リメイク第一章 異世界の決戦 その3
「レイは、ゼロは何処に行っちまったんだ?」
ビーンたちは周囲を捜索する。
「こいつは、血痕があるな・・・ビーン、向こうだ」
スチュワートは壁に着いた血を見つけ、先に進んだ。
「な、なんだこりゃ!?」
そこでビーンたちが見た光景は、あちこちめくれ上がった地面から出ている溶岩に、大量の血の跡。
「地獄とはこの事だな・・・レイの奴ぁ、暗殺に失敗し、直接対決したっつー事か」
スチュワートは地面を眺めながらここで起きた事を考察する。
「これがゼロの強さ・・・ミカミ様はご無事なのだろうか?」
ワンコは少し不安に駆られていた。
「うーん・・・多分これ、やられてませんよね〜」
「本当かニャンタ!?」
「どちらか言うと引き分け?」
「あぁそんなとこだなニャンタ、あんさん中々に鋭いじゃねぇか」
スチュワートはニャンタを褒める。
「なら、ミカミ様は?まさか、この溶岩の中に・・・」
「んな訳あるか。この溶岩の深さはせいぜいこの程度だ、ここの地下深くから噴き出したもんじゃねぇ。これは言わば溶岩の魔法、あいつこんなのを身に付けてやがったか・・・」
「なら、レイは何処に消えたんだ?」
「問題はそこだビーン。ちょっとそこどいてくれ、確かめたい事がある」
スチュワートはビーンをどかしてその周辺を確かめている。
「ここに倒れたのがいる。この血の池みたいな量、普通なら即死だ・・・しかし、この男は立ち上がった。そしてここにも、誰かが倒れていた、そしてこいつも立ち上がっている?で、ここも血の海だ、しかしこっちは飛び散ってる感じか。くそ、あのガキでも連れて来れば良かったか?この先の足取りが分からねぇ、どっちがミカミだ?んでここから何処に消えた?」
この現状にスチュワートも行き詰まった。
「くんくん・・・スチュワートのおっちゃん!こっち!!こっちが礼兄ちゃんさね!」
だがフォックスは匂いを嗅ぎ分けた。
「おー!ナイスだフォックス!!こっちがミカミなら、この即死級を喰らったのはゼロ。しかし、体力の限界だったのはミカミだ・・・これ、ゼロはミカミを回復させた?」
「んお?ゼロっていい奴なの?」
「いんや、最悪だぜ。ゼロの野郎にそんな心があるとは驚いた・・・ゼロはミカミを自分の味方にするつもりだ!ゼロはミカミを連れ去ったんだ!!」
「なっ!?」
スチュワートは険しい顔になり、外へと飛び出した。
「おい!!バイクを寄越せ!!」
スチュワートはバイクに跨る。
「ビーンも!早くしやがれ!俺は戦うことが出来ねぇんだ!あんだが何とかするんだよ!」
「分かってます!!けど!場所は!?ゼロは何処に行ったって言うんです!?」
「んなもん決まってら!!あいつはミカミにあの出来事を教える気だ!おめぇはゼロが何であーなったか、本気で分かってない訳じゃねーだろ!?」
「・・・っ!?セイアン村か!!」
「そうだ、俺たちぬぐい難い黒歴史、あの日アマナは、零は狂っちまった。あいつはあそこで何かを見た、全てが消えたあそこで何かをな!あそこにはゼロになり得る何かがあるって事だ!!」
「っ!!みんな早く乗れ!!セイアン村だ!!レイはセイアン村にいる!!」
話を聞いていたグレイシアやフォックスたちは今がどんな状況なのか瞬時に理解した。三上 礼がいなくなってしまうかもしれない、そして敵となって立ち塞がってしまうかもしれない。
一行は即座にセイアン村のある方へ向かった。
「くそっ!!なんてったって、あの何もかもが消えた村に・・・」
そして僕は今、セイアン村と呼ばれる場所に辿り着いた。だいぶ東に来たな・・・
「廃村?」
僕の受けた印象はこれだ、焼け焦げた様な建物が並ぶ集落。あちこち廃れて人の気配も動物の気配も無い。
「あぁ、この村は今地図に乗っていない。この世界の連中はここがあった事実すら認めようとしていない」
「それはどうして?」
「私はここでゼロとなったからだ・・・私がこの世界に来た時、私はここの村に来た。そこの焦げた建物を見てみろ」
