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リメイク第一章 異世界のジャングル その1

 「んとー、そこ左に行ってぇ真っ直ぐ行けば本来の道に出るよー」


 僕たちは本来のルートから外れ、鉱山の反対側から出発した為、現在フォックスの案内の元最短で元の道に戻るルートを走っている。


 「にしてもここら辺は流石に道が荒れてんなぁ、泥濘んでやがるとこもある、最早ジャングルになって来てんな」


 ビーンさんはハンドルを少し取られながらも、しっかりとバイクを走らせる。


 「うん。ここら辺人がほんと通らないからねぇ。あ、でもここからもうちょいあっちに行ったところに人が住んでるとこがあるよぉ?」


 「あー、さっきの出来事があったからなぁ・・・人間がまだいるってのがなんか正直言うと喜べなくなってきたぜ」


 ビーンさんが少し苦い顔をしてる。確かに、まだ人間がいるってのは喜ばしい半分、少し怖いかもね。またさっきみたいな事になりかねない。近くにいるのなら少し警戒を強めて進んだ方が良いかもね。


 「だねー、昔おいらもあそこの連中に追いかけ回されたもん。あ、そこの人たちはねバケモノから隠れるために木の上に居住地を作ってんのさね。で、たまにそこの戦士が地上に降りて猪とかを狩ってるんだけど、たまにやられて放置されてる人がいるのよねー。ほらあんな風にさ、木から落ちちゃったんだろうねー」


 フォックスは前脚を草が生い茂る方へ向けた。何か、いるんだけど・・・


 「あー、気の毒だな、あの感じは足滑らせて落ちたって感じだか?って、ん?」


 『キキキキィィィィーーーーッッ!!!』


 「とんわー!!何すんのさね!!ビーンのあんちゃん!!」


 フォックスはビーンさんの急ブレーキで飛んでいった。グレイシアは僕がしっかりと持っていたから、いつものように澄まし顔。


 「いや待て待て!!人が倒れてんのを完全スルーするとこだったじゃねーか!!」


 「えー、あんちゃんたち先急いでるんでしょー?ここじゃ倒れてる人なんか大概死体だよー?行くだけ無駄だと思うけどなぁ」


 ここで暮らすと死体を見るのも日常茶飯事なのね。やれやれ、嫌だ嫌だ。


 「俺はあくまで軍人だ。例え国民じゃ無くても俺には倒れてる人間を見過ごす事は出来ねーの。まぁ、フォックスの言う通り先を急ぎたいのは山々だし、死体なのかはたまた、また俺たちを騙す罠の可能性もある。だから慎重に行く。見過ごす選択肢は無い。礼、あんたの耳にはあいつの音聞こえるか?」


 僕もさっきから聞き耳を立てている。この距離とこのジャングル、色んな音が混じって聞き取りづらい。けど・・・よーく聞くと、僅かにあの人間から音が聞こえる気がする。これは、心音?


 「まだ微かに生きてます!!まだ死んで無い!死にかけてるだけです!」


 「分かった!俺が行く!レイはここを・・・」


 「いや、僕が行った方が良い。僕の魔法なら、この人を治せるかもしれない」


 「だな、なら俺はここにいる。で、レイ。あんたももし何かあればすぐ俺を呼べ、良いな?」


 「はい」


 僕は人が倒れてる方に向かった。この感じ、全身を強く打ったみたいだ。この木の上から落ちたんだろうか・・・僕はすぐにこの人の身体に手を触れた。


 そして回復の魔法を与える。折れた骨を、切れた血管を繋げ・・・破裂した内臓を元に戻せ、この弱った心臓をより強く動かせるように治すんだ・・・僕には出来るだろ、その程度!





 「・・・ん、俺は?」


 「あ、気が付きました!」


 若い男の人だ、年齢は僕と同じ20歳くらいだろうか、筋肉質で、服装は何処となく原始的な感じだ。近くには簡易的な石槍みたいのも落ちてた。


 「お前は誰だ?村の戦士にお前の顔は見た事ないが、新入りか?」


 「僕たちはアダムスの方から訳あってここの辺りを旅してます、僕はレイ、あなたは?」


 「ポップス・・・で、アダムスだって?あの閉ざされた国か。さしずめ、あの男の討伐の命令でもされて放り出されたな?気の毒にな」


 「僕は僕の意志で彼に挑む、それだけですよ」


 「自分の意志で?あの腰抜けの国の奴にしては変わってるな、おまけに死にぞこないを助けるお人好し、益々変わってるよ」


 「ポップスさん、あなたはなんで死にかけてたんです?あの傷、とてもこの木の高さから落ちてもあんな複雑に骨折なんてしませんよ?」


 少し気になった、ここにある木は他の所と比べてそう高くない。なのに彼はここで倒れてた、しかも内臓が破裂するほどの強烈なのを喰らって。


 「やっぱりあの時のあれって・・・俺はこの近くの村に住む戦士だ、新米だけどな。あの日、俺は猪を仲間と共に仕留めてその帰りだった、少し雨が降り出して丁度この木の上に登り、雨が上がるのを待っていた。そして雨が上がってきて村まであと少し。その時俺は油断して足を滑らせ落ちた、そう思ってたんだが、今思い出した。俺が落ちる直前、何かに後ろから叩きつけられたんだ・・・薄れる意識の中、俺は仲間が俺を置いて去るのを地面に横たわりながら見てた。あれは、俺が死んだと思って置いて行ったんじゃない。何かに襲われてたんじゃ無いか?」


