リメイク第一章 異世界の王
「これだ」
目の前に出されたのは細長いジュラルミンケースの様な箱だ。留め具にはダイヤル式のロックが付いている。
「これは?」
「開けてみて」
パカ・・・留め具を外し、中にあったのは剣だ。サーベルみたいな、レイピアのような、そんな感じの剣・・・
「流血光刃、これはかつて初代国王が使っていたとされる剣だ。抜いてみて、この名前の意味が分かるよ」
僕は言われるがまま鞘から刀身を引き抜いた。
「わ、真っ白だ・・・それにこれ、刃が付いてない。槍みたい・・・」
「そ、この武器はせいぜい突きを放つくらいしか効果は発揮出来ない、そして綺麗な刀身だろ?このアダムス建国時、初代国王は血を流さず全ての国を治めたとされているんだ。その真っ白な刀身がその証拠だよ」
「・・・これ、この刀身は金属じゃない・・・石みたいだ。これ、宝石で出来てるんですか?」
「惜しい!けどほぼ正解だよレイ君。この剣の刀身に用いられているのは天上金剛水晶石と呼ばれている東ファーヘスト区で見られる鉱石でね、その硬さと来たら金剛石よりも硬い。どんな機械を使っても削る事すら不可能な程の鉱石なんだ」
ここに来てファンタジー感のあるアイテムが来た。そんな凄いんだ・・・ってあれ?これを僕に?
「あの、アレックスさん?これって国宝とかそう言う類の物じゃないんですか?」
「そうだよ、でも我々が持っていても宝の持ち腐れ、お守り代わりとして持っていてくれ。この剣は血を流さなかった、君とゼロを戦わせない為に願掛けだ。それにもし、いざと言うときは護身用にも使えるしね」
僕は半ば無理矢理ケースごと渡された。
「だとしても、こんな貴重な物いただけませんよ!」
「これは私の主義だ、物を最善の方法で役立てたい。それが国宝でも、なんでも最も輝く方法で使いたいんだ」
僕は結局押し負けこの剣を受け取った。
「陛下〜、そろそろ時間で〜す。明日の出発式の打ち合わせが・・・」
部屋の奥からスーツを着た書記みたいな人が顔を覗かせた!少し怠い感じの喋り方。
「あー、はいはい今行くよー!やれやれもっと話したかったのにすまないね。また今度ゆっくりと話をしたいんだけど、良いかな?」
「あ、はい大丈夫です」
「あ、一番話さなきゃいけない所を忘れるところだったよ!私も忙しくてね、まだ君の住む所を決められていないんだ。だからしばらくはここのホテルに泊まると良い、そしてダストちゃんだけどレイ君、君が親代わりになってあげてくれるかい?」
「一応そうするつもりです」
その覚悟は決めた。けど、どう育てればいいのか試行錯誤だ。学校にも行ってもらいたいし、ちゃんと友達を作っていつかは普通に喋れるように・・・
「ありがとう、ダストちゃんもそれが良い?」
こく・・・
「そうか。レイ君、これはまだ先の話になるけれど私の提案としてはダストちゃんを私の娘の通う学校に通わせたいと思うんだ。幼稚園から大学まで一貫して学べるところでね、国内屈指の魔法技術学科がここにある。ここでなら魔法制御の術を教えてくれているんだ。なんならレイ君も一緒に学んでみるかい?」
「そんな学科があるんですね、どう?行ってみたい?」
決めるのはダストだから、僕は彼女に聞いてみた。
こくり。
「が こう ゆめ だ た」
「そうなんだね・・・僕は仕事とかもありますから分かりませんけど、とりあえずダストは行ってみたい気持ちはあるみたいです」
「いよっし!!これでエルメスも友達が増えるぞ!」
あ、それ目的なのね・・・要するに娘の友達になってあげて欲しいのが一番か。
「私としては君にもむしろ教鞭を取る身として行って欲しい所なんだけどなぁ、全ての魔法が使える存在はかなり、いやこれから先現れないかも知れない程貴重な存在だからね」
「うーん・・・僕自身も魔法の使い方がよくわかって無いですからね。それに僕に教鞭なんてできませんよ」
技術提供で、僕の魔法もお願いしたいってところなんだろうけど、こればかりはまだ分からないんだよな〜・・・
「そこをなんとか!普通に生徒としてでも良いから!!副業と思ってね?今魔法族のみんなの魔法レベルが低下傾向にあるし、一応は魔法を技術として活用する事を目的とした学科だから魔法族以外も入れるんだけど、いまいち人気が低迷しててさ!君が入ってくれたら良い起爆剤になってくれるんだよ!」
あなたは学園長か何かですか?とは言っても、僕自身も少しは魔法を学びたい気はあるんだよね・・・どうしよ。
「へ〜い〜か〜・・・ま〜だ〜で〜す〜か〜?エルメス様怒ってますよ〜」
先程アレックスさんを呼んでいた書記みたいな人が口を3みたいにしてまた来た。国王なのに結構舐められてる?
