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リメイク第一章 異世界の旅立ち

 中央駅、ここに近づくに連れて人は増えてきた。バケモノの騒動の後、通常ならば中止するであろうイベントを強行する王の言葉を知りたがり、この国のメディアが駅に集結していた。


 「陛下!今回のバケモノ襲撃はゼロによるものと断定しても!?」

 「ボーダーで発見された予言の書についてですが!!」

 「あのバケモノを倒したのはたったの三人で倒した噂は本当ですか!?」


 あの戦いは生中継されてたんだ。でもあの状況をしっかりと理解するのは難しい。様々な憶測が飛び交っている・・・


 「その件につきましては、西ボーダー到着時にお話ししますので、質問をお控えくださりますようお願いします!」


 アレックスさんはメディアの質問を無理矢理振り切り、本来の予定である高速鉄道出発式を始めた。


 高速鉄道側のホーム、時刻は出発予定時刻をずらして今は7時半、僕たちがホームに到着すると同時に列車も入線してきた。


 写真には見てたけどやっぱり丸い鼻のデザインの車両だ。そして形式名は『壱型』と言うらしい、ゼロはこの世界にないもんね。


 「さーてと!皆さーん!!色々ありまして少し遅れる事になってしまいましたが、今日!我が国は新たなる進歩をします!!ご覧あれ!これが我が国の技術の結晶です!!」


 まるでさっきの戦いはなかったかのようにアレックスさんは振る舞った、ここに集まった人たちもアレックスさんの勢いに負けてる、流石はメディア出演の多い人だな。


 「・・・で、あるからして!様々な走行実験を繰り返し!本日!世界初の高速鉄道がここに誕生しました!!営業一番列車!ただ今より出発いたします!!では!私も乗って参ります!!」


 アレックスさんは指二本をピッとこめかみに当て、ウインクしながら車内に乗り込んだ、僕もその後ろをコソコソついて行く。


 営業一番列車の競争倍率は相当高かったらしい。後から来た人が乗っちゃってすみません・・・とは言っても、全十二両ある内の二両の一等客室はこの一番列車に限り王室が抑えてるみたいで、僕たちはそこに乗り込んでる。


 因みにこの列車、十二両編成で、僕たちの乗ってる一等個室が一両、一等一般客室が二両、二等一般客室が八両、食堂車が一両で出来てるらしい。王室は個室と一等客室を押さえてるんだって。


 「ふぅ、緊張したなぁ・・・」

 

 「確かに、なんだか無理矢理元気にしてる感じしましたからね。今度もう一度やります?こんな出発式じゃなくて」


 僕は疲れて椅子にぐでっと倒れたアレックスさんに声をかけた。


 「ん、それ良いかも!!採用!!なんなら今度は各駅にカメラを配置してさ!駅到着の全行程を生中継するのさ!!今日はあのゴタゴタでそれが出来てないからね!!それで西ボーダー到着時に盛大に花火を打ち上げる!!盛り上がるぞ!!」


 あー・・・この人、王よりも社長と言うよりもエンターテイナーの方が向いてるんじゃない?


 「あ、レイ君、ダストちゃん。今日は今朝から疲れただろ?この個室は寝台の役割あってね、最短五時間と言えどもかなりの距離だ。だから一等個室の座席はベッドにもなるんだ。短いけど、仮眠を取ると良い。私はビーン君と話してくるよ」


 そう言うとアレックスさんは一等一般の方へと向かった。


 「とは言っても、まだ特に眠くないな・・・」


 僕はまだベッドを出さず、彼女と一緒に飛んでいく車窓を眺めた。


 「あ、名前・・・」


 そこで考えていたのは彼女の名前だ、昨日お願いされたのを思い出した。この子に合ってるのは・・・今朝のダイアモンドダストを引き起こせる程の魔法・・・


 ダストね・・・だからと言ってダイアモンド・ダストちゃんは無いよな、芸名か?


