リメイク第一章 異世界の鉱山 その2
奥へと進む、この感覚。確かにあのバケモノだ。あのなんとも言えない恐怖感、近くにいる・・・
「どうやら今は寝てる時間らしいな・・・いたぜ」
ビーンさんの指差す方、あれだ。
「あれは・・・鹿?みたいな・・・」
大きな角に素早そうな足、なんとなく鹿を連想した。
「お前を最初に襲った奴はトカゲみたいだったろ?あれは通称トカゲ型って呼んでてな、それでそいつの親が中央のあいつな訳だ。今現在確認されてるのはトカゲ型を除くとあと二種、鹿型と狼犬型だ。そこにいるのは鹿型、しかも比較的大型だ。こりゃ素人相手では手こずるな」
流石に何年も戦って来ただけはある、こう言う時頼もしいね。
「どう戦います?こっそり寝込みを襲うとか?」
寝てるなら先制すべきかな?
「いや、バケモノはどんなに慎重に行動しても近づけば確実に起きる。そして感覚的に俺たちの居場所を見つけて殺しに来る。だから俺がいつもやってる方法はあえて正々堂々と真正面からやる。今回の場合どうやら敵は一体だけみたいだからな」
バケモノってよく分からない生き物だな・・・何でそう言うふうに生きるのか、ゼロなら何か知ってるかもね。
「よっしゃ、まずは俺が先に奴の前に立つ。レイは俺の後ろに付け、奴が俺に向かって来たら同時に仕掛けるぜ」
「はい・・・」
ビーンさんは堂々と歩き始めた。そして寝ていたバケモノは目を覚ます。
「グルルルル・・・・・」
「よぉ、こんなとこでおねんねとは近所迷惑だぜ、立ち退き願おうか」
「グルルァァァアアッ!!」
「って、言っても聞く奴じゃねーよな!レイ!!」
「はいっ!!」
僕は横に回り込むように走り出した。そして剣を抜き、炎を纏う。
「さて、どっちが怖ぇんだろーな!?」
ビーンさんも槍に電撃を纏う、バケモノはどうやら脅威の優先度を感じて反撃するらしい。感覚的に一番強い奴を狙う傾向があるとの事だ。今の場合流血光刃を持つ異世界の存在と、この世界の歴戦の猛者。このバケモノにとってどっちが脅威かでこの先の行動が変わる。
「ウガァァァッ!!!!」
「そっちかよ!!行ったぜレイ!!」
まさかの僕の方か。てっきり真っ直ぐビーンさんに行くと思ってた。けど、この場合の対処は僕は引き付けるだけで良い。ビーンさんが背後を取り一撃で仕留める。
僕は振り向き構え直す。集中力を上げろ、相手を見切れ・・・鹿型、あいつはどうやら牙や爪で襲うより角で攻撃をするみたいだ・・・あれ?これならビーンさんに任せなくても僕でも行ける・・・
筋肉の動きが次の行動を予測できる。角による下段からの突き上げ、前足による踏みつけ・・・
「後ろ!!取ったぜ!!!」
そして後ろに対する攻撃に対して後ろ脚を蹴り上げる。ここだ・・・
「そんなの効くか!!うおりゃぁっ!!」
「はぁっ!!!」
「へっ!?」
僕は真正面から一気に踏み込み無防備になった胴体に炎を纏った剣で切り上げた。そして背後からも電撃を纏った槍が同じ角度で振り下ろされた。そして炎の剣と電撃の槍は交差し、バケモノを両断した。
仕留めた・・・
「おいおい!あんたは別にやらなくて良いんだって!!巻き添え喰うとこだったじゃねーか!!」
怒られちゃった・・・
「す、すみません!何故か見てたら合わせれそうだなーって思ってたら身体が勝手に・・・」
「んだそりゃ、歴戦の猛者とかなら身体が相手に合わせて勝手に動くなんて事あるだろうけどよ、あんた素人だろ?たまにあんたよう分からん事やるもんな・・・まぁ良いや。とりあえず倒したんだ、戻るぜ?」
「そうですね」
僕たちはさっきの場所に戻った。
「ほら、約束通り倒してやったぜ?」
「まさか本当に倒すとは・・・」
「約束です、ガソリン。ちゃんと返して下さい」
頼む・・・
「・・・・・お前たちはあの手のバケモノなら難なく倒せる実力はあるという事は今のでよく分かった。そこでふと思った」
こいつ・・・まさか渋る気か?もしそうなら、僕は彼に、ここの人たちに刃を向けないといけないのか?