「ア マナ 孤児院?」
アマナって確か、ビーンさんが言ってた・・・
「そう、ここは孤児院だった。私はそこのアマナという男と勘違いされ、その後様々な事があり私はここに居座る事となった」
ゼロはこの建物を登っていく。
「あれ、ここって」
2階部分に上がり、バルコニーに出ると僕の目には大きな壁が見てとれた、アダムスの国境だ。
「これで分かるだろ?アダムスはここを必要以上に恐れている事を。私の元へ来たいのならば、ここから来れば良い。ここが本来最もあの会場に近いのだ」
僕の中には疑問が渦巻いた、ここで何が起きた?起きてはいけない何かが起こったんだ。ここの存在すら無かったことにしなければならない程の何かが・・・
「ここで、何が起きたんです?」
「二大国統合調印式。それはアダムス、エイド両国を一つの連合国とする、歴史が動く出来事だ。しかし、エイド及びアダムスの上級階級の者らの一部にはそれを否定する動きがあった、ここはその反乱に利用されたのだ。ここの村の者たちにより反発が起こり調印式が中止となる。そう言う計画だった」
「それであなたは、その上級階級の人たちを?ここを守る為に・・・」
「いや、それがアダムスに流れている歴史だ。それのみがアダムスの歴史として語られている。だが真実は違う、逆に言えばこれも真実のうちの一つだ・・・あの日、ここではあらゆる反逆が起きようとしていた。エイド側、アダムス側両方の貴族の探り合い、中には国王暗殺を目論む動き、それを阻止する動き、様々な動きがあった。そして混沌に染まった奴らにここの奴らは殺された。村は燃やされ、村人は虐殺され、ここにいた私の全ては世界に奪われた。そして、私の仲間もこの世界に巻き込まれてあの姿へと変貌した。
私は無力感に苛まれた。しかし、その時気がついた。私のこの力、最初から使っていればこんな事にはならなかった。この世界をこのままのさばらせるのは、それこそお前の平和を脅かす。どんなに尽くしても、いずれ世界はお前を裏切るのだ。ならば、この世界を先に取ってしまえばいい。三上、お前がお前自身の平和を手に入れたいのならば支配しろ。そうしなければお前も私同様、全てを失うことになるぞ?」
思い返してみればそうだ・・・アンドリューが僕を殺そうとした理由は、僕からこの世界を守る為とも言える。この世界の人たち、何かが違う気がしてたのは、この世界の人たちは自分の世界を守る為に命を懸けるんだ。僕みたいに自分自身の為に生きる人を見た事ない。
だからこの世界は僕を殺そうとした・・・
「お前もなんとなく気がついている筈だ、お前は本当に自分自身の意志でここに来た訳では無いだろ?取ってつけたような理由がある筈だ、お前の背中を押す奴がな」
僕の頭の中にアレックスさんがよぎった。あの人もまた・・・
「やはり、思い当たる存在がいたか・・・三上、もう一度だけ聞く。共に世界を支配しよう、この世界に見せつけろ、私の敵はアダムスでは無い、この世界そのものだ。私による支配が、この世界に真の自由を、秩序を、平和をもたらすのだ」
「僕は・・・」
そしてビーンたちはバイクに乗り高速で森を抜ける。
「スチュワートさん!!セイアン村ってなんなんです!?」
ワンコが質問をスチュワートにぶつける。
「昔あいつが住んでた。奴がゼロとなったのはあそこだ・・・もっと早く気がつくべきだった、奴がゼロとなるきっかけを俺たちは見落としちまった。あの日、目の前のゼロと言う存在に俺ぁビビっちまってたみてぇだな。あの日、俺の命に変えてでも倒しておけば・・・」
「っ!!隊長!!らしく無いです!!過去を振り返るな!!それが隊長のモットーでしょ!?」
ビーンの声にスチュワートは我に返った。
「っ!?・・・ちっ、おめぇに言われるとは俺も情けなくなったもんだ・・・兎も角だ、あの日アマナがゼロになっちまったのは俺たちのせいだ、俺たちがゼロを生み出した。二度と同じ過ちを繰り返させんな、レイを必ず守れ。そうでなきゃ、アレックスをぶん殴ってここまで来た意味がねぇからな」
