リメイク第一章 異世界の首都
「何言ってるんです?この子、少しずつですけど話せるようになって来てるんですよ?」
「お前こそ何言ってんだ?俺ダストの声聞いたの今が初めてだぜ?」
「いやいや、それだったらこの子の言ってる事分からないじゃないですか」
「待て待て、お前この子の声聞いてたの?てっきり隊長みたいに読心術使ってたんじゃねーの?それにあんた言ってたじゃん、アンドリューに目を見れば心なんて分かるってよ」
「確かに目を見て分かることもありますけど、全部が全部分かる訳ないじゃないですか。少しずつ言葉でも話してくれるようになったから多少この子を理解出来るようになってきただけで・・・あ、そうだ。ねぇ何か喋ってみて?あいうえおでも良いから」
僕はダストにお願いしてみた。にしてもビーンさんは何を言ってるんだろ。ビーンさんのいないとこでしか喋ってなかったっけ?
「あ い う え お?」
ダストは僕の言う通り喋ってくれた。
「ほら、喋ってるじゃないですか」
「???何も聞こえなかったぜ?確かに口はそう動いたけどよ、どう言う聴力してんだ?」
『♪♪♪♪♪』
そんなやりとりをしていたら車内チャイムが鳴った。もうすぐ到着するらしい。またか、僕の中に新たな疑問が出来てしまった。
「とりあえずこの話は保留にしとくか、そろそろ準備しとこうぜ」
「そうですねビーンさん、それとありがとうね、僕を心配してくれて。少し気分は晴れたから心配しないで?」
僕はダストの頭を撫でた。
パシッ・・・ダストは無言のまま僕の手を握った。
「?」
「は ぐ れる から」
中央は人混みが多いからか・・・うん、普通に聞こえるね。
「だね、ちゃんと僕の手につかまっててね?」
こくり。
「また喋ってねーのに分かってる・・・昨日耳掃除したんだけどなぁ、俺の耳が悪いの?」
ビーンさんは耳を掃除してる。
『中央〜、中央〜。中央です。お忘れ物のなさいませんようご注意下さい』
デッキの折り戸が開いて、ホームに降り立った。流石中央と呼ばれるだけはある。人まみれ、鉄道も地上地下階上入り組んだ要塞みたいな駅舎だ。
「おい、こっちだぜ。はぐれんなよ?」
僕たちはビーンさんの背中を追いかけてるように改札を出た。外に出ると、ネオンがギラギラと輝き、一面壁のような摩天楼が立ち並ぶビル群に出た。
まさに首都って感じだ。けど街並みを見るとクラシックな車が走り、大通りに路面電車が走っている。歩行者信号は何故かカッコーが鳴いてる。
「わー、タイムズスクエアみたい」
「ここは中央の中でも一番の繁華街、テンショウ区だ。それでその中の一番奥にある一番でけービル。アダムスビルヂングが、この国の城だ」
まさかの王様がいるのは高層ビルだった、ファイ○ルファン○ジーじゃないんだからさ。
でも確かに大きい、横にも縦にも周辺のビルとは群を抜いて大きい。
「あれが・・・でもビーンさん、なんか普通の人たちも結構出入りしてますけど?」
一つ気になった、ここがこの国の中心なのに一般人の出入りが多過ぎる。確かに周辺にはビーンさんと似たような鎧を着た人たちもいるんだけど、なんか違和感。
「そりゃここの一から七階はデパートだからな、出入りは多いだろ?」
どういうこっちゃ・・・これじゃ大○百貨店に国会議事堂がくっついてるみたいじゃない。
「んで、八階から四十五階がホテルとオフィスビル。その上の四十六階からが完全なる王室だ、そして最上階、五十階に玉座の間がある感じだな」
どこかの社長でもそんな風にビルを作らないでしょ・・・
「ってな訳で、とりあえず四十五階に行ってそこの王室への入り口に行ってこい?そこからは別の案内人がいるからよ」
突然ビーンさんは案内を投げ槍にした。
「へ?ビーンさんが案内してくれるんじゃ・・・」
「何でもお前とダスト、二人で話がしてーんだとよ。だもんで俺は下の階で待ってろってさ、新しい服でも買ってっから、行ってらー」
行ってらーって・・・相変わらず適当な感じの人だなぁ。
「やれやれ、まぁ良いや。行こ?」
こくり
ビーンさんは普通にショッピングに向かってしまった。一応僕、アンドリューさんに命狙われてる身なんだけどなぁ。
で、えっと・・・このエレベーターか。七階から出てる高速エレベーター。
『キーン・・・』
あ、エレベーターガールだ、小さい頃はまだいたっけ。
「どちらの階まででしょうか?」
「あ、えっと45階までお願いします」
「かしこまりました」
エレベーターはかなりの速さで登っていく。気圧差で耳が痛くなったのか、ダストは耳をこねこねしてる。
「四十五階になります」
さてと、ここからどこに行けば・・・って、『ミカミ レイ様、ダスト様はこちら』と書かれた立て看板がある。これを目印にしてけって?
