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リメイク第一章 異世界の異端者

 少し寝袋で横になってしばらくした。今日は中々寝付けない、普通のキャンプとは訳が違うんだ。常に狙われてる、流石にそんなすんなりは寝れない。


 グレイシアはこんな環境でずっと生きてきたんだよね。凄いよこの子は・・・またこんな目に合わせてごめんね。僕はグレイシアの頭を少し撫でた。


 カサッ・・・


 ん、足音・・・


 「ビーンさん」


 「ん?起きてたかレイ、あぁ。今度の数は一体だけだ。けど妙だな、真っ直ぐこっちにくるぜ?イノシシ、いや鹿か?」


 「それにしては足音に重さがないです。犬、位でしょうか?狸とか?」


 「だとしても変だ、この歩き方法則性。野生の動物のそれとも感じない・・・四足歩行の動物ってのは分かるんだけどな」 


 ならなんだ?確かにこの足音は変だ。狙ってるのは確かだけど、狩りのそれじゃない・・・これはまるで、会いにきた?


 ガサガサッ!!


 来る!!


 「おーっす!!」


 「へ!?」


 ぼっふっ!!僕は何も出来ずそれに頭に乗られた。モフモフの何かが頭の上にいる。


 「なぁ人のあんちゃんたちよぅ、食べもんなんかない?」


 そしてそれは僕の目の前に降りると食べ物をねだった。それにしても、この生き物・・・茶色い毛並みの身体と黒い毛並みの足、そして長い尻尾。狐・・・か?なんかちょっとお腹と顔が丸い気がするけど・・・いやそれよりも


 「キツネが・・・」

 「喋ってる・・・」


 「ね」


 僕とビーンさん、そしていつのまにか起きてきたグレイシアは声を揃えた。


 「なんだよぅ!おいらは喋っちゃいけないのかよぅ!!」


 いや良いんだろうけど、この世界に住んでるビーンさんやグレイシアですらぽかんなんだ。僕はどう反応すれば良いの?


 「と、とりあえず・・・これあるけど」


 「んお!肉だ肉だ~!!おいらこんなの貰って良いのか!?」


 うんうん


 僕は荷物の中の保冷バックからサラダチキンの様な物を取り出した。あれ、保冷バックなんてあったのね。


 「んじゃ早速頂こうかね、すぅ・・・」


 キツネは息を大きく吸った。そして吐き出すと炎が吹き出し肉をこんがり焼いた。


 焼いた・・・口から炎、バケモノじゃないんだよね。


 「うまうま!これ美味いなあんちゃんたちよぅ!!これ鳥の胸肉だよね!?それにしてもお肉なんてニヒルおねぇちゃんと一緒に食べて以来だぁ!!まぐまぐっ!」


 ニヒル?飼い主がいたのかな?


 「ごっそさ〜ん!ありがとねあんちゃんたちぃ、おいらはフォックスてんだ。よろしく!」


 キツネ、フォックスは前足を差し出した。フォックスって、キツネの英語名だ。ニヒルさんが付けたのか知らないけど、ネーミングセンス無いな。


 「でもよぅ、こんなとこで人が何してんのさね?この森ほっつき歩いてんのを見るのはここ二十年で初めてだよぅ?全部バケモノって奴のせいなのかね〜。あちこちに陣取ってるからろくに食いもんを探さないんだよぉ」


 「それは大変だったね、君はいつもこの森にいるの?」


 「いんや?な〜んのあてもなくいつも呑気に散歩してるだけだよ〜」


 「なんのあてもなく?目的地とかは無いの?」


 「ん〜、無いこともないかなぁー。ニヒルおねぇちゃんをずっと探してる、おいらの大切な人なんだ。あんちゃんたちは何か知ってる?」


 フォックスは僕たちにその人の事を聞いてきた。けど、覚えはないなぁ。でも、ニヒル・・・聞いたことあるような。どこだっけ、ニヒル、なんたら・・・最近聞いた。


 「ニヒルってのは聞いた事ねーな。なぁフォックス、そいつはもしかして苗字とかあったりするのか?」


 何で苗字?心当たりある人物はいたの?


 「おー!おねぇちゃんのフルネームはニヒル アダムスっての!知ってる!?」


 「あー、やっぱわかんねぇわ。てか、あいつの名前はニーヘル・ハイム。昔のエイドの貴族の一人の名前だ。ニヒルじゃねーわ」


 少し発音が似てるだけね。


 「でも、アダムスって言いましたよね?アレックスさんと何か関係が?」


 「いや、俺もそれ考えてたんだけどよ、俺、アダムス一族の家系図は見たことあるがニヒルってのは無かったぜ?」


 「お?て事はあんちゃんたち壁の向こうの人?」


 話の話題はそっちに変わった。


 「おう、訳あって外の世界を冒険中だ」


 「へー、ならおいらが案内するよ。肉くれたお礼さね、どこ行きたいの?」


 「いや、別に大したとこに行く訳じゃねぇんだ。案内は大丈夫だ」


 流石にこれからゼロを殺しに行くからなんて言えないよね。


 「そうは言うけど、本当に大丈夫?外を歩けばどこかしこからバケモノやら害獣は出てくるし、調印式会場になんて近づいてみてよ、まず生きて帰れないよ?


