いざお米の産地へ
調整が済み視察へ向かいます
翌朝。身支度をしているとリチャードさんが部屋に来て視察のスケジュールが決まったと話す。短い時間でよく準備できたと感心していたら
「出発は本日の4刻半となりますので、よろしくお願いいたします。また、視察にはハイド様とライアン様がご同行され、バスグルから騎士が15名程同行いたします」
「大所帯ですね」
「王弟殿下が同行される事を思えば少ない位ですよ」
リチャードさんがそう言い、タイトなスケジュールの為人員も最小限にしていると説明した。詳しい事が分からない私は皆さんにお任せするしかない。必要事項を伝えたリチャードさん達は退室し、私は朝食後に侍女さんと荷造りを始める。
この世界に来て色んな所に旅をし荷造りに慣れた私は、自分で必要なものを用意しそれを侍女さんがトランクに詰めてくれる。そして馬車の中で読む為の本を別に用意していたら、荷造りをしていた侍女さんが
「多恵様。このローブはお持ちになりますか?」
「あ…」
すっかり存在を忘れていてエル除けのローブ。本心は持って行きたくない。でもこのローブの存在は何故かみんな知っていて、置いていった方が後々物議を呼びそうなので持って行く事にした。ただしトランクの一番下に…
こうして午前中は荷造りをし出発準備はOK。軽く昼食を食べゆったりとしたワンピースに着替える。乗り物に乗るとかなりの確率で眠くなる私。コルセットにドレスなんか着たら苦しいもん。
「お迎えに参りました」
そろそろ馬車に向かおうとしたらライアン様がお迎えに来てくれた。扉を開け目の前にライアン様がいて驚き仰け反るとデュークさんが背中を支えてくれる。満面の笑みのライアン様に挨拶と視察準備に感謝をし馬車に移動を始める。城内を移動中にお城に仕える人々が廊下の端に寄り頭を下げている。リリスの3国ではお城勤めの皆さんは遭遇すると気軽に挨拶してくれるし、顔見知りなら立ち話もする。日も浅い事からまだバスグル城は慣れていない。また人見知りが出てきた所で馬車の前まで来た。
馬車の前にハイド様とビルス殿下がいて話をされている。そして私に気付いた2人からご挨拶いただき準備いただいたことに感謝を伝えた。そしてデュークさんの手を借り馬車に乗り込むと、他の皆さんは出発の最終確認を始める。やる事の無い暇な私は食後で少し眠く窓の外をぼんやりと見ていた。
するといつもお世話をしてくれる侍女さんが馬車に近づき乗り込んだ。後で聞いたが直前に侍女さんの同行を決めたそうだ。
『自分の事は出来るし宿泊は貴族の屋敷に泊まるから必要ないのに…』
そう思っていたら…
「!」
ハイド様とライアン様がこちらに向かって来る。別の馬車だと思っていたので焦り侍女さんに確認すると
「初めは馬車は別々の予定でしたが、人員を最小限にする為に馬車は1台になったようです」
片道5日間の移動。殿方二人と一緒なんて罰ゲームだ。口を開けて固まっていると侍女さんが、だから急遽侍女の同行が決まったのだと話した。私が無理を言ったから文句は言えないが、お気楽な旅にはならないと思うと自然に溜息がでる。そんな私に気遣ってくれる侍女さん。彼女が同乗してくれるだけでもありがたいと思わないと…
「あの…お名前をお伺いしていいですか」
約20日間一緒になのだ名前を知り仲良くしたいと思い聞くと
「ユキエと申します」
「ユキエ?」
思いっきり日本名に驚くとユキエさんはハイド様たちを窓から確認し小声で
「私は聖人様が想いを寄せたと言われる女性の子孫なのです」
「!」
驚き声を上げそうになるとユキエさんは口の前に指を立ててウィンクし、詳しくは2人きりの時に話すと言い、立上げってハイド様とライアン様を出迎えた。まだ驚き動揺中の私をハイド様が気遣ってくれる。緊張していると言い誤魔化し出発する。
出発し少しするとライアン様が今日泊まる侯爵家について話してくれる。ご挨拶するのに情報は必要だしね。どうやら今日宿泊するのは貴族の中でも中立派の家。その家は順路から反れ若干遠回りになるそうだ。しかし理由がありバスグル貴族の派閥を考慮しての事。未だ貴族の中にはマッケン王を崇拝する者も多く、その一族と私の接触を避けたい王族の考えで決められた。まぁ私もヤバそうな思想の人達との接触は避けたいから、若干の遠回りは我慢しますよ。
『だって面倒くさいもん』
それに自国のいざこざは自分達で解決して欲しい。私はバスグルが経済的に安定する事で、リリスの箱庭に火の粉がかからない様にするためにここに来ている。正直すべて面倒を見てあげる気は無いし、そんなに優しい人間ではない。そう思いながらライアン様の話を聞いていた。するとハイド様が話の腰を折り
「タイトなスケジュール故に宿泊する家には晩餐会の様な催しは行わない様に伝達をしてありますが、お目通りしたいと貴族が来るやもしれません。問題のある家門の者は排除しますが、その他の者の挨拶はお受けいただきたい」
そう言い宿泊する場所に貴族が待ち構えていると話した。まだ出発して半刻も経っていないのにもう帰りたくなり、ライアン様の話も他人事の様に聞いていた。
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