女神が創ったもの
キースとミリアーナの縁談も一応?無くなり、1日のんびりする事になったが…
キースが帰国する日の朝。朝から濃厚な愛を受けへとへとの私は、帰るのを渋るキースを宥めやっと送り出し一息ついていた。帰り際に(バスグルからの)縁談は何があっても受け無いと言う必死なキースを可愛く感じほっこりする。ほんの数日前まで冷えていた心が温かくなった。気が付かない間に婚約者達が私の心の支えになっていた事に気付く。意地っ張りの私は人生半分を過ぎやっと甘える事を覚えた。
『今元に世界に戻ったら大輔に素直に甘えられるかもしれない』
そんな事を考えながら一人まったりとお茶を楽しんでいた。
ニーシジ領の視察からずっとバタバタしていたので、皆さんが気を使い今日はフリーにしてくれた。全ての面会を断り部屋に籠りのんびり過ごしている。
でも仕事はしていて会議の報告書に目を通し、気になる所はクレイ様に確認を取っている。労働条件の方はほぼ同意を得ており、後は賠償について話し合われているそうだ。
慢性的に財政難のバスグル側は賠償額の増額を望んでおりモーブル側と交渉中。双方の意見が合わず難航しているとクレイさんの報告書に書いてあった。報告書からクレイさんの大変さが伝わってくる。
『折り合いがつかない時は、私も会議に加わった方がいいのかもしれない』
そんな事を考えていたらレッグロッドの騎士のスヴェンさんとアンディさんが部屋に来た。確か今日は待機の日の筈だ。
今回のバスグル訪問から護衛に就いてくれた彼らは護衛騎士の中でも一番若く、先輩騎士に気を使っている様であまり話しかけて来ない。まぁ責任者のスコットさんがせっかちで率先して動くので、2人と接点が少なくまともに会話した事が無かった。
「お休みの所お時間をいただき申し訳ございません」
「いえ。ぼーっとしていたので大丈夫ですよ。それに一度お話してみたかったので嬉しいです」
そう答えると微笑みを返してくれる。何度も言うが箱庭は美形しか生存できない。その中でも貴族の顔面偏差値は異常に高く、2人共貴族の子息なので超イケメンだ。目に優しい二人を見て頬が緩んでいるとスヴェンさんが
「ユグラスでお買い求めになられた穀物の事なのですが…」
「あ…お米の事ですね。そう言えば忙しくて丸っと忘れていました」
するとスヴェンさんがアンディさんに視線を向けると、恥ずかしそうにアンディさんが
「私の遠縁にバスグルの者がおりまして、その穀物の事を聞いた事があるのです」
そう言いお米の事を話してくれた。アンディさんの遠縁は領地に水田が多くお米を栽培している。親戚は食糧難のバスグルを救うべく、お米の調理法を色々捜したが穀物は独特な香りと粘り気があり、口に合ず仕方なく家畜の餌としているそうだ。
「親戚からその話を聞きその穀物に興味をもったのです。女神がお創りになった植物が食べれない訳が無いと思い、いつか食べ方を探したいと思っていた。そんな時に多恵様がその穀物を食する事が出来ると仰ってから、調理法が気になって仕方が無いのです。この様なお願いが出来る身分では無いのは分かっておりますが…」
「ご飯を食べてみたいんですね!丁度今日は予定も無いからご飯炊いてみましょうか」
そう言うとアンディさんは表情を明るくし胸に手を当て感謝を述べた。付添いのスヴェンさんも一緒になって喜んでいる。2人は仲がいいみたいだ。(忘れていたけど)ご飯が食べれると思うと一気に気分が上がる。
善は急げ!侍女さんを呼びユグラスで買って来た土鍋とお米。そして調理に使うボールとグラスそしてキッチンの使用許可をお願いした。
侍女さんの返事待ちの間、アンディさんから遠縁の人の話を色々聞く。お2人は話してみると好青年で話題も豊富で楽しい。2人と打ち解けて来たら部屋の外が騒がしい事に気付く。
表情を引き締めたスヴェンさんが確認に出ようとしたら、外から入室許可なくデュークさんが入って来た。そして
「本日は面会を全てお断りしたのですが、陛下が多恵様に会いたいと先触れを出し、間もなくこちらに陛下がお越しになります。如何なさいますか?」
「マジで!」
陛下直々に来るなんて思ってもいなかったから戸惑っていると、スヴェンさんとアンディさんが慌てて退室しようとした。そのタイミングで陛下襲来…じゃなかった訪問を聞きつけたスコットさんが部屋に来た。そして2人が居る事に眉を顰め、二人を廊下に連れて行った。
大事になり遠い目をし拒否できない訪問者をお迎えする準備を始めた。
『暇つぶしにお米を炊こうと思っただけなのに。なんでこうなっちゃたのかな…』
そう呟き事情説明待ちのデュークさんに向き合う事となった。
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