リメイク第一章 異世界の決戦 その2
「ひれ伏せさせてみてよゼロ!!」
今度は僕が攻める、ゼロの溶岩が容赦なく襲ってきた。僕は岩を繰り出して防ぐ。
「それはさっき見たぞ、この状況。上から来るしか出来ないな!!」
そんな同じことを二度もすると思う?
「氷?」
僕は上に向かって銃で氷を撃ちだしていた。ゼロの目にはもう一度僕が上に飛んだように見えていたらしい。今の僕はそんな戦い方はもうしない。勝つための必殺技、それを繰り出していく。
僕は真正面から僕の作った岩を砕いた。砕くと同時にその破片をゼロへとぶつける。
「くっ!!」
「どうですか!?僕の攻撃は!!」
僕は突きを放つ、このまま行け!!
「舐めるな」
けど、ゼロも臆することなく僕へ、溶岩による高温の斬撃を飛ばした。
「ぐぐっ!!」
「これで・・・」
「いや、引くな!!このまま進め!!」
僕は僕自身に向かって鼓舞した。ここで攻撃の手を緩めるのは負けにしかならない、こいつに必要な戦い方は返し技とかは相性が悪い。攻めて攻めて攻めまくれ!!
「こいつ・・・私の攻撃をもろに食らっても尚!!」
「あは、あははは・・・」
僕は笑い出した。
「なんだこいつは、恐怖が無いのか?いや・・・この恐怖感をこいつは楽しんでいる!?」
「せいやぁぁっ!!!」
僕は更に攻撃を強めた、それに負けじとゼロも応戦する。僕の体は切られ燃やされ、もうボロボロだ。
けど・・・
「終わりだ!!」
「そっちがね!!」
「っ!?」
僕は渾身の踏み込みで一気に間合いを詰め、銃をゼロの左胸に突き付けた。
『バガァァァンッ!!』
銃から火が噴いた。そしてゼロの左胸に大きな穴が開く。
「な・・・私 が」
「はぁ・・・ぜぇ・・・剣じゃ、なかったね。心臓を貫いたのは・・・けど」
「っ・・・お前は、一体」
ゼロは倒れた、僕も力なく地面に倒れる。
「人を殺す感覚・・・気持ち悪・・・」
さっきまで異常な興奮が身を包んでいたのに、今は吐きそうなほど気分が悪い、涙が勝手に流れてきた。諸悪の根源を倒したはずなのにな・・・
グレイシアたちは今、どうしてるだろうか・・・僕は耳を澄ませた。
ずず・・・
これは、立ち上がる音?
コツコツコツ・・・
そして歩いた。この音は・・・僕の目の前で止まった。
「正直、感激したぞ。三上・・・」
ゼロ・・・なんで。
「言ったはずだ。私は特別・・・他とは違うのだ」
くっ・・・早く立て、僕よ!
その時ゼロは思いもよらない行動に出た。ゼロは僕の体に手を当てる、怪我が治っていく・・・
「な、何のつもりですか?」
「お前のその力、消すのはやはり勿体ない。お前が是が非でも私を倒そうと思ったように、私は是が非でもお前を私のもとに引き入れたくなった」
「治してくれたからって、その恩義でも着せようっての?」
「いや、これは無償で受け取っておけ、強いて言うなれば私をここまで追い込んだ褒美か」
僕は完全に治った、そして立ち上がる。
「ならどうやって僕を仲間にする気ですか?言っておきますけど僕はバケモノになるなんてごめんですよ?それこそ何が何でも解決法を見つけてやる」
「私としてもそれが有難い、もしかしたら方法はあるのかもしれないからな・・・お前はその力を支配のために使うべきだ、その為なら私はお前に協力は惜しまない。
三上、お前には見せてやろう。私が世界を支配しなければいけない理由を、お前がその力を支配のために使わなければならない理由を、付いてこい」
どうすべきか・・・今の僕ではゼロに勝てなかった。心臓を潰しても死ななかったのは想定外だよ、けど一つ分かった。バケモノにならない方法があることを。運任せじゃない、確実な方法がある。僕とゼロでは根本的に違うんだ、ゼロは何かがきっかけでその境地に至った。
心臓を潰せば僕は確実に死ぬ、けど奴は死なない、それになれるその方法は・・・今はまだ分からない。
「わかりました、行きます。僕に教えてください、支配しなければならない理由を」
今はゼロに従おう、そして見極めよう。こいつの言い分と、僕の信念を。僕はゼロとともに会場からいなくなった。
