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リメイク第一章 異世界の覚悟

 『えー、こちらカグツ区より放送しています!現在バケモノは中央、テンショウ区から南西十キロほどまで近づいております!付近の皆様はすぐに避難を開始して下さい!繰り返します!!


 あ、ここで速報です!!王国軍が現場に到着した模様!え、嘘・・・皆さん!!聞いてください!あの英雄、ビーン・ムゥが本日たまたま中央に居たという事で、彼が主導でバケモノの迎撃に当たるみたいです!!』


 テンションの上がって来た実況を、僕は町外れの高台にある街頭テレビで見ていた。画面の向こう側にはビーンさんがバイクを乗り回しながら槍と電撃の魔法を使い戦っている。


 分からないな・・・ビーンさんとはそこまで親しい仲じゃないけど、君は今充実してる。ずっと待っていたと言わんばかりの表情だ。


 『うおおぉりぃぃやぁぁぁぁぁっっ!!』


 遠くのカメラ越しにも聞こえる声、嬉しそうだよ?ビーンさん、僕には分からないんだ、僕はただ単に平和に生きたい。薄情とか言われるかもしれないけど、この戦いに僕は関係ない。だから戦いたくないんだよ。


 ねぇ、君はどうしてこの戦いを楽しめるの?誰の為?平和の為?家族の為?違う、そのどれでもないよね。君が今感じてるのは・・・


 僕は周りを見渡した。疲れ果てて倒れてる人、怪我をしている人、親とはぐれ泣き喚く子ども、色んな人がいる。けど分かる、この人たちの考えてることは僕とたいして違いは無い。この理不尽を理解できていないんだ。そう考えるのが普通だ、予言とか関係ない。僕はただ巻き込まれただけなんだよ。


 なのに・・・僕は、僕が分からなくなって来てる。身体を動かしたい、命を懸けてでも、奴を倒したい。だから僕は今探してるんだ、理由は何処だ?僕が動きたくなる理由は何処かにある筈なんだ。


 けど、見つからない。


 「らん    ららら・・・」

 

 歌?


 「なにこれ・・・」

 「誰が歌ってるの?」

 


 これは、僕が教えた・・・そして心地良い綺麗な声、歌っていたのは僕の隣にいた。


 「わら   て」


 笑って、か。これは僕に言ったんじゃない。ここにいるみんなに言ったんだ。彼女はぎこちない笑顔を周りに見せた、そして歌い続けた。


 「らんらららん・・・・」


 そして僕も歌ってみた。ヘッタクソだなぁ僕・・・


 「き、急にどうしたんだい?突然歌い出して・・・」


 「アレックスさん・・・少しだけ分かったんです、人間がなんで苦しんででも生きようとするのか。それはきっと笑顔になりたいからだ。苦しみを味わいたいから生きる奴なんてまずいません。僕は笑顔でいたい、そしてこの子にももっと心の底から笑顔で生きれる世界になって欲しいんだ」


 「そうだね、それを守る為に今彼らは戦ってくれてる」


 「いや、それだけじゃ駄目なんだ。ビーンさんでも、あなたでも、守り切れる笑顔には限りがある。僕にできるのはせいぜいここにいる人たちに一度だけでも笑顔を取り戻させる事だけだ」


 僕は言い切った、アレックスさんはその僕を見てすぐに察した。


 「まさか!」


 「僕がやるべき事はただ目の前の現実から逃げる事じゃ無い。誰かに僕の平和を守って貰っても意味はないんだ。僕は僕の手で僕自身の平和を守ってみせる。この世界の誰にも、この僕の平和を揺るがす事は許さない・・・あいつがなんの目的があってこの国に現れたにせよ、あいつが僕の平和を脅かすのなら、僕はあいつを倒すだけだ。僕ならそれが出来る。僕なら、この国を救える」


