リメイク第一章 異世界のジャングル その2
5時間後と言うのは、ほぼほぼここで寝泊まりする形になった。戦士たちの宿舎の様なところに僕たちは集まり仮眠を取り、グレイシアとフォックスは僕の膝をクッションみたいにして寝てる。
「さてと、時間だね・・・」
僕は作戦会議の開始する少し前に起きていた。勝手に目が覚めたと言った感じだ。奴が近づいている感じがする、見える訳でもなんでも無いが、バケモノは必ず現れる。
「時間だ!これより作戦を伝える!現在ポップスを含む害獣討伐隊は治療の為出撃はかなわない、一番若手の彼ら抜いての作戦になる、本作戦は先日襲われたバケモノの討伐を最終目標とする。
この五時間の間に先遣隊をこの周囲に展開した、そしてそれらの情報からおおよその現在バケモノの位置を特定する事に成功した。現在バケモノはこの村より東、およそ十キロ程にいると思われる。現在の最大戦力である総勢三十名の戦士は、村から真横に広がり、バケモノを囲う様に展開しろ。しかし、その際バケモノの索敵範囲内に入らず、こちらからは手を出さない事だ。位置を特定するだけで良い。
位置を特定したらアダムス王国、協力者の出番となる。君たちの合図の元我々はバケモノの索敵範囲外から一斉に遠距離攻撃を行う。その隙を突きトカゲ型を仕留めた一撃を奴に喰らわせろ。この作戦が成功すればこの二十年動かなかった歴史が変わる事になるだろう、健闘を祈る」
作戦がダヴェン隊長から伝えられた、どうやらビーンさんも一緒になって僕が寝てる間に作戦会議をしていたらしい。あれだけの戦闘やったのにまだへっちゃらって感じだ。
で、その作戦をやるのであればグレイシアの協力はやはり必須、そしてグレイシアも付いてくる気満々だ。そもそもここの人たちもグレイシアを一人の戦士として見てくれている、その視線にグレイシアは堂々としていた。
「作戦を開始せよ!!」
ダヴェン隊長の掛け声で一斉に先陣部隊が村から飛び立った、木の間をぴょんぴょん飛んでいく、まるで忍者だ。木の上での暮らしが身体に馴染んでる、逆に地面の方が動きが鈍くなるんじゃ無いか?と思うほどだ。
そして連携はどう取るのかと言うとトランシーバーの様な短距離の無線通信機がそれぞれ持っているらしい、2人1組で1人は索敵、1人が通信する。そうやってバケモノを囲んでいくらしい。
そして僕たちにも一台渡された、トランシーバーと言うよりでっかい受話器だ。フォックスの背中に載せてある。
「むもー、これ重たいよぉ・・・」
そして嫌がっている。でもここしか置いとくとこがない、ビーンさんは切り込み隊長、一番身軽じゃないと、それで僕はグレイシア背負ってるし。
「文句言わないで。あ、通信来たよ?」
「ほいなー」
フォックスは通信機を僕に渡す。
『一番へ、こちら十三番。目標を発見した、現在ゆっくりと東へ向かってる、どうぞ?』
『こちら一番、了解。引き続き一定の距離を保ち気付かれ無いように追跡せよ。全隊、目標は十三番だ、作戦第二段階へ移行だ、以上』
『こちら二番、了解』
『こちら三番、了解』
次々に返答が来る。
「こちら、アルファ一番、了解」
ビーンさんも返答を送る、アルファ一番。これが、僕たちのコード的なやつだ。2人1組の隊が全十五番まであり、それとは別の部隊という意味でビーンさんが、かっこいいからアルファ一番が良いと言ってたらしい。洋画のアクションとか観るとよくアルファチームとかは聞くけど、アルファなんて言葉、アダムスの中にあったっけ。
「さて、移動するぜ。東だからあっちだな」
僕たちも移動を開始した、足音が聞こえ始める。かなり大きい、十数メートルはあるか?
