馬車
アーサー殿下の突然の告白。
多恵が眠っている間に何が起きたのか⁈
「…すみません。色々疑問符なんですが!」
「ヒューイが正式に貴女の伴侶候補を辞退し、ナタリー嬢との婚約を決めました」
私が寝てる間にそんな事になってるの⁉︎
「以前に私の婚約は訳ありと話したのを覚えてらっしゃいますか⁈あの婚約はヒューイとナタリー嬢の婚約の為で破棄前提のものです。
その婚約者も事情があり、意にそぐわぬ婚約を避けるべく、私とのかりそめの婚約を選んだのです。
貴女の召喚の前触れがあったあの前日。ヒューイはナタリー嬢の病の完治に歓喜し、私は婚約者からの破棄の連絡を受け安堵していたのです。
そこに召喚の前触れが舞込み話が思わぬ方向に進み出しました。」
あーリリス…タイミング悪し!
「私は貴女が陛下に謁見した日。陛下に物怖じせず陛下に意見する貴女に心を奪われてました。
聡いだけでは無く、愛らしさを持ち合わせてた魅力的な女性だ。すぐに貴女の伴侶になりたいと思ったのです
しかし婚約を正式に破棄していない私は貴女に求婚出来ず、妖精王や他の者が貴女に求婚するのを苦々しい思いで見ていました。
特にナタリー嬢に未だ気持ちがあるのに、貴女に心酔していくヒューイを許せなかった」
今思えばアーサー殿下の発言や行動に合点がいく。
「私は貴女の伴侶候補だ。もう我慢しない。遅れを取った分、私の心を受け取って頂けるよう貴女に愛を捧げます」
…この世界はどうも話の展開が早い。物語や漫画なら早く先を知りたいから、さくさく話が進むのはいいけど、当事者になると色々と追いつかない。
特に恋愛物語は…
逆ハーレムなんて楽しいのは乙女ゲームだからだと実感する。
人に好意を向けられるのは本当で疲れる
「多恵殿?」
おっといかん!意識を手放していた。
目の前にはキラキラ王子が私の反応をみている
「事情は分かりました。他の候補方にも話しましたが、私が必ず伴侶を選ぶとは限りません。もし、想われる方が現れましたら、この召喚の犠牲にならず、ご自分の幸せをお取り下さい」
アーサー殿下は私の両手を取り強く握りしめる。
「私は貴女以外無い!」
今になってもうちょい妖精城に滞在した方が良かったと後悔した。
アルディア城に馬車が到着。
馬車の中でアーサー殿下の猛烈アピールに憔悴していたから、早く着いてくれてよかった
かなりの疲労で自室までたどり着けるかどうか…
馬達が嘶き馬車が静かに止まった。
窓から外を見て仰天!
大勢の騎士と侍女が赤絨毯のサイドに並び、その先に陛下と王妃様と宰相様がスダンバイしている。
『何?何が始まるの?』
「では、多恵殿。城の者が貴女を待っています。参りましょう!」
「えっ⁈あの赤絨毯を歩くんですか?無理です。降りれません」
「どうされました?体調を崩されましたか⁈」
ちっがーう!
「こんな注目される中なんて無理!城の裏手にして下さい。そうで無いなら降りません!」
「??」
扉を開けた従者が困った顔をしている。
ごめん!こんな中歩く心臓は持ち合わせていません!
私の泣きそうな顔を見た殿下が従者に
「多恵殿は裏手からの入場を希望されている、馬車を裏手に回せ」
「??」従者は戸惑っている。
「早くしろ!」
従者は慌てて扉を閉めると直ぐに馬車を走らせた。
外は騒ついている。
殿下は相変わらず恋する男子の表情だ。
アルディアに戻って早々、出鼻を挫かれ嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか⁈
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