オーランド side
召喚される前の話です。
レックロッド帝国
第三女神リリスによって造られた箱庭の北東に位置する。国土は切り立った嶮しい山々が大半を占める国である。
主な産業は岩塩や大理石等の鉱物と岩場に自生する希少な薬草だ。
王都は山々に囲まれた未だ他国に攻め入られた事はない。
第一王子のオーランドは19歳。
レックロッド王族特有の濃紺の短髪にすこし垂れ気味の大きなルビー色の瞳が印象的な美丈夫である。
背は高くないがバランスの取れた身体をしている。
感情の起伏が無く冷静沈着なタイプだ。
幼少から王になるべく帝王学を学び国を立て直す為学んできた。
レックロッドは隣接する妖精の国とは上手くいっていない。原因は前回に召喚された乙女”レベッカ”が原因だ。
ここ50年で精霊の国とわが帝国の関係は悪化の一途。現妖精王フィラになってからは更に酷くなった。妖精は徐々にレックロッドを去り自然の恵みが少なくなり、辛うじてリリス加護で守っている状態だ。そんななかで育ったオーランドは自ずと乙女に毛嫌いする様になった。
ある晴れた穏やかな午後。
オーランドは馬小屋で愛馬シュウをブラッシングしていた。
文官が走ってくるのが見える。文官が走っているのが珍しくぼんやりその様子を見ていた。
「殿下!!すぐに陛下の執務室へお越しください!」
急を要する事態のようだ。嫌な予感しかしない。
愛馬ショウの世話を馬番に任せ早足で陛下の執務室に向かう。
陛下の執務室には宰相のサイラスと軍部大臣ダルクが既に集まっていた。
「オーランド。女神の台座を監視していた騎士より召喚の兆しありと連絡があった。どうやら今回も“乙女”のようた。
召喚は7日後。出迎えはそなたに任せる。第1騎士団を中心に準備に入るように。
サイラスは城内の者に気づかれないようにお迎えの準備を。ダルクは有事に備えて兵と武具の備えを。」
『…乙女が来る』乙女に対しいい感情を持たない俺は動揺する。
「オーランド。この部屋を出たらその様な顔を他の者に見せるでないぞ!王族の動揺は民を不安にする」
リリスがわが帝国を案じ召喚したのだろう。
陛下も明言しないが同じ考えだ。
もし今回の乙女が我が国を選べば国は救われるだろう。しかし俺は乙女をわが帝国に止める為に乙女を妻に迎える事になる。
嫌すぎる…
乙女が嫌なオーランド。
次は召喚の場で多恵に出会います。