リメイク第一章 異世界の高原
「おっし見えてきたな、あれが霊峰オンヤリ山だ。標高六千三百五十メートル、上の方はまだ雪が残ってるだろ?」
既に僕たちは今標高1000メートル以上の場所を走ってる。それでもここに見える山々は僕たちを遥かに見下ろしている。
「んとね、骸骨高原はこっちだよぉ」
「あぁ、骸骨高原は遠くから見れば一日の中で景色が目まぐるしく変わるから観光地として有名だったんだよ。あ、ほら。看板もまだ残ってるぜ?」
本当だ、『骸骨高原』と書かれた看板がそこかしこに残ってる。
「けど、地図上ではわかってても未だにここを通り抜けるってのはまだ誰も達成できてねーんだよな。本当頼むぜフォックス」
「舐めんない!ビーンのあんちゃん!!じゃ、この看板と反対の方向に行ってね。こっちはただの展望台しかないからよぅ」
さて、そろそろ骸骨高原だ。今のところだだっ広い高原と言うより荒野だ、草一本も生えてない。山の間の盆地にも感じる。
「あれ、なんか急に寒くなって・・・」
「あ、そろそろ吹雪が来るね。あんちゃん、ハンドルちゃんと握って?雪が積もってもエンジン全開で行けば抜けれるから」
「おう!」
フォックスが言った直後、突然視界が真っ白に成る程の猛吹雪が吹き荒れた。
「んがっ!!何も見えねー!!」
「そのまま!!そのまま!!少しでもズレたらダメ!!あ!少しハンドル左!!ここで思い切り右!!そうそう!!」
目が開けてられない程の吹雪なのにフォックス、見えてるの?
「んで、五秒後に晴れるよ!」
言う通りだ、5秒経った瞬間吹雪は止み僕たちは銀世界を走っていた。
「すげぇ、と言うより俺にはここがもう何処が何処だかわかんねーわ」
「そのまままっすぐねー。んお?正面にこれバケモノいるじゃん」
フォックスの言う通りだ、この足音。バケモノの鹿型だ・・・ゼロ、ここの可能性を考えたのかクソ。
「出来る限り見つからずにここを突破したいけど、出来る?」
「オッケー、にしてもあいつはかわいそうにねー、あの場所はダメな場所だもん。ビーンのあんちゃん。ハンドル右に」
「おう」
「さてと、これにて左をご覧下さいな!あと数秒であそこはどでかい雹がふってくるよぉ!!三!二!一!ほい!」
『ゴゴゴゴ・・・・』
何か地鳴りみたいな音が聞こえてきた、そのすぐ後左の景色には氷の山が築かれた。あんなのが次々に降ってきたのか・・・
「バケモノはあれに押しつぶされちゃいましたー」
あ、本当だ。あそこを通ってたら僕たちもペシャンコか・・・こわっ!!
「んお、今日は熱波も来るみたいだねぇ、これまたかなり強烈だぁ。グレイシア、ちょいとこのバイクの前の方に氷出してくれる?あの熱波直接喰らったらバイク爆発しちゃうからさ」
こくり
グレイシアは氷の壁を前方に出した。またすごいのを作ったなぁ・・・
「あんちゃんたち、少し息止めてねー」
「んっ!?」
今度は突然顔面が熱くなった。サウナのロウリュウ以上だ、こりゃ確かに息止めなきゃヤバイかも。
「あっつー・・・ま、あと三秒で終わるけど」
また普通の気温になった。
けど、本当に凄いな。この先どうなるのか分かってどう対処すれば良いのかも分かってる。僕たちはこの先もフォックスの指示でバイクを進めた。
そして約3時間後、高原の出口にたどり着いた。
「ここから先はもう天気はこんな風に変わったりしないよ。ほらビーンのあんちゃん、そこ曲がって。多分見たことある景色に出るからさ」
「あ、見えた・・・レイ、あそこだぜ」
ビーンさんはバイクを止めて指差した方、ここからは小さいけど森の中にスタジアムが見える。あそこか、あそこにゼロが。
「あんちゃんたちの目的地はあそこでしょ?『神崎』がいるとこ、調印式会場さね」
「へ?神崎?」
「おいらさ、実は一回だけあいつに会った事あるの。その時あいつは『神崎 零』って言ったのさ。でもその後に訂正して『ゼロ』って名乗ったのよ」
神崎 零、それがゼロの本名か。全く、これも運命の悪戯?同じ名前だなんて虫唾が走るんだけど。
「アマナの奴、本当はお前と同じ名前だったって訳か。そりゃアンドリューの奴も疑うわな」
「くそ腹立つなーもー、あいつのせいで僕はこんな目に遭ってるのかと思ったらムカついて来た!」
僕は頬を膨らませた、とりあえず今はこう言う顔が出来る余裕がある。
「あそこ抜けてまだそこまで元気があるなら大丈夫だな。とりあえずサンキューなフォックス」
ビーンさんはフォックスにお礼を言う。
「えっへん!でも道案内もこれで終わりだねぇ」
そう言えばこの道案内ってフォックスにお肉あげたお礼だったっけ。
「そうだね。フォックスはこれからどうする?またプラプラ旅をする?」
「うーん、それも良いんだけどねぇ。自由にウロウロしてぇ、んであんちゃんたちがゼロを倒したらヒトの往来も多くなるだろうし、また楽しくなるかも」
「そうか」
「・・・で、でもさ。レイのあんちゃんが良いって言うならおいら、あんちゃんの家に住んでも良い?」
フォックスは少しどもりながら僕にお願いして来た。
「ご、こめんよ!あわよくば毎日ご飯が欲しいとかそう言うんじゃなくてさっ!!」
それでフォックスは珍しく申し訳なさそうに謝った。
