リメイク第一章 異世界のコロシアム その2
『さぁ、続きまして害獣討伐大会、有志組第三ブロックです。今回、誠に残念ではありますが皆様の期待の星、アシュリー選手はこのブロックから出場ではありません」
「ブー!ブー!!」
『代わりにこの彼が、アシュリー選手に代わり第三ブロックに参加する事となりました。彼は、アダムスの住人。そして、バケモノの親を倒したとされている。そんな彼がこの地にやって来たのです!ミカミィィィッ!!レェェェイッ!!』
実況と共に僕は試合会場?に足を踏み入れた。にしてもこの実況、今までの僕の行動が筒抜けだ。やはりここの何処かであの男は見ている。
「え、女の子?」
「いや、一応男だろ?でもこんなちっこいのが本当に?」
いらっ・・・誰だ、今僕を女の子って言ったのは、後、ちっこいとか言わないでよ。一応身長165はあるんだよ?
『人は見かけで判断するべきではありません!実力は見てからのお楽しみでしょう!さて、第三ブロックの相手は・・・おぉ、セイリュウ・ブラックドラゴンだ!!この大会で最も数多くの選手を葬って来たドラゴン型の害獣!ご覧下さい!この巨体の蝙蝠翼にこのあらゆる物を破壊できるこの尾!アシュリーの相手になるはずだったこいつを!ミカミはどう立ち向かうのか!!さぁ始まりだ!!』
ちょっと・・・こんなの聞いてないけど。この世界ドラゴンいるの?明らかにバケモノよりやばいやつじゃん・・・
僕の反対側からは鎖に繋がれた黒い鱗のドラゴンが現れてしまった。
「グゥオオオオオオッ!!!」
ドラゴンの鎖が解かれ、這いつくばりながら僕に向かってくる。このドラゴン、飛べないのか?この翼・・・ボロボロだ。そして観客も飛べないと分かってるから普通に座って見てる。
そりゃ怒るか、人間を見ただけで気性が荒くなるだろうね。君の気持ちはごもっともだが、僕は負ける訳にはいかなんでね。
『何だ!?ミカミ選手!動きません!!それどころか・・・剣を、投げ捨てた!!?早くも諦めてしまったのか!?』
僕は君の敵では無い、その気持ちだけは君に伝えよう。
「グオッ?」
「ごめんね」
『バギィィィンッ!!!!』
勝負はついた。僕が剣を捨てる行為、このドラゴンの目には腹を出して降伏するように見えていたのだろう。そのおかげで攻撃に迷いが出来てしまったんだ。そんな僕は、その隙を突いて銃を一瞬で引き抜き予め溜め込んだ氷の魔法をドラゴンに放った。
ドラゴンはなす術なく一気に凍らされた。
会場は少しの間静まり返る。その直後歓声が巻き起こった。
『こ、これは驚きだ!!一瞬です!!一瞬で何もかも決着を付けてしまったぁっ!!この男!何物だ!?』
僕は無言で控室に戻った。
とことこ
戻るや否や、グレイシアは僕にタオルを渡して来た。
「ありがとグレイシア」
「流石だな、勇者。あいつはこのオレのエキシビションマッチの相手だった。今この闘技場で最も強い害獣だ。それを殺すとはな」
「殺してませんよ、凍らせただけです。凍死しないように調整しました。しばらくすれば目を覚まして氷の中から脱出しますよ」
「な、殺してないだと?」
「僕には無闇に生き物を殺す趣味は無いですよ。ここの人たちと違ってね。生き物が死ぬのはやはり気分が悪いです。そして快楽の為に生物が死ぬのを眺めるのは、虫唾が走る!」
僕は思わず壁を殴った、壁にヒビが入る。
「噂通りだ。かなりのあまちゃんらしい・・・が、その実力は本物」
「そろそろ聞かせて下さい、あなたの目的は?何故僕たちを?」
「今から答える。その前にここの説明をしておかなければな、オレたちは普段はこの近くにコロニーを形成して生きている。ここら周辺では一番人口が多い数千人規模の村だ。
二十年前、あの男がこの世界に侵攻して来たことをきっかけにあの村は作られたんだ。エイド貴族の一人、リンダ ブルーリーフ。あいつはあの男に見つからない場所を見つけ、村を作った。
