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リメイク第一章 異世界の死神

 「見てやろう、その覚悟とやらを」


 アンドリューは音もなく軽やかな足取りで僕に迫った。この人の動き、何だこれは・・・大鎌の軌跡が全然予測出来ない、返し技なんて考えてる暇なんて無いよ。


 「どうした?この程度で追い込まれるお前では無いだろ?上の連中の事を気にしているであれば、私はあいつらを攻撃するつもりは無い、あくまで標的はお前一人だ。まぁ、お前が助けを呼ぶのであれば、私は彼らを相手せざるを得ないがな」


 ここは僕一人で何とかしないと・・・ビーンさんの助けがあれば勝てるかも知れない。けど、それじゃ意味ない。ゼロには僕一人で挑む事になるんだ。一人で勝てるほどの実力が要る。


 勝手に縛りプレイさせて貰うよ、ここではゼロはおろか、ビーンさんたちに気が付かれずにアンドリュー、お前を倒す。


 僕は剣を構え直し、しっかりとアンドリューを見た。大鎌なんて武器を相手にした事はない。けど、攻撃と言うのは必ず上下左右斜めと突きしか攻撃は来ない。それを読み取れ、何処をどういう風に攻撃して来るのか、先の先を・・・


 「っ!!」


 ここだ!!僕は真上から振り下ろされた鎌をかわして、最低限の動きで首元へ剣を突き付けた。


 「良いタイミングだ。しかし、この突き技で私の喉を貫くべきだったな」


 「なっ!?」


 アンドリューは自分の手に穴を開けて、剣を止めていた。僕の手元に生暖かい血が流れてくる。


 「残念だ」


 「くっ!!」


 僕は咄嗟に手を離し、姿勢を低くした。僕のすぐ真上を大鎌が通った。


 このままではまずい、この姿勢を低くした体勢では上からの攻撃にやられる!!身体よ!後ろに飛べ!!


 僕は後ろに飛ぼうとした。しかし、僕の思いとは裏腹に勝手に僕は行動していた。僕はこの身体をバネの様にしてバク宙。さながらサマーソルトキックの様にアンドリューに放っていた。


 「ほぉ」


 避けたのはアンドリューだ、当たらなかった・・・けど、間合いは取れた。


 「その動き中々だ、無駄なく殺気も無く放っていたな。ワンコたちを追い詰めた時は冷静になり、思考と同時に身体を動かしていたが、今はそこから更に発展していた。行動が思考を上回った。


 お前は戦うと言う行動に関しては天才と呼べる実力がある。しかし今でも私に攻撃は当てられなかった。その理由がなぜか分かるか?お前には殺す覚悟は無いからだ、戦いというのは口ほどにものを言うのだ。長年暗殺と言う世界に身を置いてきた私には分かる。お前にゼロは殺せないとな。


 ミカミ、この暗殺から手を引け。後は私が引き継ぐ」


 アンドリューから出されたのは僕をここで殺すのでは無く、引かせる事だった。


 「あなたなら出来ると言うのですか?」


 「少なくともお前よりは暗殺出来る可能性はある。だがそれ以上に、お前たちの旅のお陰で街道沿いのバケモノは数を減らし、親をも撤退に追い込んだ。そしてアダムスに味方する勢力の確保も叶っている。今頃陛下は大隊を編成し、バケモノ一斉討伐を指揮している筈だ。


 つまりお前たちがここに到達した事は、既にゼロの抹殺に成功したと言っても過言では無い」


 そうか、最初からそう言う作戦だったんだ・・・アレックスさんが少し胡散臭いところがある理由、わかったよ。


 「ミカミ、お前の望みは平和に暮らしたいのだったな。だが一度でもその手を汚してしまえば、お前は二度と戻れなくなるぞ?それこそ私の恐れた第二のゼロの誕生だ。お前たちはアダムスへと戻れ、陛下が喜んで迎え入れてくれる筈だ」


 「僕たちはもうゼロを殺せたと・・・そう言う事ですか?」


 「そうだ、最初はお前たちを殺すつもりで、私はお前たちを追っていた。ある程度進めたらお前たちを殺し、私が暗殺に向かおうとな。


 しかし、お前たちの行動を見て気が変わった。お前が本当に心の底から平和を望んでいると分かった。ここから先は私がやる、この命に変えてもお前に暗殺はさせない。お前はダストやあの狐と共に平和に生きるが良い。汚れ仕事は私で良いのだ」


