同じ
問題が多くブルーになる多恵。でもグリードの言葉である事に気付き…
グリード殿下の言葉に拗れすぎたアリアの箱庭に特大の溜息を吐き
「同じ箱庭でもカナールとユグラスはバスグルに比べ豊かだと聞きました。この2国はバスグル王国から独立した国なのに、妖精の加護はあるんですね」
「はい。いや…加護は受けていますがやはり我らリリスの箱庭に比べれば貧しいですね。主食となる麦はほぼ育たず輸入に頼っておりますから」
グリード殿下はこちらに来てから王配となるべくアリアの箱庭について学ばれた様で、カナールとユグラスについて色々話したくれた。どうやら主食となる麦は育たないが、野菜果物や薬草等は多くは無いが生産出来ていている。
「それだけ豊かなのに何故主食となる麦が育たないの?」
「どうやら過去の聖人様が関係している様です」
『正清さんが⁈』
思わず正清さんの名を出しそうになり慌てて口を紡ぐ。殿下が何処まで知っているか分からない状況で下手な事を言わない方がいい。私の知らない事が未だありそうだ。殿下はカナールとユグラスは過去の過ちを教訓に民と自然を大切にし豊かでは無いが日々の幸せを感謝し、妖精達と共存していると話した。
「私もビーも自分たちが王位を継いだ後に民をどのようにして導くのか日々話し合いっているのです。まずは全ての国民が女神がを齎してくれる恵と女神アリアと妖精達に感謝の念を持たなければなりません」
殿下はそう言い国の在り方を熱く語りだした。この問題実はリリスの箱庭でも起こっている。レッグロッドと妖精の対立がそうだ。先代の乙女が原因でリリスの妖精達はレッグロッドの加護を止めてしまった。バスグルほど酷くは無いがレッグロッドも作物が育たず他の2国からの輸入に頼っている。
『後回しにしたけどレッグロッドの問題も深刻だわ』
そう思うとどんどんブルーになってくる。報酬に釣られて受けたお仕事。正直こんなに苦労するとは思わなかった。今猛烈に家族の元に帰りたくなる。
大きな溜息を吐き俯くと、それに気付いた殿下が慌てて私の前に跪き見上げ心配する。シャーロット様の訃報を受けた時は声もかけれない程で心配していたが、シャーロット様の残されたお言葉が殿下を前に向かせてくれたのだろう。今はご自分の選ばれた道を真っ直ぐに進んでんでいる。
それに比べ私は一つ心配事が減り安堵すると直ぐにまた一つ心配事が増え、中々減らない問題にギブアップしてしまいそうだ。無表情になった私に気付いた殿下は少し考えてから
「元凶の違いはありますが、バスグルとレッグロッドは似ていますね」
「!」
遠くに意識が行っていた私は現実に引き戻されお茶を嗜む殿下の顔をマジマジと見ていたら殿下が
「バスグル王国と妖精達の仲たがいが解消できれば、レッグロッドの問題解消の参考になるのではありませんか」
殿下の言葉は目から鱗だった。確かに元凶は違うが妖精達と国の対立は同じだ。そう思うと目の前が明るくなった気がした。気分が急浮上した私は思わす殿下の手を取りお礼を述べた。何に対しての礼か分からない殿下は困惑し
「私が話した事に感謝される話題があったとは思えないのですが、多恵様のお顔の色が良くなられ、私の長話も役に立ち嬉しく思います」
そう言い何とも言えない顔をされながら退室されて行った。私は少し前向きになれ背伸びをして気分を変える。そして侍女さんを呼び視察の移動中に読む為に本を借りたいと相談。遅い時間になるが許可をもらえたら書物庫でアリアの妖精達に関する本を借り、妖精とバスクルの人々の関わりを学ぼうと思う。
「今からですか?」
「遅くにごめんない。出発前に行けそうに無いから…」
時計を見ると7刻半。寝る時間だが明日は書物庫に行く間がない。さっきの事もあり護衛に就くスコットさんはいい顔をしない。少し撫で声を出しお願いすると、長居しない事を条件に書物庫に向かう事を許可してくれた。こうして騎士さん3人と書物庫へ向かう。
もう就寝の時間だけあり廊下にひとけは無い。静かな城内は遊園地のお化け屋敷みたいでゾワゾワする。普段恥ずかしいから騎士さんのエスコートをあまり受けないが、怖い私は無意識にスコットさんの袖口を持っていた。驚いは顔をして私を見るスコットさん。思わず謝り
「ごめんなさい。人気の無い城内が少し怖くて思わず…」
「灯りも少ないですからね。私でよければお手をどうぞ」
そう言い手を握ってくれた。騎士の大きくゴツゴツした手は温かく安心する。そして普段多弁で無いスコットさんが沢山話をしてくれる。きっと怖くない様に気遣ってくれているのだろう。そんな彼の心遣いに感謝しやっと書物庫に着いた。
普段退勤している司書さんが対応してくれ、アリアの妖精に関する本を選んでもらう。そして遅くに対応いただいた事にお礼を述べ、また少し怖い廊下をスコットさんに手を引いてもらい部屋に帰る。
部屋に着くと8刻の鐘が聞こえて来た。皆さんに早く休む様に言われ、本をテーブルに置いて寝室へ。色々あり過ぎて疲れ切っていた私はベッドに入るとお休み5秒だった。
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