「フォックス」
「いや、いいの!!おいら野生だし!!お肉は自分で取るさね!」
「駄目なんて言うと思う?」
「んお?」
「フォックスって変なとこ遠慮するね、僕は全然良いよ。と言うより、家に来てくれない?僕の家族、二人だけだと寂しいからね。それにフォックスと僕は同じ世界で生まれた存在、それがここで偶然にも出会った。これは一つの運命と呼んで良いと思うんだ。血とかは全く繋がって無いけど、僕の家族になってくれると嬉しいんだけど」
「い、良いの?」
「決めるのは君だよ。グレイシアも友達が欲しいみたいだし」
こくこく。
「毎日、ご飯食べれる?」
「そこ心配するとこ?僕は毎日ご飯をしっかり食べれる日常を送りたいの」
「ならさ!ならさ!毎日焼肉パーティは出来る!?」
「残念、それは駄目!毎日ちゃんとバランス良く!焼肉はたまに何かした時のご褒美!」
そこまでは出来ない、ちゃんと節度ある食事にしないと身体に悪い。
「ふふっ、何かその言い方さ、確かニヒルおねえちゃんも同じ事言ってたねぇ・・・分かった!!おいらこの旅最後まで付き合うさね!それで全部終わらせて一緒に帰ろ!!礼兄ちゃん!!」
礼兄ちゃんね、何となく弟が一人増えたかな。
「そうだね、一緒に帰ろうかフォックス」
「ノンノン!おいらの名前はこう呼んでくれたまえ!マイケル!ジェイ!!」
「だーめ、人様の名前を勝手に取ってはいけません」
「ぶーっ!」
名前はともかく、まだ旅は終わってない。ゼロを倒さなきゃ帰れない。必ず帰ってやる、そして平和に暮らしてみせる。
僕たちは走り続ける。
「レイ、近くにバケモノの気配は?」
「会場の方にすんごい数です。足音が多すぎてゼロの場所は分かりません。それから会場の周りをぐるぐる回るように親がいる」
「了解だ。レイ、とりあえず今日はこれ以上近づくのはやめた方が良いだろう。ここの近くに誓いの塔ってのがある、そこに登れば会場を見渡せる筈だ。そこに登って作戦会議と最後の宿にするか」
「了解です」
僕たちはその誓いの塔と呼ばれる場所に辿り着いた。石造りの大きな塔だ、元々は教会か何かだったんだろうか。ステンドグラスに壁には天使みたいなもの描かれ、パイプオルガンだった物もある、僕はここを見て少し疑問に思った。
「あのビーンさん、関係無い話ですけどこの世界って神話とかあるんですか?」
ここでの宗教ってどんな感じなんだろう。この感じだとキリスト教っぽいけど。
「神話ならアダムス建国の話もぶっ飛んでるのが多いな、後はエイドの四神とかか?それ以外だと・・・世界創生と最終戦争の話か、神様と魔王の大げんか的な話だな。
あ、後は予言に似た黙示録なんてのもあるか。うーん、すまね、俺あんまし神話興味ねーからよ。他にも一杯あるけど有名なのはこれくらいしか知らねーわ」
「そうなんですね」
話聞く限りここも様々な神話がある事は分かった。けど、黙示録って向こうの世界にもある。ニヒルさんとかがこの世界にも伝えたのかな。
「なぁレイ、俺の方こそ関係ない質問して良いか?」
ビーンさんが僕に少し真面目な顔で質問して来た。
「どうしたんです?」
「それこそあんたは、神様ってのを信じるか?因みに俺は信じてる。正義は必ず勝つ、正しい行いは直ぐには結果が見えないかもしれないが、いつかは報われる。そう思ってる」
「神、ですか。正直言うと僕は神様なんて信じてないんですよね。全ての者の言葉、心を聞き、それぞれに裁き、救いを与える存在、僕の中で神様はそういう存在なんです。
でも世の中は、いくら神を信じて正しく生きようとしても救われないものは救われない。逆にいつまでもふんぞり返って生き続ける奴は生き続ける。他の人間を、おもちゃのよう扱い捨てる奴もいる。だから僕は、僕の中にある心を信じてます。僕が今一番正しいと思ったことを行動に移す。それは善悪の区別なんかない。いくら正しいと思ってても間違っていることもある。
ボーダーで僕はアンドリューを追い詰めましたが、彼も多分同じだったんじゃないですかね。彼は、彼なりの正義を貫いた。神様なんて、自分の行動がやがてもたらす運命だと思いますよ。それに神様がいたら、僕たちは最初からこんな下らない争いなんてやってないですよ」
僕は神様が昔から嫌いだ、そのせいか長く話しすぎた。
「なるほどな、あんたらしいと言えばあんたらしいか。でもあんたと会ってから、国が、そして世界が変わり始めているのは確かだぜ。
あんたが現れてからたった数日で、いろんなことが起こりすぎた。だがあんたはそれをほとんど解決して、そして変えた。周りにはあんたを神とかいうやつもいた位だ。だから俺はレイを信じるぜ、お前ならこの世界を変えられる」
「い、いきなり照れる事言わないで下さいよ!僕は神様じゃないです」
「んな事分かってら、要するに俺が言いたいのは・・・ゼロに必ず勝とうぜって事」
ビーンさんは照れ隠しの様に頭を掻きながら僕から顔を逸らした。
「さてと、なら上まで登りましょうか」
塔の上は展望台みたいに周囲をぐるっと見渡せる様になってた。
「良い感じの場所だな。よっしゃ、これからゼロ暗殺の作戦会議と行こうぜ」




