彼女編5
明けて月曜日。
なかなか心の切り替えができない私は沈んだ気持ちのまま教室に入りました。
「おっはよ~。お??どったの?」
「あ、おはようございます」
祥子さんはすぐに私がいつもと違う事に気が付いて声を掛けてくれました。
こういう気付ける人ってホント素敵だと思います。秋風さんも多分そう言う人ですよね。
ただ、今の状態をどう伝えれば良いのでしょう。
「なんか嫌な事でもあった?
例の自称エース野郎になんかされた?」
「あ、いえ。その人はあれ以来会っていないので大丈夫です。
ちょっとだけ気分が落ち込んでるだけです」
「ふぅん。まあそういう日もあるか。
ではでは、そんな姫に今日も私が面白ネタを提供してしんぜよう!」
「ふふっ。なんですか、その口調は」
「まあまあ。という訳で今日のネタはこれよ!」
そう言って見せてくれたのはまたしても学内ネット。
ただしいつもの掲示板じゃなくてクラブサイトでした。
クラブサイトっていうのは部活と違って非公式で活動している人たちが自分たち用に立ち上げたページで、たいていは活動報告であったりメンバー募集だったりが掲載されています。
今回祥子さんが見せてくれたのはその中の創作クラブのページでした。
トップには『作品大募集』って書いてあります。
どうやら匿名で自分の作ったイラストや音楽、小説などを投稿できるみたいです。
著作権については投稿者が設定したパスワードによって本人認証が出来るようにすることで投稿者に帰属すると。
投稿された内容には自由に感想も書けるし、荒らしの類は随時確認して削除してくれるみたいです。
投稿内容が公序良俗に反する場合も警告文を送り改善が無ければ削除するんですね。
ふむふむ、ちゃんと考えられているみたいですね。
これなら私が書いた童話とかも投稿出来るかもしれません。
でも、あれ。ちょっと待ってください。
祥子さんは私が童話を書いていることは知らないはずです。
なのになんでこのサイトを私に見せてくれたんでしょうか。
「あの祥子さん。なぜこのサイトを?」
そう聞くと「ふっふっふ~」と意味ありげに笑って言うのです。
「私は知っているのさ。
姫が前に見せた掲示板のことを気にしているのをね!」
「ええっ!?」
まさか私があの返信を書いたんだとバレたのでしょうか。
「いやぁあんな面白文章を書く男子ってどんなやつかって気になるよね。
しかもなんか誰かと返信しあってるみたいだし、続きが気になってたんじゃない?
それが最後の投稿でなんか終わりにしようみたいなこと書いてあったから、それで姫はがっかりしてるんじゃないかと思ってさ。違う?」
「す、すごい推理です」
どうやら私の事はバレていないみたいですけど、大体あってます。
まさかこれだけの情報でここまで当てられるとは思っていませんでした。
「そうでしょう。そこでこのサイトなのよ。
ほらほら。この製作者のとこ見てみ!」
「えっと……っ。『秋風』さん!?これってもしかして」
「そう。多分あの掲示板を書いた人なんじゃないかな」
うん。その可能性は凄く高いと思います。
このサイトが立ち上がったのも昨日みたいですし。
それと既に数点投稿してある作品は全て秋風さんのもの。
あ、匿名とは言いましたが自分のペンネームは付けられるみたいです。
しかもなりすまし防止の為に一度使われたペンネームは他の人は使えないのだとか。
秋風さんの作品はどれも小説のようです。
今すぐ読んでみたいような、他の人が居るところで読むのは恥ずかしいような不思議な気分です。
「んふふ~~」
「?」
「いやいや。姫が元気になって嬉しいなってだけよ」
「え、あ。ありがとうございます」
確かに。今朝までの落ち込んだ気持ちはもうどこにもありません。
祥子さんには感謝してもしきれませんね。
家に帰ってから早速サイトを開き、まずはまだ空っぽのフリー掲示板に『祝!サイト立ち上げ♪』と書き込みました。
それから作品投稿ページに入って先日の鳥の親子の童話を少し手直ししてから投稿しました。
「秋風さん、読んでくれるでしょうか」
こんなにワクワクした気持ちになったのは先日のお手紙ぶりです。
って、もう掲示板の方に返信が付いてます。
『お祝いのメッセージありがとうございます。
このサイトはまだ出来たばかりで知名度も低いので、
もし良かったら一緒にサイトを盛り上げてくれると嬉しいです』
たったこれだけのメッセージに好感を持ってしまうのは贔屓目過ぎるでしょうか。
ともかく、秋風さんが投稿した作品も読んでみましょう。