リメイク第一章 異世界への決意
『グゥウウオオオオオオ!!!!』
ゼロは完全なるバケモノへと姿を変えた。額から伸びたツノ、鋭い爪、ゴツい身体。そして尻尾のあるこの姿・・・動物とか虫には例えられない。
「言うなればその姿・・・まるで鬼だ」
そう、鬼だ。人の様な姿を保ってはいる。けど、このゼロだったものは恐怖に囚われ、暴れるだけの存在に成り果てた。おおよそ、裁きを下す存在の鬼とは到底思えない、姿だけを繕ったバケモノだ。
「さて、君の実力・・・どんなものかな?」
僕は剣を構えた、その次の瞬間僕の身体は綺麗に殴り飛ばされた。
『グワアァッッ!!!』
「おっと!!」
剣で防いで体勢を整える。
「いたた・・・流石に様子見し過ぎたね。やっぱり、普通のあのバケモノの親なんかより倍強いか・・・けど!!」
僕はゼロよりも早く踏み込み、剣で切り刻み、浮かんだ所を炎の魔法の銃弾を浴びせた。そして止めにきつい渾身の一撃を与える。
でも、ゼロもただやられる訳じゃない。こいつも無理矢理体勢を整えて反撃に出る。まぁ、この程度はかわせば・・・
『バキキキキキキキィィィンンッ!!!』
突然目の前に氷の壁が現れた、ゼロはそれに激突する。
「あらら?」
じど〜・・・
振り返るとグレイシアが僕をなんか睨んでる・・・そしてとことこ僕の所へ歩いてきたと思ったら。
「あ そばず やる!!」
ばこーん!!!
そして思いっきりグーパンされた。
「あんちゃん遊びすぎだってさ、いい加減見てられなくなったんだって」
こく
「はやく おわら せて やれ」
怒られちゃった・・・流石に大人気なかったかな?ゼロへの煽りが。グレイシアはゼロが可哀想だから早くこの苦しみから解放してやれ、そう言ってる。
「だね。ごめんねグレイシア、悪趣味でした・・・なら、みんなで一気に終わらせようか!!この戦いを!!」
「おうともさ!!」
「いっしょに・・・」
僕たちは一斉に構えた。
『ググゥ・・・・ォォォ・・・』
「ん、んお? んぉぉおぉお!?れ、礼兄ちゃん!?あれぇ!!」
フォックスが前足でゼロの方向を指した。
『ォォォ・・・ォォォオオオッッ!!』
ゼロの元へバケモノの子が集まっていく・・・ゼロにはまだバケモノを操ると言う能力が残ってるんだ。
「うぇ きもち わる」
グレイシアは更に変わりゆくゼロに不快感を示した。ゼロはどんどんバケモノとくっついていく。
「でっか・・・ははっ!笑えてきた」
僕はこのあまりのデカさに笑ってしまった。
「笑ってる場合じゃないでしょーよ!?どぅすんのさこれぇ!?とりあえず燃やしたろ」
『ゴー・・・』
「無理だねぇ」
フォックスは足元的な部分へ火を吐いてみた。フォックスもかなりの炎の魔法の使い手だけど、今のこのゼロには通用してない。このバケモノが鎧になってるんだ、こいつを剥がさないと・・・
「なら内側から燃やすか・・・こんな集合体、ただの寄せ集めに過ぎない。このバケモノの鎧を剥いでいけばゼロの中心にたどり着く・・・作戦!僕がこいつの鎧を剥いでやるから、二人はその空いた場所にすかさず攻撃して!!」
「おー!それ名案!!礼兄ちゃんならやれるもんね!!」
「しんじる から」
「うん、じゃ・・・行くぞ!!」
僕は飛び出し剣を輝かせ、一気に連続攻撃を放つ。
『ググゥォォォ!!!』
「せぃやぁぁぁあああっ!!!!」
攻撃の手を緩めるなよ?こんな集合体のこいつはただのサンドバッグだ、僕の剣の練習台にしかならない。さぁ、更に激しく行こう!!僕に与えられたもう一つの力!!それで一気に削る!!