僕にやれるか?人間に剣を抜くのが・・・それだけはしたくない。
「何が言いてーんだ?」
「なに、別にどうと言う訳じゃない、あんたらは強い。それがよく分かった。だからこうとも言える、お前らを倒せればここら一帯のバケモノは最早脅威ではなくなるとな」
『キュルキュルキュル・・・・・・』
男が言い終えると徐々に変な音が近づき始めて来た。
この音、ガソリンを使うからまさかと思ってたけど。まさかね、
「おいおいおいおい!なんじゃありゃ!?」
男の後ろから大きく黒っぽい箱みたいな何かが出てきた。大きな丸い筒に、キャタピラ・・・これは、最早戦車だ。
「こんな代物、アダムスには無いだろ?この二十年、俺たちは必死に考えた。あのバケモノを倒せる方法は何か無いのか、バケモノは決して不死身では無い。ただ倒すのに多大なる犠牲を払わなければならなかった。だが、これなら一撃で葬れる。しかも遠距離からな」
「こんにゃろー!おいらたちを騙しやがってー!噛みついてやる!!」
フォックスが男に噛み付いたが、振り払われた。そして戦車へと飛び乗った。
「さぁ、どうする?今すぐ俺たちの前から消えるなら殺しはしない」
「・・・・やるならやれば?」
僕は男に言い放った。
「何?」
「元を辿れば注意を怠っていて盗まれる隙を見せた僕たちにも原因がある。壁の外、そこはどんな無法地帯か僕たちは甘く見過ぎてたんだ。君は悪く無いよ、ここで生きるにはそれが必要なんでしょ?なら、取引なんて必要ないよね。僕たちは君たちにとってお宝になりそうな物を山ほど持ってる。
ここには法律なんて無い、あるのは人間にある良心ぐらいだ。君の良心はここに住む人たちの安全を守る事。なら、なんの関係もない僕たちはただの獲物だ。要るのなら、奪えば良い。けど、僕たちはそれに全力で対抗するよ・・・グレイシア!!」
「!!」
グレイシアは戦車に向けて魔法を放つ。けど、効いてないのか。
「この装甲は魔法を受け流す!凄まじい冷気だが、こいつには効かない!!」
「ビーンさん!ここでは流石に不利です!一旦外に向かいましょう!」
「あぁ!こんなとこであんな大砲ぶっ放されたら流石の俺もひとたまりもねーよ!」
「グレイシア!フォックス!僕に乗って!!」
「あいさ!」
ぴょい
僕たちはさっきのバケモノを倒した方向に逃げた。
「にしたって、なんだよあれ。車に大砲をくっつけたのか?」
「戦車、僕たちの世界ではそう呼ばれてますね」
「おうともさ、あれカッコいいけどうるさいのなんのでさぁ?にしてもバイクの燃料で動くの?レイのあんちゃん、戦車って普通軽油だよねぇ?」
フォックス、無駄に詳しいな・・・
「この国のだとディーゼルとかの区別がまだないんじゃないかな?ま、どちらにしてもあんなのをレギュラーガソリンなんかで動かしたら燃費が悪くて仕方ない気がするね。早いところ決着をつけた方が良さそうだ」
さぁ、握れ・・・今なら出来るだろ。そして構えろ、あの人間に僕たちの怒りを教えてやれ!
僕たちは坑道の外へと飛び出した。
「さっきまでの威勢はどうした、もう怖気付いたか?」
「いや、ここからが反撃だよ二人とも降りて」
「おいさ!」
とこん・・・
『ドムンッ!!!』
「っ!!」
二人を降ろしたその次の瞬間だった。男は砲弾を僕に向かって撃ち込んだ、衝撃で僕は吹っ飛ばされる。
「っ!?レイ!!」
「あんちゃん!!」
「ふん、やはり威勢だけか・・・」
「このっ!!」
ビーンさんが怒りの表情で攻撃を繰り出す。だが、硬い装甲に阻まれる。
「こんのひきょーものがー!」
「お前たちを降ろす隙を見せたのはあの青年だ。狐、お前はむしろ感謝するんだな、あの男のおかげで寿命は少しは伸びた。だが、ほんの少しだけだ。お前は今夜の食事にでもしてやろう」
「お、おいらは脂身だらけで美味しくないよぉ!?」
フォックスは次の標的が自分と知り、後ずさる。
「構わんさ、ここの連中は肉の味を知る奴そのものが少ない。脂身だらけだろうが肉は肉だ。標的をあの狐に合わせろ、あまりぐちゃぐちゃにしないようにな?」
砲身がフォックスに向けられる。
「ひぃーっ!!」
「フォックス!逃げろ!」
「もう逃げてるよー!」
ビーンさんが呼びかける前にフォックスは何故か二足歩行で漫画のようにクルクルと足を回しながら逃げ回っている。
「ちょこまかと!」
「おりやぁ!!このやろ!!っ!!硬いなーこの!!」
