リメイク第一章 異世界の決意
「さてと、まだ完全には殺しきれてない・・・もっと凍らせとこ」
僕の勝利はこいつを殺す事にはない、あくまでも、こいつだって一つの生命、それにこいつは・・・
彼が一体今どう思ってるのかは分からないけど、僕は後味が悪いからって理由だけで今、彼を殺したりはしない。
僕は氷の魔法でより頑丈に絶対に身動きが取れないレベルで氷漬けにした。
「ふぅ、それにしても凄かったよ君の魔法、僕、結構全力出したのに君の魔法は僕の魔法ごと飲み込んじゃったんだもん。
てれてれ・・・彼女を褒めたら照れたのか、顔をうつむかせて僕の真後ろに隠れた。
「倒した・・・のか?」
「たったの三人で?」
さて、ガヤがやってくる頃か。
「この子たちは・・・何なんです?ビーン隊長の隠し部隊か何かですか?」
「いや、こいつらはだな・・・」
ビーンさんがどうやって説明したものかと悩んでいた。そしてすぐさまに僕たち周辺は人でごった返した。
「すまない!!通してくれ!!」
けど、アレックスさんの呼び声に一斉に黙った。
「はぁ、はぁ・・・やぁレイ君・・・走ってきたよ。それにしても、氷漬けで倒すとは、こんなの誰も思いつかなかったよ・・・それで彼は、まだ死んでいないのかい?」
アレックスさんは僕たちの作り上げた氷像を見上げた。
「はい、ただ二度と動けなくなるくらいに凍らせましたけど」
「・・・なら、ここに研究施設を建てよう。バケモノの出現のタイミングは彼がゼロとなったと同時だった。バケモノは一体何処から来たのか、それを探る必要があるね」
「そこに関しては同感です、ここなら周辺に何もないですしね。それにゼロがもし、僕と同じ存在なのだとしたら、何か・・・あ、そう言えば以前に一度バケモノを倒したって言いましたよね?それはどうなったんです?」
僕はアレックスさんに質問した、倒したのなら遺体の一つあってもいい筈だ。
「あれか。あれは、消えてしまったんだ」
「どう言う事です?」
アレックスさんは眉間に皺を寄せて話し始めた。
「奴を倒してすぐだ、バケモノはまるで最初からそこに何もなかったようにスッと消えてしまったんだ。透明になって行く感じでね」
どゆこと?蒸発していったとかならまだ分かる。それでも非常識だけど、透明になるように消えた?
「子は別にそんな事ないですよね?確かビーンさんが倒してもそこに倒れたままでした」
「そう、だから親と子は生物的には全く別の存在だと我々は解釈してる。今回、君が氷漬けで生捕りにしてくれたお陰でようやくこいつの研究が出来る、これは一体何なのか。アマナ・・・ゼロはどうやってこのバケモノを集めたのか。ようやく分かる」
アレックスさんは拳を強く握り締めた。バケモノに対する怒りをかなり持っているみたいだ、ここの戦果を必ずゼロへ思い知らせてやる、そう言ってるように見える。
けど、それじゃ遅いかもしれない。ゼロはきっと待ってはくれないな。
「アレックスさん、一つ聞いても良いです?確かスチュワートさんはゼロと面識があるって聞きました。彼と最初に出会ったのっていつ頃でした?」
「え?あれは確か二十年くらい前だね。とある事件があって、私もその時彼と知り合ったんだ、それでスチュワートたちと一緒になってその事件を解決したんだよ。それから一ヶ月、調印式の日、彼は変わった。まるで別人のようになってね」
一ヶ月・・・
「ならアレックスさん、僕に一つ提案があります・・・僕はこれからゼロを倒す」
僕の発言にしばらく静まり返った。
「な、何言ってるんだ君は!?君の望みは!!」
「えぇ、僕はただ平和を願ってる。けど、ゼロさんはどうやら僕にそうなってほしくないみたいだからね・・・邪魔するなら排除する。それがなんであろうともね」
「予言に従うと言うのか?」
「従う気なんかさらさらないですよ、僕のやりたい事がたまたま予言の通りに行動する事になった。ただそれだけです」
予言は関係ない、僕は僕の為に奴と戦ってやる。考える必要は今は無い。
「いや、駄目だ!許可できない!確かに今回の彼の行動は我々の予想を完全に超えてきた。しかし、彼と戦うにしてもまだ部隊が編成出来ないんだ。以前、彼の元に大隊を連れて反撃を試みた事がある。その結果は大敗だ、我が軍の大規模戦力を今我々は失った状態にある。今努めるべきはまずは防衛の強化、それから彼と戦える部隊の育成だ」
この人、少し保守的な考えなのね・・・この国の安定を最優先に考える、犠牲の上の勝利は無い。そう言う考えだ。
それは僕も同じだよ、犠牲なんて払いたく無いさ。ましてや命を捧げるなんて嫌だ。ただ、一時的に自分を殺すくらいの犠牲なら払うよ。
「だったら、アレックスさんはそれに努めて下さい。僕は単身向かいます」
「な、尚更駄目に決まってる!!何を考えているんだ!?」
少し怒られてしまった、今のは僕の説明不足もある。
「ただ単に乗り込もうって話じゃありません。ゼロは今回突然、僕たちの隙を完全に突いて来た。なら、同じ方法でやり返そうと思いまして」
「同じ・・・奇襲を仕掛けると?」
「もっと簡潔に言えば暗殺です、暗殺でゼロを倒す」