 にしても、この子もそうだけど良くあれを倒せたなぁ、また変だった、僕は異様に冷静に物事を分析してた・・・何なんだろうなこれ。


 って、それを知ってるのは多分ゼロだ、彼もきっと何かがおかしくなったんだと僕は仮定してる、奴に直接聞かなくてはいけないな。


 「おぅレイ、まだ起きてるか?陛下だけど話してる最中に寝ちまいやがってよ、だからこっちきたぜ」


 ビーンさんが部屋にやってきた。


 「いやぁそれにしても早っ、レイの国の高速鉄道はこれより更に早いんだろ?それって景色見れるのか?」


 この人は逆に元気だなぁ、アレックスさんだって走り回ってたからそりゃ疲れるだろうけど、一番最初から最後まで戦ってたのはビーンさんだ。


 「けんどよ、ダストちゃんの魔法ってすげぇよな。俺もムゥの電撃の魔法の中じゃトップクラスって自負してっけどよ、周囲の環境すら変えちまう魔法なんて見た事も聞いた事もねぇ。あのバケモノなんて凍っちまって氷山になったどころかありゃ氷河だな、辺り一体氷の川みたいにずら〜ってなってたもんなぁ」


 「あ、氷河?」


 僕は何気ないビーンさんの一言にピンと来た。


 「ん?どした?すげぇと言えばレイ、あんたもいきなり頼もしく・・・」


 「グレイシアだ・・・」


 「ふぁ?なに?ぐれ?なんだって?」


 僕はビーンさんの話を無理矢理区切った。なんか降ってきた感じがする、これ良いんじゃない?


 「ねぇ、君に頼まれてた名前、今思いついたんだ。聞いてくれる?」


 こくり


 期待の眼差し、安直なネーミングだとも言われるかもしれないけど、僕にとってはこれが一番彼女らしく、僕たちが家族として生きるのに一番の名前だって思ったんだ。


 「へぇ、どんな名前だ?」


 「グレイシア・ダスト。グレイシアは僕たちの世界にある英語って言語で氷河の意味を持つんです。そしてこのダストは今までの意味とは違う、今朝のあれ見ました?大気中の水分が凍ってキラキラ輝いてた」


 「あー、あれ。あれって現象の名前あんの?」


 「あれはダイアモンドダストって言うんですよ、あれが起きる条件ってのは空気が澄んでて、風もなくて、尚且つ気温が極端に低い晴れの日しか見れない奇跡とも呼べる現象なんです。だから思いついたのは、『氷河の世界で輝く奇跡の輝き』と言う意味を込めて、グレイシア・ダスト。どう思う?」


 二人は一同しばらく固まってた、変だったかな?


 ばんざーい・・・彼女は両手を天に向かって広げた、無表情だけど、喜んでるのか?これ。うん、多分喜びの舞だこれ。その後両手を広げたままわちゃわちゃし出したから相当喜んでると思う。


 「へっ、めちゃくちゃ喜んでくれたみてーだな、にしても驚いたぜレイ。名前のセンスすげーな、同じダストをつけるにしても全く意味を変えてくるとはよ。俺もよ一応考えてたんだが、クレイジートモコか、ハピハピピーポーパーコってのを思いついてたんだよ、これも捨てがたいがグレイシアは結構しっくりくるな」


 ビーンさん、ネーミングセンスゼロ以下だ。


 ちょんちょん・・・


 珍しく彼女はビーンさんを引っ張った。


 「お?どした?こっちの名前の方が良かったか?」


 『パッシィンッ!!!』


 「いったい!!」


 グレイシアはその名前を付けそうにされてた事に腹を立て、ビーンさんに綺麗な音を立ててビンタをくらわせた。


 ポカポカポカポカポカポカ・・・そしてビーンさんによじ登って頭を叩いた。まるでこの狂ったネジを治してやると言わんばかりに頭に集中して叩いてる。


 「わー!!悪かった!変な名前でした!!すみません!!」


 ふんすっ・・・グレイシアは大きく鼻から息を吐いた。


 「じゃぁ決まりだね。一緒にこれから頑張ろうねグレイシア」


 こくこくこくこく!!


