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疎い?

草の雨を受けた多恵が部屋に戻ると…

「まぁなんて事!」


部屋に着くと侍女さんは大きな声を上げ駆け寄った。払ったとはいえ草がまみれの私を見て、侍女さんは慌てて控室に行き応援を要請。するとあっという間に侍女さんが5人来て湯浴みの準備と髪に絡んだ草を取り除いてくれた。湯浴みをし浴室から出ると更に侍女さんが増員されていて驚く。どうやらビルス殿下も侍女さんを手配してくれたようだ。手際の良い侍女さんのお陰で綺麗になり早めの夕食をいただく事になった。

席に着いて食事しようとしたら、ビルス殿下の側近が殿下からの手紙を届けに来た。嫌な事は先に終わらせたくて食事の前に読む。手紙には謝罪の言葉と()()エルの誤解が解けた事。そしてエルを勘違いさせてしまった自分に非があり、エルには非が無いとエルを擁護する言葉が書き綴られていた。


「いやいや。ちゃんと確認しなかったエルが悪いでしょ。殿下はエルに甘すぎるわ。愛しているからって甘やかすのは違うやん」


少しイラっとして思わず口に出してしまい、エルがまた凸してこないか警戒するが、来る気配はない様で胸を撫でおろす。手紙を片付けもやもやしながら夕食をいただいた。そして夕食後疲れてソファーでうたた寝をしていたらビビアン王女が部屋に。正直疲れていて勘弁して欲しいが、断る訳にいかず面会を受ける。


「まずは謝罪させてくださいませ」


ビビアン王女はそう言い深々と頭を下げた。ビビアン王女いやバスグル王家が謝る事では無いのに。これまたエル擁護にもやもや感がさらに増すと、ビビアン王女は私に手紙を渡して読むように促す。手紙には


『 この様な妖精女王エルの行動は今に始まった事では無く、ご機嫌がよろしくない時に度々このような行動をなさいます。過去に兄上ビルスの縁組の際も顔合わせの場に突然現れ、今回と同じ様にお相手の姫君に草の雨を降らしお相手が泣いて帰った事も。どこで聞き耳を立てているか分からないので文に致しました。あのお方は他者の感情の機微に疎い上にご自分の感情表現が苦手で()()()()()()()のです。そこをご理解いただきますようお願い申し上げます 』


手紙を読んでエルを庇うバスグル王家に不信感が増すと、ビビアン王女がテーブルに箱を置いた。視線で開封を促され箱を開けると…


『たえ これ てつぬの』


嫌そうにてん君がそう言いビビアン王女に敵意を向ける。箱に入っていたのはてん君が言ったとおり鉄布で出来たローブだった。私がフィラ対策に作ってもらったローブと同じ物だが、織物が名産のバスグルだけあり、色合いも柄もとても華やかで鉄布のローブだなんて思えない仕上がりだ。


「ビビアン王女これは?」

「視察の道中お使い下さい。恐らく妖精女王エルは兄上が視察に同行しないので、多恵様の元に向かう事は無いと思われます。しかしこの国は妖精の力が強く、多恵様の行動や言動は妖精から妖精女王エルに伝わる事でしょう。また今日の様な事が起きない様にお持ちください」

「・・・」


何で私がローブで身を隠さないといけないのだろう。更に増していくイライラもやもやに口調がきつくなり


「バスグルにとって妖精女王が大切なのは分かります。しかし私はリリスの箱庭の住人。妖精女王を敬いはしますが、ここまで私の方が我慢しなといけないのですか!」

「いえ!我慢を強いるつもりは…」


ここ数日自分の情調が不安定だった事も有り、とうとうキレてビビアン王女に当たってしまった。私がキレるとは思っていなかったビビアン王女は言葉を詰まらせ俯いてしまった。八つ当たりした私も悪いのは分かっているけど気持ちが治まらず言葉が出ない。すると遅れてグリード殿下が部屋に来て入室すると大きな溜息を吐き、ビビアン王女の元に行き退室を促し私の前に跪いて手を取り


「申し訳ございません。恐らくビーの説明では納得いただけないと思い参りましたが、遅かったようですね」


そう言いビビアン王女の対応を謝罪された。正直謝罪してほしい訳じゃない。謝る様な行動や発言自体やめて欲しいだけ。そう思うと涙が出そうになる。

グリード殿下は侍女を呼び甘いお茶の用意を指示し、私の隣に座り落ち着くまで手を握ってくれた。やっと顔を上げ殿下を見ると微笑み


「リリスの箱庭の住人である私達には、バスグルの考え方は理解し難いのです。かく言う私も初めは困惑しましよ」


そう言い笑った。そして私に説明をしたいと言い許可を求めた。少し冷静になった私はこのままではダメな気がして殿下の話を聞く事に。殿下は侍女が持って来た甘いお茶を私に渡し、桃に似た果実のジャムを1匙入れてくれる。お茶は甘く興奮した私の心を落ち着かせてくれた。飲み干しテーブルにカップを置くと殿下はゆっくりとした口調で語りだした。


「リリスの妖精王であるフィラ陛下は気さくなお方で、身分関係なく接して下さります。しかしアリアの歴代の妖精王は絶対的な力を持ち、国王であろうとも妖精王に意見等出来ません」

「何故ですか?」

「私も詳細は知りませんが過去にバスクル王家がアリアの怒りを買い、バスグル王家は信頼を失い対等な関係では無かったようです。多恵様はエルの生い立ちをお聞きになられましたか?」


頷くと殿下は何とも言えない顔をした。そして長きに渡り箱庭の住人と妖精達は歩み寄る事なく過ごしてきたと語った。殿下の言葉を聞きリリスの妖精達を思い出した。リリスの妖精達は人懐っこく人に姿が見えなくても、人に寄り添い時には悪戯したり手助けし共存している。人々も箱庭の恵は妖精達のお陰だと思っていて、見えなくても尊敬の念を向けている。いわばいい関係を築いているのだ。


「悲しいかなアリアの住人は妖精達に恐れを持つとともに無関心なのです」

「無関心って…」


闇深いアリアの箱庭に遠い目をし、帰れる日がまた伸びたと感じ遠い目をしてしまった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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