 もしそうなら、やったのはバケモノか?でもフォックスの話だとバケモノに襲われない為に木の上にいるって言わなかったか?それに、そうやって襲われたのなら、この人たちの仲間は逃げ切れたんだろうか。


 「そもそも、あれからどれだけ時間が経ったんだ?村はどうなってる・・・済まない、俺にはお前にお返し出来る物は何もないんだ」


 「礼をもらうために僕は君を助けてませんよ。それよりその村、僕も同行して良いですか?僕も確かめたいんだ・・・」


 「また遠回りになるなこりゃ、バケモノの可能性があるのなら放っておくのは出来ねーし。それに、そろそろここら辺で野宿って考えてたが、ポップス。あんたの件がある以上この色んな音がするジャングルで一夜を過ごすのは危険だ。危険の正体を突き止めるまでは今日は寝れねーよ」


 「あんたら・・・あながち、自分の意志であの国から出て来たのは間違いないかもな、お人好しだ。この壁の外は危険まみれ、そんな風に人の事に首突っ込んでたらすぐ死ぬよ?」


 「死にませんよ、僕は他人の事に首を突っ込んでる訳じゃ無いですから、あくまで僕は僕に降りかかる危険をなんとかしたいだけ、それだけです」


 「やっぱり変わってるよあんた。まぁ良い、付いて来な。そのバイクはどっかそこら辺に停めておけ、荷物だけ持って来い。この先は二輪どころか四輪も四足歩行でも進めない。この木を伝っていくしか無い」


 「分かった。荷物は俺が持つ、レイはグレイシアちゃん頼むわ」


 ビーンさんは荷物を持ってバイクから降りる、そしてそれを抱えながら木の上へひょいと登った。


 「はーい。グレイシア、僕の背中に乗って」


 こく・・・


 そして僕もグレイシアを背負って木に木登りなんて何年振りどころか、人生で初めてだ。けど、意外とすんなりいけるな・・・


 「おいらは木の上好きー!おいらは一人で付いて行くさね!」


 そしてフォックスはひとっ飛びで、飛んできた。


 「ん?喋る狐?」


 「あん?」


 「確かじーちゃんが言ってたな、その昔喋る狐が村に現れた事があるって。あんたがそうなのか。てっきり作り話だと思ってた・・・」


 「おうともさ、おいらがその喋る狐ことフォックスだ!」


 フォックスは鼻高々に言い放つ。


 「じーちゃんの話だと、村の備蓄の食糧を掻っ攫ってたって・・・」


 「ぎくっ・・・」


 「フォックス・・・君がこの村の人に追われてた原因って・・・」


 「ごめーんっ!あん時すんごいお腹すいちゃって!!つい、さ!?」


 フォックスは前脚を前に合わせてごめんと言うようなポーズを取る。


 「食い意地張るのは良いけどよフォックス、食べ物の恨みは恐ろしいんだぜ?俺も昔エイドにあったセイアン村ってとこのサンドイッチが大好物でよ、一回スチュワート隊長に取られちまってさ、いつもあの人に頭の上がらない俺がブチ切れたんだぜ?ま、返り討ちにあったけど、それでもスチュワート隊長は後で俺に謝ったのよ。俺がそんなになるくらい食べ物の恨みってのは深いんだ、分かったかフォックス?」