 「おう、グレイシアちゃんよろしくなぁ〜・・・でも、俺のそんな変な名前か?」


 むっす!!


 「ひぃっ!!」


 バケモノ相手に無双してた人がこんな小さな子に腰が引けてる・・・


 「名前も決まった事だし、英気を養う為今はちょっと寝てようか」


 こくり


 「俺もー、今朝から運動しっぱなしで疲れたぜ」


 三人は仲良く・・・と言うより、僕とビーンさんは椅子で寝て、グレイシアだけベッドでコロンの寝ていた。


 



 「ん、」


 ふと目が覚めた、外の景色は日が真上近くまで来てる。外のあの景色は確か、中央へ向かう列車から見た工業地帯。って事はもうすぐ到着か。


 「や、お目覚めみたいだね。もうすぐ終点の西ボーダーだ。私もみんなもわ気を引き締めて行こう」


 アレックスさんが僕たちを起こしにやって来た。これでビーンさんもグレイシアも起きる。


 列車は終点に近づき徐々にスピードを落とし始めた。そして、ゆっくりとホームに入線。


 外に出るや否や、そこは各メディアで埋め尽くされていた。今朝アレックスさんの言ったバケモノについての話についての質問ばかりだ。この高速鉄道について質問する声は聞こえない。アレックスさん、この開通式を楽しみにしてたみたいだから、これに関する質問がないなんて少し可哀想だな。まぁ、国民の意見はそれどころではないって言うところか。


 「・・・では、今朝未明。中央、カグツ区においてバケモノの襲撃が発生しました。あのバケモノは親であり、かなりの怪我人を出す結果になりました事をお詫び申し上げます。しかし、我々はそのバケモノの討伐にも成功しました。この三名の活躍により、親のバケモノは氷漬けにされ、捕獲する事に成功したのです。


 ここで、皆さまの知りたい事を申し上げます。今回のこの襲撃はこの二十年無かった、あの侵略者()()によるもの。この長きに渡ってきたこの国の平和の歴史に傷を付けられたのです。これは彼による開戦の合図と私は受け取った、だから私も、彼に言わなければならないことがある。


 この出発式は、君への開戦の合図。我々はもう、君の脅威に屈しない。見ただろ?我々の力を、君がどれだけ強力なバケモノを揃えても、我々の力は君を超えるだろう。我が国、アダムス王国は、エイド王国現支配者、ゼロに対し宣戦を布告する!以上だ!!」


 国王から発せられたのは宣戦布告の言葉、この街の記者たちはアレックスさんよ力強い言葉に押されて呆けていた。僕たちはアレックスさんの後ろをちょこちょこついていった。


 「レイ君、聞いてはいなかったけど、ゼロ暗殺作戦はどうやって遂行するつもりだい?」


 僕たちは国境の壁に向かって歩きながら作戦会議を開いた。


 「それですけど、今ゼロは何処に?」


 「移動していないとなると、彼は今も調印式会場を根城にしている。彼はあそこから動く事は無い。あそこの構造は巨大な開けたドーム状の建物で様々な競技会場にも使える施設になる予定だったんだ」


 開けたドーム状の建物・・・サッカーのスタジアムみたいな感じか。


 「分かりました、後、外のバケモノっていつもどれくらい現れるんです?」


 「ん?外のなら大体毎朝俺が外の見回りしてると数体は現れる。多い時は三十とかだな。たまに全く出ねー時もあるぜ」


 ビーンさんが答えた、となるとバケモノの数は・・・


 「後一つ、ここからその調印式会場まではどれ程掛かります?」


 「今、移動用のバイクを用意してる。今朝、君が乗り回してたアレと同型のだよ。そうだな、何もなく真っ直ぐ進んで三日と言ったところだね。青龍地区、レーシキ市。道中、山や谷を変えたりするから結構な長旅になるだろうね」


