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彼女編4

翌朝。

教室に入った私をまたもや祥子さんが迎えました。


「姫。ビッグニュースよ!」

「なにかしら」


祥子さんは大袈裟なところがあるのでビッグニュースといっても大した事無かったりローカルネタだったりすることがほとんどです。


「なんと昨日のあの掲示板に返信が付いたのよ!」

「……あぁ」


それ私が書いたやつです。

ただ、そんな私の反応が予想外だったみたいです。


「あれ?驚かないの?

もしかして姫ももう知ってたのかぁ」

「まあ、ね」

「実は姫もあの掲示板が気になってたんだねぇ」


にやにやと笑う祥子さん。でもその笑ってる意味はちょっと違うと思いますよ。

そして昼休みにそそくさと教室を出ていく私。

それを祥子さんが目ざとく見つけてきました。


「あれ、今日もどこかいっちゃうの?

お昼一緒しようと思ったのに」

「うん、ごめんね」


ぱっと謝ってそのまま別れました。

こういう時、変に引き留めてこないのも祥子さんの良いところだと思います。

急ぎ足で中庭に辿り着いた私はまずは周囲を確認します。


「……誰もいないですね」


もしかしたら秋風さんが来てるかも、なんて期待してみましたがそんなことも無いみたいです。

なら他の人が来る前に手紙を隠してしまいましょう。

秋風さん、ちゃんと気が付いてくれますよね?

私の気持ちはちゃんと伝わるでしょうか。

うきうきしながら教室に戻る私は不意に呼び止められました。


「あの、姫宮さん、だよね。今ちょっといいかな?」


呼び止めたのは見知らぬ男子。

この時点でさっきまでの浮足立っていた気持ちはどこかに消えてしまいました。


「えっと、俺の事分かるよね?」

「すみません。分かりません。急いでいるので失礼します」

「え、ちょっと待ってよ。

サッカー部のエースで去年同じ中学の同じクラスだったじゃん。

ほら、この顔ちゃんと見てよ」


さっさと立ち去ろうとした私を呼び止めあろうことか腕を掴んできた自称サッカー部のエースさん。

見ろと言われたから一応見てみましたが、その顔は大して記憶に残っていません。

そう言えば同じクラスに居たかな?くらいです。

自慢するだけあって顔立ちはジャニーズ系というか、そういうのが好きな人には受けそうです。私は興味ないですけど。


「手を放して頂けませんか?」

「まあまあ悪いようにはしないからさ」

「私急いでるんです」

「大丈夫、俺の話もすぐ済むって」


なら今ここで言えば良いのではないでしょうか。

言っても伝わらなそうな人っぽいですけど。

どうしようかと考えていたら不意にその男子の首が後ろから誰かに掴まれました。


「廊下の真ん中で邪魔」

「な、だれだ!?」


突然の事に私を掴んでいた手が離れました。

その隙に私は距離を取ります。

改めてこの不思議な状況を確認してみましたが、男子を後ろから捕まえている人は男子の影になっていて誰か分かりません。

ただ、その手が早く行きなさいというように私に向かって振られていました。


「すみません。助かりました」

「うん」


私はお礼を言ってその場を後にしました。

階段を上ったところで後ろからさっきの男子のものと思われる悲鳴のような声が聞こえてきましたがどうなったんでしょう。

その答えは早くも放課後に分かりました。

風の噂というか、例の学内ネットに顛末が掲載されていました。

それによると、あの男子が強引に私に迫って袖にされたのを怒って暴行一歩手前まで行ったところで間一髪、私が逃げられてその場は事なきを得たことになってました。更に暴行一歩手前になったのを見た他の生徒に天誅を受けたのだと。

男子の事は本名は載っていませんでしたが「自称サッカー部エースの1年」と書いてあったので分かる人はすぐに分かったでしょう。

少なくともあの男子が私の前に現れることはそれ以来ありませんでした。

私としては実害はありませんでしたし、ああいう自己中で人の話を聞かないひとも居る事を知って、改めて秋風さんの人の好さを実感した感じです。


夜になって私は自分の部屋で携帯とにらめっこをしていました。

もしかしたら秋風さんが私の手紙を読んで何か書き込んでくれるかもしれません。

でも実は掲示板の返信も見てなくて手紙も受け取ってすらいない可能性もありますが、って、来ました!!


『お手紙ありがとうございます。無事に猫さんから受け取りました。

そうそう、最近頭の狂ったキツネが僕らの森にやってきたみたい。

いちおう森の皆が軽くお説教したけど、それで懲りないから狂ったと呼ばれるんだ。

だから今はこれ以上森で歌うのは危険かもしれない。

今はそっとしておこう。

君が自由に空を飛べているだけで僕は満足だから』


これは、え、もしかして。

狂ったキツネが今日の男子を指してるとかそんなことはどうでも良いんです。

そんなことよりも、きっとこれはこのやり取りを終わりにしようって言ってるようです。

昨日とは違う意味で泣けてしまいそうですが、仕方ないですよね。

はぁぁ。

翌日は土曜日で学校が休みでした。

良い天気の休日なのに私の心には雲がかかったみたいにどんよりです。


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