 「はーい、ほんとあん時はごめんよ?」


 「じーちゃんの世代の話だ、今は果物とかの栽培で何とかなってる。肉は珍しいってだけだ・・・さて、そろそろ到着だ」


 僕たちは生い茂る木々を抜けるとより深いジャングルが現れた。そして巨大な幹の木の枝の上に家のような物があちこちに建っているのが見える。


 「凄っ・・・」


 語彙力の無い感想が思わず口から漏れ出した。


 「ここら辺から急激に環境が変わる境目があるんだ。さっきまでは鬱蒼とした森だがここら辺から突然こんな風になる、そして・・・村はどうやら無事だったみたいだ」


 家の様な建物の中から明かりが漏れている。人がいる証拠だ。


 「あそこへはどうやって?」


 「この上にロープがあるだろ?それにこいつを引っ掛ける」


 ポップスさんはガチャっと木の上から垂れてるロープに金具の様な物を取り付けた。そしてシュィーっと向こうにある木に滑って行った。


 「あー、ジップラインか。成る程、それでここら辺の行き来してるんだ」


 「ほー、便利なもんだなー。で、俺たちはどうやって行けば良いんだ?」


 「ここに予備がありますよ?」


 僕は足元に置いてあった予備の金具をビーンさんに渡した。


 「つくづく思うが、俺あんたのそう言うとこあんま好きじゃねーな・・・」


 「えっ、何でですか!?」


 「なんか出し抜かれた感じがしてムカつくもん」


 わがまま言わないでよ、僕は必死にやってるだけなのに・・・


 「僕、拗ねる時は拗ねますよ?」


 「すまーん。ま、さっさと行こうぜ?」


 僕とビーンさんもジップラインを滑った。中々楽しいけど、着地怖いなこれ・・・上手いこと着地しないと木に激突する。


 そして到着するや否や村の人が出てきた。


 「おい!ポップスか!?ナーガ!!ポップスが帰ってきたぞ!!」


 あ、ポップスさん・・・彼女いたのか。


 「あ・・・ポップス!!この!大馬鹿!!!死に急いで!このほんと馬鹿ぁっ!!」


 彼女さんはポップスさんに泣きつき握り拳を何度も叩いている。


 「悪かったよナーガ。それより、記憶が曖昧なとこがあってな、ダヴェン隊長何で俺は落ちたんです?」


 一緒に出てきたこの体格の良い男の人が隊長さんか。


 「ポップス、あの時あの場所を襲ったのはバケモノだ」


 やっぱりか、でもここはまだ無事、バケモノはここには近づかなかったのか?


 「バケモノ?あそこの道はバケモノはいない筈だ」


 「そうだ、そこが問題だ。普段現れない、そして木の上にいたお前をも襲った。何が現れたのか分かるか?


 「親?」


 答えを言ったのは僕だ、僕自身も考えていて口に出てしまった。ポップスさんを襲ったのはバケモノの親である可能性がある。


 「親だと!?」


 「そう、この青年の言う通りだ。厳密には直接奴を見た者はいないが、あの巨体。あの破壊力、親以外有り得ない。幸運にもこの場所は奴に見つかる事は無かったが、代わりに撤退する為に何人かの戦士が重症を負った」


 「え、死ななかったんですか?」


 そして僕はダヴェン隊長に質問した。


 「幸運な事にな、どうにもあの親は何か他のバケモノとは目的が違ってる感じでな。我々には祈りながら通り過ぎるのを眺めるしか出来なかった」

 

 ダヴェン隊長は拳を握る。


 「なんでこんなとこに親が現れるんだよ・・・もし親にこの場所が見つかればこんな木の上の家、すぐに壊滅するぞ」


 「ゼロは、アダムスへの侵攻を本格的に始めようとしてるのかもな・・・中央で現れたトカゲ型の親、そいつを倒す事に成功したと言う事は、反撃をもうやっていても不思議じゃねー、ここに現れたって事は間違いないだろ。ゼロの奴はアダムス方面へ侵攻を企ててると考えて良い」


 ビーンさんは落ち着きながらも強い口調で語る。


 「・・・ん?待てお前、今なんて言った?」


 そこにポップスさんが突っかかった。


 「あ?アダムスに侵攻を開始しようとしてる・・・」


 「そっちじゃ無い、その前・・・倒したって言ったのか?トカゲ型ってあの一番厄介な超巨大なあいつをか?」


 「あぁ、だから俺たちは今その流れのままここに来たんだ」


 「隊長!」

 「あぁ、ビーンとやら。ならば我らに協力したはくれないか?あの親の目的がアダムス侵攻ならばお前は食い止めなければならないだろ。そして我々も、奴が行動を起こす事でこの場所が危険になる。我々はその危険からここを守らなければならない、ここであの親を何としてもでも食い止めたいのだ」


 ダヴェン隊長からは親の討伐の協力を頼まれた。


 「ビーンさん」


 「これは、考えるまでもねーか。だが問題なのは俺たちが動く事でゼロに俺たちの作戦がバレる可能性がある事だ。どうしたものか・・・」


 ビーンさんは親指を噛んで考える。


 「なら、いっそのこと見せつければどうですか?」


 「は?」


 「だって、中央で親を倒してそれがゼロも知ってるのなら、そこからアダムスが更に進撃を企てるのは誰だって予測できる。だからゼロは行動してるんじゃ無いでしょうか?だったらいっその事ゼロに進撃はもう開始してるぞってアピールするんです。それを、ここで親を倒すことで証明する。それに、ここで親を更に倒すことが出来たなら、ゼロはこれ以上の侵攻は出来なくなり、守りに入る筈。暗殺をするのなら、侵攻されるタイムリミットを受けるより、徹底した守りを突破する方がこの任務を更に簡単にさせてくれる。


 僕はこの人たちに協力しますよ」


 「・・・・・あんたのそう言う大胆なとこは正直好きだぜ?今日あんな目にあったってのに、ここの奴らをすぐに信じて協力する、そして自身に最もメリットのある選択をするか・・・あんたの将来楽しみになってきたぜ。ダヴェン、このアダムス王国軍、国境警備隊隊長、ビーン・ムゥとその一行、バケモノの親討伐に是非協力させてもらう!」


 ビーンさんはダヴェン隊長に敬礼を送る、ダヴェンも敬礼で返した。


 「ならば作戦会議を行うとしよう。作戦開始は五時間後にする、それまでに休養を取れ」


 

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