 そう言うとアンドリューは武器を降ろした。


 「・・・っ アンドリューさん。僕は・・・尚更引けません!」


 僕は剣を降さなかった、より強く僕は構え直した。


 「どう言うつもりだ?」


 「アンドリューさん、何で僕があなたを殺せなかったのか、その理由はちゃんとあるんです。覚悟が無い、そうじゃ無いんですよ。あなたにだけは言っておきますね・・・そもそも僕は、ゼロを殺す気なんて無いんです」


 僕のこの言葉を聞いた瞬間、アンドリューは無言のまま大鎌を構え直した。


 「自分の言った意味、分かっているのか?お前はゼロの仲間になるとでも言うのか?」


 「いや、そんなつもりは全くありませんよ。ゼロは僕たちの敵であり、標的に違いありません。ただ、暗殺する事はより悲惨な結果を招くと僕は考えてる」


 「意味が分からないが?」


 「意味なら説明しますよ。何故僕が一人で行かなきゃ行けないのか・・・僕だってこんな事はしたく無いよ、たった一人であいつに挑むのなんて、すぐに逃げ出したい・・・けど、僕はもう感じてるんだ・・・僕は」


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 「・・・まさか、ミカミお前は」


 「はい、だから僕は一人でゼロの元へ行かなきゃいけない。僕たちが平和に暮らすには、これしか無い。どうしますか?あなたの選択肢は二つ、僕を行かせるか・・・それとも、ここで僕を殺すか」


 「一言言えるとすれば・・・気の毒にだ。私にはどうやらお前を信じる覚悟が無かったみたいだ。ミカミ レイ、ここで命果てよ」


 「果てませんよ・・・僕は絶対に」


 互いに構え、こう着状態になった。汗が流れる感覚が何時間にも感じる。


 「行くぞ、ミカミ」


 先に仕掛けたのはアンドリューだ、僕は構えたまま動かなかった。


 「もらっ・・・」


 「貰ったのは、僕の方だ」


 僕は剣の柄をアンドリューのみぞおちに喰らわせた。


 「なっ・・・馬鹿な」


 アンドリューは大鎌を落とし、倒れた。


 「ごめんなさい・・・けど、必ず僕は勝って戻って来ます。だからそれまで、ここで寝ていてください」


 「っ・・・ミカミ、お前はやはり、恐ろしい男だ・・・」


 アンドリューは気を失って倒れた。




 僕はまた塔の上に登った。


 「ビーンさん、そろそろ交代です」


 「おう、何も無かったか?」


 「はい。異常はありません」


 「ふっ、わかった・・・後はぐっすり寝てな、お疲れさん」


 お疲れさんね・・・流石にバレてたか。


 「じゃ、寝ますね」


 「あぁ。明日、みんな信じてるからな。頑張れよ」


 会話もか・・・縛りプレイ失敗か。


 「はい」


 僕は目を瞑った。






 そして作戦開始時刻となった。バイクを発進させ、会場へと走る。


 「レイ!!どこまで近づく!?」


 「敵の音を完全に聞こえる距離は、せいぜい半径数百メートルくらいです!だからそれを見越して目的地一キロ付近まで近づいてください!!そこで僕は飛びます!!」


 「了解だ!!なら後十キロだ!飛ばすぜ!!」


 僕は耳を澄ませる、周囲のバケモノに変わった動きはない、気がついてないんだ。なら、このまま真っ直ぐ!


 そして会場が大きくなって見えて来た。


 「ビーンさん!そろそろ行きますよ!?」


 「あぁ!今だフォックス!外せ!!」


 「ほい!!」


 『ブルルロラロロロロロロォォッ!!!!!』


 フォックスがマフラー付近にある部品を外した瞬間、バイクはけたたましい音を鳴らし出した。作戦開始前に気が付いたんだ、このバイクの静音性はここにカラクリがある事を。


 「んん〜案外良い音奏でるじゃねーか!!俺のバイクといい勝負だぜ!?さてと!次はそのすまほだ!!鳴らせ!!」


 『わっせ!!わっせ!!』


 グレイシアがスマホをポチポチ押して、昔撮った祭りの音が流れる。これに効果があるか分からないけど、ここら辺にあった素材で簡易的な拡声器みたいなを作ったから多少は音量が大きくなった。