 おいら、一回あそこにいるゼロってのを見たけどさ、もー怖いななんのなのさね!でっかいバケモノを従えてさ、そんなのがいるんだよ?だからあの壁の向こうに行けなかった人たちはバケモノの出ない付近にバリケード張って暮らしてるの。んで、その人たちもおいらを食糧として追いかけてくるのよねー」


 このフォックスのお陰で今この壁の外側がどんな状況なのか多少理解出来た。


 「え、まだ外に人いんの?」


 「おうともさ、ゼロが現れてから大半はあの壁に向かったけどねぇ。残された人たちは逃げられなくて各地点々とコロニーみたいのがあんのさ、あんちゃん知らなかったの?」


 「まぁな、かれこれ最後に大規模作戦を行ったのが十年以上前だからな、周辺調査は出来なかったんだ・・・外はそんな状態だったのかよ」


 かれこれ10年はアダムスは外を知らない状態になってた訳か。


 「そゆことー。んで、あんちゃん達がどこに行くのか知らんけど、お礼しないのはどうにもなー・・・ニヒルおねぇちゃんにも何かを貰ったら礼をしろって言ってたし。あ、ならおいらが今夜ここ見張っとくよ!」


 「良いのか?」


 「おうともさ!!おいらにお任せあれ!この長い耳で何から何まで聞き分けてやるさね!!」


 「うーん・・・どうするレイ?」


 「え、僕に聞かないで下さいよ・・・グレイシア?」


 ・・・・・・・


 無言。


 なでなで・・・


 と思ったらおもむろにフォックスの頭を撫でた。あ、エキノコックス・・・大丈夫かな?


 「おー、撫でるの上手いねぇ・・・ぐがー・・・」


 見張ると言ったのに寝た・・・


 「どうする?」


 「寝ちゃったのなら仕方ないでしょ。一応小狐っぽいし、喋り方とかも子供っぽいし、仕草も子供っぽいですから危険は無いと思いますよ。とりあえず今度は僕が見張りますよ」


 「そうするか、まだ夜明けまで結構あるしな。二時間経ったらまた起こしてくれ、それまで寝るわ」


 ビーンさんは寝袋にこもった。グレイシアはフォックスを抱き抱えそのまま寝た。僕は星空を眺めながら物思いにふけっていた。


 しかし、今思えば一応あちこちにファンタジーが散りばめられてるなぁ。魔法に始まって、この変わった剣、害獣やバケモノ、喋る動物、そして予言も。僕の知るファンタジーではないけど、RPGとしての要素は揃ってる。


 さて、もし仮に僕がゼロを倒せたのなら次はどうする?そのままアダムスへ帰るのか、帰ってその先は・・・僕は今度こそ普通に暮らせるのか?


 多分、ゼロは元の世界への帰り方は知らないと僕は踏んでる。なら僕がやるべき事は元の世界に帰る方法を探してみるか・・・元の世界か、この世界に来てもう3日経つんだね。


 あれ、僕はふとこの世界に来る前の朝を思い出していた。そこにヒントがあったんだ。


 「思い出したぁっ!!!」


 「ふぁ!?」

 「ほへっ!?」

 「っ・・・・・」

 

 僕は思わず大声を出してしまった。そして訳がわからなくなってる、どうなってんのこれ・・・流石に偶然であってくれ。


 「どしたレイ、敵でも出たか?」

 

 「うにゅ・・・あれ?おいらいつのまに寝てた?ほい」


 フォックスはグレイシアから僕の頭に乗ってきた。


 「わっ!重っ!?」


 「あ、ごめんちゃい。なんだか乗り心地の良さそうな頭があったもんでよぅ、ついつい・・・でも、あんちゃんの頭、なんか懐かしい感じ。ニヒルお姉ちゃんみたいに身体に妙にフィットするよ?」


 「あ、そうそれ!!ニヒル アダムス!!何処かで聞いたと思ったらその名前!僕がこの世界にくる日の朝、ニュースで見たんだよ!変わったニュースだから覚えてる!確か50年くらい前に行方不明になってた人でつい最近遺体で発見されたんだ!!」


 僕は思い出す限りを話した、けど余計に訳が分からなくなった。どう言う事?なんで別の世界の人が僕はたちの世界で・・・


 「逆に異世界に飛んだのか?って待て・・・五十年前つったか?フォックス、あんたそのニヒルちゃんとはぐれたのって何年前だ?」


 「うーん、結構古いよ?五百年くらいかなぁ・・・」


 ・・・・?


