表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/442

落下

お読みいただきありがとうございます。

『たえ たえ おきる』

てん君の呼ぶ声で目が覚めた。

辺りは薄暗く薄灰色の壁に覆われた部屋だ。


『たえ! おきた いたい ない?』

『てん君!ありがとう。痛くは… あれ?』


手にミトンのような布が付いていて、手首がロープで縛られている。

動かせない。


『てん君!出てきてこれ何とかできない?』

『それ てん いや』

『?ごめん よく分からない』


てん君の説明によると…


私の手に付けられているのは鉄を編み込んだ布で出来たミトン。この布は丈夫でナイフを通さず甲冑の中に着る防護服にも使われる布らしい

妖精や聖獣は鉄を嫌い触れると妖力が使えない。


…という事は… てん君無力!


どうやら部屋一面を覆っている物もこの鉄の布らしく全く妖力を通さない。

もちろんフィラの加護の指輪も無力!


なんでこうなったの⁈確か広場でお茶を飲んでいたら急に意識が薄れて…

あのお茶?!でもあれはサリナさんが用意してくれたお茶だよ。

まさかサリナさんが… 


「いや!ナイナイ 誰かがサリナさんが用意した茶葉に何かしたのかも…」


「…」


取りあえず分かることは最悪ピンチって事だけ。


『フィラ てん ちかく わかる』

『じゃ!フィラは居場所わかってるの!』

『ない!フィラ ちかく くる てん わかる』 


・・・どうやら近づかないと察知できない様だ。


『フィラ いっぱい さがす だいじょうぶ』


探知に最長1日かかるのね。了解!

敵役ワルモノがどう出るか分からないけど、フィラが来るまで大人しくしてます。


『てん君、出て来れないの?』

『でれる でも たえ ちから む なる』

『ん?てん君が力を使うと反対に私が弱るって事?』

『そう! たえ いのち だいじ』

『えっ!命に関わる程なの⁈』

『フィラ それ さいご いった』


あー最終手段って事ね…


『てん ちから いま ない』

『ここ でる ようせい たえ みる』

『ようせい フィラ いう フィラ くる』


要するにこの部屋を出れば、妖精が私とてん君に気付き、フィラに知らせるって事ね!理解した!


どれくらい時が経ったのだろう。窓もなく無音の空間で感覚が麻痺している。


緊張からお腹も喉かの渇きも感じない。

部屋の中に配慮してか座り心地のいいソファーがある。ソファーに横になり体力の温存に努める。


“カツカツ”足音がする。これはヒールの音!と言う事は近付いて来るのは女性⁈


布隙間からトレーに乗せられた食事が置かれた。


「毒は入ってないわ。安心して召し上がって下さい」


「ありがとうございます。でも要りません!」


「何故?食べないと体が保ちませんよ」


「姿も見せない人が運んだ物は怖くて食べれません。毒が無いって言葉も信じなれない」


「食べていただかないと困ります」


「私は困りません。食べて欲しければ姿を見せて、事情を説明して下さい」


「…」“カツカツ”早足で遠ざかっていく。


恐らく声の感じと足音から中年女性。もしかしたらグラント様が言っていたナタリー様の専属侍女サマンサさんかも。


またしばらくすると足音が聞こえて来た。


「貴女にお願いがあります。身の安全をお約束します。10日程こちらでお過ごし頂きたい」


「何故ですか⁈」


「あるお方の為です。女神の乙女ならお可哀想なあの方の為に力をお貸し下さい」


自己主張ばっかだなぁ!なんかイライラして来た。


「だから!人に頼み事するなら姿くらい出したら!話はそれからです」


“ガン!” 何か蹴りました⁈


「殿下はこんな気の強い醜女の何処が良かったの!きっとお前が怪しげな力を使ったのだろう!この部屋ではその力も使えない!大人しくしていろ!」


『あー!キレた。グラント様が言っていた激情型サマンサさんだ』


「ナタリー様の侍女のサマンサさん?」


“ず…ず…”靴を引きづり後退りしている様だ。正解ビンゴか?


