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愛ある人生

グリードにシャーロットの最後の言葉が伝えられ…

「お初にお目にかかります。バスグルにお越しいただき…」

「堅苦しい挨拶はいらん。用を済ませ早く妻の元に帰りたいのだ。さっさと座れ」


ロイドはそう言い面倒くさいに手を振り着席を促した。拍子抜けしたバスグル王、ビビアン王女そしてグリード殿下が座り、お茶を出した女官が退席したタイミングでロイドが話し出す。


「聞いているとは思うがリリスの箱庭のモーブル王妃が亡くなった。俺は王妃の最後の言葉をグリードに伝えに来ただけ。先ほども述べたが早く帰りたい。いらん接待やつまらん話はやめてくれ」


ロイドはそう言い私を開放し隣に座らせた。そしてロイドは説明も無く身を乗り出しグリード殿下の額に手を置いた。隣に座るビビアン王女が驚き立上りソファーの隣に移動する。はじめ驚いた顔をしていたグリード殿下の表情がくずれ、綺麗な瞳から一筋の涙がこぼれた。そして手を離したロイドが


「命あるもの与えられた時間を有効に使い、命果てる時に笑って神の元に帰るものだ。其方の時間はまだ半分以上ある。愛ある人生を送れ」


ロイドの言葉にグリード殿下は立ち上げり最敬礼をし感謝の言葉を述べた。ビビアン王女も国王もロイドが伝えた言葉が気になる様だが、ロイドが帰った後も聞く事は無かったようだ。そうシャーロット様の最後の言葉はグリード殿下だけのもの。きっと2人にしか分からない事なのだ。それに触れるべきではない。


「いつからそんなに優しい奴になったのさ」


部屋に花の匂いが立ち込め花びらと共に妖精女王エルが現れた。国王、王女とグリード殿下が立ち上がり胸に手を当て礼をする。エルは挨拶に応える事無くロイドの前に行き顔を覗き込んで


「番とやらを見つけ浮かれている様ね。番なんかに腑抜けにされ、イリアの箱庭に何の関係も無いリリスとアリアの箱庭に手を貸すなんて気でも狂った?」

「相変わらず可愛くない奴だな。お前も番に会い愛を知れば分かるさ。まだケツの青い(子供)お前には理解できん事だ」


嫌みを言うエルに皮肉で返すロイド。妖精王の口喧嘩に皆顔色が悪くなる。後で聞いた話だがはるか昔に妖精王同士の喧嘩で、その周りが崩壊したと記録されているらしい。妖精王相手に注意できない国王は青い顔をし私に視線で助けを求める。今この部屋で妖精王に注意できるのは私しかおらず、溜息を吐きながら


「ロイドは早く帰りたいって言ってませんでした? それにエルは何か用があったのでは?」


そう投げかけると2人が一斉に私の方を向いた。超美形に視線を送られ怯むと


「そうだ早くリズの元に帰りたい。多恵。また困った事があれば頼れ。俺はフィラより使えるぞ」


そう言いながらロイドは私を抱きしめ額に口付けを落とした。その様子を間近で見ていたビビアン王女が小さな悲鳴を上げた。その声に眉を顰めたエルが私からロイドをはがし帰る様に促す。

こうして伝言を伝えたロイドは帰って行った。そして残された私たちが呆然としているとエルが


「王よ。はやく問題を解決しリリスの連中を帰せ。妖精達の気が散り私の仕事が増えた」


そう言い私に視線を送った。バスグルの為に来ているのに邪魔者扱いにカチンっと来て言い返そうとしたら


「あー!も!煩い!こいつも番に狂った奴だった」

「?」


どうやらフィラがエルにクレーム(文句)を入れている様だ。鬱陶しそうな顔をしたエルが何も言わず帰って行き、やっと部屋が静かになる。大きな溜息を吐いた国王がソファーが深く座り溜息を吐くと、まだ呆然としているグリード殿下にビビアン王女が寄り添う。やっと顔を上げたグリード殿下がビビアン王女に礼を言い、私に視線を向け感謝の言葉を述べた。

穏やかになったグリード殿下の顔を見て安心し、この後少しバスグルとモーブルの交渉について話し合い、皆さん疲れた顔をし帰って行った。


やっと落ち着いた頃にスコットさんが部屋に来て心配をしてくれる。大丈夫だと伝えると気が緩みお腹が空腹を主張した。小さく笑ったスコットさんが部屋付きの侍女を呼んでくれ。やっと朝食にありつけることになった。


朝食後はクレイさんが交渉の途中経過を報告に来てくれ、もう少しかかりそうだと肩を落とした。お米の発見を機に経済を立て直したいバスグルは資金が必要で、モーブルからの賠償金を充てにしていて、少しでも多く欲しい様で中々合意しないそうだ。


「あまり難航する様なら私も会議に入りますから」

「多恵様のお手を煩わせぬよう、少し強気で交渉いたします」


クレイさんはそう言い帰って行った。やっと落ち着きソファーに寝転がり無になっていると侍女さんが来て面会の申し込みがあると話す。相手を聞くとビルス殿下だった。

直感的に又何か起こると思った私は返事に困る。すると気を利かせた侍女さんが


「多恵様はお疲れでご静養中だと申し上げ、お断りいたします」


そう言いあっという間に部屋を後にした。後でスコットさんが教えてくれたが、この時の私は疲労困憊な顔をしていたようだ。皆さんに心配をかけたと反省していたら…

お読みいただき、ありがとうございます。

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