彼氏編1
お待たせいたしました。
ここからは彼氏編をお送りします。
時間軸は彼女編とほぼ同じで視点が彼氏側に移った感じです。
「いい?人は見た目が9割なのよ。
それ以外のものはほとんど価値がないの」
そう堂々と宣言する僕の幼なじみの獅童祥子こと祥ちゃん。
確かにそういう本もあるし、ある国では裁判で勝つには清潔感が必須でボロくて汚い格好をしているとなにもしてないのに犯罪者に仕立て上げられる事もある。
だから彼女の意見を否定する気はない。
「残り1割は?」
「当然。財力よ」
当然らしい。
まあ、世の中金が全てじゃないとは言うけれど、それは最低限食べて行けるだけのお金があるから言える言葉だ。
今日のご飯にも困る、ハンバーガーひとつ買えない。そんな状態の人に言わせれば、愛よりも同情よりも金が欲しいってなると思う。
金の問題で別れた夫婦の話も枚挙に暇がない。
「その評価で言うと僕はどうなるの?」
「あんたはそうね。
私の好みではないけど顔も財力も及第点ではあるわね。
70点ってところかしら」
「そっか」
ちなみに彼女の今の彼氏は顔の好みがドストライクで90点。将来的に経済力が付けば100点だと言っていた。
「そういうあんたは?
まだ彼女居ないんでしょ?
理想の彼女像とかどういう感じなのかしら」
そう聞かれて悩む。
僕としてはまだ彼女とか恋人が欲しいって感覚はない。
でもそうだな。強いて言えば……
「心の綺麗な人、かな」
「また抽象的ね。
それに今時そんな子滅多に居ないわよ」
「そうかもね」
「まったく。
……その評価で言うと私はどうなのかしら?」
僕のさっきの質問のお返しらしい。
お互いに恋愛感情はなく仲の良い友達、もっと言えば戦友だって認識してるから特に照れたりしないのが有難い。
「祥ちゃんは……カラフル?」
「あんた高校生になってその呼び方変えなさいよね。
ま、言っても無駄なんだろうけど。
にしてもカラフルか。うん、悪くはないわね」
満足気に頷く祥ちゃん。
実際彼女は明るく元気で好奇心旺盛。話上手だし誰とでも仲良くなれるし男女問わず友達も多い。
そんな彼女はどれかひとつの色ではなくカラフルって感じだ。
それに対してじっと僕のことを見る祥ちゃん?
「あんたはそれで言うと夕焼け色かしらね。
暖かくもあり寂しくもあり、見る人によって見え方が変わってくる。炎と違って近くに居ても火傷はしないけど、でも太陽だから怒らせると大変ね」
「最後に怒ったのいつだっけ?」
「小学3年の秋よ。
隣のクラスのいじめ問題を知って単身乗り込んで大暴れしたじゃない」
「……あぁ。
その節はお世話になりました」
僕がいじめグループを病院送りにしてた裏で祥ちゃんがいじめの証拠をかき集めてくれたお陰で僕は反省文1つで済んだ。
代わりに保護者の皆さんは大変だったみたいだけど。
あの頃から祥ちゃんは友達から戦友へと進化したんだと思う。
何か突拍子のないことをする前には一言祥ちゃんに告げてからするようになったし。
祥ちゃんはその頃から情報を集めたり拡散するのが得意だ。
ただそんな祥ちゃんは最近、ちょっとだけ難しい顔をすることがある。
「……何か悩み事?」
「悩み事……うん、まぁそうね」
「僕でよければ聞くよ?」
「あんたなら口が固いし大丈夫ね」
この辺りの信頼関係も長年の積み重ねだ。
そうして祥ちゃんはぽつぽつと話し出した。
「えっと、前に私のクラスにすっごい美少女が居て友達になったって話はしたわよね?」
「うん。僕はまだ会ったことないけど」
「いや、あんたも多分知ってるわ。
先日のミスコンで優勝したから」
「……ごめん。僕それ見に行ってない」
その言葉に盛大にため息をつく祥ちゃん。
仕方ないじゃないか。
大して興味無かったんだから。
「はぁ。あんたそういうのに興味ないもんね。
話を戻して、彼女が優勝したのは当然なのよ。エントリーしてたこの中でもぶっちぎりで可愛かったし。
ただ問題は彼女自身はあんまり目立ちたくなかったみたいなのよね」
「え、じゃあなんでミスコンなんかにエントリーしたの?」
「私が勝手にエントリーしちゃったから」
「あぁ」
祥ちゃんの事だから本気で良かれと思ってやったのだろうし、応援にも力を入れていたんだろう。
それは優勝するのも仕方ない。
でもふたを開けてみればその子はそんな名声は求めていなかったと。
なるほど、それでその子に悪いことしたなって悩んでるのか。
そう言えば最近クラスの男子が騒がしいし、誰々が振られたとかそんな事を言ってた気がする。
多分その優勝した女の子に告白して玉砕したんだろう。
それが一人二人ならまだしも学校中の自称イケメンが日参してくるとなれば、迷惑でしかない。
「祥ちゃんのことだからすぐに謝ったんでしょ?」
「うん。でも許してくれたからと言ってあの子の生活が以前に戻るわけでもないし。
休み時間や放課後の度に呼び止められたり呼び出されたりを見てると申し訳なくって」
うわぁ……昼休みくらいそっとしておいて欲しいだろうに。
「……その男子達潰す?」
「止めときなさい。今回はまだ迷惑を掛けてるだけで犯罪行為になってる訳じゃないから」
「そっか。
なら、うーん。本人だと分からないように変装してみるとか」
「っ、それ良いかもね。
演劇部の子にウィッグとか借りれないか聞いてみるわ。
あんたはやっぱり突拍子もない事だけは得意よね!」
「だけは余計じゃないかな」
言ってみたけど祥ちゃんはもうその演劇部の子に連絡を取ったりと忙しそうだ。
ま、元気になってくれたのなら良いか。