視線
お茶会当日。無事終える事が出来るのか⁈
朝はいつも通り2刻の鐘の音で目が覚めた。
ライカさんが起こしに来る前に居間に行く。
「おはようございます」
「え!」
ライカさんは私を見てびっくりしている
私だって自分で起きますよ!
「多恵様…お早いですね…」
「今日は頑張らないとイケないからね〜」
「…では早く用意しましょうね」
ライカさんはテキパキと朝食の準備をしてくれる。
朝食を食べているとライカさんが茶葉の缶を持って来た。
「多恵様。サリナ様が馬車移動の休憩用に茶葉を用意してくれています。リラックス効果のある茶葉で、少し独特な香りがしますが身体が楽になるそうです。是非、みなさんでお召し上がり下さい」
「ありがとうございます。サリナさんにもお礼を伝えて下さいね」
「承知しました。では荷物に入れておきますね」
流石サリナさん気遣いの人だ!
馬車移動なので見た目より着こごち重視でシンプルなワンピースにしてもらい準備万端です。
小さな巾着にハンカチとマスクの作り方を書いたメモとペンを入れ用意します。
しばらくすると第1騎士団の女性騎士のミリアさんがお迎えに来てくれました。
赤茶の髪を後ろに一つに束ね可愛らしいお顔立ち騎士さんです。やはり彼女も背が高い!スタイルいいし羨ましいです。
集合場所に着くとオブルライト家の家紋が入った大きな馬車が停まっています。
馬車の前にはアーサー殿下とグラント様がいて…
「あっ!デュークさんとガイさん」
私のせいで謹慎になちゃったお2人も居ます。
嬉しくて思わず駆け寄っちゃいました。
慌ててミリアさんが付いて来てくれます。
あはは…ゴメンさいミリアさん。
「デュークさん!ガイさん!おはようございます。先日はすみませんでした。今日はよろしくお願いします」
「多恵様。おはようございます。もう気になさらないで下さい。これからもお守り出来て光栄です」
「お2人がいらっしゃったら安心です」
楽しく会話していると急に後ろから手を取られ”くるっ”と半回転させられた。その先にはグラント様がいて…
「他の者に先に挨拶されるとは、私の気持ちを試されているのですか?」
「あっ!グラント様おはようございます」
何かグラント様目が笑ってない。
「グラント。多恵殿を離してやりなさい。困っているだろう。悋気はみっともないぞ」
「悋気ですか?殿下」
「…兎に角離してやりなさい」
何か2人は微妙な雰囲気です。喧嘩しましたか?
「殿下。おはようございます」
「ああ…おはよう多恵殿」
未だグラント様に手を取られたままです。いい加減離して欲しいんですが…
目線で”離して”と伝えてみる。
結果は…美しい微笑みを送られて、そのまま腰に手を添えられ奥に待機している騎士さんの元にエスコートを始めた。困った顔をしながらミリアさんが付いてくる。
「公爵家の騎士団の者を紹介しましょう」
グラント様は機嫌良く騎士さんに紹介してくれ、紹介が終わると
「出発する。騎乗せよ!」グラント様が指示を出す
グラント様はまた馬車までエスコートしてくれます。あれ?向こうからライカさんが走って来てる⁈
ミリアさんが私とグラント様の前に立ちライカさんを警戒する
「止まりなさい。そこで要件を述べよ」
「ミリアさん私のお世話をしてくれているライカさんで怪しくないですから!」
「失礼いたしました。多恵様付きの侍女でライカと申します。多恵様のショールを荷物に入れ忘れ届けに参りました」
「ショール?」
「お帰りが遅くなると冷えます故お持ち下さい」
「ありがとうございます。もう出発なので馬車に入れて行きます」
ミリアさんがショールの入った袋をライカさんから受け取り運んでくれた。
ライカさんにお礼を伝えようとして彼女に視線を送ると、ライカさんは誰かに熱い視線を送っている。
『誰を見てるの⁈』ライカさんの視線の先を追ってみると…視線は私の頭上にある。
そう熱い視線の先はグラント様でした。
『あ…納得!』グラント様は美形だらけの箱庭男性の中でも飛び抜けて男前だもん!目が行くよね
私が見上げてるに気付いたグラント様は目元を緩め
「あまり見つめられると自制が効かなくなりますよ。これでも抑えているんですから!」とウィンク
「ん?これでですか?結構押されてますけど」
「私の本気はこんなものではありませんよ。試されてみますか⁈」あー悪い顔してる
「遠慮しときます」
グラント様は楽しそうに笑ってる。『いいよ!イジられキャラで!』と少しやさぐれる
馬車前に来るとミリアさんが車内を確認し、グラント様のエスコートで搭乗。続いてミリアさんが乗って来た。
「出発!」
グラント様の掛け声で馬車が動き出し、オブルライト家の別邸に向かいます。
グラント様の攻めにタジタジの多恵。
アーサー殿下が何か言いたげです。




