犬
お読みいただきありがとうございます。
“良くないもの”って何?気になる。ここに来てまだ1か月経っていないのに色々起こり過ぎ!漫画の主人公なみだ。
まだリリスの箱庭の問題を一つも解決していないのに、第2女神の箱庭の問題まで出てきた。異世界だし私の方が知識もあるから結構チョロいと楽観視していた。甘かった…人が絡むから一筋縄ではいかないのよね…
簡単にはリリスの報酬はもらえないなぁ⁉
そんなことをぼんやり考えていたら
「多恵殿は犬は好きか?」
「・・・」
「多恵殿?」
「えっ!すみません。何ですか?」
「今何を考えていたのかなぁ?私と話しているのによもや他の者の事ではないだろうな!」
「いえ、第2女神の箱庭ってどんなところかなぁ?って思っていたんです」
殿下が探るような視線を送って来る
「それより何をお聞きですか?」
「多恵殿は犬や動物は好きか?」
「なぜですか?」
「多恵殿の傍に第1騎士団で調教している犬を置こうと思っている。城の者をよく把握していてし音に敏感だ。寝室に置けば夜間安心できるぞ」
「・・・あまり好きではありません。できれば遠慮したいです」
「そうか…いい考えだと思ったのだが」
「すみません。幼い頃に噛まれてから苦手意識がありまして…」
「すまぬ。やめておこう。今の話は忘れてくれ」
少し気まずくなりお茶と飲む。外の騎士さんから来客の知らせが入り入室許可を出すと、文官さん入ってきて殿下に何か耳打ちをしています。
『たえ てん きらい?』
『違うよ!てん君は大好き!でも傍に犬がいつも居るとてん君出て来れないし、もしかしたらてん君の事気付くかもしれないでしょう⁈』
『てんの ため?』
『そう!てん君と一緒にいたいから』
『たえ だいすき』
『私も大好き』
左手甲が熱くなりてん君が出たがっているけど、今は駄目!殿下も文官さんもいるからね…
皆が居ない時にもふもふ時間を楽しもうね!
「多恵殿。陛下がお呼びのようです。私はこれで失礼します。昼からの交代時に1名護衛が増える。よろしく」
「私こそ朝からご迷惑おかけしました。ありがとうございます」
殿下は微笑んで颯爽と退室されていきました。
「多恵さん。今日はお昼からダンスレッスンがある以外に特に予定はありませんが、朝はいかがいたしましょうか?」
「エレナさん今日は終わり?このままサリナさんが付いてくれるの?」
「はい。しっかりエレナから引き継いでおりますのでご心配なく」
「では、昨晩マスクの試作品を作ったので、針子のケイトさんのところに相談に行きたいので調整をお願いします」
「畏まりました」
マスクを籠に入れて準備をします。するとサリナさんが手紙を2通持ってきました。1通はキース様。2通目はケニー様からです。
イリスの箱庭臭がするのは気のせいでしょうか?