「あーごめん!ごめん!今日娘の誕生日だからさ!あー、明後日また話そうよ!あ、これこのホテルの君の部屋の鍵だから!んじゃ!ビーン君も一緒に泊まっていってくれとよろしく伝えておいて!」
ぽーい
嵐のように去っていった・・・勢いのある人と言うか何というか。とりあえず、戻ろう。
「あ、」
僕は小一時間くらい話していたらしい、ダストは暇そうにしてからかな、眠たそうにうつらうつらし始めていた。
「ね む」
「はい、じゃぁ捕まってて。おやすみね」
僕はダストを抱っこして下の階に降りた。結構軽いな、片手で持てるくらいだ。栄養失調気味だったりしないよね?
ここは7階、商業エリアだ。ビーンさんはここにいるらしいんだけど・・・あ、いた。普通に服を選んでる。
「ビーンさん、何してるんです?」
「お、終わったか?何してるって、服買ってんの。明日は元から休みだし、んで明日は高速鉄道の開通式だろ?ついでがてら見に行ってみようと思ってよ」
ビーンさん、案外オシャレさん?と思ったけど・・・あまりセンスが良いとは思えない、その虎の顔のシャツ何?その玉虫みたいな色のズボンは何処に売ってた?
それより明後日に話し合おうって、明日はその行事があるからか。アレックスさんちゃんとスケジュールを頭に入れてるんだなぁ。
「そう言う事ですか。あ、アレックスさんからの伝言で、僕たちはしばらくここのホテルに泊まって良いらしいですよ」
「嘘ぉっ!?俺も!?」
「はい、ビーンさんによろしくって言ってました。部屋は四四一号室らしいです」
僕は鍵に書いてあった部屋番号を読み上げた。
「え、四四一って・・・最高級スイートルームじゃね?」
「え゛っ・・・そなの?」
変な声出た。あの人、太っ腹と言うか僕を優遇しすぎな気もする。
「だぜ?ってかそれより気になってんだけどよ、そのアタッシュケース的なの何?」
「あ、これ流血光刃?って剣らしいですよ?」
「ぶぉっふぉ!!!ごほげほ!!は、はい? は? 何?流血光刃つった?」
僕もしれっと言ったけど、やっぱりこれってとんでもないやつだよね。
「やっぱり相当貴重な物なんですよねこれ?」
「当たり前というか、この世界の伝説の武器の名前だぜそれ?平和を導く伝説の剣ってな、実在したのかよ・・・」
も、最早エクスカリバー的な物だったこの武器・・・尚更とんでもない物を僕に渡したなアレックスさん・・・
「それ持ってたら怪しまれそうだな・・・さっさとホテル行くか。あ、ちょい待ち、あの帽子だけ買ってくる!」
ビーンさんはウルト○マンみたいな帽子を持ってレジに向かった。これ明日付けてくの?てかこの店、どういう感性してるんだ?
「ふぃ、お待たせ。そうだ、明日の出発式は午前六時半かららしいからよ、レイはどうする?一緒に行くか?」
「うーん、まぁせっかくの機会ですし見てみたいかも、でもダストはどうなんだろ。こういうのはあまり興味無いかなぁ。あそうだ、明日朝ダストが寝てたら行かない、起きてくれたら行きます」
「なんだそりゃ。ま、ダストはお前にゾッコンみたいだしな。しばらくは一緒にいてやるのが一番なんだろうぜ。さてと、ホテル行くか。ダストの奴、起きたらきっと驚くぜ?お前もなレイ」
ビーンさんはにっしっしと笑い、ホテル専用エレベーターに向かった。
『キーン・・・四十四階に到着しました』
ホテルの部分の最上階、このフロアに廊下は無かった。目の前にあるのは高級そうなカーペットのロビーと、その奥に四四一と書かれた一つのドアだけ。このスイートルームは、フロア丸ごと一つが一つの客室らしい。
「僕たちはここに泊まれと?」
「らしいな、この部屋は一泊数百万するって聞いたぜ?それに、ただの金持ちは泊まることすら許されねぇ。王室からのお墨付きを貰わないとダメなんだってよ」
「なら僕は、未分不相応過ぎでしょ・・・」
「あの人変わり者だからなぁ。ま、良いんじゃね?こんな機会俺もねぇもん。だからほら、さっさと入ろうぜ?」
『ガチャリ・・・』
僕は鍵を開けた。うん、鍵は合ってる。やっぱりこの部屋だ・・・
「こ、これ・・・ホテルなの?」
「ら、らしいな。写真でしか見た事無かったけど・・・こりゃ」
僕とビーンさんは同じように目をまんまるにしてた。部屋が広いなんてレベルじゃ無い。入ればアートギャラリーのような通路、ベッドルームに向かえば天蓋付きキングサイズのベッドがズラリと二つ並び、巨大な水槽の中に大型の魚が優雅に泳いでる。
バスルームを見てみよ・・・何これ、トレビの泉か何かかね?ここ高層ビルの上層階だよね?噴水のようにお湯が流れ出ている。
それだけじゃない、屋内プールもありそこからは街の景色が一望出来る。スポーツジムまで完備してる。
ホテルの部屋、というよりここ、スパリゾートそのもの?
