ナタリー
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私はアルディア王国公爵家のナタリー・オブルライト。
オブルライト領はレックロッド帝国との国境に接し森林が大半を締める自然豊かな領地です。
私には2歳年上に兄グラントがおり、アーサー殿下の側近候補として幼い頃から登城していました。
私は兄上に付いて行きアーサー殿下やヒューイ殿下と交流を深めていました。
公爵家令嬢である私は将来的アーサー殿下の婚約者候補とされていましたが、私がお慕いしたのはヒューイ殿下だったのです。
ヒューイ殿下は理想を持ち真面目な殿下を尊敬しお支えしたいと将来を夢見るようになりました。
陛下もお父様もヒューイ殿下との婚約を望んで下さり、12歳を迎えると妃教育が始まりました。
殿下との婚約に向けて順調な日々過ごしていたある日、思わぬ事が発覚したのです。それは私が14歳を迎えた時でした。私は病を患っていたのです。
病名は”妖精病”通称フェアリー症。
身体成長が10歳前後で止まり子を宿す事が出来ない成長障害。私は絶望し毎日泣いて過ごしました。
お慕いしていたヒューイ殿下との将来を夢見ていたのに…私の色鮮やかな未来は一瞬にして色を無くしました。
心配された殿下から毎日花と手紙が届きますが、読む気力も無く花を見るのも辛くてベットの中で過ごしました。
貴族なら子を授から無くとも繋がりのある貴族から養子を迎えればいいけど王族は違う。王家の血を残す為に子を産む事は必須なのです。
子を授かれない私は殿下と婚姻できない。
殿下の手紙の返事も書けぬまま数日経った頃に殿下がお見舞いに来て下さいました。
会うのが怖い。殿下の口から「婚姻出来ない」と言われたら…考えただけでは足がすくむ。
部屋の扉の前でどれくらい経っただろ。
“コンコン”ノックする音に驚いていると
「ヒューイです。ナタリー嬢このまま私の話を聞いて下さい」
扉向こうから愛しいあの人の声と気配がし心が震える。
「私の妃は貴女しか考えられないし貴女でないと駄目なんです。色んな医学書を読み国中の医師の元にも行きました。貴女の病は完治する可能性はあります。完治率は低いが18歳を迎えるまでに”乙女の始まり”(初潮)があれば成長は遅くとも子を授かる事ができるそうです。
私は陛下に懇願し本来なら王族の決まりである成人(15歳)での婚約を、貴女が18歳になるまで待ってもらう事になりました。
もし貴女が18歳を迎えても病の治る見込みがない時は、王位を返上し公爵となり貴女を妻に迎えます。私の下にはトーイもおりますから大丈夫です」
『!!』
気がつくと扉を勢いよく開けてヒューイ殿下に抱きついていた。驚きながらも殿下は私を受け止めて強く抱き締めてくれました。
どれくらい殿下の胸で泣いただろう…ふと我にかえり慌てて殿下から離れて殿下を見上げると、美しい殿下のお顔はやつれ目の下にはクマも見てとれた。
私の為に奔走して下さったんだ。嬉しさと申し訳なさからまた涙が溢れてきた。殿下は優しく涙を拭いながら
「ナタリー嬢。貴女には涙は似合いません。笑って下さい」
こうして私の未来はまた色を取り戻しました。
それから殿下は公務の間に私に会いに来て下さいました。身体の成長にはお日様と軽い運動が良いからと散歩に付き合って下さり、殿下の理想と夢をお聞かせ下さいました。
殿下との穏やかな日々が過ぎ17歳を迎えリミットまで後1年。まだ”乙女の始まり”はありません。
社交界で私は”妖精姫”と呼ばれているらしく、殿下を慕う令嬢の陰口の的になっています。
そんな話を私の耳に入れない様に殿下は配慮して下さり、つつが無く過ごさせていただいています。
しかし次第に焦りが出てきて塞ぎ込む事が増え、殿下のお顔見るのも辛くなる事もありました。
ある日朝から体調が良くなくベットで伏せっていました。起きあがろうてした時に胸の先に痛みが走ったのです。びっくりしてサマンサを呼びました。
サマンサは私が生まれた時から身の回りの世話をしてくれている侍女で、私以上に私の身体を知ってくれています。
サマンサは興奮気味で部屋を出て行き、しばらくして医師を連れてきました。いつもは公爵家専属の初老男性の医師なのに何故女医です。
問診と診察を受け女医が驚く事を言いました。
「恐らく”乙女の始まり”の前兆とお見受けします。あと数日で迎えると思われます。お嬢様おめでとうございます」
意味が分からず唖然としていると、私の手を取りサマンサがビックリする程号泣しています。
「サマンサ⁈私は子を授かれるの?」まだ困惑して理解出来ずに聞くと
「はい!お嬢様のお身体は大人の女性です。あっ!早く旦那様と奥様に知らせなければ!先生!旦那様にご説明頂くますか⁉︎ご案内いたします。
マリ!私が戻るまでお嬢様をお願いしますよ!」
興奮したサマンサは先生を引っ張ってお父様の元へ行ってしまった。
唖然とする私にマリが…
「お嬢様。殿下にお知らせしなくていいのですか?」
「直ぐにでも知らせたいけど、”乙女の始まり”が来てからにします。もう3年も待ったのだから数日待つくらい大した事ではないわ」
2日後に殿下に”乙女の始まり”があった事を手紙にしたためました。
身体は慣れていないので怠く辛いけど、殿下との未来を想像するとこの怠さも嬉しく思えたのです。
その頃殿下は大変な事になっているとも知らずに、
私は幸せの絶頂にいました。
ナタリー・ヒューイ・多恵の三角関係?はどうなるやら…




