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手慣れている?

部屋で待つキースにどう説明しようか悩んでいると…

「えっと…デュークさん。キースには言わないでね」

「はぁ…相変らず危機感をお持ちで無い。あわよくば貴女の夫になろうとする者がいるのです。ご注意いただきたい」

「はぃ…」


ハイド様の執務室を去る時に不意にハグ…いや抱き付かれ、挙句に頬にキスもされたのだ。まさか妻帯者のハイド様がそんな事するなんて思う訳ないじゃん。


『警戒心が無い私も悪いけど、さっきのは不可抗力じゃん』


とりあえず嫉妬深い婚約者(キース)の耳に入らない様に根回しだけはしておいた。へとへとのお腹ぐぅぐぅの私は最後の力を振る絞り部屋に急ぐ。

やっと滞在する部屋が見えてくると薄暗い廊下に人影が見えた。さっき注意された所だから警戒心を上げると


「多恵!」


この声はキースだ。部屋で待ってられず迎えに来たようだ。あっという間に目の前に来たキースは、無言でデュークさんから私の手を取り抱き上げだ。驚いて固まっているとキースは無言で歩き出す。ふとデュークさんと目が合うと苦笑いされた。


『そうでした私の婚約者達は嫉妬神でした』


そう思いながらも温かいキースの腕の中で緊張が解けていくのを感じていた。

こうしてやっと部屋に戻ってくると部屋には美味しそうな匂いが充満し、お腹が大合唱を始め顔が赤くなるのを感じる。


「まずは食事をして落ち着き、その後ゆっくり話を聞きましょう」

「う…うん」


食事は嬉しいが”その後ゆっくり”に嫌な予感がしつつ温かい食事を頂いた。

食後はソファーに移動しキースに抱きかかえられ、ぬいぐるみの罪に処される。暫くすると落ち着いたトーンでキースが


「私がお聞きしていい範囲でいいので、王弟殿下ハイドと何をお話になったのかお聞きしても?」


頷きハイド様と話した事を思い出しながら話す。ただキースのお母様への求婚理由だけは避けた。どこの国や領地でも弱点になる事は知られたくないものだ。アルディアの方が経済的に豊だとしても、製紙業が弱い事は(バスグル側は)知られたくないだろう。


「お話して分かったけどハイド様は本当に国を豊かにしたい想いがお強い方で、多分それが振り切っちゃって極端な選択をしちゃうんだと思う。だからきっと今回の縁組の多分それで…」


続けてバスグルとファーブル間の貿易について話そうとしたが話せなかった。だってこれはリリスの願いでは無いし、ファーブル領が困っている訳でもない。黙ってしまうと溜息をついたキースが口付けて


「多恵は人が良すぎますからね。きっとバスグルも救ってやりたいと思っているのでしょう。我が領地はバスグルとの貿易を増やさずとも困る事は無い。だがバスグルとの貿易に手を貸すという事は、アリアの箱庭を助ける事になる。その事を悩んでいるのでしょう」


驚いてキースを見ると微笑まれた。言い当てられ思わず拍手するとキースが声を出して笑う。そして私の髪を触りながら


「そんな優しい貴女を自慢に思い愛おしい。私は箱庭に縛られず貴女の想う様にすればいいと思います。それにここでバスグルを助けないと、きっと後悔するでしょうし」

「キース…大当たり!」


私の気持ちを分かってくれている事が嬉しくて自分からキースに抱き付く。またカップアップしたキースの腕の中は温かく安心感が半端ない。そんな温かい腕の中で暫く微睡むとキースが声のトーンを下げ


「もっと貴女の側に居たいが仕事もあり帰国せねばなりません。ミリアーナ嬢がこの縁組を望まれていない事が分かった事ですし、帰国し陛下と父上に縁組を受ける気は無いと伝えねばなりません。ですから明日の朝にここを発ちます」

「分かった。寂しいけど…多分大丈夫」


そう言い頑張って微笑む。するとキースがいきなり男の顔し激しく口付けてきた。あまりにも濃厚で流されそうになってしまう。気が付くとドレスのボタンもリボンも解かれ下着姿になっていた。その手際のよさにキースの女性遍歴を想像してしまう。そして思わず


「(服を脱がすのが)手慣れているんだ…」

「!」


そう言うとキースの手がとまり身を離しソファーに座らされる。そしてキースは自分の上着を私の肩にかけ、項垂れあからさまに落ち込んでいる。そして小さな声で話し出し


「私は愛する人しか抱くつもりはありません。ですからそちらの方の経験はない。なのに最愛の女性ひとにそのように思われショックです」

「ごめんね不誠実(ナンパ)みたいに言って」


慌てて謝りさっきまでの甘い雰囲気は跳んでしまい、キースのご機嫌取りをする羽目になった。てっきり小説とかで読んだように、貴族の子息は経験を積むために婚姻前に経験しているのものだと思っていた。


「私は傷つきました。きっと明日の出発までにはこの気持ちは治まらないでしょう」

「だからごめんって!どうすれば許してくれる?」

「…てくれるなら」

「?」


結局何もしない事を約束し同衾する事になった。そしてその夜はキースに抱きしめられて眠る。緊張して眠れないと思ったけど、キースの高めの体温が心地よくここ数日で一番よく眠れた夜となった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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