「ん!?三時の方向!!バケモノです!!」
バケモノ接近にニャンタがいち早く気が付いた。
「おいでなすった!!ポン!!」
「承知!!」
ポンサンは、地面に魔法を流し壁を作った。
『ドゴォッ!!』
「こいつぁ!!」
しかし、バケモノそれを軽く突破してきた。
「かなり大型、第四段階か・・・っ!?隊長!!あちこちから来ます!!」
「ゼロめ、俺たちの接近に気が付いてるな?」
あちこちからわらわらとバケモノが湧いて出てくる。
「どうします!?このままじゃ全滅です!!」
「わかってら!! ビーン!!グレイシア!!フォックス!!あんさんらは先に進め!!ここは俺たちが引き付ける!!」
スチュワートの提案は自らを囮にする作戦。無謀だ、すぐさまワンコが反対した。
「無理だ!!こんな数は大隊を率いても難しい!!ここはいったん退却すべきでは!?」
「それじゃ遅ぇっ!!それに、こいつら全員始末する必要はねぇよ!あんさんらがすぐさまレイのとこに行けばな!!俺ぁ信じるだけよ・・・だから行けぇっ!!この俺の覚悟無駄にさせんない!!」
「・・・了解!!グレイシア!フォックス!!俺のバイクに乗れ!!突っ切るぞ!!」
ビーンのバイクにグレイシアとフォックスが素早く乗り込んだ。
「よし、俺の合図で発進しろ・・・今!!!」
『ブゥオオオオオオ!!!』
スチュワートの合図でビーンたちは飛び出した。それを追うバケモノの前にスチュワートたちが立ち塞がる。
「ここから先は立ち入り禁止になった。まぁそんなにカリカリすんな、俺たちとちょいと遊んで行こうぜ?一時間だ・・・」
「はい?スチュワートさん、何が一時間なんです?」
「俺ぁ昔ほど戦えねぇ、前のゼロとの戦いで足をやられちまってるからなぁ・・・医者の奴は車いすに乗れっつーんだが俺はまだ歩けてる。が、俺でも体の限界は分かる、それが一時間だ・・・けど俺ぁ分かる、あと一時間で決着は付く。だからあんさんもそれだけ持ち堪える事だけを考えて戦え・・・そして信じろ」
「我はアダムスを出てより、あの人に忠誠を誓うと決めた・・・信じる以前の問題だ!!」
ワンコは拳を構える。
「我は信じるよりもあの人が面白そうだからねぇ~、友達になりたいから死んでほしくないなぁ~」
ニャンタは呑気そうに、だがその指先には水の魔法が纏われている。
「我は任務を遂行するのみ・・・」
ポンサンは常に臨戦態勢だ。
「あんさんらいい目をしてんな、アンドリューの馬鹿には勿体ない逸材だ・・・このスチュワート、あんさん等も信じてよさそうだ。見ておけ、これが元、国王護衛隊隊長の力だ」
スチュワートは剣を抜いた。そして着ていた鎧も外した、上半身裸だ。
「な・・・鎧を!?」
ワンコはその行動に驚くが、ポンサンが冷静に語りだした。
「スチュワートさんが護衛隊隊長だった時代、彼は鎧を嫌い生身で戦っていたと聞く。鎧は動きを鈍らせ、防御という安心感が更に腕を鈍らせると・・・」
「それで・・・あの人はどんくらい強いのぉ~?」
「見ればわかるさニャンタ・・・強いて言うなれば、我々の常識だけは通用しない事だ」
「行くぜ!!!!」
ポンサンが言い終わると同時にスチュワートは走り出した。
「え!?」
「うそぉ!?」
「これが・・・」
そしてその実力を見た三人は固まった。
「おいあんさんら、俺ぁこの程度が全力じゃねぇぜ?そんなんで俺の補助が出来るか?やってくれなきゃ困るぜ?」
今の一瞬でバケモノを十体は切り刻んで肉塊にしていた。
「・・・ついて行きますよ!!俺たちも伊達に暗殺部隊候補じゃねぇ!!」
「その意気だワンコ・・・一時間持ち堪えろと言ったがな、全員倒す気で行かなきゃ死ぬからな?じゃ、暴れるぜテメェら!」
『了解!!!』
スチュワートたちは迫りくるバケモノを倒し続けた。