「見つけたぜ、レイここで止まれ・・・こちらアルファ一番、目標を発見、指示をどーぞ?」
僕の目にも見える距離にバケモノはいる。ただただゆっくりと東へ歩いている、目的は一つしかないと言った感じだ。
『こちら一番、全隊包囲までもう少し待て・・・よし、包囲が完成して来たな。全隊、俺の合図で一斉に攻撃せよ。マーク、三 二 一、開始ぃっ!!!』
そしてダヴェン隊長の掛け声で一斉に矢が放たれた。この矢はビーンさんの得意とする技にも繋がる。この矢を伝ってバケモノを全方向からの電撃にするつもりだ、今回は前の時と違って矢の数もビーンさんも体力マックスの状態だ、あわよくばこの一撃で倒せたら倒したい。
「行くぜぇぇっ!!」
ビーンさんが飛び上がる、行ってくれ・・・頼む!
「・・・っ!?違う、しまった!!罠だ!!」
僕はこの直後に気がついた、一杯喰わされたんだ。あのバケモノは、いや、ゼロはこの作戦に気づいていた。あえてあのバケモノに行動させてなかっただけだ。ビーンさんが飛び上がった直後、周囲にいた動物だと思っていたやつが一斉に動き出した。
僕たちがバケモノを包囲したと思っていたら、逆に僕たちはバケモノの子に包囲される形になってしまった。
「みんな逃げてっ!!!」
僕は木の上から飛び降りた、そして襲い来るバケモノを剣で倒す。
「ビーンさん!!」
「くっ!!レイ!!こうなったら強行突破する!!フォロー頼む!!」
「はい!!」
ビーンさんはこのまた親へ攻撃を続行する気だ。この全方位攻撃、みんなを救うにはどうする・・・
「はぁっ!!」
僕は地面に剣を突き立てた。落とし穴だ、音のする箇所全てに作れ。数秒足止め出来れば良いんだ・・・先に攻撃を当てた方の勝ちだ!
『ボゴゴコココココッ!!』
僕の剣先から地面がバキバキと地割れを起こしていく、そしてバケモノはみんなに攻撃が届く前に割れた地面に落ちる。
「っしゃ!!ナイス!!くらいやがれやあっ!!」
そしてビーンさんは電撃を放つ。
「え、ちょっ!!」
「グルルァァァアアッ!!!」
電撃は確かに直撃した、全方向から丸焼けにするくらいに。けど、あのバケモノは全く無傷だ。
「ビーンさんっ!!」
「こいつ、その角か!魔法を吸収しやがった!!」
僕も見た、鹿の角みたいなとこに放電してる。このバケモノ、魔法が効かないんだ!
『全隊!!退却だ!!』
「っ!いや!!駄目だ!!奴は逃げるのを待ってる!!その後村を皆殺しにするつもりだ!!」
ゼロ、おそらく奴は最初からあの村の場所を特定するつもりだったんだ。あのバケモノを囮に僕たちを誘き出す・・・良いだろう。君がその気なら、僕たちも本気で戦うだけだ!!
「フォックス!!この剣に炎貸して!」
「おいさ?」
フォックスは炎を剣に向かって吐いた。
「ふぉっ!?わー!おいらの炎が!?」
その直後、割れた地面に炎が走った。
「この割れ目に魔法で更に油を染み込ませてみたんです、とりあえずこのバケモノたち全てをこの炎の中に閉じ込める事は出来ました、後は・・・」
「あぁ、ここでみんな仕留めてやるぜ!!全員よく聞け!作戦は失敗しちまった!!だが、敗走は認めねー!何としても奴をここで倒す!!魔法がダメなら物理だ!全員剣を抜け!近接戦で仕掛けるぞ!!」
ビーンさんの掛け声で一斉に金属が擦れる音が響き渡る。
「グレイシアッ!電撃は吸収されたけど、氷はまだ分からない!奴に当てるんじゃなく覆うように氷を出せる!?」
こくり
「よっし!!中央での戦い方で行くよ!!僕が上からやる!その前に奴の動きを止めるよ!!」
「グルルルゥォォォッッ!!!」
バケモノは雄叫びを上げる。奴も直接戦う気だ、前脚を蹴り体勢を整えている。
『ズドドドドドッ!』
バケモノは一気に駆け出した。予想以上に早い、こんなの真正面から喰らったら即死だぞ・・・
「避けて!!」
僕は叫んだが、一人真正面に向かった人がいる、ビーンさんだ。
「うおりぃやぁぁぁっ!!」
『ガヂヂヂジジジッ・・・・!!!』
ビーンさんの槍とバケモノの角がぶつかり合う。
「へっ!!軽いな!!この程度でしまいか!?あのトカゲ型の半分にも及ばねーよ!!うおおおっ!!」
ビーンさんはなんとバケモノを押し返し始めた。
「ググゥ・・・グルルォォォッッ!!」