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一方、ビーンさんたちは・・・
「来やがれこっちだ!!」
「ひぃー!数が多いよぉ〜!!」
親二体に加え、かなり大勢のバケモノに囲まれながらも一進一退の攻防が続いてた。
「ここかっ!!」
ビーンは飛び出した、そして鹿型のバケモノに一撃を与えようとするが、タイミング良く狼犬型に邪魔される。ビーンは空中で一回転し、再びバイクにまたがる。
「ちくしょ、バケモノのくせに何であんなにも連携しやがるんだあいつら、どんなにタイミングを作っても互いに身を挺して来やがる・・・」
しかし、二体の親の連携に徐々に苦戦を強いられはじめていた。
「おいらくたびれて来ちゃったよぉ」
「こら寝るなフォックス、そんな暇あったら作戦の一つでも考えてくれよー」
「それはおいらが聞きたいよぉ、ビーンのあんちゃんなんか無いのー?例えば、影分身の術~とかでドカンとか出来ないのぉ?」
「なんだそりゃ?かげ?」
「あ、こっちに忍者はいないか、ともかく真正面から戦うにはおいらたちだけじゃどーにも少ないよねぇ」
呑気な会話に聞こえるがフォックスはちゃんと現状を見極めていた。このバケモノと戦うにはもう少し数がいる、どんなに作戦を練ってもこちらの人員不足が壁になっていた。
「グレイシアちゃんの氷を喰らわせようにも、あの鹿が邪魔だしな。やっぱレイっつー機動力と攻撃力ある奴がもう一人くらい欲しいぜ、あいつのツノをへし折れれば大分有利になれるんだが・・・あ?」
『バスバスンッ』
突然バイクから変な音が鳴り出した。
「何の音?」
「マジか・・・こんな時にあの時のツケが回って来やがった・・・」
「ん〜?あ、ぁあっ!?ガソリンがなーい!!」
フォックスは運転席を覗き込むとガソリンのメーターがすっからかんになっていた。
「あん時抜き取られた分だ!!くっそ!!考えてる暇無くなっちまった!!フォックス!グレイシア!!次で仕留めるぜ!?」
「あいさ!!」
こくり
ビーンは方向転換し、槍を真っ直ぐ鹿型に向けた。
『ブルオォン・・・』
「こいつに賭ける、早く片付けてレイんとこに行くぞ。あいつはそろそろ終わらせてる頃だ、迎えに行かねーとな!!」
「あいさね!!」
『ブウォオオオオッッ!!!』
エンジンを噴かし、ビーンは走り出した。正面からは鹿型が突進をしてくる。
「フォックス!!俺の言うタイミングでナイフ全部投げてくれ!!」
「ほい!!」
「・・・今だ!!」
フォックスはビーンの言う通り、ビーンの持っていたナイフを口に何本も咥え綺麗に投げた。そのタイミングで鹿型の前に狼犬型が立ち塞がる。
「あぁ!!ダメじゃん!!」
先程からこの攻撃をやろうとしていたが、前に立ち塞がる狼犬がナイフを受け止め、そこからビーンが電撃を放っても後ろにいる鹿型が吸収してしまう。
「いや!これが囮だ!!見せたるぜ!?俺の!!最大の力!!」
ビーンはバイクを乗り捨て一気に飛び出した、身体には僅かに電気を纏っている。
「んおっ!?早っー!!」
ビーンは自らの体に電気を流し、筋肉を活性化させ強引に身体能力を限界に引き出した。その状態になったビーンは、狼犬の盾を掻い潜り、後ろの鹿型に迫った。
「そのツノ!!貰ったぜ!!」
ビーンの槍が鹿型に迫る。
「あ!あんちゃん!!」
「なっ!!」
まるでそれを見越したかのように、狼犬は凄まじい勢いで身体を回転させた。その回転の勢いに乗った狼犬型の尻尾がビーンに迫って来ている。
「水鉄砲!!」
その次の瞬間だった、水の塊が尻尾に激突した。尻尾は勢いを弱める。
「崩れよ!」
そして狼犬型の足元の地面が崩れた。
「んで、こいつでぶっ飛べ!!」
最後に狼犬の腹部付近から炎が飛びだし爆発、炎上した。
「今だぜビーン!!」
「イエッサァァァッ!!!」
ビーンはまるで敬礼をするかのような勢いで、鹿型に迫り、渾身の一撃を放った。鹿型のツノはボキリと根元から折れる。これで、鹿型のツノは無くなった。
「今だ!!行けグレイシア!!」
「んっ!!!」
そして全力で放ったグレイシアの冷気は途轍もない勢いで鹿型を凍らせていく。
『ズドドドドドッ!!』