『この階段登って!』
なにこれ、とりあえず四十六階に到着した。
『さぁ目的地はもうすぐ、頑張って!』
「?」
「?」
僕とダストは二人して首を傾げた。何がしたいんだ? スタスタスタ・・・僕は通路を歩く。
『さぁドアを開けて!』
『ガチャ・・・』
「よーこそー!!」
『パンッ!パパンッ!!パフパフ!』
入るや否や突然クラッカーやらラッパを鳴らされた。鳴らしたのはたった一人スーツを着た比較的若い男性だ。
「・・・・・・・・・・はい?」
「あ、あれ?反応微妙?」
「あ、いや・・・え?」
とりあえず、どう反応すれば良いの?わっ!て驚けば良かったのか?
「わ、私がこのアダムス王国国王!!アrrrrrrックス アダムぅぅぅぅス!!でっす!!よろしくぅっ!」
「は、はぁ・・・三上です、この子はダストです」
付いていけないんだけど・・・なんでこのおじさん!こうもテンション高いの?
「あれぇ、おかしいな・・・出来る限りフレンドリーにってやってみたんだけど」
「あ、あのぉ・・・」
「はっ!?失礼したね!いやスチュワートから異世界の勇者が来るって聞いてたから国王として最高のおもてなしとサプライズをしてみよーかなって思ってね、どうやら・・・滑ったみたいだね」
その通りでございますね。
「改めて、アレックス アダムスだ。良かったらクッキー食べるかい?私の嫁が作ったのがあるんだ。これで胃袋を掴む作戦なんだったけど、まぁ仲良くして下さいってことです」
応接室のような所の机の上にクッキーが置かれた。と言うより、国王には僕の正体教えてたんだ・・・
「なら僕も改めて、三上 礼です。そしてこの子はダストです」
ぺこり。
「ん、君は・・・」
アレックスさんはダストを見て何か引っかかったみたいだ。
「どうしたんですか?」
「いや、こんな可愛らしい子が街から排他されていたなんてねと思って、この子なら将来かなり良いモデルになれそうなのにと思ってね」
ブンブンブンブン!!
そう言うのはやりたがらないよね。
「それはそうと、さっきスチュワートから連絡があってね.昨日の火事の件、街が氷漬けになってたのは君たちがいたあのアパート以外、被害はナシだったらしいんだ。これほどの魔法の力と技術、ダストちゃん、君には本当に感謝してるよ。ありがとうね」
すっ・・・ダストは僕の後ろに隠れた。
「あ、あれ・・・」
「照れてるだけですよきっと、初対面ですしね」
「それもそうか、私はどうにも相手との距離感というのが分かなくてね・・・あ、それより君だ。ミカミ レイ君。このダストちゃんの自殺を食い止め、更にその原因を突き止め、彼女を守り抜き、そして何より街そのものの意見を変えてしまった。もはやこれは革命と言っても過言ではない事を君はしたんだ」
「か、革命なんてそんなつもり!!」
「いや、これで良いんだ。君のお陰で、この国に蔓延る闇が露呈した、これまで見えてなかったものが見えるようになったんだ。まずはアダムス国王として君に謝罪しなければならない。危険な目に合わせてしまって申し訳ない、そして感謝する」
アレックスさんは深々と僕たちに頭を下げた。
「そんな!頭下げるような事してませんよ!」
国王自ら僕に頭を下げる、こんなシチュエーション、恥ずかしいと言うか何というか。
「それでも君の功績は素晴らしいものさ。さてと、そろそろ本題に入っても良いかな?君の国について聞きたいんだ。君も私たちの世界について聞きたい事があったら聞いてくれ。なんでも、スチュワートの話だと君の国は我が国より五十年も進んでるらしいね」
この人、王様と言うよりエンターテイナーと言うか、社長気質と言うか。交渉上手とでも言うのかな?とりあえず、僕が出せるのはスマホからか。
「これが多分僕の世界でも一番最先端の物ですね、スマートフォンって言いまして、電話や文字のやりとりは基本にして、写真、録画は勿論、アプリケーションを使って色んな事が出来ます。ここの世界では通用しないですけど、財布の代わりにだってなりますからね」
「へぇ〜・・・この小さな機械がね、不思議な機械だ。分からない、どう言う理屈で電話線も無しに電話をしてるんだ?無線機、に似た感じなのかい?」
アレックスさんはスマホを端から端まで眺めている。
「それに近い感じですかね、電波を使ってやり取りする、それを全世界規模に広げたのがインターネットなのかな?僕もそこまで詳しくはありませんから」
「あ、成る程、電波か。それなら分かるよ。つい最近も電波塔が完成したんだ。そこに見えるだろ?中央タワーって言ってね。カラーテレビの放送開始に伴って建設されたんだ」
窓の外に赤と白の大きな電波塔がある。東京タワー?
