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おこめの女神様

やっと炊きあがったごはん。本当に日本のお米と同じなのだろうか?

「そろそろかなぁ」


土鍋の蓋を開けるとお米特有の香りに頬が緩む。気が付くとご飯が炊ける匂いにつられ調理場は大勢の人が集まった。こんな大勢いては調理出来ないと思い、調理に関係ない人の退場をお願いし、料理人と護衛騎士さんだけ残ってもらった。勿論陛下も例外なく退場してもらう。そして…


「そちらの皆さんはこの焼き魚の身をほぐいて下さい」


色々悩んだ結果、炊けたご飯はおにぎりにする事にした。まずはシンプルにお米の味を知って欲しいのと、簡単な調理法なら広まりやすいからだ。食材置場を確認しおにぎりの具になりそうな食材を探し干物を見つける。

干物は長期保存できるように塩水につけた魚を天日干しており、日本の物と見た目も似ている。恐らく聖人(正清)が広めたのだろう。

保存食を選んだ事に困惑している料理人に指示し10枚ほど焼いてもらい、身をほぐしてもらっている。焼きのりがあればもっと色々できるんだけど贅沢は言ってられない。そして肝心な塩は料理見習の青年達がミルで細かく砕いてくれている。後は…


「乙女様。ボールと水の準備は出来ましたが…」

「ありがとうございます。そこに置いておいてください」


準備が出来たので土鍋の蓋を開け、大きなスプーンを水に濡らしご飯を軽く混ぜる。しっかりおこげもできている。それより…


「あの…もう少し離れてもらえますか」

「いや~申し訳ない。好奇心が先走り…」


料理長が私の後ろから私の手元を凝視していて、首筋に料理長の呼吸を感じ、ずっと鳥肌がたっている。騎士の睨みも効いてやっと離れてもらい手を水に浸してから…


「乙女様何を!」

「あっ熱!」


手に塩をふりごはんを乗せ真ん中に干物を入れごはんでふたをする。そして少し塩を足し三角に握っていく。力加減を気を付けながらニギニギしておにぎり第1号が完成した。

元々手の小さい私のおにぎりは小さい。お皿にそれを置き第2号を握ろうとしたら、料理人のみなさんがそのおにぎりを凝視している。その光景を微笑ましく見ながら、あっという間に2号も完成した。


「とりあえず私が思っていたごはんが確認する為に、私が味見しますね」


そう言いおにぎりを一口食べると…


「やっぱり()()()!美味しい~嬉しい~」

「私にも!」


そう言い我慢の限界を突破した料理長が2号に齧り付いた。その瞬間他の料理人から不満の声が上がる。そんな声を気にもしない料理長は感嘆の声を上げると、皆さんからもっと作って欲しいとお願いされる。そしてこの後の私はおにぎりマシーンと化した。

あまりたくさん炊いていないので一口サイズのおにぎりしか出来なかったが、食べた人達から称賛され感謝の言葉の雨が降る。そして次に別室でお待ちいただいていた陛下におにぎりを運び味見していただいた。そして片付け終わり陛下に感想を聞きに行くと…


「うげっ!」


入札許可を得て部屋を入ると、走って来た陛下に抱き付けれ変な声が出てしまった。陛下は口元に米粒を付けた状態で、感謝を述べられ無邪気にごはんの美味しさを語っている。こんなに喜んでもらえるなんて思っておらず恐縮してしまう。そして宰相様のお声がけで冷静になって陛下に、口元のお弁当(ご飯粒)を教えてあげた。


やっと陛下が落ち着かれて頃に料理長が来て話し合いになる。宰相様からこの穀物(お米)の生産量を確認すると、この国の主食と成り得る位収穫できるようだ。あとはお米の精米と炊き方をレクチャーすればいい。料理長に炊き方をレクチャーしていたら、遅れて来た文官さん達が必死にメモをとっていく。


「そうか。穀物に下処理が必要だったのだな」


そう下処理が大切で脱穀と精米が必要なのだ。だが小麦と大麦が穀物主流のこの世界では、脱穀はしても精米という概念が無い。どの穀物も脱穀後に製粉しかしてこなかったのだ。料理長曰く米も脱穀し製粉し、小麦と同様のパンや麺しようとしたが失敗が続き諦めた。他の調理法を考えスープで煮てみたが、お米の糠の臭みが気になり食べれないと判断し、お米は食べれない物として認識されていった。

そして偶々家畜がそれを食べているのに気付き、家畜の餌として用いられることになったそうだ。


「お米は先程のおにぎりだけではなく、色んな調理法があり食糧難が解消できるでしょう」

『それに流通し始めたら、リリスの箱庭にも入って来て、あっちでもごはんが食べれる』


そう思うと口元が緩んでしまい間抜けな顔をしていた様で、同席したデュークさんに温かい視線を送られ慌ててハンカチで口元は隠した。そしていい仕事をしたと自画自賛中の私に料理長が、再度ご飯を炊いて欲しいとお願いされる。


「いいですよ。但し炊けたご飯を少し分けて下さい。リリスの皆さんに差し入れする約束をしているので」

「私共に教授いただけるのなら、調理場も食材も好きな様にお使いください」


こうしてもう一度ご飯を炊く事になり調理場に行くと、先ほどの倍の土鍋が用意されていて驚く。どうやら色んな所からかき集めて来た様だ。暫く続く【お米フィバー】に苦笑いしながら米の研ぎ方から教えていく。


「お疲れ様でした。我々にもお気遣いいただき感謝いたします」

「常日頃お世話になっているのは私の方ですから」


沢山のおにぎりが入った籠を持って部屋に戻りながら心地よい疲れに満足している。同行してくれていたアルディアの騎士さん達は顔には出さないが、おにぎりに気になって仕方ないようだ。

さっきの試食の時はバスグルの皆さんが優先だったから、アルディア騎士さんにはあたらなかったからね。


「もし予定が無いなら他の皆さんも一緒に私の部屋で、おにぎりの試食会をしましょう」


そう言うとデュークさんが会議中の文官さん達にも伝達を出してくれた。こうして夕飯前の中途半端な時間に皆さんで雑談をしながらおにぎりをいただき、お互いを労いいい時間を過ごした。


そしてバスグルのお米は増産体制が直ぐに行われ、翌年には食糧難があっさり解消された。そしてバスグル王の命でリリスの箱庭へ優先に輸出され、リリスの箱庭でもお米文化が根付く事になる。そして後に私はバスグル国民に【おこめの女神】と呼ばれバスグルの歴史に残る事となった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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