「な、なにっ!?」
しかし、それを阻止しようと狼犬型は、喰らったダメージをものともせず無理矢理体勢を変え、グレイシアの方に向かって来た。
「っ!!!」
その直後、この戦場に沈黙が流れた。
「あ・・・ わ たし は また 」
そこにはビーンやフォックスもろとも狼犬型を凍らせた氷塊があった。
「いや だめ・・・」
グレイシアは二人に手を伸ばした時、その手を一人の男が優しく掴んだ。
「いんや、嬢ちゃんは勝ったのさ・・・かつてのお前にな。安心しな、お前は誰も殺しちゃいねぇよ」
『ビキッ・・・バキバキっ!!』
「ぶっはー!!!あっぶねー!!巻き込まれるとこだったー!!」
氷の中からビーンが出てきた。
「ブルブルブルッ!!!さ、さみー!!誰かおいらにあったかーいお布団とおかゆ持ってきてー!!」
フォックスも元気そうだ。
「おらビーン、なに巻き込まれてやがる。おかげでグレイシアちゃん怯えちまってたじゃねぇかこら」
「あ、えあ!?あれっ!?スチュワート隊長!?な、なんで」
『ボッカン!!』
ビーンがスチュワートに気が付いた瞬間、強烈なゲンコツがビーンに飛んできた。
「だから隊長はやめろつったろ。てか、今気がついたのか?」
「いや、幻覚かと思っていました・・・それにしても、これは?」
そこにはスチュワート含め、アダムスの兵士大隊が駆けつけていた。
「アレックスの馬鹿がろくな準備もせずあんさんらを行かせたろ。ったく大変だったんだぜ?暗殺に向かうって聞いて、色々準備してたらもーいねぇからよ、一日くらい待てなかったのかっつー話だ、仕方ねーから俺が使えそうなのを集めてきて急遽部隊を作った訳よ。
ったくあのくそ若ジジイめ、いくらなんでも普通の一般人を暗殺に行かせるか?いくら切羽詰まったからって誰かを犠牲にさせるやり方は俺ぁ認めねーよ、そこにゃ正義もクソもあったもんじゃねー。あんまりに腹が立ったからあいつの顔面ぶん殴ってきた」
「あ、あらら・・・」
ビーンは理解していた、このスチュワート。相当苛立っている。それを見てビーンはどうしたものかと苦笑いしか出来なかった。
「ま、それはさて置きだ・・・調印式会場の方、やけに静かだな。ビーン、今の状況は?」
「現在レイはゼロへの暗殺を決行・・・」
ビーンはスチュワートへ作戦の説明をした。
「ほぉ、お前にしては賭けに出たなぁ。で、勝負の行方はどうなったかだな・・・おい!!お前ら!!会場周辺を見回れ!!後ワンコ!ニャンタ!ポンサン!お前らは俺と共に来い」
スチュワートは会場へと向かう奴らを集めた。
「す、スチュワート・・・さん。あいつらは確か・・・」
「おぉ、使えそうだったからな。特にあのワンコはミカミ、ミカミうるせぇのよ。だから連れてきた。現に役に立っただろ?」
「確かに、あいつらの連携で俺は助かりました」
ビーンは三人の魔法の連携を思い返していた。
「だろ?けど一番はグレイシアちゃんだったな、咄嗟の出来事でもあいつらを完全に巻き込む事なく魔法を放った、この戦いの英雄はあんさんだ。それにお前の手を急に掴んでも俺を攻撃もしなかった。この旅で克服出来たみてぇだな」
こくり・・・
「レイが 助けて くれた から」
「母親と変わらず綺麗な声してんな、その声で歌ったら良い歌手になれるだろうぜ」
ブンブン・・・
「冗談だ」
「でもね!グレイシアの歌凄い上手いんだよぉ!?」
「ほーそうなのか、いっぺん聞いてみてーな。それよりも、あんさんは・・・誰だったか?」
「おろ?今回喋る狐ってのには反応ないのね?」
「あん?なんで狐が喋っちゃダメなんだ?」
スチュワートは常識に囚われない人間だ。
「おいらはフォックス!」
「おぅ、俺ぁスチュワートだ・・・フォックス、グレイシア。今からミカミのとこ行くぞ。どうにも静かでな、ま、もう終わっちまってるんだろうぜ」
スチュワートはビーン、グレイシア、フォックス、ワンコ、ニャンタ、ポンサンを連れて調印式会場へと向かった。
しかし、彼らがここで見た景色はスチュワートですら予測していなかった。
ここにはもう、三上はおろかゼロも、そしてバケモノも全くいなくなっていた。
「これは・・・一体」