「あ、だとしたらテレビがスマホに一番近い技術かも。まぁまだ液晶テレビなんて作られてないみたいですけど、電波の送受信とかの技術の基礎はテレビだと思いますから」
「ふむふむ、つまりはテレビが時代を重ねに重ねて技術の発展が世界と時代に伴った時にその機械が完全する訳なんだね、レイ君の話を聞く限り、そのいんたーねっと?が全世界に普及していなければ、その機械も宝の持ち腐れになってしまうようだね」
「はい、Wi-Fiとかそう言う設備が整ってないとスマホは性能を発揮しませんからね。とは言っても、計算機やネット無しでも使える機能も沢山ありますよ?」
僕たちは割と楽しく語り合った。と言うのもアレックスさんも割と機械に詳しいんだ。この人も趣味で自分でバイクを乗り回したしするらしい。それもあってか少し専門的な機械用語も分かってくれた。ダストはこの話には付いていけないのか、ちょこんとソファに埋もれるように座って暇そうに僕たちを眺めていた。
「ははは!それにしても魔法のような機械だなスマートフォンとは!あ、私ばかりが質問責めしてしまっていたね。レイ君も何か聞きたい事はあるかい?」
今度は僕に質問を振った。
「そうですね・・・それこそ魔法の事ですかね?この世界の魔法はどう言った理屈で発動するのでしょうか?僕の世界には魔法なんてありません。ここに来て急に使えるようになったんです」
この世界の一番の特徴は魔法がある事だ。そこから何か分かるかも知れない。
「魔法か・・・全ての魔法を操れたとされる初代国王が約五百年前に現れ、それの子らが魔法を引き継いだ話は聞いてるかい?」
「はい、一応は」
「率直に言うと、魔法の正体はよく分かっていないが答えなんだ。我々の世界の歴史書は創歴二十年に起こった国内唯一にして最大の内戦を境に、ほとんど焼失してしまっていてね、初代国王の事とかもほとんど分かっていないんだ。名前すらもね。
分かっている事と言えば、初代王が現れたのをきっかけに大量の小国は一気に統一され始め、技術が急速に進化したことぐらいなんだ。五百年前の技術には電気を使うと言う発想すら無かったらしいからね。
正直に言うと、君の登場により魔法の正体に一歩近づいたんだよ。初代国王は君と似た境遇の存在で、全ての魔法を扱えた存在だってね。
後分かるのは・・・魔法を使うには精神力を必要とする事くらいかなぁ・・・確かレイ君も昨日は異常に疲れたんじゃない?」
あれか・・・今朝寝坊しかけたのは、魔法の影響だからか。それでめちゃくちゃ疲れてたんだ・・・
「そうなんですか、ありがとうございます!少しだけですけれどこの国の事が分かりました」
「それは良かった。後、君に話せる事は予言の事か・・・」
まさかの国王自らがこの話題を切り出した。
「あの予言の紙については本当にわからない事だらけだ。けど、ゼロ・・・彼の名はかつてアマナと呼ばれていてね、私の友人でもあったんだ。少し怖い雰囲気を持った人ではあったけど、人の痛みを分かる事のできる優しい人だったんだ。しかし、調印式のあの日・・・彼は突然狂い出した」
「何があったんです?」
「それが分からないんだ・・・アンドリューが君を殺そうとした理由もそこかもしれない。あの日、何かが彼を変えたんだ・・・」
この顔、この恐怖の目は・・・
「僕は変わりませんよ、そもそも僕はゼロさんに会いに行きたくない、僕にそんな力はありませんよ。第一ビーンさんの魔法と僕とじゃ威力が全然ちがいますしね」
「失礼だけどそうだね。君はとても良い人だ、そんな君を危険な目に合わせさせる事は出来ない。ゼロに関しては私たちに任せてくれ。そうだ、君に良い物を授けようと思ってたんだ!」
アレックスさんは突然指をパチンと鳴らした。
「もう一つ初代国王の事で分かってる事があってね!」