ビーンさんは攻撃を繰り出すが鉄鉱石から作られた装甲はそう簡単に突破できない。
「せめてあの運転席に攻撃が当てられればよー・・・」
そしてわずかに見える操縦席の隙間を見る。
「ふっ!いくらアダムス屈指の兵士でもこの装甲は破れない!!さぁ、まずは今夜の食事だ!!照準用意!!」
そして砲身がフォックスを捉えた。
「わーっ!!やめれー!!」
「撃・・・」
「今夜の食事は、火薬でも食べてね」
「しまっ!!撃つなぁっ!!」
『バギャァンッ!!!』
砲手が撃った瞬間、戦車の砲身が突然吹き飛んだ。戦車からは煙が立ち昇る。
「あらら、お陀仏だね」
「れ、レイ!?」
『パカン・・・』
そして上部にあるハッチが開いた。中から煙と共にあの男が出てきた。
「お前、何故!?直撃を食らった筈!」
「この剣、流血光刃で防いだんですよ。ほんと頑丈でして、あの砲弾をこれで受けても傷一つ付きませんでしたよ」
「この砲弾をその剣で合わせて防いだだと!?そんな馬鹿な話があるか!」
「実際に防いだんですから馬鹿ではないですよ?それにほら、さっき僕に撃った砲弾ならそこの中に返したじゃないですか。それが何よりの証拠」
僕は砲弾を防いだ後戦車の背後に回り込み、フォックスに向かって撃とうとした瞬間にその砲身に僕に撃ち込んだ砲弾わねじ込んだ。だから砲身は暴発してしまったんだ。
「さてと、あなたの武器は壊された。まだやりますか?」
「くっ!!ぉおのぉおれぇぇっ!!」
男は殴りかかるように僕に襲いかかった。こんなのは最早目を瞑っても対処できる。僕は剣の柄を使い男の懐に入り溝落ちに喰らわせた。
「がはっ・・・」
どさっ・・・男は腹を押さえて倒れ込む。
「おのれ・・・ですか。この戦車、壊された事を相当恨んでるんですね。あなたが勝手に約束を破り、逆に返り討ちにあってその言葉はあまりに勝手過ぎるよ。けど、ここではその身勝手な行動もここの人たちを守る一つの正義らしいね。あなたの後ろ、どうやらみんなあなたが勝つ方に賭けてたみたいだ」
坑道の入り口付近には様子を見にきたここの住人がじっとこっちを見ていた。
「全く、無法ってのは人間の道徳心をも消してしまうんだね。ムカつくな・・・ねぇ、僕は今相当頭に来てるんだ。あなたたちにじゃない、そんな世界にしてしまったゼロにだ。確かにあなたたちにも相当腹が立つけどね、それ以上に僕は顔も知らないゼロに不快感を抱いたよ。
ねえ、僕はゼロを必ず倒す。必ず倒してこの二十年閉ざされた鉱山に必ず自由を取り戻させてみせるから、君たちは今度は僕たちに賭けてくれないかな?」
「お前に、賭けるだと?」
「そう、本当ならここでこんな事をしてくれた罪を償って貰いたいけど、君たちの正義の中僕たちが何をしてもそれは君たちへのイジメにしかならない。だから僕が望むのは僕を信じて欲しいという事と、ガソリンを残った分だけでも返してもらう事、それだけで良い。
そして僕たちが必ずあいつを倒すから、その時こそ今回の償いをしてもらう。償いは簡単だ、二度とこの正義を行わない事。もし、僕がここをまた通る時今のこの正義があるのなら・・・僕はここの人たちを皆殺しにするかもしれないから」
僕の最後の一言、どうやらそれは相当ここの人たちに響いたみたいだった。ここの住人はそそくさとバイクを持ってきて壊れた戦車からガソリンを移してくれた。
「おいお前・・・」
男は僕に問いかけてきた。
「本当にお前は、あの男を倒せるのか?」
「その質問はどう言う意味?僕が死んだらまたこんな事を続けるって事?」
「そうじゃない、ここ最近になってお前たち以外にも人間を見かける機会が増えた、アダムスは何をやろうとしている。本当にあの男を倒せる方法が見つかったのか?」
僕たち以外の?
「それはどんな人たち?ゼロを倒すのは僕の役目、他は来てない筈だよ」
「ふーん、大概俺たちとお前たちに差は無いってことか」
「・・・かもね」
成る程、脅威は更にいるのか。
「こんな事をしておいてお前にこれを言うのは、少々おかしいが、言っておく。気をつけろ・・・」
「ありがとう、これからはそうやって思いやりを持って下さいよ?えっと名前は・・・」
「ジュネットだ」
「僕は三上 礼、また絶対に来ますからね」
「おーい、レイ!ガソリンは入った!さっさと行くぜ!?」
「あ、はーい!」
僕はまたサイドカーに乗る。そして頭にフォックス、膝にグレイシアを乗せてバイクは発進した。