恐る恐る開封し読むとお2人とも面会を求めるものでした。サリナさんに時間調整をお願いし針子さんの作業場に向かいます。扉を開けると微妙は顔をしたポールさんとクリスさん。
「今朝は変なお願いをしてすみませんでした。ダンスしたくらいで筋肉痛なんて騎士さんからしたらおかしな話でしょう?!女性騎士さんの様に筋トレして鍛えようかなぁ…」
「とんでもございません。我々もお役の立てず申し訳ございません。多恵様はそのままで十分魅力的なので鍛える必要ございません」
「でも運動不足で体ぽちゃぽちゃですよ。引き締まった方がキレイでしょ?!」
「いえ、女性は少しふっくらされた方が…」
ポールさんは頬を染め口籠りました。なぜかサリナさんの視線が冷たい。それに気付いたかのようにクリスさんが移動を促します。
針子さんの作業場は遠いのでいい運動になるなぁ…なんてぼんやり考えながら歩いていたら、正面から令嬢御一行様が向かって来ました。
やっぱり私に気付いたとたん扇子で口元を隠し“ヒソヒソ”&“クスクス”しています。
私は相手にせず近づいた時に軽く会釈したのですが、すれ違う時に肘鉄一発くらってしまい持っていた籠を落としてしまった。
令嬢達は蔑んだ視線を送ってきます。クリスさんが令嬢達に何か言いかけた時にその場の空気が凍った
「そこの女。俺の番に何をした」
この声は…籠を拾っていた私に大きな影が落ちている。上を向くとフィラを立っていた。
「ひっ!」令嬢たちは怯み震えだした。
ポールさんとクリスさんは騎士の礼を取りフィラに謝罪しています。
「フィラどうしたの?」
「お前がつまらん女に絡まれているから来た」
「ありがとう。大した事ないから自分で対処できるよ」
「しかしだなぁ!」
「フィラ!大声で怒らないでってこの間お願いしたよ!怖いからね。そちらの令嬢も脅えてるじゃない」
「多恵を怖がらせたのなら謝る。しかし彼奴らはどうでもいい」
「多恵様申し訳ございません。アーサー殿下に報告しこの者達の家の方に連絡します」
令嬢達は涙目で震えています。自分で責任負えない事はしては駄目だよ。見た感じ成人している。いい大人が意地悪とかかっこ悪い。文句なら目と向かって言えばいいのに
「クリスさん必要ありません。根本的に私が気に入らないから、苦情入れても同じだと思います。万人に好かれるとは思ってないし望んでもいない。嫌われても私のするべき事をするだけです」
「ですが…お咎め無しとはいかない!」
『こんなつまらん嫉妬に付き合ってる時間は無い。何か場を治める方法は・・・』
「!! あのそちらのご令嬢。失礼ですが刺繍でもいいので針仕事は出来ますか?」
令嬢達は半泣きながら頷いてくれた。よっし!マスク作業員確保!
「では、今の事は不問にするので流行病予防の為のマスク作りのお手伝いをして下さい。そうですね…一人20枚作成してください。
作り方は後日勉強会でお教えします。刺繍が出来れば余裕で出来ますから安心してください」
「多恵様。それでは殿下に何と報告すれば!」
「私から殿下にお願いしますので大丈夫です。聡明な殿下であれば今マスク作りが重要なのはご存じなので大丈夫ですよ!」
いきなり背中が暖かくなりも耳元に吐息を感じ身震いして振り返ると後ろからフィラに抱き付かれた。
「キャーァー!」令嬢が頬を赤らめ悲鳴を上げる
「流石!俺の番だ。出番は無かったようだな。このまま妖精城に連れ去ろうか」
フィラは楽しそうに頬に口付けてきた。また令嬢の悲鳴が上がる。令嬢うるさい!
「妖精城には行きません。でも来てくれてありがとう。嬉しかったよ」
フィラは楽しそうに私を抱き上げてそのまま帰ろうとするとまた令嬢から悲鳴が上がる。
何この状況・・・
フィラの悪戯からも逃れてやっと針子さんの作業場に来ました。責任者のケイトさんに早速見せて作れるか確認をします…が、愚問でした。
見せた瞬間作り方を説明しなくても把握できたようです。手の早い人だったら1日20枚は作れるそうです。流石プロ!
針子さんに試着してもらい感想を聞いて改善点を話し合い、ケイトさんが明日までに試作品2号を作成してくれることになり材料選びもお願いしました。
仕事は楽しい!元の世界でも専業主婦より働きに出ている方が向いている様でしんどいながらも楽しかった。また戻ったらバリバリ働きたい!
お昼まで少し時間があるから書物庫に寄ってもらう事にした。歩いていると何か嫌な予感がする。
いつもこうやって移動してると、誰かしら遭遇する。いつもは真っ直ぐ行くけど曲がってみた。
暫く歩くと後ろでイザーク様の声がした。
あのまま真っ直ぐ行っていれば遭遇していた。
『私冴えてる!』ほくほくしながら書物庫に着いた
書物庫の扉を開けて入ったら…
目の前にキース様が!あれ⁈私冴えてなかったけ⁈
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