。
「確かに・・・言われてみれば差別的に感じるなこの制度。名前を自由に決めるなんて・・・そんなの考えた事も無かったよ。でも、素晴らしいなそれは!今度の国会討論で話してみよう!!この国を更に自由で平和にする為には、この法案は必ず必要だ!」
アレックスさんはぐっと手に力を込めた。
「お願いします」
「あぁ、任せてくれ!その前に、君たち英雄を讃えないと!!」
「あ、やっぱりそれやるんです?」
「勿論!」
「英雄はどちらかと言えばビーンさんなんですけどね、あの人のお陰で僕はゼロを倒すに至った。あと、このフォックスが的確な道案内をしてくれたのも大きな要因かな?」
フォックスが僕の頭の上に乗った。
「喋る狐か・・・」
「あ、アレックスさん、それと一つ・・・フォックスから聞いた話で、ニヒル アダムスって知ってます?」
「ニヒル?アダムス?いや、知らないな・・・それは誰だい?」
国王もやはり知らないのね・・・フォックスから僕は知り得た事を話した。
「そうか、その人がこの国の・・・ミカミ君、お願いがあるんだ、この世界の再建の為に力を貸してほしい。アマナ君との約束でもあったんだ、異世界の技術とこの世界の技術。二つ合わせてより平和な国を作ろうって」
あの人、昔はそんなふうに思っていたんだ。
「住居も良いところがあるんだ、来てくれると嬉しいんだが・・・ここが良いかい?」
「いや、僕のこれからは何かと忙しくはなるでしょうから、中央の方が良いかも。グレイシアとフォックスはどう思う?」
「いいよ 」
「中央ね・・・おいらセレブってやつになれるかなぁ?」
「しばらくは注目の的になるだろうけど、ぐ〜たらは僕が許さないからね?」
僕はあらかじめ注意しておいた。
「おふぅ・・・でもおいらは付いてくよ。一緒に暮らすって約束したもんね」
「そう言う事です」
「ありがとう、なら行こう。料金は私が払っておくよ」
まぁ、アレックスさんからしたら技術云々よりも、別の目的があるんだろうけど、僕は変わらないから。安心して下さい・・・
僕たちは再出発した、また高速鉄道に乗り、僕たちは中央を目指す。
僕は飛んでいく景色を眺め、少し黄昏ていた。
じー・・・
その時グレイシアの視線に気がついた。
「ん?どうしたの?」
こくん・・・何か納得したみたい、何に?
「これ あげる」
グレイシアはずっと着ていたボロボロのロングコートを僕に渡した。
「え、これって君の大切な物かなにかじゃ?」
「うん だから あげる おとうさん の かたみ レイに なら あげて いい」
このコート、お父さんのだったんだ・・・
「ありがとう」
グレイシアにとって僕は父親代わりだ、それの証って事ね、僕たちが家族である証。
「なのはいいけどグレイシア?」
「?」
「なんで顔面に押し付けるの?」
グレイシアは何故か僕の顔面に向かってコートをぐいぐいと押しつけてくる。
「・・・ごめん?」
「まぁいいや」
僕はコートを受け取り羽織ってみた。僕にも合ってないサイズ・・・袖もボロボロ、今度繕わないと。
「んおー!礼兄ちゃんそれ似合ってるじゃん!!カッコいい!!」
フォックスは褒めてくれた、少し照れるな・・・
「そうかな?」
「おうともさ!!昔見たヒーローみたい!」
「ありがと、さ。もうちょっとしたら着くよ」
「はーい」




