リメイク第一章 異世界のコロシアム その1
「な、何だったんだ?あれは・・・バケモノがバケモノを助けた?」
この現状にみんながしばらく固まっていた。
「くそ・・・逃したか」
そんな中ビーンさんだけは苦い顔をする。
「いや、違うぞ。勝ったんだ・・・俺たちは」
そのビーンさんに対してポップスさんは反論した。
「あいつらは西へ向かった。それはつまりこれ以上の進行を食い止めたって言えるだろ。それに、もう一体現れなかったら確実に仕留めてた。これを勝利と言わずになんて言うんだ?」
ポップスさんはみんなに問いかける、そしてみんなはポップスさんの言葉に頷いた。
「確かにな、ポップスの言う通りだ。あいつらは撤退した、ゼロの奴は一歩追い込まれた。つまり、俺たちはゼロに勝てる可能性をこの戦いで示した、この勝利の意味はそこにあるぜ。俺たちは必ず奴の元に辿り着き必ず倒す、二十年出来なかった誓いを果たす時が来た。待ってやがれアマナ・・・いや、ゼロ!」
ビーンさんは強く拳を握る。
「・・・了解だ。お前たち、今しがた周囲の見張りをしていた先遣隊から連絡があった。二体の親は真っ直ぐずっと西へ、おそらく奴の居城、調印式会場へ向かったと思われる」
ダヴェン隊長は、無線機片手に僕たちに教えてくれた。
「お前たちはやはり奴を追うのか?」
「あぁ、ゼロの暗殺、それが俺たちの任務で最終目標だ。奴を倒せば全部終わる。特に、退けた今がさらに攻めるチャンスだ。奴に反撃の隙を与える余裕は無い」
「ならば我々はその暗殺に協力しよう」
「そいつはありがねーな!が、今回は駄目だ。お前たちはこの村を守る事に尽力してくれ。あくまで奴の暗殺は俺たちだけで完遂したい」
「そうか」
ダヴェン隊長はそれだけ聞くと納得した様に頷いた。
「サンキューな、ゼロの奴は逆に大隊を率いるほど奴に有利な状況になる。純粋な戦力差は俺たちじゃ奴には及ばねーからな、だからこその少数精鋭の暗殺に懸けた。安心してくれ、俺たちは必ず倒す。そしてお前たちにバケモノに怯える必要の無い日常を取り戻してやる」
「分かった、ならばお前たちを信じよう。しかし、先の戦闘、大分疲労しただろ。しばし休んでから向かうがいい。すまんな。我々に出来ることはこれくらいしか無い」
「十分だぜ。俺も流石に疲れたからな、少し休んだら再出発だ」
「了解だ。あ、後一つ、先日巡回班から聞いた情報だが、ここ最近ここ近辺を人間が通る事があったらしい。あれがアダムスの連中なのかは分からないが、何か知ってるか?」
「いや、アダムス出たのは俺たちだけだぜ?」
「そうか、近くの鉱山にも人間が住んでいると言う話は聞いていたが、巡回班の話ではそこにいる奴にしては服装も装備もしっかりしていたと。しかし、アダムスの存在かどうかは分からなかったと聞いてな。なんか引っかかる感じがしたから伝えておく」
「分かった、念のためそいつらにも気を配っておくか。昨日その鉱山の連中に襲われたばかりだからな」
「そうか、なら気をつけてな」
「おう」
こうしてしばしの休息の後、僕たちは再出発した。今度こそ僕の運転だ。
「なんだか、人間に襲われたと思ったら今度は人間に助けられる風になるんだね」
僕は特に話す事も無いから今思った事を口にした。
「あぁ、こんな事もあんだなー・・・思いの外すげー長旅になってきてるぜ」
「そうですね。でも、案外これで良かったのかも。正直、僕はまだ覚悟ってのが出来てなかった。もしかしたら今もまだ出来てないのかもしれない。けど、このままゼロに辿り着いてたら僕は絶対暗殺は出来なかった。この世界の外側を知って自分の実力を知ったから、少しずつ覚悟ってのが出来てきたと思うんです」
「それは何よりだ、あいつ相手に手元が震えたなんて事になったら全滅は逃れられないからな・・・お、でもこの旅、そろそろ折り返し地点まで来たみたいだぜ?あれ、見てみろよ」
ビーンさんが指差す方向、そこには大きなスタジアムの様なものが見えた。
「あれが調印式会場なんですか?」
「いや、あれはエイド・アダムス国際競技場。エイドとアダムスの友好の証として作った総合スポーツ施設だ。昔は良くあそこで色んな競技を見に行ったもんだぜ」
ビーンさんはしみじみと昔を思い出している。よく見ると結構広い施設だ。大分植物のツタとかが壁に巻き付いてるけど、まだそんなに廃墟感は無い。
「そうなんですか」
「んお?あそこなら今でもたまに何かやってるよぉ?」
そこに水を差したのはフォックスだ。
「あ?なんだフォックス、まさかあそこにも人間が残ってんのか?」
「ううん。普段近く通るとだーれもいないんだけどね?たまーに何かやってるのか歓声みたいのが聞こえるのさね。おいら気味悪くてさ、あんましここの近くには寄らないようにしてるんだー」
こんな状況でなんのスポーツをやってるんだ?僕は少し耳を澄ませた。
これは・・・まさか本当にフォックスの言う通りだ。人間の足音、しかも何人いるんだ?
