過保護
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もう少し書物庫に居たかったけど、マーカスさんの判断で部屋に戻ることになりました。
お昼までは書物庫に籠ろうと思ってたのに…
重たい本はガイさんが、マーカスさんは私の右手をしっかりホールド中です。
ゆっくり本を選べなかったのと、テンション駄々下がりのダブルパンチで回復に時間がかかりそうです。
只今強制送還の中です。
廊下を進んでいくと文官さんと貴族男性が話をしています。
『うわぁ…知らない人』
迂回したいけどこの順路が部屋までの最短。絶賛過保護中のマーカスさんとガイさんは許してくれないだろう。
私は周りから人当たりがよく話しやすいと言われるが基本人見知りだ。気心知れない人との交流は極力避けるタイプで、視力が悪い事を理由にして気づかないふりをする事も多い。
だから目の前の知らな人達を避けたかった。
『…回避できそうにない』
更にテンションが下がる。もうテンションの底が見えてくるのではないか⁈
文官さんが私に気付いて礼をしてくれた。それに気付いた貴族男性が振り返り表情を明るくしこっちに向かって来る。
『うっわぁ…面倒くさい』上手く表情をつくらないと!
貴族男性は私の前までくると礼をして名乗った。
「お目にかかり光栄でございます。私は宰相補佐を務めておりますグラント・オブルライトと申します。先日の文によるご面会の願い失礼致しました。
またお受けいただき感謝いたします」
何と明日の面会予定のグラント様だった。
銀髪の長髪を後ろで一つにまとめ菫色のきれいな瞳をしている。私の萌えポイント銀縁の細いフレーム眼鏡が似合う美形。アーサー殿下を太陽とするならグラント様は月と言ったところか…
おっと見とれている場合ではない。ご挨拶しお辞儀をする。丁度よかった!明日の面会の要件を聞いておこう。
「グラント様。多恵様は体調が優れずお部屋にお戻りの途中故失礼いたします」
マーカスさんが戻りを促す。
「えっ?マーカスさん私は調子悪くないですよ!ただテンションが下がっているだけなので大丈夫です」
「昨日も事もございますのでご無理はいけません。お部屋に戻ります」
きっと殿下達に昨日第1騎士団の皆さんはお叱りを受けたな!皆さん過保護過ぎです。
「マーカス殿。多恵様の身を案じられるは当然ですが、お心もお察しせねばなりませんよ。私には多恵様は未だお部屋には戻られたく無い様にお見受けいたしますが⁈」
嬉しい援護射撃に思わず大きく頷く。
グラント様は口元に手をやり小さく笑っている。その笑い方何処かで見たことあります。
「マーカスさん、ガイさん。殿下から何を言われたのかは分かりませんが、昨日の不調はたまたまです。そんなに私ひ弱ではありませんから、過剰な心配は不要です。私も凄く反省していますから同じことはしません」
「グラント様と明日のお話をしたいので、少し離れてお待ちいただけますか⁉︎」
強めの口調でお願いすると、不安そうな顔をしながらも距離を取ってくれた。
「グラント様。もしよければ明日の面会の目的をお聞かせいただけませんか⁈」
グラント様は驚いた表情をして
「オブルライト領地で毎年流行る病の話と愚妹事をお茶会の前にご承知おきいただきたく面会を希望いたしました」
和かに表情は作っているけど何を探っている様に見て取れる。
「私の気のせいでしたらすみません。私の為人を見極める為ですか⁈大切な領民を任せうる人物なのかどうかを…」
グラント様は必死に表情を作られていますが図星の様です。
グラント様は右手を左胸に添えて深く頭を下げて謝罪をされます。
「多恵様にお詫び申し上げます。仰るとおりでございます。毎年我が領地では沢山の領民が病で命を落とします。いろいろと手を尽くしますが抑える事ができません。領地を治める者として信頼おけるお方なのか知っておきたかったのです」
やっぱりなぁ…
「いえ、謝罪は必要ありませんよ。女神リリスの召喚した乙女とはいえ、善人とは限りませんからね。領主として当然の事と思います。お茶会の席でしっかり見極めてください」
「多恵様…」なんかグラント様の眼差しが変わりましたよ?⁈なんで?
「多恵殿!グラント!」
廊下の向こうからアーサー殿下がこちらに向かって来ます。走ってる?
『殿下~!廊下は走ってはいけませんよ!』と心で注意しておこう
「グラント多恵殿になんの用だ!」
「どうしましたか殿下?私は明日多恵様と面会の機会をいただいたのでご挨拶していただけです」
「多恵殿。こやつが迷惑をかけていませんか?」
「いえ、ご丁寧にご挨拶頂いていました。反対に私が失礼をしたかもしれません。グラント様失礼しました」と頭を下げ詫びる
頭を上げたらグラント様に手を取られ手の甲に口付けされた。
「え!!」突然の事で固まり赤面していると、反対の手をアーサー殿下に取られて殿下に引き寄せられた。
「多恵様。お時間いただきありがとうございました。では明日楽しみにしています」
グラント様は微笑んで颯爽と行ったしまった。
何この状況?
殿下は去って行くグラント様の背中を見ています。
「あの…殿下…手を離して下さい」
恥ずかしいです。それにマーカスさんとガイさんが突然の殿下の登場に困っていますよ!
殿下は無言で手を持ち替えエスコートに姿勢になりそのまま部屋に向かい歩き出します。
『なぜに?』
「マーカス、ガイついて来い」
『だから何で?』
アーサー殿下を見ると難しい顔をしていて、質問出来る雰囲気では有りません。
私何かしましたか?
グラント登場で新たなフラグが立ったか?