 僕は流血光刃を鞘から抜き、自分の顔の前に構え刀身を見つめた。


 「らんららららん・・・」


 もう一度僕は歌った、彼女も一緒に歌い続ける。


 「・・・レイ君、これを」


 アレックスさんは車の鍵のような物を僕に渡した。


 「この高台の下に軍用のバイクがしまってある格納庫がある、それを使いなさい」


 「・・・全ては、笑顔の為に」


 らんらららん・・・ら らんらららら〜・・・


 ツンツン・・・


 「一緒に行く?」

 

 「いく」


 僕はこの時気がついた、何を思ったのか僕たちの歌に何故かここの街の人たちも歌い出していた。異様な空気だ、でも嫌いじゃないな。


 「じゃぁ行ってきます」


 僕は笑いながらアレックスさんに敬礼をし、歌いながらバイクの格納庫まで向かった。


 ・


 ・


 ・ 


 「ミカミ レイ・・・彼は一体・・・」


 ・


 ・


 ・


 格納庫、ズラリと並んだバイクたちの中にサイドカー付きのバイクを見つけた、これで行こう。


 「君はここに乗って?いきなり2人乗りは厳しいからね」


 こくり。


 彼女はストンとサイドカーに収まった。そしてエンジン始動。


 『スゥゥゥィィィイイイ・・・・・・』


 あれ、エンジン音やけに静かだな。さて、回転数上げてくか。


 「さぁ、つかまっててよ!」


 僕はアクセルを捻り一気に加速し、格納庫から飛び出した。


 街中を颯爽と駆け抜けた。今僕に向かってくるのは、まだ逃げているこの街の住人たちだ。僕はフルスロットルでその間を駆け抜け、人のいない荒野へと飛び出した。


 「ふっ・・・改めて見ると、とんでもなく大きいな」


 そしてあのバケモノの全容がはっきりと僕の目に映った。50メートルはありそうな巨体、そしてあの固そうな鱗に、口からら炎、その姿は怪獣映画のそれだ、少しトカゲみたいにも見える。


 「あそこにビーンさんか。ねぇ、あいつの足を凍らせられる?」


 こくり・・・


 『バキキキキキキキンッ!!!』


 彼女がぶかぶかのコートの袖を前に出すと一瞬で氷の道が出来、あのバケモノの両足を凍らせた。


 「な、なんだぁっ!?」


 「僕ですよ!!ビーンさん!」


 僕はビーンさんの横にバイクを付けた。


 「はぁっ!?レイおま、なんでここにっ!逃げろつったろ!!」


 「いや、戦いますよ」


 「戦うって、もうすぐ更に応援の(いかずち)部隊も整うんだ。前ん時の一撃をもう一度食らわせてやる」


 「いや、あいつごとき倒すのにそんなに力は要りませんよ、なんなら部隊を引かせて下さい。あいつは、僕と彼女、そしてビーンさんだけいれば十分だ」


 僕は流血光刃を前に掲げた。


 「そいつぁ!?それを使う気なのか!?」


 「うん。これを手にした僕なら、ここにいる戦力の誰よりも強い!」


 この剣、伝説はこの剣は血を流さなかった訳じゃない、血は見てる筈だ。王の戦い方を・・・


 『ザザバァッ!!』


 剣が突然水を纏いだした。


 「な、魔法を纏った?武器に魔法を纏わせる技術はかなり難易度の高い技だ。しかも、鋼を織り交ぜた物しか魔法は纏わせられねーのに」


 「そうらしいですね、けどこれも同じ芸当が出来る。いやむしろ更に上かもね。ビーンさん、これは僕の考察なんですけど、この剣自体に確かに血は流れなかったのかもしれない。ならこれを使い初代王はどう戦ったのか、対話だけ?本当にそうかな?初代の王はこの剣をちゃんと武器として使ったと僕は思う。だから僕も使うよ」


 「水の魔法であいつの炎を防ぐ気か?剣ではなく盾としてそいつを使うってか?けどよ、奴の魔法は・・・待て、この魔法の練度は・・・」


 ビーンさんは僕の魔法を見てしばらく止まった。


 「作戦、もう伝わりました?」


 「マジかよ・・・なんかこういう時なんて言うべきかわかんねぇけど、とりあえず言える一言は最高だなおい!!お前ら退けぇ!!この三人で一気に叩く!!」


 「えっ!?た、隊長!?」


 流石にこんな作戦は周りのみんなを動揺させてしまった。けど、あいつはそんなのおかまないなしだよ?さぁ、今だよね。君がその氷を破るのは!!


