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彼女編2

第1話の前書きにも書いておきましたが、こちらにも記載しておきます。


先日「彼女編」というサブタイトルで投稿しましたが、1話約1万文字と凄いことになっていたので分割しました。

(元々は短編の予定だったんです)


内容は同じなので、既に読んで頂いた方は読み直す必要はありません。

9日か10日には彼氏編をスタートしますので少々お待ちください。


私は急いで朝の支度を済ませて登校し、中庭に向かいます。

ですが現実は無情で手帳は何処にもありません。

生徒の誰かが拾ったのでしょうか。

もしそうなら今後の学校生活が一変する事になるでしょう。

教室に行ったら皆が私を見て陰口を言いながらクスクス笑っていたら?

皆が見える場所に私が書いたお話が公開されていたら?

私は震える足を動かして教室に入りました。


「「!!」」

「ひっ」


教室に入った瞬間向けられるクラスメイト達の視線。

やっぱりもう皆に知られているんですね。

そう思ったところで私の肩が叩かれました。

見ればいつも元気な祥子さんです。


「おっはよ~。今日は遅かったね。

いつもの時間に姫が来ないから風邪でも引いたのかとみんなソワソワしてたみたいだよ」

「え、あぁ。そうだったんですね」


どうやらただの勘違いだったみたいです。

良かった。


「昨夜は寝付きが悪かったせいで少し寝坊してしまったんです」

「あ~あるある」


こういう時、彼女の明るさには助けられます。

そのまま席に移動しながら何かネタがあるらしく携帯を見せてきました。


「ねぇこれ見てよ」

「学内ネット掲示板?」


学内ネット掲示板は学生なら誰でも匿名で投稿できるので、色々な人が利用しています。

あ、IDから個人は特定できるそうなので、悪用すると先生から呼び出されますけど。


「何か面白い書き込みでもありましたか?」

「そう!なんかポエミーなやつ!」

「はぁ。ってこれ!?」


表示された内容は確かに詩的な内容で、でもそれ以上に私の心臓を跳び跳ねさせました。

その内容はこうです。


『僕は秋風。いつも自由に空を流れている。

あっ、鳥の子供が猫の鳴き声に驚いて枝から落ちたよ。

親鳥は気付かずに飛んでいってしまった。

大変大変。今日は午後から雨が降るのに風邪を引いてしまう。

僕は急いで子供を保護したけど、木の上の巣は高すぎて持ち上げられない。

悩んだ僕は子供を紙とインクの森に住む、いびきのうるさいゾウのおばあさんに預ける事にしたんだ。

親鳥は気付いてくれるだろうか。

そうだ、もし気付いても秋風が吹いていたら寒くて近付けないかもしれない。

だから僕は3日間はそこに近付かないようにすると決めた。

3日経っても親鳥が来なければ自分で子供を育てようと決めて』


これ、きっと私の手帳を拾った人が書いたメッセージです。

何故なら普通は鳥の子供なんて言いません。

そこは小鳥とか雛鳥っていうのが普通でしょう。

それをあえて鳥の子供と書いたのは私がそう手帳に書いたからです。


「ね?うけるっしょ。なんかなぞなぞっぽいし」

「なぞなぞ……そう、ですね」


確かに最初の部分は私が手帳を落として去っていったことを示しているとして、この『紙とインクの森』とか何かの例えだと思います。

森は多分、沢山あるって言う事ですよね。紙とインクが沢山ある場所……あっ。


(図書室です)


咄嗟に声に出さなかった自分を褒めてあげたい。

紙とインクはつまり本の事です。それが沢山あるのは図書室でしょう。

祥子さんは全然分からないみたいでうんうん唸ってます。

そうこうしている間にチャイムが鳴ったので解散しました。

でも私の頭の中はさきほどの内容でいっぱいです。


(図書室なのは分かりました。では次ですね)


『いびきのうるさいゾウのおばあさん』

幸いにもこれの心当たりはあります。バーバラおばあさんです。

バーバラおばあさんというのは有名な童話の登場人物で、あまりにいびきがうるさいので洞窟にひとりで暮らしているんです。

それはともかく図書室でその童話がある場所は、確か一番奥の棚の最下段。

そこは用が無い限りほとんど人の出入りはありませんし、用があるのは童話とかを読む人だけです。

なのでこのメッセージが分かって手帳を取りに行っても誰かに見られる可能性は限りなく低いし、偶然他の人が手帳を見つけてしまう危険性もほぼ無いって事です。

これを書いた秋風さんもばったり私に会わないように近づかないって言ってますしその心遣いが嬉しいです。

私は感謝の思いを胸に昼休みになるのを待ちました。


そして昼休みのチャイムと同時に教室を出ます。

この時に変に慌てないのが大切です。

折角秋風さんが気を遣ってくれたのに、私が何かある風だと他の人に気付かれたら後をつけられたりするかもしれないですから。

そうして図書室に入って例の童話がある棚に向かいました。


「手帳は……ありました!」


良かった。

私は心の中で秋風さんにお礼を言いながらその場を去りました。


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