しかし、村の開拓中リンダは害獣に襲われて死んでしまった。その後は息子であったハミルが村を治める存在になり、村はここ、エイド・アダムス国際競技場までの安全を確保した。
だが、ここからこの村は狂い始めた。この競技場を見つけたハミルはここへの開拓で捕らえた害獣をここの地下に入れ始めた。
あの村には娯楽が無い、それ故に年に数回。ここで闘技大会を開くことを奴は思いついたんだ。それが今やってるこれだ。害獣を捕まえ檻に入れ、一杯になったところでこの虐殺まがいの娯楽を行なっている。それから更にこの娯楽はエスカレートしてる。元々は村での犯罪者だけをぶつけていたこの娯楽は、有志組と言う新たなブロックが作られた。
と言うのも、この娯楽で生き残った者はこれまでの罪を消す事が出来た、それの対策だ。ここで生き残った犯罪者は最後、このオレと戦い殺される。一方、有志組優勝者はこのオレと戦う必要もなく、ハミルの持つ財宝と土地を分け与えられる」
「・・・ほんと、昔見た映画みたいな事がここで行われてるなんて・・・まさか、アンドリューはあえてこれを見せる為に?」
「ん?アンドリュー?あいつがそうなのか?」
「やっぱり何か知ってるんですね」
「名前は名乗らなかったがな、つい先日だ。オレたちの村にある男が現れた。そいつはバケモノを生捕りにし、ハミルの元へやって来た。少し後にここへ来客がある、とても面白いからもてなしてやってくれとな。
ハミルはこれまでに無かったバケモノに目をつけ、この娯楽を開催すると言ったんだ」
あの人、バケモノを生捕りにって・・・どうやったんだ?あの人、そんなに強かったの?
「さて、問題はここからだ。オレはきっとこの大会の最後に死ぬことになる」
アシュリーさんからとんでもない一言が飛んできた。
「え、なんで?あなたはここのエースか何かじゃ無いんですか?」
「あぁ、オレはこの村の無敗の英雄だ。だが、オレはもうすぐ三十を迎える。そしてこれまで酷使して来た身体はこの歳でもう言うことを聞かなくなり始めて来ている。だから最近のオレの勝利はあまりスカッと出来る勝ち方はもう出来ない。
そして何より、飽きて来てるんだ・・・ここは狂ってしまった村だ。表には出さないが、みんな私が負ける姿を見たくなって来ている」
「そんな、流石に考え過ぎじゃ?」
「かもな。命までは奪う事は無いかもしれない、だが、オレはここで確実に戦士としての役目を終えることになる。ハミルは、あいつはオレを恨んでるからな」
「何となく、察しがつきました・・・守れなかったんだ」
「察しが良いのも噂通りか。そうだ、私はリンダの護衛であったにも関わらず、彼女を見殺しにした。守れなかったんだ・・・それでハミルは害獣を、この世界を恨み。気分を紛らす為にこの娯楽を行なっている。元凶はこのオレだ・・・村も、何もかもをオレが狂わせた。オレはこの責任を取りたい・・・」
「責任だなんて!ぼくはそんな事これっぽっちも思ってないよーだ」
この重い空気に腹が立つ程の軽い声が聞こえた。
お腹の出た10代半か後半くらいの男だ。
「ハミル、ここは選手控室だが?」
「重鎮席は安全が確保されて退屈でね。それよりアシュリー、ぼくはきみを恨んで無いし殺す気なんてさらさらないよ?ただ、今回で引退はして欲しいかな〜?」
「で、このオレにどうして欲しいんだ?引退したらお前の娯楽は」
「この者らがいるじゃないか。これからはお前が、ここの英雄になってくれ。悪い話じゃない、待遇も完璧だ。それできみは、このぼくの物になれ。もう身体は限界だろ?ぼくが面倒見てあげるから」
うわ・・・他人の目の前でそう言う事を平気で言うのねあなた。それより、何で僕がこの人の言いなりなる前提何だ?僕はうんともすんとも言ってないよ?