 「?」

 「?」


 僕とビーンさんは顔を見合わせた、ケタが一つくらい違って聞こえたけど、僕の空耳じゃないよね?ビーンさんも同じ反応だから良いはず。


 「うーん、五十年前なら別人かなぁ・・・ところであんちゃんよぅ、この世界ってどゆことなの?」


 「え゛っ!!?」


 そこ聞くの?流石に耳が大きいなぁ・・・


 「あー、実は僕別の世界からやってきててさ」


 正直に答えた、今はもう身分を隠すとか以前の問題だ。


 「あ!そうなの!?おいらもさね!!もしかして日本!?」


 「え、まさか!!」


 おいおいおいおい!!どこまで僕に情報を押し付ければ良い!?


 「おいらも日本にいたんだよぉ!!ニヒルおねぇちゃんもそこで育ったんだって!!おいらの出身はキョウトのイナリヤマってとこにいたんだけどね?突然こんなとこに飛ばされちゃったの!その時にさ、ニヒルおねぇちゃんもそんな感じで来たみたいでさ!」


 「ちょちよちょい!!それなら何か!?ニヒルちゃんとお前はレイと同じく別の世界から来たってのか!?」

 

 「そゆことじゃないの?だっておいらがここにいるんだもん。それにしても日本かぁ懐かしいなぁ〜・・・」


 まるで古い友人に会ったかのようにフォックスは振る舞った。


 はっ!?何をぼけっとしてるの僕!!今こそ考えて!思考を張り巡らせてなんとか追いつくんだ!!


 「ねぇ、フォックス。そのニヒルさんとは一緒に旅してたの?」


 「そんなとこ、昔過ぎてうろ覚えなんだけどね?あっちこっち争ってたから一緒に旅して仲良くさせようとしてたの。あーそうそう、そんな剣持ってさ!!って・・・あー!!その剣!!おねぇちゃんの!!」


 フォックスは流血光刃を指差した。


 「え、この剣って・・・そして500年。まさか・・・ビーンさん、なんとなくわかりましたよ。家系図にニヒル アダムスがない理由・・・あの国の、初代国王ってもしかして」


 「ニヒル アダムスが、初代国王の名前?」


 僕に続いてビーンさんが答えた。それしかないよね・・・なら後説明がつかないのは。


 「でもよぅ、あんちゃんの言ってたニヒルおねぇちゃんは50年前に居なくなったんでしょ?やっぱり人違いじゃないの?」


 そう、そこだ。そこが説明がつかない事の一つだ。でも、


 「いや、もしかしてだけど一つの可能性がふと頭よぎったんだ。フォックスはさ、この世界に来る前日本が西暦何年か覚えてる?分からないなら街がどのくらい感じだったかでも良いから」


 「うーん、せーれきは良く分かんないけどよぅ、じどーしゃってのは走ってたよ確か、三つ車輪がついたへんちくりんな鉄の塊が近所をよく走ってたねぇ。あと電車にしんかんせんってのがあった、変な丸っこくてなっがいやつさ」


 「三輪自動車に0系新幹線か・・・なら多分60年代だね、つまり僕たちの時代から50年ほど前になる。そして今は500年が経つのなら、もしかしたらこの世界は僕たちの世界と時間の流れ方が違うんじゃないですか?」


 これはファンタジーなのか?SFな気がするな、だって時間の流れの違いって相対性理論がうんぬんかんぬんって聞くもん。


 「どゆこと?よくわかんねーけど?」


 ビーンさんは分からない。


 「僕も分からないです、そこまで学力はないですもん。とにかく言えるのは向こうの50年はここでは500年も経ってたって事です」


 「あー、あ?  うん、分かったことにする。つまり五十年は五百年なんだな?」


 分かってないなこれ。


 「・・・あんちゃんたち、もしかしてゼロのとこに行こうとしてる?」


 「え?何で急に」


 フォックスはじとーっと僕を見て推測した。


 「だってあいつもおいらたちと同じだからねぇ、おいらはあいつの目的なんか知ったこっちゃないから、手は出さないけどさ、あんちゃんはそうは行かないんでしょ?分かった!おいら案内するよ!伊達にここ五百年はここをうろうろしてないよ?そんな地図より安全な道おいら知ってるから!」


 「良いのか?お前、ゼロはおっかないってさっき」


 「おいらだってあいつにはほとほと困ってんのさ、バケモノのせいで食べ物にありつけない日々なのね。あー!焼き肉食べたいよー!!食べ放題のお店でカルビ、ミノ、ホルモンにタン!その他諸々!見たところあんちゃんたち結構強そうじゃん?おいら腹を括るさね!!」


 フォックス、肉の部位詳しいな・・・


 「そうだね。分かったよ、なら道案内任せても良いかな?でも、危険が迫ったら早く逃げるんだよ?」


 「おうともさ!逃げ足なら誰にも負けないさね!!」

 

 「そのはしゃぎっぷりなら誰にも追いつけねーな。俺からも頼んだわ、全部終わったら打ち上げに焼肉行こうぜ?」


 「おー!!」


 アダムスを出発して一日、新たな仲間が加わった。

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