「何か、昨日のその日の寝床を確保するのをどうしようかと悩んでたのが嘘みたいだ・・・逆に怖い」
「俺も・・・すまんレイ、ちょっと冷や汗出てきたから先に風呂入って良いか?」
「ど、どうぞ」
「ふぃ〜、後でさっき着た服着てみよ〜・・・」
ビーンさん女子力高い?いや、でもセンスがアレだ。
さてと、とりあえずダストをベッドに寝かせておこう。さて、僕も少しばかり休憩しよう、僕はソファに腰掛けた。
「・・・・・・???」
「あれ?起きちゃった?」
けど、ダストが目を覚まして、周りをキョロキョロしている。そして自分をつねった。
「あはは、確かにビックリするよね。でもここは夢じゃないよ。この国の王様がここを使って良いってさ」
ポス、トコトコ・・・ダストはベッドからとてんと降りて僕の隣に座った。
「まだ寝てても良いよ?今日だってなんだかんだ疲れたでしょ?」
「お ね がい」
「お願い?」
ダストは僕をじっと見つめてお願いと言った。
「いい?」
そう言う事、何か僕にお願いしたい事があるのね。
「何か欲しいのとかあった?」
こく・・・ダストは顔を真っ赤にしている、そんなに恥ずかしい事?
この子の欲しいもの・・・何だろ、おもちゃ?は安直過ぎか。
「なまえ ダスト いや」
え、まさかそう言うお願いをされるとは思わなかった。
「あっ!その名前嫌だった!?」
こく
「そう言えば、ダストは本名じゃないんだよね・・・別に悪い名前では無いと・・・」
ぷくー・・・
「あ、ごめん」
あからさまに頬を膨らませて起こってしまった。ダストって一見すると寡黙な感じだけど案外賑やかだよね。
「うーん・・・名前ねぇ」
「ういしょ〜・・・風呂出たぜぇ〜。いゃぁあの派手派手な風呂を独り占めなんて最高だなー!!冷蔵庫にさっき買っといたコーヒー牛乳が・・・」
ビーンさんがとても元気にバスルームから出てきた。
「あのビーンさん」
「ん?」
「この子、実はダストって名前が嫌いみたいでして、何かいい案とかありませんかね?」
「え?俺たちで名前を考えんの?なんで?」
「なんでって、ダストは本名じゃ無いし、本人が嫌がってるのなら・・・」
「いや、それは分かるけどよ、名前って国から二歳になる時に交付されるんだけど?」
な、なにそれ・・・え?て事は、名前を自由に決められないの?
「え、嘘でしょ?なら、この子の本名は何だったんです?」
「それがよ、例の事件の日がこの子が名前を授かる日だったんだけどよ、その事件以降その名前の乗った資料が何処探しても無くてな?分からずじまいなのよ」
しゅん・・・
「は いる」
ダストは肩を落としてバスルームに向かってしまった。
「あれ?お、俺悪い事言った?」
「うん、そりゃ嫌でしょ自分の名前が分からないなんて。それより、この国で魔法族以外が苗字を持たない理由それなんですね」
「そ、俺のビーンってのも国から授かった名前なんだぜ?」
マジかよ。
「僕、何かそれ嫌だなぁ。確かにそれは偽名とか使った犯罪は、しにくくなるかもしれないですけどなんか自分を支配されてる感じがするなぁ。やっぱり親に付けて貰いたいって思ってしまいますよ。僕の礼って名前も常に礼儀を重んじろって思いが込められてますから」
「そーゆーもんなの?よく分からねーな。ならよ、ミカミってどんな意味なんだ?」
苗字の由来は、流石に僕でも知らないな・・・
「さぁ」
「あれ、そなの・・・」
「でた」
は、早っ!?この子はもうバスルームから出てきてしまった。じゃ次入ろ・・・
名前、これ明後日物は試しにアレックスさんに法改正言ってみようかな、こう言う文化だったって言うにしてもこれはなんか嫌だな。
僕はバスルームから出るとビーンさんはキングサイズのベッドを独占して爆睡してた。この子は僕を待ってたようにまだ起きてる。
「今は9時か。ねぇ、明日高速鉄道の出発式行きたいんだけど良い?」
こく、
「 ず と いる から」
「分かった、じゃ明日は早起きだね、おやすみ」
こくり、ズズズ・・・
この子は大きく頷くと、ずりずりと巨大なベッドに埋もれていった。僕も寝よう、今日は流石にいきなり瞼が重くなる事はないか。