 「後は・・・すぅ」


 『うおおおおおりいいいいゃああああああぁぁぁっっっ!!!!』


 フォックスとビーンさんが同時に大声を出した。グレイシアは少しうるさそうに耳を塞いでる。


 「どうだ!?」


 「反応あり!!これは!!親が二体こっちに向かってます!!」


 「了解!!後のタイミングはお前に任せた!!」


 ここで僕たちが今大騒ぎしてる理由は最初からの作戦、揺動作戦だ。けど何故僕がまだいるのか、その理由は単純。一キロ近くジャンプするには大きな音を出す事になる。それを誤魔化す為だ。だから先に騒いでその音で僕が飛び立つ音を消そうって寸法だ。


 左右から親が近づいてくるな、見つかる前に飛ぶぞ。森の中、一瞬空が開ける場所・・・ここで飛ぶ!!


 僕は自分自身もジャンプし、同時に風の魔法を下に向かって放った。僕の身体はまるでカタパルトから射出された様に空に向かって飛んでいった。


 思いの外勢いよく飛んだから中々体勢が整わない。その前にまずは音を聞け、ゼロは今何処だ?


 スタスタ・・・人間の足音、これだ。これの聞こえる場所は・・・ビンゴ!!スタジアムのど真ん中!!ビーンさんが予測した調印式のテーブルのある椅子に腰掛けた!!


 後は体勢を整えろ。そして剣を抜け、確実に奴の背後を取るんだ。


 「いけ・・・!!」


 僕は小声で言いながら、今度は風の魔法を上に撃ち、一気に急降下する。

 

 「ここっ!!」


 「ん?」


 『ザクゥッ!!』


 僕は会場の椅子めがけて剣を突き刺した。硬い大理石で出来た椅子を貫き、その先・・・少し柔らかいような硬い様な何かを僕は突き刺した。


 ポタポタ・・・液体が滴り落ちる音がこの空間に響く。


 「あなたがゼロ・・・で、良いんですよね?」

 

 僕はゆっくりと質問を椅子の向こうへ投げかけた。


 「・・・成る程。そろそろ来ると踏んでここで出迎えよう思ったら、音もなくこの私の背後を取るとは、中々やるな」


 全く動じてない、それに加えてこの威圧感とドスの効いた声・・・この男がゼロで間違いない。


 「僕の名は三上 礼・・・ゼロ、僕はあなたと同じ世界から来た」


 「ふっ・・・成る程な、どうりでタマやチュウの奴では敵わない筈だ。ハチを氷漬けにしたのもお前か?」


 「ハチ・・・あのトカゲですか?」


 「そうだ、そろそろアダムスへ攻めようと考えていた時に俺はあいつを送り込んだが・・・まさかやられるとは思いもしなかったな。だが相手が向こうの世界の存在なら、納得できる」


 ゼロは刺されているにも関わらず、堂々とした声で話す。


 「何故あなたはこの世界をこんなにしてしまったんです・・・神崎 零さん」


 「その名前、懐かしい響きだ・・・それを知っていると言う事は、あの狐か」


 「僕の質問に答えて下さい、体に空いた穴広げますよ?」


 僕は更に剣を突き刺した。


 「っ・・・三上と言ったな、こっちこそ質問しようか。お前はこの私の不意を完全に突いた。しかし、何故殺さない?そのチャンスはあった筈だ。身体に穴が空いた、その程度で死なないのはお前が一番よく知っている筈だろう?」


 ゼロはそのまま僕に質問を返して来た。


 「そうですね、でも痛みはあるでしょ?答えないのなら、質問を変えましょう、あのバケモノ、どうやって操ってるんです?」


 「この世界、私以外にもここに来た存在はいるが、その中でも私は特別だったらしい。あらゆる魔法、治癒能力に加え、あいつらを支配する力を手に入れた。これは私のみが使える力・・・残念ながら、お前には使えん」


 「そうですか。ま、僕はそんな力はいりませんけど・・・もう一つ質問して良いですか?」


 「良いだろう同じ世界の仲だ」


 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 今、突き刺してる剣から心臓の鼓動が大きく動くのを感じた。やっぱりか、僕が何で一人でゼロに会わなければ行けないのか、全ての理由はここにある。


 これまでは僕の予想でしかなかった。けど、真実は残酷にも僕に襲いかかって来た。

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