「どうやら今日がそれの日みたいですね、人間の足音が無数に聞こえます。最低でも、1000人以上」
「はぁっ!?千!?そんな数の人間が何でこんなとこにいんだよ!」
「分かりませんよ、フォックス。本当に何かやってるのか知らない?」
「知らないよー」
僕はもう一度耳を澄ませる。触らぬ神に祟り無しって感じもするけど、少し気になる。
「え・・・これって、害獣?」
害獣の足音だ、そして更に聞き耳を立てて気が付いた。
「バケモノがいる・・・」
「あ?何?バケモノ?あの中にか?」
「はい、何か・・・嫌な予感がする」
しばらくの沈黙が走った。
「何で今回に限ってこうも色んな事が起きるんだよ全く・・・レイ、バイク止めてくれ。少しだけ様子見るぜ、流石にこの状況は異常だ」
「一体何が起きてるのか、確かめる必要がありますね」
「えー、おいらやだよぉ」
フォックスは嫌がった。
「なら、ここでバイク見張って待ってて?様子見たらすぐ戻るから」
「んお?フラグか?」
「ちょっと不吉な事言わないでよ・・・とりあえず任せていい?」
「おいさ、グレイシアは?」
つつつ・・・グレイシアは僕の背中によじ登って来た。
「ならおいらここにいるねー」
ま、ずっと外で暮らしてたから大丈夫だよね。僕たちはこっそりと競技場へ向かう。
「おい、ここ開いてるぜ?」
ビーンさんが入れる入り口を見つけた、僕たちはそこから入る。この音。これは・・・歓声だ。何かスポーツをやってるって言うの?ここで?
更に進む、そして暗がりから明るい場所へと出た。そしてここでの景色に僕たちはしばらく固まった。
『さぁ!!アグーレ選手!!武器が壊されてしまった!!この状況でどう害獣へ対処するのかぁっ!?おっとこれは!!アグーレ選手!!折れた剣を持ってそのまま突進だぁっ!!おおっとぉ!!カウンターが決まった!!脳天に剣を突き刺したぁっ!!これは決まった!!アグーレ選手!!第一回戦突破ぁっ!!』
ここは観客席の2階、そしてその下。本来サッカーか何かをやる場所で一人の男と害獣が戦っていた。この歓声はこの殺し合いを見て巻き起こってる。
アグーレと呼ばれた男は雄叫びを上げて手を天に掲げ勝利を喜んでいる。そして倒された害獣は何処かへ運ばれた。
「何だこりゃ・・・どんな時代だよ、こんなのやってたのは・・・」
「ねぇ、君たち」
その時後ろから声がかけられた。女の人だ、鎧に身を包み手には槍。
「次の試合は君だろ?早く控室に行くんだ」
へ?試合?女の人は僕に指差した。
「後お前」
「・・・俺?」
そして今度はビーンさんだ。
「そうだ、未成年者誘拐の現行犯で逮捕する」
「え、ちょっ!?」
何故か突然手錠がビーンさんにかけられた。
「だが、お前にはチャンスがある。犯罪者ブロックに参加し、優勝出来ればお前にかかった容疑は全て無しになる」
「あ!?俺は犯罪なんかしてねーけど!?おい!どー言う事だ説明しろよ!!」
「犯罪者に聞く耳は持たない、連れて行け」
「くそっ!!ふざけんなよ・・・俺、女に手を上げる主義じゃねーけど、いい加減に」
「いや、待って下さいビーンさん」
僕は暴れようとしたビーンさんを止めた。
「あ?どう言うつもりだよ!」
「この旅は、どうやらゼロだけが敵とは限らないみたいって話です。あのジャングルで話してた事」
「・・・俺たち以外の奴か?」
「そう、考えられるのはそれしか無い・・・そしてこんな回りくどいやり方をして足止めする奴は・・・」
「まさか!」
僕だってまさかだよ、こんなとこまで追って来たのか。あの男は・・・
「ねぇ、君の名前は?」
「アシュリーだ」
「アシュリーさん、とりあえず僕たちは何も言わずに君に従うべきだ。そう言う事で言いの?」
「聞き分けが良いな、とりあえずミカミ、お前は有志組第三ブロックの代表だ。次の試合に出ろ・・・」
アシュリーさんは僕の腕を掴む。その瞬間、僕に手の平を見せた。
『まずは勝て』
「分かりました。勝ったら覚えてて下さいね」
「勝てればな。早く行け、ビーン。お前は犯罪者ブロックだ。連れて行け」
「この女ー!後で覚えてやがれー!俺をこんな犯罪者扱いしやがってー」
ビーンさんは文句言いながらも連れて行かれた。
それにしても、恐らく元凶はあの男だ。アダムス王国、ボーダー地区区長。アンドリュー・・・目的は何だ?また僕を殺す気か?それとも足止め?
どちらにせよ、君は僕の邪魔をしに来たのは間違いない・・・僕の判断すべき事は敵の妨害、そう考える事にしよう。




