新たな任務?
ビルスの話を聞き人恋しくなった多恵は…
「話をお聞きいただき、ありがとうございました」
話をしスッキリしたビルス殿下とホームシックでグロッキーな私。殿下が退室しやっと一人になりまた寂しさが込上げてくる。リリスの箱庭を離れてから、やる事が多く必死だったから寂しいなんて思う暇なかった。今思えばこっちの世界に来てから沢山の人に大切にされ、甘やかされた私はお一人様が出来なくなったようだ。
『婚約者が恋しい…』
そう思いながらブルーな気持ちで何をするでもなく1日を過ごした。そして日も暮れ夕食時間になるとまた来客。正直断りたいけど相手はハイド様だし、面会の目的がどうやらお米の産地の視察の話らしいし。
「えっと…夕食は一人で食べたいので、食事前の少しの時間であればお受けするとお伝え下さい」
ハイド様は本当は夕食を食べながら話がしたかったようだが、ポンコツの私は機嫌の悪さを隠す事が出来ない。必要最低限な話をする事を条件に面会を受ける事にした。そして侍女さんに思いっきり甘いお茶を頼む。
「!」
入室したハイド様は駆け寄り私の両頬を両手で包み覗き込んで
「何かありましたか?こんなに窶れて!」
ホームシック中の私を見て体調が悪いと思った様で、侍女さんに医師を呼ぶように指示するハイド様。慌てて元気だとアピールし診察を断った。国賓扱いの私は皆さんに気を遣わすのでブルーになる事も出来ない。何度も大丈夫だとハイド様に伝え、やっと向き合ってソファーに座り甘いお茶を一気飲みした。
「ハイドご様用件は?」
「おそらくこの後にモーブルの文官から報告が上がると思いますが、やっと賠償問題が決着し多恵様のご希望に添える事になり打ち合わせに参りました」
難航していた賠償金は両国同意に至り、私が王都に待機する必要がなくなったのだ。そして希望していたお米の生産地に行ける事になった。それを聞き少し気分が浮上する。ハイド様は最短で2日後の出発が可能だと言い私の希望を聞いてくれる。
私は出来るだけ早く行って早くモーブルに帰りたい。でも付添ってくれるリリスの皆さんの意見も聞かないといけないので、明日返事すると伝えた。
「穀物の産地はダルトン地区と言い、王都から最短でも5日かかります。多恵様の体調を考え小まめな休憩と宿泊を考えると往復13日かかり、現地視察を含めると最低18日は欲しいですね…」
「そんなにかかるんだ…」
絶賛ホームシック中の私は帰国がそれだけ伸びると思うと、またテンションが落ちていく。しかしお米はリリスの箱庭でも食べたいし、何よりお米はバスグルの主食となり食糧難を払拭できる。なら行かなければならない。分かってはいるけどモヤモヤする気持ちの治め方が分からず返事に困っていると
「貴女の寂しさは婚約者殿しか癒せないのかもしれない。しかし我々バスグルの者は貴女の役にたちたいのです。兄弟や叔父伯母だと思い甘えて下され」
ハイド様にホームシックなのを見抜かれていたようだ。私を見詰めるハイド様はお父さん目線で、自分が幼くなったように感じる。
『実際は同じ年かお姉さんなんだけどね』
そう思いながらも気遣いにお礼をいい面会を終えた。ハイド様が退室するのと入れ替わりに、クレイさんが部屋に来て先ほどハイドさんが言っていたように、賠償金が纏まったと話す。やっと合意に至りホッとしたのかクレイさんは柔らかい笑みを浮かべ
「やっと家族の元へ帰れます」
そう呟いた。その言葉を聞き駆け足で罪悪感がやって来て落ち込む。リリスの箱庭から同行してくれている皆さんに申し訳なくて黙り込むと、遅れてリチャードさんが来て私を見て駆け寄り、クレイさんに退室を促す。そして私の前に跪いて視線を合わせ
「クレイ殿からお聞きかと思いますが、バスグル側との協議は全て終了いたしました」
「はい…」
落ち込んだ私は言葉が出ず何とも言えない顔でリチャードさんを見ていたら、微笑んだリチャードさんが
「実は陛下から追加の命を受けまして、多恵様にもご協力いただきたのですが…」
「!」
追加の任務とはお米の産地に行き視察し、輸入に向けてバスグル側と協議して欲しいとの事。驚き口を開けて固まっていると、遅れて部屋に来たアッシュさんとケイスさんが温かい視線を向けてくれる。
どうやらダラス陛下がお米が私の国の主食なのを聞き、前向きに輸入を検討してくれたのだ。
「陛下は多恵様がお米を見つけられた時から、多恵様が更にリリスの箱庭で快適に生活できるようお米の輸入を即決なさいました」
「陛下が…」
「はい。貴女の事だから視察する事で帰国が遅れる事に罪悪感をお感じになるかもしれませんが、伸びる事でバスグル側と交渉できる事もあり、リリスの3国は得る事も多いのです」
アッシュさんはそう言い気に病む事は無いと言ってくれる。そしてリチャードさんが今ハイド様が制限をかけようとしている、織子の出稼ぎの制限についても協議する時間が出来ると話した。
「視察にはハイド殿下が同行される筈。お米の輸出を手札にすれば出稼ぎ労働者の制限についても、有利に話が出来るはずです」
「ありがとう!」
皆さんの心遣いが嬉しくて目の前のリチャードさんに抱き付きお礼を述べると、リチャードさんが頭を撫でてくれる。そして温かい目のアッシュさんが
「多恵様。同行いただけますか」
「はい!喜んで!」
そう応えるとリチャードさんは私をソファーに下しハイド様の元に。そしてアッシュさんがアルディアとレッグロッドの元に向かった。そして残ってくれたケイスさんが話相手をしてくれる。
お読みいただき、ありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。
『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。