『ドガガガガガガッッ!!!!』
僕の超連続攻撃は集まってきたバケモノを剥がしていく。
「今だ!!グレイシア!!フォックス!!」
「焼肉になれ〜!!」
「じゃぁ・・・れいとうにく?」
ふざけている様に聞こえるけど、二人は全力だ。ゼロを焼き、ゼロを凍らせ、貫き砕く。僕たちの攻撃はゼロが巨大になっていくより早い。そして見えた・・・
「今だ!!」
「んっ!!」
グレイシアはゼロを一気に凍らせた。
「ほりゃー!!」
動けなくなったゼロへフォックスは炎を放つ。ゼロの心臓に炎は直撃し、爆発する。胸にポッカリと穴が空いた。
「はあっ!!!」
そして僕は流血光刃でゼロの首を空へ飛ばす。そして僕は飛んでくるゼロの首の前まで飛んだ。
「はぁぁぁぁぁああああああ!!」
後はこの銃の引き金を引け・・・終わらせろ、この戦いを!
『パァァァァンッッ!!!』
引いた、ゼロの額に穴が空く、僕は地面に降り立った。
「今・・・こいつ」
僕は手のひらを見た、濡れてる?
「鬼が最後に見せたのは、涙・・・?」
そうか・・・
「礼兄ちゃん、何ぶつくさ言ってるのさ?これ、終わったの?」
「終わりだよ、ほら・・・バラバラになったバケモノ。あちこちに分散してく」
「あれま・・・って事はゼロはいなくなったけど、バケモノの脅威は無くならなかったって事?」
フォックス、意外と鋭い。
「そうだね、それにここに居た以外のバケモノもまだいるはずだし、これにて一件落着とは行かないね」
「はぇ〜・・・おいらもうやだよ?疲れてヘロヘロさね。もう襲ってこない〜?」
「今のとこはみんな何処かに行っちゃうみたい。なら今はこの勝利で良いんだフォックス、当面の災厄は振り払ったんだ、後の問題は時間をかけてやるしかないよ」
「そっかぁ・・・って、あれれ?礼兄ちゃん!アレ見て!」
フォックスがまたゼロを指した。
「消えてきてる・・・」
ゼロだったバケモノは元のゼロ、神崎 零の姿になりそしてこの男は体が消えかけていた。
「ど、どゆ事〜!?あ、消えちゃったよぉ・・・」
そしてゼロは完全に消えた。
「多分、僕たちの世界へ帰れたんじゃないかな?ニヒルさんもきっとそうだったんだ。この世界で死んだから僕たちの世界で発見された。不思議だね、死ななきゃ戻れないのかな?僕たち」
待て、ニヒルさんが発見されたのは僕がここに来た日・・・その日は。
「んお?礼兄ちゃん、泣いてる?」
「いや、そうじゃないよ。やっと帰れると思ったら嬉しくてさ・・・」
「ならかえろ みんな いっしょに」
だね、帰ろう・・・今僕が帰りたい場所に、そう思った時音が聞こえて来た。バイクの音、何台もいる。
「おーおー・・・バケモノが突然どっか行くからどうなったかと思ったら、終わったみてぇだな」
スチュワートさんだ、上半身裸で身体中数だらけだ・・・
「スチュワートさん?その傷、大丈夫なんですか?」
「あん?この程度はかすり傷だ、ツバつけりゃすぐ治る。それより・・・」
「あの、ビーン隊長はどちらへ?」
一人、しゃしゃり出てきた。この人、西ボーダーの警察官のサムさんだ。
「ビーンさんは・・・」
「っ・・・そんな」
僕はサムさんに教えた。
「そうか、あいつ・・・行っちまったか」
スチュワートさんは、目を瞑り腕を組んだ。
「ビーン隊長は、私の憧れでした・・・いつも孤高にバケモノと戦って、それでいていつも元気で・・・そんな彼に私は憧れてた。いつかは国境警備隊になろうって・・・分かりました。私があなたの成し遂げられなかった意志を!残ったバケモノを必ず全滅させて見せます!!」
サムさんはビーンさんに向かって敬礼した。
「クソ真面目だねぇサム。ま、そう言うこった・・・今こうしてお前の意志は引き継がれたぜビーン、お前こいつの事買ってたよな。そんな奴がお前を引き継ぐんだ、安心して眠りな」
スチュワートさんもビーンさんへ敬礼した。
「ミカミ様!!遂に成し遂げたのですね!!やはり我の目に狂いは無かった!!」
この空気を壊す勢いで何故かワンコさんが乱入してきた。