「レイ!!」
「分かってます!!グレイシア!!今だ!!」
僕は上に飛び上がる、グレイシアも奴の足元近くに潜り込んだ。
「これで・・・っ!?」
僕の死角からこのバケモノの子が現れた、そしてそいつらはグレイシアの方にも。
「グレイシアッ!!!」
「・・・っ!!!」
グレイシアは子の方に攻撃を切り替えた、放たれた氷柱の様な氷はバケモノを一気に貫く。
「これは・・・こいつ、今この瞬間にも生み出せるのか!!」
バケモノからまるで分離する様に子が次々生み出されて行く。その頻度はかなり早い数秒で一匹レベルで産まれて行く。
「くそ、レイ!!バケモノとやるには長期戦は圧倒的にこっちが不利だ!!特に親ともなれば奴は無尽蔵に子を産み出す!!流石の俺もこれ以上はここの奴らを守りながら戦う事はもう無理だぜ!?」
「けど!!今逃げたら!!」
「あぁ!村は犠牲になる!!仕方ねぇ、俺はまだ死ぬ訳にはいかねーんだ。腹、括るしかねーな・・・何人か犠牲になるかもしれねー。けど、俺の特大必殺技なら奴に勝てる」
「・・・駄目だ!!誰にも犠牲にさせられない!!」
僕はビーンさんに反対を訴えた。その直後、怒りの言葉が僕に返って来た。
「甘えんじゃねぇっ!!!お前の任務は!!ゼロの暗殺だろーが!!この二十年倒せなかった奴の暗殺だ、生半可な覚悟なら帰れ!任務失敗だ。ここで屍を見られないなら、レイ。俺たちはアダムスに逃げ帰るぜ?」
この目・・・死んでる目だ、この人は僕の知らない世界をこれでもかと言うほど見てる。
覚悟なら決めただろ・・・僕が見る事になる死体は一人だけにしかならないって。
「なら、僕が出る・・・例えどうなろうと、僕はここの人を犠牲にさせたりしない!」
「馬鹿!そう言うんじゃねーって!!お前が死んでも意味ねーだろ!!。奴を倒す方法はある!けど何の犠牲も無しには無理だって話だ!!」
「大丈夫、僕も・・・死なないから。こんなとこで誰か死ぬ必要は無い・・・死ぬのは奴一人だけだ!」
僕はビーンさんを睨み返した。
「レイお前、その目・・・」
『スチャ・・・』
僕は剣を鞘に納める。そして、剣を腰の位置に持ってきて柄に手をかける。抜刀術ってやつだ。
「真正面から受けて立つ・・・バケモノ」
「お、おいアダムスのあんた!!奴に真正面から挑むのか!?」
この人は確か十番の人だ、僕がバケモノの正面に立って構えたから心配で声をかけたのだろう。
「・・・・・」
僕は何も答えなかった。耳も目も全て奴に合わせる、それ以外は見えないし聞こえない。
「レイ・・・くそ、グレイシアちゃん!一旦レイから離れろ!!フォックス!!俺たちで周りの子を倒すぞ!!」
こく、ぴょん。
「おいさ!!」
グレイシアは僕から飛び降り、フォックスも僕のフォローに回る。
「ビーン!!あんたも!!あいつ一人にやらせる気か!?」
「そうだぜ、十番の兄ちゃんよ・・・レイは何つーのかな、普段はパッパラパーと言うかあんま頼りねーけどよ、いざ追い込まれると俺の予想を遥かに超える答えで勝利を掴み取るんだわ。あれはまぐれじゃねー、ミカミ レイって言う男の、生まれつきの才能だ。そして今も、あいつは勝利のビジョンってのが見えてる、俺はそれを信じて見る事にした。
十番、信じろ。今犠牲を無しに奴を倒せるのはあいつしかいない」
「・・・・了解!!一番!!聞こえたよな!!」
「あぁっ!!全隊!!バケモノの子に集中砲火だ!!一匹たりともあの青年との間に近づかさせるな!!」
ありがとうみんな・・・・これでやれる。
この剣には刃は無い、せいぜい尖った先端で貫く方法しか取れない。僕はその戦い方は苦手だ、だから刃を魔法で作り出す、使う魔法は風と炎、これで奴を切り裂く。
奴の魔法は角に吸収される。さっきの電撃も角に吸い寄せられる感じになっている様に感じた。なら、直接剣から魔法を角以外にぶつければ良い。
「今だ!!!行けぇっ!!!」
ビーンさんの掛け声で僕は飛び出した。奴との一直線、奴もまた僕に向かってくる。
「せぃやぁぁあああっ!!!」
僕は声を張り上げ剣の柄を握る。
見切れ・・・奴の攻撃を見据えて隙を駆け抜けろ。突進する角に触れるな、ギリギリでかわせ・・・そして次に来る前脚を振り下ろされる瞬間に僕は剣を抜け!!