 最短で三日か・・・


 「作戦、決まりました」


 「はやっ!?何を考えてるのかと思ったら作戦か、どんなふうにするつもりなんだい?」


 「その前に一つ聞いてもらいたいんです。グレイシア、何か言ってみて」


 僕はグレイシアにお願いした。そして彼女はすぐに「あいうえお」と口にした。


 「今の、どう言う事?この子は口を動かしただけにしか・・・」


 「いえ、この子はちゃんと喋ったんですよ。この子は歌は歌えるようにはなったんですけど、まだ普通に話す事は出来ません。でも、僕だけにはこの子の声が聞こえるんです」


 「そ、それは読唇術か何かの技術?」


 「いえ、僕がこの世界に来てちょっと他の人間とは違う特徴があるんです。まず、全ての魔法が使える事、それは伝えましたよね。それともう一つ、多分僕は五感全ての感覚が少なくとも数倍になってる。特に耳は誰にも聞こえないような小さな音も僕は聞き取れるんです」


 僕の予測はこれだ、あのワンコさん達と戦った時も全く動じなかったのは、簡単に動きを読めたからだ。そしてこの聴力、多分僕は常人より五感が鋭くなってる。痛覚は別に変わった気はしないけど。


 「今も、ビーンさんおならしました」


 「うぇ!?すかしっぺだっのに!!ってか言うなよ!!恥ずかしいじゃん!!」


 「わっ!痛い痛い!!ごめんなさい!!」


 ビーンさんに羽交い締めにされた。


 ごめん、今のはデリカシー無かった。素直に口が滑った・・・


 「で、作戦なんですけど、この聴力を活かせないかと思ったんです。外にバケモノは出るとしても日に数体から数十、それならこの耳でバケモノのいない方向を聴きながら向かえば良い、それで彼に近づく」


 「成る程・・・確かレイ君の予測ではバケモノの親はもしかしたら、ゼロと繋がっているかもと言っていたね、これは私も思っていたんだ。そして子も、ゼロと繋がってる可能性もあるんだ。普段現れるバケモノは知能は無いように見える。けど、彼がそばにいた時は違ったんだ。突然統率が取れたような行動を起こした。これの条件も定かでは無いけど、考え過ぎの意見ならばバケモノの目はゼロに繋がっていると考えても良いかもね」


 成る程、確かにそれくらい用心した方が良いかも。もし出会ったら倒せば良いと思ってたけど、それもあまり良くは無いんだね。こう言う場合は考え過ぎで行動するのがベストだ、気を引き締め直そう。


 「そして、それらも含めて考慮すると、ゼロも僕と同じ様に五感が優れてるのかもしれない。そしてその感覚は僕以上と考えて行動するのが一番ですね」


 「そうだね、さてと壁が近づいて来たよ」


 壁の門の前にはサイドカー付きのバイクが一台置かれている、僕が今朝乗ってたのと同じだ。


 「あ、これは」


 「暗殺刃号(アサシンごう)、音を立てないかつ、高速に移動できる事を主軸に設計された潜入特化のバイクだ。今回のような暗殺任務ならこれが一番良いだろう。エンジン音も最大で冷蔵庫の唸る音程度しか鳴らない。凄いでしょ?食糧も一週間分は詰んで置いた」


 アレックスさんは自慢げに語る。確かに凄いな、静音設計に関してはもしかしてこの世界、僕たちの世界を超えてる?


 「良いですね、これなら行けます!!」


 「なら・・・任せたよ、門を開けろ!!!」


 ゴゴゴという音を立てながら門はゆっくりと開く。


 「運転なら俺に任せろ。レイは膝にグレイシア乗せて景色でも眺めてな?」


 ビーンさんは運転席に跨り、僕とグレイシアはストンとサイドカーに収まった。


 「これより!エイド国王暗殺者!!通称ゼロの暗殺任務をここに開始する!!全ては!!平和の為に!!さぁ!!行くぞ!!」


 アレックスさんに煽られ、僕たちは全速力で発進した。

 

 僕たちはこれから顔も知らない男、ゼロを倒しに向かう事になる。


 



 予言の勇者編 完


 

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