病
サリナさんが待つ城に帰ります
美味しい茶菓子とサリナさんが待ってるので帰ります。
グリード殿下とオーランド殿下にお越しいただいた礼を述べて帰ろうとすると、グリード殿下に呼び止められ振り返るとハグされました。
「私は夫候補だからこれ位許して下さい」とウィンクされ赤面した。
『ゔー!』左手の甲が熱くなりてん君が怒ってる!
『てん君!グリード殿下は挨拶しただけ!私嫌がってないからね!』と宥める。
必死にてん君を宥めてると、オーランド殿下が私の右手を取り口付けを落として
「愛しい多恵殿。次会える日を楽しみにしております」と頬を染め微笑んだ。
ちなみに私の左手は熱いままで、必死にてん君を抑えてます。てん君は過剰反応しやすい様です。先が思いやられます。
グリード殿下とオーランド殿下が去りヒューイ殿下と2人っきりになった途端に殿下が聞いてきた。
「多恵殿。城内の者からナタリー嬢の事を聞いたのですか⁈」
「いえ。殿下の思い人ですか?」ヒューイ殿下の顔色は良くない。まるで悪戯が見つかった子どもみたいだ。
「私は幼い頃から将来を約束した令嬢がいました。しかし彼女は病を罹ったのです。私が王族で無ければ婚約や婚姻も出来たでしょう。しかし私は王族でそれは許されなかった。
彼女の病は確率は低いが18歳迄に治癒する事もあり、彼女と私はその可能性に賭け婚約を延ばしたのです。そして治る兆しの知らせを受けたのは、召喚のドアが出現する前日でした。召喚が成されなければ今頃私は彼女と婚約をしていたでしょう」苦痛に顔を歪め話す殿下。
召喚が殿下の希望を奪ったんだね…
私は静かに殿下の話を聞く。
「詳しくは陛下から説明がありますが、我が国の問題はナタリー嬢のオブルライト領で毎年発生する流行り病です。私個人はナタリー嬢との未来を望むものの、王族としては流行り病の封じ込みも大切なのです。
結局私はナタリー嬢を諦める決断を出来ぬまま、多恵殿の伴侶になろうとした不誠実者です。
軽蔑していただいて結構ですよ。多恵殿」
辛そうに話す殿下が痛々しい。聞いてる私も辛くなってきた。悲恋だ…
ヒューイ殿下の告白に多恵はどうするのか…