「何でここにいるんです?」
「あー、そいつぁ俺が連れてきた。役に立ちそうだったんでな。こいつらのおかげでビーンやグレイシアちゃんたちはあんさんとこに向かえた訳よ」
そう言う事か・・・スチュワートさんらしい、見るとワンコさん以外のお付きの2人もいた。
「やほ〜」
「先日はどうも」
「それより、後から大隊が来るのは分かってたんですけど、スチュワートさんが率いて来るのは予想外でしたよ」
「まーな、あんさんが旅立った後一悶着あってな、ちょいとヘタレのケツと顔面叩いてきたのよ。ま、そこら辺はなんとか全部あんさんが片付けたらしいがな」
直接は言ってないけどやはり・・・
「おかげでいい修行になりました」
「それなら何よりだ、それよか帰ろうぜ?この村は、やっぱりいるのが辛いぜ」
「ここの村に居た人たち、お墓とか無いんですか?」
「言うなればここの村そのものが墓だな、ゼロの奴がここにバケモノを集めてたのは、ここにもう一度あいつの家族を取り戻したかったからなのかもな・・・まぁ、物言わぬ家族なんざ俺ぁごめんだが。だからちゃんと葬ってやらねぇとな。ここに居たあいつら、マスター、ファルコ・・・ホシ、色んな奴がここに居たんだ。紛れもない、レイって男の家族がな」
レイ・・・か。
「スチュワートさん、ここはアダムスの黒歴史でもあり、ゼロの野望が目覚めた場所でもあるんですよね。なら、ここはこのまま残すべきだと思います。自分の間違いを振り返る為に・・・だから死者を弔う場所は別の場所にしませんか?遺体は無くても、あの場所にここに居たみんなを、ゼロも含めて、全てが一つになるはずだった調印式会場に霊園的な場所を作りませんか?」
僕はスチュワートさんに提案した。どうしてアダムスがここをそこまで閉鎖的に見てた理由は分からないけど、ここで死んだ人たちは、せめて弔わなきゃいけない。
「ビーンもか?」
「ビーンさんが話してた、たまにサボって遊びに来てたのってここの事でしょ?」
「成る程な、あいつよく昼休みここに来てサンドイッチ食ってたぜ。にしても調印式会場を墓・・・いや霊園にしようぜって案、あんさんも粋な事考えるねぇ。でもってビーンとゼロを一緒の墓にか、ぶっ飛んでるな。けど、俺は好きだぜそう言うの。あの馬鹿に進言してやるか、この歴史を、俺たちの過ちも、ちゃんと残していかねーとな」
「そうですね」
僕はスチュワートさんに相槌を打った。
「んじゃ、そろそろ帰ろうぜ?帰ったら凱旋パレードよ」
「そこまで派手なのはやらなくて良いです」
こっちはお断りします。
「だな、けどアレックスの野郎は無理矢理やるかもな。さてと、みんな帰ろうぜ。ビーンも連れてな」
「そうですね、行きましょう。フォックス、グレイシア。帰ろう」
「うん」
「あ、グレイシアおいら礼兄ちゃんの膝が良いー」
「え・・・むー・・・じゃん けん」
グレイシアとフォックスはどっちが僕の膝に座れるかジャンケンしだした。そんなに座り心地良い?
「お、モテモテじゃねぇか」
「からかわないで下さいよ」
「わーってら、とりあえずその車に乗りな」
少し大きめのバンだ、こんな車もあったんだ。僕たちはこの車に乗り込む、ビーンさんは遺体を運ぶ用の別の車に乗せられている。
「さーて、おい出してくれ」
「了解」
スチュワートさんも乗り込み、車は発進した。
「ふぅ、あんな戦いしたら流石にみんな疲れたろ。ゆっくり休んでな、積もる話はそれからにしようぜ?俺も身体酷使し過ぎたからな。ちょいと寝るわ」
スチュワートさんは眠ってしまった。相当無理してここまで来たんだ・・・って、それは僕も同じか。僕も眠くなってきた・・・
「ふぁ〜・・・おいらも何か安心したら眠くなって来たなぁ」
こくり・・・こくり・・・すぅ・・・
みんな疲れ果ててるなぁ。
「ミカミさんもどうか休んで下さい。オレが必ずアダムスまで送り届けますから」
運転手は気を利かせて僕たちにこう言ってくれた。今は寝るか、流石に僕も限界かも・・・
僕は一瞬で意識が飛んでいった。