 『バリィィィンッ!!』


 「ここは僕が時間を稼ぐ!!」


 僕は一気にバイクを真っ直ぐに走らせた。


 この状況で動いたのは僕だけだ、奴の視界には僕しか映っていないだろう。どんな生物だって逃げる奴より自分に向かってくる奴に目がいくのは絶対だからね。そして、必ずそれがハエ一匹でも奴は目の前の脅威に攻撃をする!!


 口から炎を僕めがけて飛んできた、あれはかなりの高温だな・・・けど、僕の敵ではないよ。


 「はぁぁっ!!」


 僕は魔法を纏った剣を前に突き出した。炎と水が打ち消しあって蒸し暑い霧が一気に広がった。けど僕周辺は彼女の魔法のお陰で涼しいくらいだ。


 「今だ!!早く退避しろぉっ!!」


 そしてこれだけやれば兵士は判断ができる筈だ。一気に退避し始めた。


 さぁ、今度は誰を追う?君はこの霧で僕を見失った。でも、君のやるべき事はこの国の蹂躙だ。僕一人に構ってる訳じゃないよね。


 だから君の次起こす行動は、退避し始めた兵に追い討ちをかける事だ、だからそっちへ向かって行くよね・・・今、君に背を向けて走ってる奴の一人が誰かを知らないでしょ?


 「けっ!!かかったな!!」


 ビーンさんだ、ちょうど霧を抜ける瞬間にビーンさんは地面にバイクを突き刺し、それを軸にバイク事180度回転した。


 「いけぇぇぇぇっ!!!」


 そして今度はフルスロットルで加速し、ビーンさんは槍を引き抜き投げ飛ばした。


 槍は見事にあいつの鱗を突き破り刺さった。


 君にとってこの程度はかすり傷だって?ビーンさんを甘く見過ぎだな。


 『ビリビリビリッッ!!』


 「俺の必殺技!!『誘いの雷』だぜ!!てめーに刺さった槍は俺の魔法のちょうど良い避雷針!!俺の電撃は全て!!てめーに向かって飛んでく!!」


 50メートルはありそうな巨体全体に電撃を喰らえば流石の君も動けなくなる。流石に予想外だったでしょ?で、予定通りに事が運ばないってムカつくよね・・・


 「え、嘘っ!?効いてねぇ!?」


 そう、そうやって自分を止めた奴に全力を出すんだ。


 「君の頭は大概のようだね、ゼロさん」


 『ダン!ダン!ダァンッ!!』


 乾いた炸裂音が鳴り響く、この音の正体は僕だ。この音を聞いて君は振り返った。そうだよ、今の音は僕が君の頭上へ風の魔法を使って飛び上がった音だ。足元で空気を爆発させるようにして僕は一気に君の上を取ったんだ。


 そして驚きから振り向いたのでは、咄嗟に攻撃をしたとしても僅かに隙がある。先に攻撃を仕掛けた僕には当たらないよ。そして見てご覧、全てこのタイミングを作る為の行動なんだよ、僕たちの、君を倒せる一撃は・・・


 「今だ!!」


 僕は真下にいる彼女に言った。あいつがビーンさんに気を取られてる隙に僕はバイクをあいつの足元付近に置いておいた。


 君ほどの大きさ、君は気が付かなかっただろ?一番小さい子の一番大きな力に。


 彼女は力を最大にし、このバケモノを氷で包んだ。まさかここまで強いとは思わなかった・・・ちょっと予測ミス。本来の僕の計画なら上と下、両側から一気にこいつを凍らせるつもりだった。


 でも、彼女の冷気はこの周辺の大気事凍らせてしまった。あまりの冷気で水蒸気も凍り、地面に降った。


 けど、どちらにしろ。僕たちは勝ったよ・・・

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