「済まないが、断らせてくれ。オレは戦士、しかも守るべき人を守れなかった憐れな負け犬だ。それ以外にはなれない、だからせめて・・・この命ある限りここで戦わせろ」
「うーん、分かってないなぁ。ぼくは戦士の君はもう見たくないんだよ。凛々しい姿は美しいけどあきちゃってね。だから今度は女になった君を見たいんだ。これはぼくの命令だよ?言う事聞かないのなら・・・その子を貰うね?」
何でこうなるの?ハミルが代わりにと指差したのはグレイシアだ。
「待って下さい、グレイシアは何にも関係ないでしょ?」
僕はグレイシアの前に出た。
「いやある、君がここに足を踏み入れた時から君はここのルールに従って貰うよ。ぼくはその子が気に入った、ぼくが気に入った物は献上しなければならないの」
「嫌です。そもそもグレイシアもアシュリーさんも物じゃない」
「お前、僕の機嫌を損ねるとどうなるか分かってる?」
「君こそ、僕を怒らせたらどうなるか見たい?」
僕は銃に手をかけた、今目の前にいるこの太々しいこいつ。知能が発達しただけのバケモノにしか見えない。
「ふっ、まぁいい、君には期待してるんだ。ここで喧嘩しても意味ないよね。いずれはあの男を倒せるかもしれない男をここで殺す訳にもいかない。けど、ここで優勝出来ない奴にあの男に挑む資格はあるかな?彼もそれが気になってるのさ」
「やはり、アンドリューをあなた知ってるのか」
「そ、彼とぼくは取引きしてね?無敗の英雄の引退と引き換えに、アダムス最強の人間をくれるってね。そして、その彼もまためちゃくちゃな強さで、この大会を更に盛り上げるバケモノをも用意してくれたのさ。
ミカミ、まずはこのぼくを楽しませる為にここで優勝してみてくれ。もし優勝したら君たちにはあの男に挑む権利を与えよう。なに、優勝したら更に優勝賞品も上乗せだ。悪くない話だろ?これは君の更なる力を付ける為の特訓と思えば良い。そして勝利すれば旅に役立つアイテムもあげる。損は無いよ?」
なんとなーく、アンドリューの目的が見えた。ここで僕の実力を見たいんだ。そして、この先僕がゼロを倒した後どうなるかを。この村はこの狂った状態が通常なんだ。わがまま放題のこいつに、殺しあいを楽しむ村人。それが解放された先の世界はどうなるのか・・・
「分かりました、とりあえず優勝すれば良いんでしょ?そしたらビーンさんも返して下さいよ?」
「いいよ、そもそも彼が犯罪者ブロックで負ける事は無いだろう。彼の実力は今も国境から離れたこの地に噂が流れる程だ。それは君もよく知ってるだろ?んじゃね〜」
ハミルはのしのしといなくなった。
「済まないな、ハミルの奴はまるで人の話を聞かないだろ?昔はあーじゃ無かったんだがな・・・人懐っこい奴だったんだ」
「なんだかんだ、彼の事を大切には思ってるんですね」
「さぁな。だが、狂ってる事には違いない。さて、次の試合が近いな。準備しておけ」
僕が思ったのは、加害者とは被害者だという事だ。原因は何処にあったのか、そんな事はどうでも良い。今は僕の余計なお節介が爆発しそうなんだ。
ここに今、人間はいない。この狂った村に、僕が必ず人間に必要だった筈の心を取り戻させる。アンドリュー、見てますか?これが僕の答えだ!
『さぁ!!一回戦は瞬殺を見せ観客の度肝を抜いたミカミ選手!!お次はどんな戦いを見せてくれるのかぁっ!!
さて、ここで我らが主より、優勝賞品の増加のご案内です。土地二百と牛三頭に加え、しゃ・・喋る狐?を、用意したとの事です!』
え・・・
「んおー!!レイのあんちゃんだー!!おいらこの太ったあんちゃんにお肉貰ってさー!!そんでここで遊んでるって聞いたから来ちゃったよー?」
なんか、重鎮席に座ってるさっきのハミルの隣に最近見慣れてきたキタキツネがいる。
『何でもこの狐は、ここ一帯の地理に詳しくバケモノのいない場所も把握しているとの事です!ってか何処にこんなのいたんだぁ!?』
損はさせないって・・・プラマイゼロって事か!!また腹が立って来た。一発だけで良いから殴って良いかな?僕はフォックスを見る。
「はい、お肉だよ〜」
ハミルがフォックスに肉を与えている。
「おー!ミディアム!!うまうま!!」
「・・・フォックス!!」
「んお?」
「お肉くれるからって、僕とのバイクを見張っての約束を破ったよね・・・」
「あ、」
「ね、一つ忠告しよっか。知らない人に付いて行ったら・・・とても怖い目に遭う事になるからね?」
僕は怒りマックスの笑顔をフォックスに見せた。
「怖い目に遭うのは、こいつからなんじゃ・・・」
まぁ良い、それはそうと第二回戦だ・・・