今僕は人生で言ってはいけない事を言った。誰かを殺す、そんな言葉を僕の口から出さなきゃいけなくなるなんてね。
後味、悪いんだろうな・・・けど、僕が平和に暮らす為なら、その程度の犠牲は払うよ。
「確かに、今まで彼に暗殺を仕掛ける事なんてした事がない。だが、君は暗殺のノウハウを知ってる訳じゃないだろ?」
「これは自意識過剰って言われるかもしれませんけど、テレビゲームで僕、結構暗殺した事があるんです。最近のゲームはリアリティが凄くて、たかがゲームでも訓練レベルになる事もあります」
「君の世界のゲームか・・・何だかそれはそれですごく気になる話ではあるけど、実際に人を殺すのはゲームとは訳が違うんだぞ?」
何だか今の言い方、まるでかつて人を殺した事があるような言い方に聞こえるな。
「でも、相手がまたいつ襲ってくるのか分からないこの状況、手をこまねいている時間は無いんだ」
僕は目で訴えた、睨むように僕は決意の眼差しをアレックスさんに向ける。
「っ・・・君の言う事も一理あるにはある、この状況を打開するには一刻も早く行動はすべきだとは思うんだ。だがどうやって向こうまで行く?この二十年、彼に近づけた者はビーン君以外にいない」
「なら、俺が同行すれば良いんじゃねーですか?陛下、俺なら一度奴の目の前まで迫った事がある、小石程度しか投げつけられなかったけどな。
陛下、これは確かに無謀な賭けになるかもしれません、ですがこの戦いで感じた。レイは強い、コンビネーションも正直な話最高だ。今まで俺に合わせられるのは、スチュワート隊長だけでした。だから思うんです、予言は完遂出来る。本人にその意思が芽生えたのなら、俺はこいつを守り抜き、ゼロを今度こそ倒す」
そしてビーンさんも決意の眼差しを向けた。
「ビーン君・・・」
がしっ・・・やっぱり、君もくるよね。これから何を見る事になるのか、覚悟はできてるみたい。
「そして、この子も必要です・・・この戦いのMVPは彼女です。この3人でゼロの暗殺に向かいたいんです」
「・・・・・」
アレックスさんは悩んでいた、この人が心優しい性格なのはここまで言ってもイエスを言えない事から分かる。でも、分かってほしい、僕には多分時間は無いから。
「待ってくれ!!!」
突然間に割って入るように声が響いた。
「へ、ワンコさん!?」
「あ!覚えてくれたんですね!!そうです!我です!!我も同行させて下さい!!」
なんか、目を輝かせて嬉しそう・・・犬か?キャラ全然違ってるし。
「ちょ、その前に質問良いですか?」
「はい!」
「君今警察にいる筈だよね?」
まずはそれを聞かせてくれ。
「いや、実はあの後身柄を中央まで送る事になったんですけど、その際この騒ぎが起きまして警察もそれどころではなくなって・・・それで街頭テレビを見たらあなたが映っているのが見えて駆けつけたんです!」
「駆けつけたって・・・それで君は何をしようとしたの?」
「我をあなたの下僕にさせて下さい!!我は今まで、忠誠を誓うべき存在を見誤っていた・・・あなたのように行動力があり、勇気があり、全てをしっかりと見られる存在。我はずっとそんな存在を待ち望んでいました!我はあなたに心を奪われました!そして、我が犯した罪を償う為にもこの危険な任務!我に行かせてはくれないでしょうか!?」
近い・・・
「なら、ワンコさん・・・3回回ってワンッ!てやれます?」
僕もどんな質問してるの・・・
「クルクルクル・・・ワンッ!!」
なんの躊躇なくやったよこの人・・・あの一件でこの人、本当に僕に忠誠誓う気になっちゃったんだ・・・詐欺に合わないか心配だ。
「あの、ワンコさん・・・」
「はい!」
「来ないで下さい」
「ガーンッ!!」
ガーンを、声にして聞いたの初めてだ。それより今の一言、だいぶショックだったみたい。
「あなたは普通に刑務所で罪を償って下さい、刑期が終わったらなんでもやってくれて構わないですから。今は僕とこの2人でやりますので」
「はい!!では刑期を終えたら我を下僕にして下さい!!」
まぁ、好きにして・・・ワンコさんは嬉しそうに警察署のある方向へ走っていった。なんだったんだ?
「彼は、これまで誰にも忠誠を誓うなんて言った事は無かった・・・ヒィ一族の誇りと国への忠誠を第一に、暗殺業の中にいた。決して、誰か個人の為に動くなんて無かった・・・レイ君、先の戦いもそうだけど、君はどうやら何か、今までと違う何かがあるのかもしれない。確証は無いけどそう感じた。分かったよ、ゼロ暗殺任務を君たちに一任する!」
『はっ!!』
アレックスさんはようやく首を縦に振った。僕たちはアレックスさんに合わせて敬礼する。ビーンさんはビシッと、僕は見よう見まね、彼女はただ手を挙げてるだけ。
「高速鉄道の開通式は予定通り行おう。そしてそれが君たちの作戦開始の合図になる、まずは高速鉄道で西ボーダーへ向かう、付いてきてくれ!」
太陽が登り始めた。巨大な氷像が日光に照らされる、それと同時に僕たちの周りをキラキラしたものが漂っている。
ダイヤモンドダストだ。彼女の使うイツ族の魔法と言うのは氷ではなく冷気を扱う。ここ周辺の気温はおそらくマイナス10度は軽く超えている。
僕たちはそれを背に中央駅へ向かった。