「だったら何!貴女がここに居れば全て元に戻りナタリー様は幸せになれるわ。貴女がいけないのよ!あのタイミングで来たから!」


「私には関係ないわ!召喚を決めたのは女神リリスよ!」


「貴女が行方不明になり貴女の怪しい力が殿下に及ばなければ、殿下は正気に戻りナタリー様と結ばれて皆んな幸せになるわ」


「はぁ?」なんだこの人。


何か音がする。走る足音と息遣いだ!誰か近づいて来る。


「おい!若様グラントに場所がバレた。こっちに向かっている。そいつは置いて逃げるぞ!」


『グラント様が来てくれたの⁈』安心したら足が震えてきた。


「嫌よ!殿下にはどんな事をしてでもナタリー様を選んでいただくのよ!」


更に外から音がする


「やばいお金は要らない!俺は逃げるぞ!」



複数の足音が近づいて来る。


牢を開け(布で隠されていたけど、ここ牢だったんだ)鉄の布除けサマンサさんが入ってきた。

彼女は手にボーガンを持っていて私に向けている。


「そのまま壁まで下がり壁に着いたら座って!」


ボーガンの的になってるから大人しく言う通りにし座る。


「貴女がいなければいいのよ!そうよ!

だから消えて!消え方は選ばしてあげる。ボーガンで串刺しかその下の抜け穴から湖に落ちて溺死か」


座った床から風を感じる。この下ダストシュートみたいになってるの?


「私はどっちでもいいわ死んでくれたら。でも貴女も若い女性だから綺麗に死にたいわよね⁉︎

溺死しなさい!」


あーもう色々狂ってるね…この人


「多恵様!そちらですか!」

「多恵殿無事か⁈」

アーサー殿下とグラント様だ。


「若様!女神の乙女はこの中に居ます。でも入って来ないで!今私のボーガンが彼女の頭を狙っています」


「その声はやはりサマンサか⁉︎そなたは何をしている!早く多恵様を解放しなさい」


「若様。これは私がナタリー様の為に一人でした事。ナタリー様は何も知りません。乙女が死ねば元通りです。ご安心を汚れ仕事は私が請負ますわ」


サマンサさんもう普通じゃないから、話し合いは無理だなぁ…とりあえず確実に助かる方法を考えよう。


『たえ フィラ そこ』

『てん君本当?』

『した フィラ ようせい そこ』


そっかこの下がもしダストシュートの様になっているなら、部屋の外に繋がっている。外に出たら妖精やフィラが見つけてくれるわ。

湖に落ちる前に間に合ってくれたらいいけど、落ちても大丈夫泳げる!


『よし!決心した。湖に落ちる!』


こうしている間にもグラント様とアーサー様がサマンサさんを説得しています。

でもね段々サマンサさんの発言が色々おかしくなって来ててもう無理ぽい。

私が外に脱出して捕まえてもらおう。 

まずはサマンサさんを煽て落とし穴から落としてもらわないと



「多恵様!無事ですか!お声を聞かせて下さい!」


「はい。ボーガンの的になってますが未だ無事で

す」


「少しお待ち下さい。必ず助けます」


「ありがとうございます。多分サマンサさんはボーガン慣れてないようなので、外したら部屋に突入して下さいね」


「多恵殿!その様に煽る事を言ってはダメだ!」


サマンサさんが確実に動揺している。慣れていないのは図星だった。

1発目外したらすぐ突入され殺す前に捕まるよ。だから…確実に殺すなら落とし穴ですよ!


「やっぱりアンタ嫌な女だ!落ちて溺れろ!」


『よし!読み通り落とし穴!』


サマンサさんは部屋の隅に行き、床を思いっきり踏んだ。


床が抜け落ちる


「ぎゃぁ!」やっぱりダストシュートみたいになっていてチューブ状の滑り台みたいだ


「痛!」古いからか所々出っ張ったレンガに当たり腕や脚が切れる。


落ちた穴の上では争う声が聞こえてくる。

殿下とグラント様が突入しサマンサさんを抑えた様子。


『だいじょうぶ フィラ そこ』

『来てくれてる?』 

『すぐ そこ』


出口が見える。


「フィラ!ちゃんとー受け止めてねー!」


穴から飛び出たら空が見えた。星が瞬く夜空だ


「綺麗…」


夜空に見惚れてる場合ではない!ってか夜なの⁉︎

まだ落下してる。湖面が近づく泳ぐ覚悟決める


「フィラ!」


落下が止まった。目を開けると心配そうなフィラの顔が見えた。フィラは額に汗が!急いでくれたのがわかる。

フィラの琥珀色の優しい眼差しと新緑のフィラの香りに安心したら涙が出てきた。

ぼろぼろ涙が出て不細工な顔になった。


「ありがとう。あのごめん。あまり見ないで今私不細工になってるから…」


「…何も言うな。しばらく俺に抱かれてろ…」


フィラは手首のロープと手のミトンを取ってくれ強く抱きしめてくれる。

てん君の気配が強くなり呼ぶと出てきて私の顔を舐めて慰めてくれた。

2人の温もりに安心したら眠ってしまった。


この後、後処理がまたまた大変な事になっているとも知らずに…2日も眠り続けた。

次話は事件の全貌が解明されます

フィラを男前に書いてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