『キン・・・ズバンッ!!!』
僕は一気に剣を振り抜いた。
「グルルッ!!!」
切れた・・・奴は僅かに体勢を崩す。
「ぁぁぁぁああっ!!!」
ここからだ、焼き切れ!刻み込め!全ての前脚を動けなくなるまで!!
「せいやぁぁぁぁっ!!!!」
反撃の隙を与えるな!常に僕が動き、奴のあらゆる箇所を切れ!!全身に攻撃を喰らわせろ!!
「うおぁぁぁぁぁっっ!!!」
「グルルァァァォォォッ!!」
もう叫ぶな、君はここで終わりだ。もう怖がらなくて良いんだ。今、殺してあげるから!!
「後はこの角!!」
問題はこの角だ。奴を氷漬けにするにしてもこの角があっては無理だ。けど、今のこの勢いに乗った身体なら。魔法無しの次の一撃で粉々に打ち砕ける!!
「これで!!」
「くそっ!!レイ!!後ろだっ!!」
僕の完全な死角から一匹の子が現れた。今の僕にこいつに気が付ける余裕は無かった。考えるな、何とか先に奴に攻撃を喰らわす事だけを考えろ!!
「くっ!!駄目だ!!レイの方が間に合わねー!!」
「うおおおおおっ!!!!」
その時だった、僕の横をすり抜ける様に一人の影が後ろの子に立ち向かった。
「ありがとう・・・ポップス!」
「あんたの魔法治療、凄い速さで完治してな!よし、止めを刺せ!!レイ!!」
「うん!!!」
どうやらポップスは僕たちを後から追って来てたみたいだ。これで、終わりだ!!
『バギギギギ!!バギィンッッ!!!』
奴の上から勢いと全体重を乗せた僕の一撃は奴の角を砕いた。
「グレイシア!!」
こくっ!!!
『ビキビキビキビキッッ!!』
そして僕は上からグレイシアは下から氷の魔法を放った。
「これは!行けるぞ!!」
「グゥォォォオオオオオッッ!!」
苦しそうに奴はもがく。もういい、君はもう眠れ!!
「うぅおおおおおおおおおおっっ!!!」
ん、今の叫び・・・何かさっきのと違う。
この感じ!!!
「グレイシア!!逃げろ!!」
僕は思わず最後の攻撃を止めて、グレイシアの元に飛んでしまった。そして彼女を拾い上げた。
「ウォォォオオオオオン!!!」
『バギィィィンッ!』
その直後、奴をほとんど包んでいた氷が砕け、奴は姿を現す。
もう一体と一緒に・・・
「おい、あいつは・・・」
「ブルルルルゥゥ・・・・・」
ここに来て救援だ・・・この銀色の毛並みと長い耳、話に聞いていた狼犬型の親だ。
「親が・・・二体ッ!」
この状況の危険は誰にでも分かる、僕たちみんなで辛うじて勝利出来た相手が更にもう一体現れた、一言でいうならこれが絶望だ。
「くそ・・・何でこいつまで来る・・・レイ!!まだやれるか!?」
「やれるかじゃなくてやらなきゃ無理でしょ・・・足がガタガタ言ってますけど、まだ立てるなら抗うさ!!」
僕たちは構え直す。けど、狼犬型の親は僕たちには想像出来なかった行動を取った。
「グルル・・・・・」
「え、」
「退却した?」
狼犬型は鹿型を背中に乗せ、僕たちに背を向けて何処かへ走り去った。




